三田論Ptype

序章
 近年、CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)という言葉が注目を集めている。CSRの重要性が叫ばれている中、現在では日本のほとんどの大企業が何らかのかたちでCSR活動を展開しており、CSRを経営方針に取り組む企業や、CSRを専門に扱う部署を設けている企業まで存在する。CSRがブームになった背景を辿ると、企業のリスク回避、これからの展望を広げていくという目的があったことに遡るのであるが、現在のCSRの目的はこれだけではないのではなかろうか。地球環境を意識したものや、従業員の労働環境に関するものまでさまざまなCSR活動があり、他にも重要な目的があると考えられる。研究を進めていく中で、企業がCSR活動を行うことで、ブランド力の向上や、財務パフォーマンスの向上に結びつくなど、企業そのものの価値を向上させるという文献を数多く読んだ。CSRが企業にとっての利益にしかつながらないのであれば、CSRもこれまで存在した社会的責任ブームと同じように衰退してしまう恐れがある。しかし、CSRに関する注目は年々高まる一方であり、企業の意識も高まっている。もしかしたら企業の価値向上以外にも、組織や従業員への何らかの影響があるのではないか。
 そこで本論文では、現在注目を浴びているCSRについて説明した上で、その目的を企業内部のパフォーマンスに焦点を当て、CSR活動が従業員にいかなるかたちで影響を与えるかということを、実際に従業員に対して調査したアンケートを用いて実証していく。



















1、CSR活動の概要
CSRとは、Corporate Social Responsibilityの頭文字をとったもので、企業の社会的責任を意味する。2000年以降CSRが議論される機会は年々増え続け、2003年は「CSR元年」とも言われただけに、それ以降急速に世の中に浸透してきた。実際企業のホームページを見るとほとんどの大企業では「環境への取り組み」、「社会貢献活動」といったCSR活動に関する情報が記載されている。
 CSRを遂行する相手を考えたときに、従来の日本社会では株主、金融機関、監督官庁など企業経営の支援をしてくれる存在が主な対象であった。しかし、CSRが社会に浸透するにつれ、議論は深まり「企業の社会的責任」という言葉の意味する範囲は拡大してきた。その結果これまで大きな影響力を持っていなかった消費者、従業員、NPO、地域社会や環境までもがCSRの対象として認識され始め、企業経営を行う上でもはやCSRは無視できない存在となっている。
しかしCSRという概念は新しいものであるため、学術的にも未だ確立されておらず多数の定義が存在する状況である。CSR研究の第一線で活躍している研究者の定義としては以下のようなものがある。
・企業の様々なステークホルダーに対する、自らの収益性、成長性以外のコミットメントを企業目標の一つと考え戦略的にマネジメントの根幹として捉えること。
(岡本大輔『企業評価+企業倫理』慶応義塾大学出版会,2006,p.9)
・CSRとは、単に倫理的・道徳的問題としてのみ論ぜず、企業の維持・発展のために各種ステークホルダーの協力関係を確保することである。
(十川廣國『CSRの本質』企業と市場・社会,中央経済社,2005,p.188-190)
・CSRにより求められる本質的な機能に焦点を当て、次のように定義する。経営活動のプロセスに社会的公正性や論理性、環境への配慮などを組み、アカウンタビリティを果たしていくこと。(谷本寛治「CSRと企業評価」『組織化学』,38-2,2004,p.19)
・企業組織と社会の健全な成長を保護し、促進することを目的として、不祥事の発生を未然に防ぐとともに、社会に積極的に貢献していくために企業の内外に働きかける制度的義務と責任。(水尾順一・田中宏司『CSRマネジメント』生産性出版,2004,p.1)
・CSRは、ステークホルダーの立場から、経済的価値だけでなく社会・環境業績を高めることで、企業価値を増大させようとする活動である。
(櫻井通晴『コーポレート・レピュテーション』中央経済社,2005,p.81)
・CSRは、マネジメントそのものを進化・革新させる概念として位置づけられていて、先進的企業の多くはCSRを巡る活動をメセナヤフィランソロピーにとどめず、講義の企業価値に結びつく活動として、経営の機軸の1つに捉え始めている。
(伊藤邦雄「CSRによるコーポレート・ブランド経営」,高厳+日経CSRプロジェクト編『CSR 企業価値をどう高めるか』日本経済新聞社,2004,p.272)」
CSRが注目されていることはわかったが、一体なぜここまで注目されるに至ったのであろうか。以下CSRの背景について詳しくみていこう。

2、CSRの背景
2-1、これまでの社会的責任とは 
 CSRという言葉が世の中に台頭してきたのは2000年以降であるが、実は企業に社会的責任を求める動きはそれ以前から存在している。 1960年代までは労使間紛争、1970年代以降は公害、環境保全問題を中心として企業の社会的責任はそれまで議論されてきた。
1970年、日本は「いざなぎ景気」と高度成長の影響で経済は大変好調であった。しかし、企業が戦後一貫して成長性ばかりを追い求める傾向にあったため、日本企業の成長主義に対して初めて批判が起こった時期である。その後、国際通貨危機、食料問題、石油危機と次々と問題が発生し、国内はインフレ、狂乱物価に陥ることとなった。それに対する石油業界の便乗値上げ、売り惜しみによって、企業批判はより激しくなり、この企業批判への対応として、日本企業は全産業レベルから個別レベルに至るまで様々なレベルで経営行動基準を定め、企業の社会的責任を果たそうとした。
しかし石油危機後日本経済が低迷し、不況になるにつれ企業の社会的責任の遂行は徐々に見られなくなっていった。
 1986年末には、日本は再び「平成景気・バブル景気」と呼ばれる景気拡大期間に突入した。日本はこの好景気を大いに享受し、飛躍的発展を遂げたのであるが、またしても企業の社会的責任が叫ばれるようになり、それを求める動きが活発化してきた。ここでは社会的責任という言葉に加えて、企業の社会貢献という言葉も生まれ、その後フィランソロピー活動が本格化した。 多くの企業が社会貢献活動に関する専門の部署を設け始め、一躍フィランソロピーブームとなる。
 しかしバブルが崩壊し不況に陥ると、またしてもメセナ、フィランソロピーといった社会貢献活動は見られなくなった。
 いざなぎ景気後も平成景気・バブル景気後も、好景気が去り、不況が訪れるとともに企業の社会的責任、社会貢献は影をひそめていっている。

2-2、CSRの台頭 
そして現在、第3の潮流としてまたしても企業の社会的責任が注目されている。それが今回のCSRブームである。このCSRブームが訪れた背景には、国際的背景と国内的背景が見られるため、順を追って説明していこう。
 
2-2-1、CSRの国際的背景
まず国際的背景として、その主な理由は日本企業の多国籍化が挙げられる。ビジネスのグローバリゼーションの進展によって、特定文化圏の価値観の強要や、国際間・地域間の貧富の差の拡大が懸念されるようになり、その結果欧米企業の動向が日本企業に与える影響は以前に比べ増してきている。世界的規模で市場の大競争が起きており、先進諸国に対して発展途上国やNGOから貧富の格差拡大、環境破壊への対策、先進諸国中心の国際貿易ルールなど様々な批判も起きている。
そこで企業活動における節度ある行動、国際的な原則や各種規格などを制定する必要性が生まれてきており、日本でも国際的な企業はこれに対応せざるを得ない状況になってきた。欧米の価値基準や法令にも気を配らなければならず、その際経済的な面だけではなく、その国での雇用、環境にまで責任範囲は及ぶ。ビジネスの多国籍化にはメリットも多いが、その分その国・地域への十分な配慮が求められている。
 
