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CSR活動の背景

 ではなぜ今日のようにCSRが議論されるようになったのか、その背景について見ていくこととしよう。

 CSRという言葉が世の中に台頭してきたのは2000年以降だが、企業に社会的責任を求める動きはそれ以前に遡る。

 1960年代までは労使間紛争、1970年代以降は公害、環境保全問題を中心として社会的責任は議論されてきた。1970年、日本は「いざなぎ景気」と高度成長が最高潮に達した時期であったのだが、その分日本企業が戦後一貫して続けてきた成長至上主義に初めて批判が出てきた時期でもあった。その後、国際通貨危機、食料問題、石油危機と次々と問題が発生し、それに対する石油業界の便乗値上げ、売り惜しみにより激しい企業批判が起こることとなる。この企業批判の対応として、日本企業は全産業レベルから個別レベルに至るまで様々なレベルで経営行動基準を定め、企業の社会的責任を果たそうとした。

 1986年末から、日本は再び「平成景気・バブル景気」と呼ばれる景気拡大期間に突入する。日本はこの好景気を大いに享受し、飛躍的発展を遂げたのだが、またしても企業に社会的責任を問う動きが活発化してきた。ここでは社会的責任という言葉に加えて、企業の社会貢献という言葉も生まれ、フィランソロピー活動が本格化した。
 「いざなぎ景気」後も「平成景気・バブル景気」後も、好景気が去り、不況が訪れるとともに企業の社会的責任、社会貢献は影をひそめていった。



 そして現在、第3の潮流としてまたしても企業の社会的責任が注目されている。それがCSRブームである。このCSRブームの裏には国際的背景と国内的背景が見られる。

 まず国際的背景として、主な理由は日本企業の多国籍化が挙げられる。ビジネスのグローバリゼーションの進展によって、特定文化圏の価値観の強要や国際間・地域間の貧富の差の拡大が懸念されるようになり、欧米企業の動向が日本企業に与える影響は以前に比べ増してきている。世界的規模で市場の大競争が起きており、先進諸国に対して発展途上国やNGOから貧富の格差拡大、環境破壊への対策、先進諸国中心の国際貿易ルールなど様々な批判も起きている。そこで企業活動における節度ある行動、国際的な原則や各種規格などを制定する必要性が生まれてきており、日本でも国際的な企業はこれに対応せざるを得ない状況になってきている。欧米の価値基準や法令にも気を配らなければならなくなり、その際経済的な面だけではなく、その国での雇用、環境にまで責任は及ぶ。

 次に国内的背景だが、最大の要因は頻発する企業不祥事に対する社会の企業批判の行動の高まりであろう。消費者は企業に社会的公正を求めている。従来の利益万能主義の風潮は是正され、節度ある企業行動、ビジネスの公正さや社会貢献などに顧客は目を光らせるようになった。食品偽装や粉飾決算が起きた場合には、消費者もそれ相応の対応をしており、厳しい社会の対応を見せつけられた企業の経営者は、企業存続のため社内体制の整備、各種ステークホルダーとのコミュニケーションの重要性を改めて悟ったと言えよう。
 また、外国人による機関投資家の日本株式所有の増加も関連している。経営陣の不誠実な企業行動はその企業の存続を揺るがしかねない。エンロン、ワールドコムといった大経営破綻を通して身をもってコーポレートガバナンスの重要性を理解したアメリカの機関投資家の株式所有が増加したことにより、従来のより一層の企業の公正性が求められることとなる。

現代の日本では企業なしの生活はありえない。私たちの身の回りの出来事、物、全てが企業と密接に関わって成り立っている。企業の影響力がまだ小さかった時代には、企業は経済性を追求するだけでよかった。しかし、企業が社会に与える影響が大きすぎる世の中になってしまった今、経済的影響力だけでなく、社会的影響力も考慮しなければならないほど日本企業の社会的影響力は大きくなっており、社会的責任を果たしていく必要がある。
最終更新:2009年10月21日 20:13
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