ヴァレリウス - 架空アニメキャラ用語辞典

概要
ヴァレリウスは、ライトノベルおよびアニメ作品『ありふれた職業で世界最強』に登場する、元ハイリヒ王国宮廷学者。
“異端の学者”として、神聖教会から異端認定を受け、追われる身となっている。彼は、この世界のレベルやスキル、ステータスといった概念が、神エヒトによって仕組まれた壮大な「システム」であるという真実に気づき、その欺瞞を暴こうと独りで研究を続けている。
主人公・南雲ハジメたちと出会い、彼らに世界の真実を教え、神エヒトと戦うための道筋を示す、物語の謎を解き明かす上で極めて重要な役割を担う人物である。

生い立ちと背景
王国随一の天才学者
ヴァレリウスは元々、ハイリヒ王国に仕える、王国でも随一と謳われた天才学者であった。彼の専門は、神が人々に与えたもうたとされる「ステータスプレート」の研究。彼は、プレートに表示されるレベル、スキル、天職といったシステムの法則性を解明することに、その生涯を捧げていた。
彼の研究は、効率的なレベルアップ方法や、スキルの派生条件などを次々と発見し、王国の騎士団や冒険者の育成に多大な貢献をもたらした。この頃の彼は、神の御業の偉大さを解き明かすことに情熱を燃やす、敬虔で誠実な学者であった。

禁忌の発見
しかし、長年にわたる研究の末、彼はシステムの奥底に隠された、いくつかの「不自然な点」に気づき始める。例えば、ある一定のレベルを超えると、成長率が極端に鈍化する「見えざる壁（キャップ）」の存在。あるいは、人間族と魔人族の間に、まるでプログラムされたかのように定期的に発生する大規模な戦争。
彼は、膨大なデータを分析する中で、一つの恐ろしい仮説にたどり着く。この世界のシステムは、人類を繁栄させるためのものではなく、むしろ人類を一定数以上に増やさず、過度な力を持たせないように管理し、そして人間と魔人の戦争を意図的に引き起こすことで、何かを「収穫」するための、神の「飼育場」なのではないか、と。

異端者への転落
真実を確信したヴァレリウスは、自らの研究成果をまとめ、国王と神聖教会に報告する。しかし、彼の報告は、神への冒涜であり、世界の秩序を乱す危険思想と見なされた。
教会は彼を「異端の学者」として断罪。彼の研究資料は全て没収・焼却され、彼自身もまた、反逆罪で処刑されることが決定した。しかし、処刑直前、彼の身を案じた数人の弟子たちの手引きによって、彼は王都から脱出。以来、彼は教会の執拗な追跡を逃れながら、各地の古代遺跡に隠された書庫などを渡り歩き、たった一人で世界の真実を暴くための研究を続けている。

作中での活躍
ハジメとの出会い
彼が物語に初めて登場するのは、ハジメたちが【グリューエン大火山】を攻略した後のことである。次なる大迷宮の手がかりを求めて、古代の図書館遺跡を訪れたハジメたちは、そこで膨大な資料に埋もれて研究を続けるヴァレリウスと出会う。
ヴァレリウスは当初、ハジメの持つ、常識からかけ離れた強大な力（ステータスプレートに表示される数値や、保有スキルなど）を「システムの新たなバグか、あるいは神の新しい駒か」と警戒する。しかし、ハジメがその力を、神から与えられたものではなく、奈落の底でモンスターを喰らうという、システムの想定外の方法で得たことを知ると、驚愕と共に強い興味を抱く。
彼は、ハジメこそが、神の作った盤上のルールを破壊できる唯一の「イレギュラー」であると確信。自らが長年かけて突き止めた世界の真実を、ハジメたちに打ち明ける。