2-2-2、CSRの国内的背景
次に国内的背景だが、最大の要因は頻発する企業不祥事に対する社会の企業批判の行動の高まりであろう。消費者は企業に社会的公正性を求めている。従来の利益万能主義の風潮は是正され、節度ある企業行動、ビジネスの公正さや社会貢献などに顧客は目を光らせるようになった。食品偽装や粉飾決算が起きた場合には、消費者もそれ相応の対応をしており、厳しい社会の対応を見せつけられた企業の経営者は、企業存続のため社内体制の整備、企業を取り巻く利害関係者とのコミュニケーションの重要性を改めて悟ったと言えよう。
 また、外国人による機関投資家の日本株式所有の増加も関連している。経営陣の不誠実な企業行動はその企業の存続を揺るがしかねない。エンロン、ワールドコムといった大経営破綻を通して身をもってコーポレート・ガバナンスの重要性を理解したアメリカの機関投資家の株式所有が増加したことにより、従来より一層の企業の公正性が求められることとなる。
 現代の日本社会において、企業は大変大きな影響力を持っており、私たちの生活は企業なしではありえない。私たちの身の回りの出来事、物、全てが企業と密接に関わって成り立っている。岡本大輔教授は、「企業の影響力が小さかった時代には、企業は経済的効率のみを考え、自ら成長することだけを考えていられた。しかしその影響力が大きくなれば、経済的影響力ばかりでなく、社会的影響力も考えねばならなくなっており、その度合いの変化は計り知れないものがある。」と述べている 。これほどまでに企業が社会に与える影響が大きすぎる世の中になってしまった今、企業が自己の経済性ばかり追い求めていたのでは社会は混乱してしまう恐れがある。現代の日本企業の持つ影響力が大きくなりすぎたために、企業は社会的責任を果たしていく必要がある。

3、CSRとステークホルダー
背景から分かるように、現在の企業経営においてCSRは欠かせないものとなっている。企業を取り巻く利害関係者、すなわちステークホルダーに適切な対応を行ってCSR活動を遂行していくことが求められている。この章では、現代の企業経営において重要だと思われるステークホルダー、従業員、株主、顧客、取引先、地域社会、地球環境について取り上げ、それぞれのステークホルダーとCSRとの関係についてみていこう。

1)、従業員
企業が経営活動を行っていく上で、一番身近なステークホルダーと言えば従業員である。その企業を構成する従業員の働きがあってこそ、企業は存続、成長していくことができる。これまで従業員に対して企業が果たさなければならなかった責任といえば、雇用を維持し、安定した給与を支払うことであった。しかし近年では企業、従業員それぞれの価値観に変化が見られ、従来の考え方では不十分であるとの声が挙がっている。企業側では終身雇用を基本とする雇用制度、従業員側では1つの会社に一生勤め上げるという働くことに関する意識に変化が見られ、少子高齢化の影響もあって企業側は今後若い労働力、優秀な人材を確保するのがさらに懸念されている。人材確保、従業員の動機付けのために企業はワークライフ・バランス(仕事と私生活の両立)の実現支援、従業員の能力開発、ダイバーシティ(様々な働き手の活用)の推進といった従業員にとって魅力のある制度の実施、すなわち生活の豊かさ、従業員が働きやすい環境の実現に向けて努力している。

2)、株主
株主に対する最低限の社会的責任は安定的な配当金の支払いであるが、現在ではコーポレート・ガバナンス をめぐる議論が活発になってきた。これは企業の大規模化と関連しており、株式所有が分散化し、所有と経営の分離が進行している日本企業において、いかに株主の利益を守るかという考えに基づくものである。株主にとっての最大の関心は十分な配当金が支払われているかどうかであるが、経営情報が十分に公開されていない場合、どのように利益を使われているかわからない。経営者が自らの利益や企業のために利益を優先する可能性もある。よって株主視点で見た経営者の逸脱した行動を是正するという目的でコーポレート・ガバナンスが注目されている。
 また、投資家が投資先を選定する際に、「その企業が社会的責任を果たしているかどうか」を考慮する「社会的責任投資(Socially Responsible Investment:SRI)」という手法が広がってきた。企業が株主・投資家と良好な関係を築くためには経営に関する情報の開示は欠かせないものとなっている。

3)、顧客
企業は顧客に製品ないしサービスを提供し、その結果として便益を得ているため、顧客のニーズを満たすことは収益という見返りを企業にもたらすこととなる。前述したように食品偽装や粉飾決算、不祥事隠ぺいなど企業不祥事が多発しており、社会もそのような企業に対しては厳しい態度をとるようになってきた。信頼を築くためにも、顧客とのコミュニケーションをとり、顧客のニーズを把握する努力をしている。

4)、取引先
企業と取引先との関係は、企業と顧客と同じくらい密接な関係である。供給業者にとっての購入企業は顧客であり、共に企業の存続と成功を分かち合う関係にある。最近では環境に配慮した経営活動を行う企業や、環境に配慮した製品を製造する企業が増え、環境経営、グリーン調達の動きがよく見られるようになった。環境経営とは環境保全を経営方針に取り組み、地球環境への取り組みを経営戦略における重要な要素と位置づけして、企業の持続的な発展を目指す経営である。グリーン調達とは製品の原材料・部品や事業活動に必要な資材やサービスなどを、部品メーカーなどの供給業者から調達する際に環境への負担が少ないものから優先的に選択することを指す。これにより、企業は環境負荷の少ないサービス・製品の開発を促すことにつながる。

5)、地域社会
地域社会とは定義も曖昧で、地域住民、環境、取引先、銀行と対象は多岐に渡る。それゆえ数あるステークホルダーの中でも中途半端な認識になりがちであるが1970年代の公害問題を振り返るとないがしろにされてはいけない重要なステークホルダーの1つであることがわかる。企業として最低限の責任を果たすだけでなくNPOへの金銭的寄付、自社施設の市民への開放、ボランティア活動など経営資源を活用したCSR活動を行っていくことが、地域社会とうまくコミットメントしていくためにも重要である。

6)、地球環境
地域社会よりさらに規模が大きいステークホルダーとして地球環境が挙げられる。地球温暖化が話題になり多くの企業では環境に配慮した行動をとるようになってきた。数年前まではそれに対する資金も企業にとって負のコストと捉えられていたが、グリーンコンシューマーと呼ばれる環境に配慮する消費者が増加したことにより、環境対策は競争優位を得る大きな要因となっている。現在ではそういった経営戦略における重要な要素として環境を取り入れることを環境経営、または環境マネジメントと呼ぶ。
 また、エコファンド、SRIファンドの増加も今後企業に大きな影響を与えかねない。これらのファンドに取り組まれる企業は環境格付けの高い企業、CSR格付けの高い企業と評価を受け、市場価値の高まる可能性が高い。
 環境への配慮は企業にとって資金調達からサービス、製品の販売まですべてのプロセスに携わってきているので目が離せない。

4、CSR活動とその効果
CSRが現代の企業にとって無視できない大きな要因であることはわかったが、CSR活動とはただ単に企業の社会業績を高め、健全な経営体制を証明するためだけに行われているのであろうか?この章ではCSR活動を行うことによって得られる効果について見ていくこととする。
すでに多くの研究者がCSRに関する論文を発表しており、CSRは企業を取り巻くステークホルダー、そしてその企業自体に様々な影響を与えているという結果が出ている。従業員に対するCSR、株主に対するCSR、顧客に対するCSRと対象は様々であるが、CSR活動を行う際、誰のためにそのCSR活動を行っているかという点に着目すると、最終的に向けられている対象は全て“人”ではなかろうか。従業員、株主、顧客、取引先はもちろんのこと、地域社会、地球環境に対するCSR活動も、活動内容自体はそのコミュニティーに対して行っているものだが、すべての活動はその地域、環境で生きる人たちへのCSR活動であり、回り回ってすべての活動が人に帰ってくると考えることができる。
そこで本論文ではCSR活動とその効果を論じる際に、 “人”を切り口として見ていく。つまり、株主、顧客、取引先、地域社会、地球環境など、その企業の外部に位置する人たちを外部、逆に企業内部に位置する従業員を内部と定め、CSR活動におけるそれぞれの対象への効果を、“外部効果”、“内部効果”と定義する。以下各研究者のCSR活動による効果について見ていく。

4-1、CSR活動による外部効果
外部効果の研究として、以下のようなものがある。
岡本大輔先生は「企業評価+企業倫理」の中で、現代企業にとっての社会性は、収益性・成長性と同じレベルの企業目標として位置づけられるべきであると主張しており、アンケート調査により社会性は高業績にとっての十分条件とは言えないが、少なくとも必要条件ではあると実証している。同時に、社会性が5年後、10年後の経済性にもプラスの効果を発揮すると実証している 。
高巌教授は「CSRー企業価値をどう高めるか」の中で、日本経済新聞社が実施している環境経営度調査における総合スコアをもとにCSR活動における積極性がコーポレートブランド価値にどのような影響を与えているか検証した。その結果、CSR活動に積極的に取り組んでいる企業のコーポレートブランド価値は相対的に高いとともに、さらに効果的にコーポレートブランド価値を増加させていることを実証した。また、CSR活動がステークホルダーの不安要素を取り除く効果があることも実証した。よって環境経営に代表されるCSR活動はコーポレートブランド価値の創造に貢献していると述べている 。
櫻井通晴教授は「コーポレート・レピュテーション」の中で、ブラマーとパヴェリン[Brammer & Pavelin,2004]、レスニック[Resnick,2004]の研究を用いて、CSRとコーポレート・レピュテーションの関係、さらには企業価値との関連について研究している。コーポレート・レピュテーションとは「経営者および従業員による過去の行為の結果、および現在と将来の予測情報をもとに、企業を取り巻くさまざまなステークホルダーから導かれる持続可能な競争優位」であり、結論を述べると、トリプル・ボトムラインとして知られる経済価値・社会価値・環境価値の増大を図るCSRは、経済価値・社会価値・組織価値を含む企業価値の増大を目的とするコーポレート・レピュテーションと極めて密接な関係があることを指摘している 。
谷本寛治教授は「CSRと企業評価」の中で、CSRと財務的パフォーマンスとの関係を説明する理論は「スラック理論(Slack Resources Theory):余剰ファンドがあるからCSRを果たす余裕があるというもの」と「良い経営理論(Good Management Theory):捨ていくホルダーと良い関係を構築することで評価が高まる」の二つに区分できるとしている。そしてCSRを評価する市場が成熟すれば「良い経営理論」の妥当性が高まり、現在の論調ではこの流れが支持されていると指摘している 。
 
4-2、CSR活動による内部効果
 次にCSR活動が企業内部に与える影響について見ていく。
クレイグ・コンサルティングの小河光生氏は「企業の社会的責任と組織風土」の中で、CSR活動が社員のモチベーション換気につながると指摘している。
現在と昔では働くことに対する価値観に変化が見られ、従来のように金銭的報酬と出世だけでは従業員のモチベーションは喚起されない。今の日本の若者は、働くことを通じて市場で通用する知識や経験を身につけたい、自らの理想的な働きがいやスキル獲得が大きなモチベーション要因となっている。そこで小河氏は、現代の働き手を動機づける方法として、自己の成長、優秀な仲間に恵まれた仕事環境、仕事が世のため人のために役立っていることの三点を挙げており、それに関連したCSR活動を行うことで企業と社会にWin-Winの関係が築けると主張している。
そのようなCSR活動の例として、トヨタ自動車は社員がものづくりの技能を生かして、おもちゃの修理を無料で行うボランティア活動を展開している。また、資生堂は顔にあざのある女性が引きこもり状態になっていることが多いことに着目し、化粧に高度な技術を持つ社員に、特殊な化粧素材を持たせて、こうした女性に無料で化粧を行っている。こうしたCSR活動は、社員が自らの事業内容とスキルに自信を深めるだけでなく、社会に貢献し、人のために役立っているという喜びが生まれる。さらには、社会貢献できる環境を用意できる会社に対しても“誇り”を感じることができる。
以上のことから、小河氏は、CSR活動の究極的な目標は、企業の外向きのブランド向上に加え、内なるブランド向上、つまり社員のモチベーション喚起につながることと述べている 。
CSRの効果には上記のようなものが考えられている。CSR活動による効果が外部効果を中心とした企業価値の向上だけで終わってしまったら、CSRも背景で説明したこれまでの社会的責任ブームと同じように衰退していくものなのかもしれない。しかし現状を見てみると、衰退するどころか企業の関心は年々高まっていると言えよう。小川氏が指摘するように、CSR活動は内部への影響力が大きいためにCSRは存続しているのかもしれない。
そこで我々はCSRのもつ内部効果を研究すべく、以下従業員に対象を絞って論文を展開していく。



2、企業のCSRの捉え方とその効果
第一章で、CSRが現代の企業にとって無視できない大きな要因であることはわかった。
では、CSR活動を実際に行う企業はCSRをどのように捉えているのか。CSR活動とはただ単に義務として健全な経営体制を証明するためだけに行われているのであろうか。この章では企業のCSRの捉え方、CSR活動を行うことによって企業が得られる効果についてみていく。

1-1 CSR報告書
企業がCSRをどのように捉えているかを知るために有効なのが「CSR報告書」である。
CSR報告書とは各企業が自社のCSRへの取組みの内容、活動を内外に公表する目的で制作する報告書のことである。企業がCSR報告書を制作することは義務付けられてはいないが、CSR報告書を作成する企業は年々増えている。