真実の案内人として
ヴァレリウスとの出会いは、物語の方向性を大きく転換させる。それまで、故郷へ帰ることだけを目的に戦ってきたハジメに、「神エヒトを打倒し、この世界の欺瞞を終わらせる」という、新たな、そして最大の目的を与えることになる。
以降、ヴァレリウスはハジメ一行の頭脳として、その旅に同行はしないものの、影から彼らをサポートする。彼は、残された解放者の大迷宮の位置を特定したり、神エヒトやその使徒たちの能力を分析して弱点を探ったりと、その卓越した知識で、ハジメの戦いを何度も勝利に導いた。

他の登場人物との関係
南雲ハジメ
ヴァレリウスにとってハジメは、自らの研究を完成させ、悲願を達成するための、唯一無二の希望である。彼は、ハジメの持つ圧倒的な力だけでなく、その力の源泉となった「生きる」という純粋で強固な意志を高く評価している。ハジメが時折見せる、常識外れな行動や、悪趣味な魔改造（アーティファクト作成）に対しても、顔をしかめながらも「常識に囚われない、それこそが神の想定を覆す鍵だ」と、ある種の期待を寄せている。

神聖教会と神エヒト
自らの人生を奪い、そしてこの世界を欺き続ける元凶として、絶対的な敵対関係にある。彼の最終的な目的は、神エヒトを打倒し、教会という巨大な偽りのシステムを完全に破壊することである。

天之河光輝ら勇者一行
ヴァレリウスは、光輝たち勇者一行のことを、「神の操り人形」として、憐れみの目で見ていた。彼は、ハジメと出会う以前に、一度彼らに接触し、世界の真実を伝えようと試みたことがある。しかし、神を盲信する光輝や、教会の敬虔な信者であったクラスメイトたちは、彼の言葉を「異端者の戯言」として一蹴し、彼に剣を向けた。この出来事により、彼は「システムに飼い慣らされた者たちを救うことはできない」と、半ば諦観を抱くようになった。

性格・思想
「真実への渇望」
彼の行動原理は、ただ一つ、「真実を知りたい」という、学者としての純粋な探究心に基づいている。たとえその真実が、どれほど残酷で、絶望的なものであったとしても、彼は偽りの平和や、与えられた幸福に甘んじることを良しとしない。
彼は、ハジメが持つ力そのものよりも、ハジメが「神のルールを破って」その力を得たという「事実」にこそ、価値があると考えている。

冷笑的な現実主義者
長年の逃亡生活と、世界の残酷な真実を知ってしまったがゆえに、彼の性格は非常に皮肉屋で、人間不信なものとなっている。権力や信仰といった、目に見えないものを信用せず、常に客観的なデータと、自らの分析のみを信じる。
しかし、その冷笑的な態度の裏には、真実を知らされずに利用され、死んでいく人々への、やるせない怒りと哀しみが隠されている。彼は決して、冷酷な人間ではない。

物語への影響
物語のスケール拡大
ヴァレリウスの登場は、『ありふれた職業で世界最強』の物語を、単なる一人の少年の異世界サバイバル譚から、「神という世界のシステムそのものへの反逆」という、壮大なスケールの物語へと昇華させた。彼が提示した「世界の真実」が、ハジメたちの最終的な目的となり、物語の縦軸を形成した。

世界観の深化
彼は、作中における「語り部」としての役割も担う。レベルやスキルといった、ファンタジー作品におけるお約束の「ゲーム的な要素」が、なぜこの世界に存在するのか。その理由と、裏に隠された設定を、彼が論理的に解説することで、『ありふれた職業で世界最強』の世界観は、より深みと説得力を持つものとなった。

力と知恵の象徴
圧倒的な「力」の象徴であるハジメに対し、ヴァレリウスは「知恵」の重要性を象徴するキャラクターである。どれほど強大な力を持っていても、進むべき道、すなわち「正しい情報」がなければ、その力は無意味である。彼の存在は、ハジメの持つ力が、ただの暴力ではなく、明確な目的を持つ「意志の力」へと昇華していく上で、不可欠なものであったと言えるだろう。