1-2 各企業のCSRの捉え方
第一章で述べたとおりCSRの定義はさまざまである。当然CSRの捉え方も企業によって違う。しかし、各企業はCSRを捉える上で、必ず経営理念・企業理念との関係性に触れている。以下、CSR報告書を公開している企業のうちに40社を無作為に抽出して、企業ごとのCSRに対する捉え方をまとめたものであるのだが、その際に経営理念・企業理念の関係性から大きく三つに分類して表を作成した。
なお、経営理念と企業理念はともに組織としての企業が掲げるものである(1)ので本論文では同義とする。以下、本論文中では企業理念も経営理念として使う。

1-2-1  CSRを経営理念に基づくものと捉える企業
まず、CSRを経営理念に基づくものと捉える企業である。これらの企業は、CSRという概念が生まれる前から存在していた経営理念に基づいて、CSR活動を行うとしている。すなわち、経営理念という概念の中にCSRが存在しているのである。

表1 CSRを経営理念に基づくものと捉える企業
社名 CSRの捉え方
味の素グループ 経営理念に基づく
大塚製薬 企業理念をもとにCSRを行
IHI 企業理念をもとにCSRを行う
電通 企業理念に基づく
キヤノンMJ 根幹に経営理念がある
キリングループ 経営理念に沿って行う
トヨタ 基本理念との2本柱。基本理念をステークホルダーごとにまとめたもの
日本IBM 理念に基づくもの
三井物産 経営理念をもとに行う
ホンダ フィロソフィーに基づく*フィロソフィー=ホンダの経営理念
三菱重工 企業理念に基づく
ライオン 社是・経営理念・企業行動にそうもの
セブン&アイホールディングス 社是に掲げる「信頼される誠実な企業」を基本にCSRに取り組む
各企業のCSR報告書・ホームページをもとに筆者が作成

1-2-2  CSR活動を経営理念の実現する手段と捉えている企業である。
次にCSRを経営理念の実現する手段と捉えている企業である。これらの企業は、経営理念を実現するための実際の企業活動としてCSRを位置付けている。すなわち、CSR を企業・経営理念を具体化することと捉えているのだ。

表2 CSRを経営理念の実現する手段と捉えている企業
社名 CSRの捉え方
旭化成 企業理念の実現
花王株式会社 企業理念を実践するもの
カシオ 経営理念を実現すること
カルビー 理念実現の方針
KDDI 基本理念の実践
サントリーホールディングス 企業理念の実践
デンソー 基本理念を実現させる
東芝 企業理念の実現
シャープ 経営理念の実現
豊田通商 企業理念・ビジョンを実現すること
ニコン 企業理念の追求のため
日清オイリオ 企業理念の実現
日本郵船 企業理念の実現を目指すこと
ハウス食品 企業理念を社員一人一人の行動に翻訳
三菱自動車 企業理念を実践すること
三菱UFJフィナンシャル 経営理念の実践が原点
明治製菓 理念を実現→社会に貢献
雪印グループ 企業理念の実現
ユニチャーム 社是の実現
NECエレクトロニクス 企業理念そのもの
サッポログループ
基本理念を知らせる
各企業のCSR報告書・ホームページをもとに筆者が作成
1-2-3  CSRを経営活動の基盤と捉えている企業
そして、CSRを経営活動の基盤と捉えている企業である。これらの企業は1-2-1、1-2-2と異なり、CSRを経営理念との関係性ではなく、経営理念のもと行われる経営活動との関系を捉えているのである。ここでのCSRとは経営戦略そのものである。

表3 CSRを経営活動の基盤と捉えている企業
社名 CSRの捉え方
NTTドコモ 経営の根幹に
アサヒビール株式会社 企業活動の基盤
味の素グループ 企業経営そのもの
伊藤忠商事 CSRと一体化した事業展開。企業理念が源流
三菱地所グループ 経営の中心
各企業のCSR報告書・ホームページをもとに筆者が作成

1-3 本論文での捉え方
経営理念という観点から見た場合、CSRの位置づけは企業ごとに違いがあり、三分類されると述べた。しかし、CSRという観点から見た場合、経営理念はCSRの重要な要素であることが分かる。各企業が経営理念基づいたCSR活動を行うことで、経営理念を実現させ、さらには経営にまでCSRを組み込む。各企業の捉え方に細かな違いはあれども、CSRは抽象的な経営理念を具体化したものといっても過言ではない。
本論文は以下CSRを「経営理念を具体化したもの」と捉える。また、このようなCSRの捉え方を理念主導型のCSR(2)とも言う。

1-3-1経営理念
経営理念とは、経営活動に関して企業が抱いている価値観であり、企業が経営活動を推進していくうえでの指導的な原理である。経営理念問題の重要性とは経営理念を掲げることでなくして、これを企業の存在と活動の全様式に体現すること(3)である。すでに記述した通り本論文では「CSR=経営理念を具体化したもの」として捉えているので、梅澤正教授の「顔の見える企業」を参考に、CSR活動を、経営理念を実践することであると捉える。すなわち「CSR活動=経営理念を体現する行為」と捉える。
ここでの、体現するという語は一般に哲学・思想・理念・考え方といった観念を目に見える具体的な存在にすること(4)を指す。
1-3-2企業理念の浸透手段として
本論文では「CSR=経営理念を具体化したもの」、「CSR活動=経営理念を体現する行為」と捉えている。
ならば企業内外の人々はCSR活動を認識することにより、間接的にその企業の経営理念を認識することにつながる。このことから、CSR活動を行うことは経営理念を企業内外に浸透させるという側面も持つと考えられる。

(1)梅澤,
(2)水谷内ほか,2008,P122~P124
(3)梅澤,
(4)梅澤,
参考文献
「顔の見える企業」梅澤正、1994
「理念と戦略の経営学」水谷内徹也、内田康郎、2008

参考資料
味の素グループCSRレポート、2009
大塚製薬CSRレポート、2009
IHI CSRレポート、2009
電通、ホームページhttp://www.dentsu.co.jp/profile/csr/
キヤノンMJ CSRレポート、2009
トヨタCSRレポート、2009
日本IBM CSRレポート、2009
三井物産CSRレポート、2009
三菱重工CSRレポート、2009
ライオンCSRレポート、2009
セブン&アイホールディングスCSRレポート、2009
旭化成CSRレポート、2009
花王CSRレポート、2009
カシオCSRレポート、2009
カルビーCSRレポート、2009
KDDI CSRレポート、2009
サントリーホールディングスCSRレポート、2009
デンソーCSRレポート、2009
東芝CSRレポート、2009
シャープWEBサイトhttp://www.sharp.co.jp
豊田通商CSRレポート、2009
ニコンCSRレポート、2009
日清オイリオCSRレポート、2009
日本郵船CSRレポート、2009
ハウス食品CSRレポート、2009
三菱自動車CSRレポート、2009
三菱UFJフィナンシャルグループCSRレポート、2009
明治製菓CSRレポート、2009
雪印グループCSRレポート、2009
ユニチャームCSRレポート、2009
NECエレクトロニクスCSRレポート、2009
サッポログループCSRレポート、2009
NTTドコモCSRレポート、2009
アサヒビールCSRレポート、2009
味の素グループCSRレポート、2009
伊藤忠商事CSRレポート、2009
三菱地所グループCSRレポート、2009


2 CSRの効果
すでに多くの研究者がCSRに関する論文を発表しており、CSRは企業を取り巻くステークホルダー、そしてその企業自体に様々な影響を与えているという結果が出ている。本論文ではCSRを、経営理念を具体化したものであると述べた。それでは、企業理念としてのCSRが企業内外に浸透すると企業はどのような効果を得られるのだろうか。
効 果について述べていく前に、企業価値の重要性について考えていきたい。企業価値は、水尾順一氏によると経済業績と社会業績から構成されるという(注1)。 前者は企業活動の中でも売上など財務的な数値として表すことが出来る業績のことであり、後者はコンプライアンスや社会貢献などを行うことでステークホル ダーが企業に対して与えるイメージのことである。なお、ここでは経済業績のことを有形資産、社会業績のことを無形資産と呼ぶことにする。水尾氏の研究によ ると両者は表裏一体の関係にあるため、どちらかが欠けても企業の業績に悪影響を与えることに繋がる。つまり企業価値とは企業が持続的な成長を遂げる上で必 要不可欠な要素であるということができる。
以上を踏まえた上で、
①企業価値の主要な決定因子が、有形資産から無形資産へと移行していること
②無形資産の中核に位置するものがコーポレートブランドであること
この二点より、“コーポレートブランド価値の向上”という観点からCSRの効果をみていく(注2)。


2-1 コーポレートブランド
 では、コーポレートブランドとは一体どのようなものであるのか。一橋大学大学院の伊藤邦雄教授によると、コーポレートブランドとは「人々がその会社に対して抱くイメージを決定づける無形の個性」と定義している(注3)。
  コーポレートブランドの構成要素は大きく三つに分けられる。それは、経営者のビジョン、企業文化、顧客や株主が持つイメージである(注4)。しかしこの三 つは独立したものではない。経営者のビジョン(経営理念)が企業内で浸透し、それが企業文化として企業に定着すると、従業員の行動に一貫性が保たれるよう になり顧客や株主にも反映されるようになるのだ。つまりこの三要素がうまくかみ合うことでコーポレートブランドを創造できるということである。
次 に、コーポレートブランドはどのような意義があるのだろうか。前述したようにコーポレートブランドは無形資産の中核に位置し、無形資産は企業価値をを決定 する主因子である。ここからコーポレートブランド価値を向上させることは企業価値を高めることに繋がることがわかる。企業価値を高めるためにも、他社と差 別化された個性を形成し、ステークホルダーにより魅力に感じさせるようなコーポレートブランドを創造することが求められる。

2-2 CSRとコーポレートブランド
 前節では、コーポレートブランドの要素と意義について述べたが、これらをを踏まえ次はCSRがどのようにコーポレートブランドに繋がるのかを考える。

2-2-1 CSRのコーポレートブランドへの働き
 CSRがコーポレートブランドに繋がるには二つの経路があるといえる。まず一つ目は、ステークホ
ルダーをひきつけることでブランド価値に通じる経路である。CSRを行うことでステークホルダーに良いイメージや評判・魅力を与え、より当該ブランドを選択するようになる。二つ目は、取引を成功させることでブランド価値を高める経路である。こちらはCSRによって消費者団体などのターゲットになるリスクを減らし、ステークホルダーの不安要素を取り除きより信頼性のある取引を促すことができる。これらの経路を通して、CSRはコーポレートブランドの要素である「顧客や株主のイメージ」
にプラスの作用を与え、ブランド価値向上をもたらすことがいえる。


2-2-2 CSRを浸透させるために
 しかし、CSRを行えば必ずしもコーポレートブランドに結びつくというわけではない。CSRを行っているということをステークホルダーに認知させることでその経路を通じ、効果が得られるわけであるが、日本人には陰徳を美とする文化が根付いているためひけらかすのを嫌うからである。この問題を解決するためにも、これまで述べてきたように企業はCSRを 経営理念やビジョンと結びつけることでステークホルダーへ伝えていくことが重要なのである。その伝達方法としては二種類が挙げられる。一つ目は、企業が直 接伝える方法だ。例えば工場見学や株主総会などといった機会を利用してステークホルダーへ伝えていく。もう一つは媒体を利用して間接的に伝える方法だ。こ ちらは、CSR報告書や環境報告書などの冊子、またホームページを利用することで伝える。「CSR元年」である2003年前後でCSR報告書類を発行し始めた企業が多く、現在は後者による伝達方法が主流であると考えられる。

2-3 問題提起
 前節までから、CSRを行いそれをステークホルダーへ浸透させることで、コーポレートブランドという企業価値決定の主因子の価値を高めることを示した。では、第二章でも述べたようにCSRが注目を浴びブームが存続する理由は果たして企業価値向上のためだけなのであろうか。以下の章ではその他の可能性について検討していく。




参考文献
伊藤邦雄・日本経済新聞社広告局 編 (2002) 『企業事例に学ぶ実践・コーポレートブランド経営』 日本経済新聞社
岡本大輔・梅津光弘 (2006) 『企業評価+企業倫理 CSRへのアプローチ』 慶應義塾大学出版会
古室正充・白潟敏朗・達脇恵子(編著) (2005) 『CSRマネジメント導入の全て』 東洋経済新報社
高巌・日経CSRプロジェクト編 (2004) 『CSR 企業価値をどう高めるか』 日本経済新聞社
日本経済新聞社 編 (2004) 『会社の価値はトップで決まる』 日本経済新聞社
水尾順一 編著 (2003) 『ビジョナリー・コーポレートブランド』 白桃書房

(注1)水尾 (2003) pp252-253
(注2)伊藤 (2004) p34
(注3)伊藤 (2004) p275
(注4)原 (2002) p64



3 CSRとモチベーション

 第2章において、企業という組織に対してCSRが浸透すると、組織にメリットがあることはコーポレートブランド価値を用いて証明された。この章では、企業という組織をさらにクローズアップし、従業員という個人に対してCSRを浸透させるとどのようなメリットがあるのかということについて述べていく。

3-1 組織から個人へとクローズアップする意義

 我々が企業の中の従業員に焦点を当てた理由は、伊藤健市氏の先行研究を踏まえたためである。その中で、企業経営に必要な経営管理は下の図に見られるように四輪駆動の車の運転に例えられている1。



<自動車の図>



 図では、後輪の生産力と財務力、前輪のR&Dと販売力を動かす車の心臓ともいえるエンジンに当たるものが「ヒト」とされている。この例から分かるように、ヒトは企業の中心に位置し、欠かせない存在となっている。また、ここでヒトとは企業の構成員を指す。以上から分かるように、従業員は企業の原動力であり、重要な役割を担っているのである。したがって、我々はその個人に着目して本論文を進める。

3-1 従業員に対するCSRの浸透

 第2章でも示した通り、経営理念とはトップが提示する企業の方針を定めたものであり、企業に属する者全員に認知されなければならないものである。なぜなら、トップの企業方針がボトムにまで伝わらなければ、企業が1つの方向に向かって進んでいくことが困難になってしまうからだ。ボトムはトップが提示した経営理念をCSRをとおして認知する必
要がある。そこで、以下では従業員に対するCSRの浸透についてのいくつかの先行研究を紹介し、そこから要素を捉えて従業員に対するCSRの浸透に対する理解を深める。

 梅澤正氏の先行研究では、経営理念を浸透させるとは経営理念を確立することであるとされている。経営理念を確立するためには、まず社員全員が経営理念の内容をよく知っており、その精神を持っているということが重要であるとしている。これを一言で経営理念の共有とした。つぎには一人ひとりの社員も、そして企業全体も、経営理念を実践しているということが重要であるとしているしている。企業のことについて言えば、その意思決定の内容や経営戦略は当然のことながら、事業の内容・扱う商品や製品・研究開発の対象・マーケティング・社内人事など、企業の存在と活動の全体が経営理念に沿っており、経営理念を具現化したものでなければならない2。
 水谷雅一氏の先行研究ではこれからの企業の経営幹部はもとより従業員一人一人に至るまで、この難しいが実現しなければならないCSRという新しい価値観を、常に身につけ、また、身をもってそれを日常業務活動の中で実現しようとする意識的努力が期待されているとしている3。

 以上より、CSRを浸透させるための要素を抽出すると、以下の要素が抽出される。
①従業員各々がCSRを通して経営理念を認知していること。
②従業員各々がCSRを通して経営理念を共有すること。
③企業内部で従業員によって経営理念すなわちCSRが実践されていること。
したがって、本論文において従業員に対するCSRの浸透とは「従業員各々がCSRをとおして経営理念を理解し、それが従業員間で共有され、実践されていること」と定義する。

3-2 従業員に対するCSR浸透によるメリット

 我々は従業員という個人に対してCSRを浸透させると、従業員のモチベーション向上につながるというメリットがあるのではないかと考察する。なぜなら、小河光生氏の先行研究4や日経リサーチ5でも示されているように、CSRが従業員のモチベーション向上につながるといったことが近年議論されているからだ。以下の図は、それをグラフを用いて表したものである。



<理想的な仕事の図>






<モチベーションと誇りの関係図>





 近年では、働く人々の価値観が多様化して、仕事をする意義が以前とは異なってきた。つまり、以前は昇給や出世といった外的報酬が重視されていたのに対し、近年では自己実現などの内的報酬が重視されてきたということだ。こういった内的報酬に対しこの考察については次の3-2において述べていく。

注釈                                      
1 伊藤健市『労務論講義』晃洋書房、1996年、p.115
2 梅澤正『顔の見える企業~混沌の時代こそ経営理念』有斐閣、1994年
3 水谷雅一『経営倫理学のすすめ』丸善、1998年
4 小河光生「現場の社員が元気になる会社~CSRと人材活性化~」
        『CSR 企業価値をどう高めるのか』日本経済新聞社、2004年
5 日経リサーチ
          『社会における企業のあり方に関するアンケート』日本経済新聞社、2005年
参考文献                                    
小河光生「“仕事の誇り”を生むCSR~CSR活動を社員の働きがいに連動させる方法~」     『月刊人事マネジメント』株式会社ビジネスパブリッシング、6号、2008年、専門解説
寺崎文勝「やりがいに応える人事~やる気・達成感・モチベーションを刺激せよ~」
『月刊人事マネジメント』株式会社ビジネスパブリッシング、6号、2008年、専門解説
松村洋平編著、根本孝・茂垣広志監修
『企業文化 コーポレートカルチャー 経営理念とCSR』学文社、2006年
高巌+日経CSRプロジェクト編
『CSR 企業価値をどう高めるのか』日本経済新聞社、2004年
藤芳誠一『経営管理学事典』泉文堂、1985年
内閣府『国民生活における世論調査』、2003年


3-2では、モチベーションの説明をしたうえでCSRと従業員のモチベーションとの関連を述べていく。

2-1 モチベーションとは
モチベーション(motivation)とは、組織メンバーに対する仕事への意欲を喚起する働きのことであり、一般的に言う「動機づけ」に他ならない。 今、企業において従業員を動機づけることは人的資源管理の分野で非常に重要な位置を占めている。近年多発する企業不祥事の中、従業員は、ただ上から指示さ れたことを行うだけでなく、自ら考え行動することが求められているのである。つまり、従業員の仕事意欲を高め、自発的に行動を起こすことのできる環境作り が急務であると言えよう。例えば、Robbins(1997)は「モチベーションとは、何かをしようとする意志であり、その行動ができることが条件付けと なって、何らかの欲求を満たそうとすることである」と定義している。つまり、モチベーションをアップさせるとは、従業員の欲求を喚起するのみならず、その 欲求を満たそうとする働き、つまりそれを行動に反映させることまでも含む必要があるだろう。次節以降ではモチベーション理論を用いて、従業員にどのような 欲求があるのか、またその欲求がどのように行動に結びつくのかについて考察を進めたいと思う。

2-2 モチベーション理論とは
モチベーション理論は経営学では、「職場において人々にやる気を起こさせ、職務の生産性を高めるにはどうしたら良いか」の研究として位置づけられる (1)。ここではキャンベル(Campbell,J.P.et al.1970)による代表的なモチベーション理論の分類に従い、内容理論と過程理論によるアプローチで論を進めたいと思う。内容理論(content theory)とは、人間の欲求の内容に関する研究であり、人間の行動に影響を与える変数を明らかにするものである。過程理論(process theory)とは、欲求によって行動が喚起され、持続し、やがて終わる過程に関する研究であり、その過程を説明する変数を明らかにするものである。これ らは相互補完的で、どちらも用いることによって、初めてモチベーションアップについての説明となる。そこで、私たちは内容理論と過程理論の両側面からモチ ベーションアップを論じていきたい。
図1 モチベーション理論の分類


2-3 欲求とCSR
ここでは、人間にどんな欲求が存在するのかについて、内容理論を用いて説明したい。内容理論の代表として、マズローの欲求段階説がある。これは人 間の欲求を五段階に分け、下位の欲求が満たされて初めて上位の欲求が現れるとしたもので、その五段階とは、下位から①生理的欲求②安全欲求③所属欲求④承 認欲求⑤自己実現欲求である。生理的欲求とは、人が生きるために不可欠なもので、例えば食欲がある。安全欲求とは、心身の安全を求めることで、例えば雇用 の安全がある。所属欲求とは、まわりの人々と心の通い合う関係をつくりたいというもので、家族、サークル、企業などに所属することが挙げられる。承認欲求 とは、まわりから評価を得たい、認められたいという欲求であり、人事評価などがある。そして最後に求めるのが、自分を最大限に表現し、自己を実現したいと いう自己実現欲求である。 現代社会では、自発的な行動が求められるため、自己実現欲求が重要であると言えよう。つまり、企業は従業員の自己実現欲求を喚起し、「個人が自由に意思決 定できる自己実現空間」(下崎,1991)をつくることによってモチベーションアップの基盤をつくることができる。
図2 マズローの欲求段階説

次に、このマズローの理論を従業員の欲求に当てはめ、本論文のテーマに沿って、CSRによる欲求への影響について述べたいと思う。ここで、従業員 について考えるにあたり、生理的欲求と安全欲求についての議論は必要ないと考えられる。なぜなら、従業員は企業に働くことで、最低限の賃金をもらい、安定 を得ていると考えるからだ。しかし、所属欲求に関して、「所属」という定義について考えると、それは単に企業に属することのみならず、企業の経営理念に属 することに他ならないと考えられる。つまり、トップがCSRによって経営理念を従業員に認知させ、従業員はそれを認知することによって初めてその企業に属 することができるのである。この「ツールとしてのCSR」が、所属欲求を満たすために欠かすことのできない要素だと私たちは考える。更に、CSRは承認欲 求の充足にも効果をもたらすであろう。CSRはその直接的な対象から感謝され、評価されるだけでなく、社会全体からの評価も得ることができる。「あなたの 企業は社会に貢献していて、素晴らしいですね」といった評価は、従業員の「誇り」にもなるだろう。このようにして承認欲求が満たされることで、最後に自己 実現欲求が現れる。これによって、従業員は自発的に行動し、自分の力を存分に発揮した「活気ある」職場を作り上げるだろう。そして、そのような職場に「働 きがい」が生まれ、「自分の成長」も見出すことができるだろう。

2-4 行動とCSR
前節では、従業員の欲求について説明した。しかし、その欲求が行動に結びつかない限り、それはモチベーションアップとは言い難い。そこで本節では、そのよ うな欲求がどのように行動に結びつくかについて、過程理論を用いて説明したいと思う。代表的なのはブルームの期待理論である。これは、「人間は様々な選択 肢の中で自分にとって最も価値・効用が高い行動を選ぶ」とした理論である。ブルームはその価値・効用を、誘意性(Valence)と期待 (Expectancy)の積和で示されるとし、人間の行動選択を説明しようとした。つまり、その行動の結果が魅力的であればあるほど(誘意性)、その結 果がもたらされる確率が高ければ高いほど(期待)、その行動に駆り立てられる可能性が高くなるということである。ここでは、誘意性を高める手段として、認 知的動機づけを取り上げたい。人間がその行動に魅力を感じるかという問題は、その個人が行動遂行の前に想起する認知に大きくかかわっている。つまり、この 個人が持つ認知やその構造(認知構造)に刺激を与えることで、誘意性を高めることが可能なのである。
CSRはこの認知的動機づけの働きも担うことができる。トップはCSRによって経営理念を従業員に認知させることで、経営理念というフィルター を通した「目標」を従業員に持たせることができる。目標とは「個人が成し遂げようと試みるものであり、行動の対象となるもの」である(2)。従業員に目標 を付与することによって、認知構造に刺激を与え、行動の誘意性を高めることができる。つまり、行動を起こす際に目標が想起され、行動の指標になることで、 初めて人は動機づけられるのである。
これは一般に言う目標管理であり、マクレガーは目標管理を「部課が企業の目標に向かって努力することにより、自分自身も<最大>に自己の目標を 達成できるような環境をつくりだすことである」(McGregor,D.1960,邦訳p.69)と定義づけている。つまり、目標管理によって、個人が自 己実現欲求を満たすのを促すことができるのである。
また、ドラッカーによれば、目標管理は個人に目標を提示するに過ぎず、その達成については個人に委ねられている。個人はその目標を達成するために、自発性・創造性を発揮し、自己実現欲求を満たすことができるのである。
このように、CSRによって経営理念を認知させることで、従業員の目標づけとなり、従業員の認知構造に影響を与えることができる。これによって、求められる行動の誘意性を高めることができ、行動を喚起するのである。

2-5 CSRとモチベーション
上記から、CSRには従業員のモチベーションをアップさせる働きがあると言える。一つには、CSRは従業員の欲求を満たすことができ、従業員のよ り上位の欲求を喚起することで、自己実現を促すことができる。更には、CSRによって経営理念を認知させることで、それが欲求を実現する行動に大きな価値 をもたらし、行動を喚起することができる。これらの働きが相まって従業員のモチベーションがアップすると言える。

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注釈

(1)下崎千代子,『現代企業の人間行動』,1991, p3

(2)南隆男 他『組織・職務と人間行動―効率と人間尊重との調和―』ぎょうせい,1992,p66

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参考文献

Robbins,Stephen P.,Essentials of Organizational Behavior 5th Edition,Prentice-Hall,1997. (高木晴夫監訳 『組織行動のマネジメント』 ダイヤモンド社、1997年)

J. P. Campbell, M.D.Dunnette, E. E. Lawler iii,and K. E. Weick. Jr, Managerial Behavior :Performance and Effectiveness, McGraw-Hill Inc, 1970.

Locke,E.A.&Latham,G.P. Goal Setting,Prentice-Hall,Inc.,1984.(松井賚夫・角山剛訳『目標が人を動かす:効果的な意欲づけの技法』ダイヤモンド社、1984)

Maslow,A.H.,(1954)Motivation and personality ,Harper&Row.(小口忠彦訳(1987)『[改訂新版]人間性の心理学』産能大学出版部)

V. H. Vroom, Work and Motivation, John Wiley &Sons Inc, 1964/坂下明宣・榊原清則・小松陽一・城戸康彰訳『仕事とモティベーション』千倉書房、1982.

McGregor,D.The Human Side of Enterprise,McGraw-Hill,Inc.,1960.(高橋達男訳『企業の人間的側面』産業能率短大出版部,1966)

Drucker,P.F. The Practice of Management,Harper,1954.(現代経営研究会訳『現代の経営』自由国民社、1956)

下崎千代子『現代企業の人間行動』,白桃書房,1991.

南隆男 他『組織・職務と人間行動―効率と人間尊重との調和―』ぎょうせい,1992.

田中雅子「従業員を活かす組織づくりの要請―モチベーションを核とした組織と個人の新たな関係―」『同志社政策科学研究』第6巻,pp.89-100.

小河光生「“仕事の誇り”生むCSR~CSR活動を社員の働きがいに連動させる方法~」『月刊人事マネジメント』2008年6月号,pp.31-45.



5 CSR、ステークホルダーと従業員のモチベーション
CSRは1章で述べたとおり、6つのステークホルダーごとに分類することができる。すなわち、従業員・株主・顧客・取引先・地域社会・地球環境である。それでは、どのステークホルダーを対象にしたCSRが、従業員のモチベーション向上にもっとも影響するのであろうか。この命題に対して、ホーマンズの交換理論とアダムスの公平理論を用いて考えてみる。この2つの理論は下崎教授によれば職務動機づけにおける認知系アプローチの認知的比較理論としてとらえられている。このことからも、本論文ではこの命題に対して従業員の認知とモチベーションという視点からアプローチすることにする。

5-1 ホーマンズの交換理論
ジョージ・キャスパー・ホーマンズ(George Casper Homans)はアメリカの社会学者である。彼はその著書「Social Behavior: Its Elementary Forms (1961)」で、一般に交換理論と呼ばれる理論を展開している。これは、「社会的関係において人間は自己の提供したものと他者から受け取るものとが近郊状況にあれば社会的関係は続けられるが、不均衡状況であればそうした関係は継続されない」(下崎千代子、1991)という理論である。つまり、社会的関係はいわゆるギブ・アンド・テイクの関係にある。そして、この社会的関係の均衡・不均衡が動機づけと関連すると述べたのが、アダムス(Adams, J. S.)である。

5-2 アダムスの公平理論
J.ステイシー・アダムス(Adams, J. S.)は公平理論(Equity Theory, 1965)を提案した。
公平理論を簡単に説明すると、社会的活動においては、自己の提供したもの(交換関係に投入したもの, input)と他者から受け取るもの(交換関係から得たもの, outcome)という二つの変数の大小関係が成り立っている。これを他者と比較可能にすべく、アダムスは以下のような数式を導いている。

〖O_p/I〗_p<〖O_a/I〗_a "   ・・・①"
〖O_p/I〗_p>〖O_a/I〗_a   ・・・②

この式では、O_p 、O_aはそれぞれ自己に対するアウトカムと比較他者に対するアウトカムを、I_p 、I_aはそれぞれ自己のインプットと比較他者のインプットを表す。
上の式において、①はアウトカム対インプット比率が他者より低いことを示し、②はアウトカム対インプット比率が他者より高いことを示している。
人は、この大小関係を均衡関係に是正しようと行動し、生じている不公平を解決しようとする。ただし、自らのアウトカム対インプット比率が他者よりも優位の場合、上の式では②の場合は、必ずしも均衡状態に是正しようと行動するわけではない。それはたとえば、個人が他者よりも小さな努力で他者よりも高い賃金を得ている場合、必ずしもその個人は努力量を倍増させたり、賃金報酬の受け取りを自粛したりはしないということである。
アダムスは公平理論において、この生じている不公平に対して人がとる解決方法を6種類提案している。

Ⅰ、自己の投入量(インプット)を変える。
過報酬状態・・・アウトカムに対し、インプットを増大。
低報酬状態・・・アウトカムに対し、インプットを減少。

Ⅱ、自己の結果(アウトカム)を変える。
過報酬状態・・・報酬(アウトカム)を減らす。ただしこれは実際には考えづらい。
低報酬状態・・・報酬(アウトカム)をあげる。

Ⅲ、自己のインプットとアウトカムの認知をゆがめる。
Ⅰ、Ⅱのような現実の変更が困難ならばインプットやアウトカムを過大評価したり、過小評価したりして、認知をゆがめる。

Ⅳ、その場を離れる。
Ⅰ~Ⅲが困難な場合、退職・転職・離職等を行う。

Ⅴ、他者に対して働きかける
他者に対して、Ⅰ~Ⅳを働きかける。

Ⅵ、比較の対象を変える。

以上のような6つの解決方法によって、人は不公平の是正を行おうとする。

5-3 従業員にとってのCSR
本論文では、モチベーション喚起の対象を従業員においている。この従業員にとってのCSRを考えたとき、CSRは従業員にとっての目的とはなりづらい。彼らには、それぞれ自分の業務が存在し、こうして分け与えられた仕事をこなし成果を残すことが、従業員にとっての真の目的である。彼らにとってのCSRとは、あくまで企業が主体となっている行為であり、そのそれぞれの従業員にとっては、CSRは副次的な存在にすぎない。従業員にとって、日頃の目標は自らの営利活動の遂行とそこから結果を獲得することであり、具体的な仕事はこの目標に基づく営利活動そのものであることに注意しなくてはならない。

5-4 CSR、ステークホルダーと従業員のモチベーション
前述したように、CSRは従業員にとってあくまで副次的な目的となりがちである。この点から、各ステークホルダーに対するCSRと従業員のモチベーションの関係をホーマンズの交換理論とアダムスの公平理論から考える。前述したように本論文ではステークホルダーを従業員・株主・顧客・取引先・地域社会・地球環境の6分類としている。
まず、従業員に対するCSRを考える。従業員に対するCSRは、各個人にとってはそのまま外的報酬となり得る。企業はCSRを従業員に対する外的報酬と認知せず、あくまで企業にとってのCSRの定義は1章で述べたとおりであっても、結果的に従業員に対して働きやすい環境を提供するように努力することは、従業員にとっては外的報酬のようにとらえられてしまうのも事実である。よって、交換理論と公平理論においては、従業員に対するCSRを従業員は、普段の業務、つまり企業へのインプットをより行いやすくするための外的報酬、つまりアウトカムと認識するのである。つまり、企業側が従業員からのアウトカム(・・・・・・)をより獲得するための、必要なインプット(・・・・・)が従業員に対するCSRと従業員は認知する。ここに交換理論におけるギブ・アンド・テイクの関係が成り立っており、従業員は目に見える企業からのアウトカムに対して、インプットを上げようとする、すなわち、アダムスが示した解決方法における自己の投入量(インプット)を変える方法を選ぼうとし、この点従業員の有効なモチベーション向上を見ることができる。
次に、株主・顧客・取引先に対するCSRを考える。この3つに共通する点として、従業員が直接接触する可能性が十分に考えられることがあげられる。よって、この3つのステークホルダーと従業員の関係は、比較的近いと言える。従業員が仕事をすれば、この3つのステークホルダーとかかわる機会は多く、自らのインプットの対象にもなり得る。株主を無視した活動をすることは難しいし、顧客は直接営業の対象になるし、取引先も同様である。逆にこの3つのステークホルダーに対し、大きなインプットを実現できれば、これらのステークホルダーから得るアウトカムもまた大きくなることが期待できる。有効なインプットし、それがこの3つのステークホルダーに評価され、そしてこの結果、直接的に、ないしは自分の企業を通して、アウトカムとして個々の従業員に帰結するのである。もし仮に、企業がこれら3つのステークホルダーに対し、有効なCSRを行ったとすれば、それは結果としてこれらのステークホルダーに高評価を与えることができ、段階は踏むにしても個々の従業員にアウトカムをもたらすことが期待できる。ゆえに、企業がこれら株主・顧客・取引先という、従業員にとって比較的近いステークホルダーに対するCSRを実行することは、ブルームの期待理論でいう期待(Expectancy)を向上させることができ、結果としてモチベーションが上がるのだ。ただし、従業員に対するCSRが、直接的に従業員の外的報酬と従業員自体に認知されるのに対し、株主・顧客・取引先に対するCSRは、段階的に従業員に認知されることと、期待という可能性である。このことからして、従業員のモチベーション向上に関して、従業員に対するCSRよりも株主・顧客・取引先に対するCSRの方が影響は低いと考えられる。
最後に地域社会・地球環境に対するCSRを考える。これらのステークホルダーは従業員からは最も遠い存在である。もちろん、各従業員が地域社会や地球環境のことを真に思って、身近さを意識しながら日々働いていることも考えられる。しかし、従業員の日々の仕事(インプット)とアウトカムという視点で考えれば、従業員と地域社会・地球環境は他のステークホルダーに比べて遠い存在である。企業が地域社会・地球環境に対するCSRを行っても、そのアウトカムが個々の従業員に帰するのには時間がかかると考えられるし、認知も困難になる。たとえば、サハラ砂漠で地球環境のために植林を企業が行ったとしよう。しかし、これが実際に砂漠化防止という成果(アウトカム)を企業にもたらすのには数十年という時間が必要である。さらに、こうしたアウトカムを各従業員が個々人のものとして認識することは難しい。というのも、日々の仕事と地域社会・地球環境に対するCSRがもたらすアウトカムの関係性がないからだ。日々の仕事とアウトカムにおいて、ブルームの期待理論における期待かなり低い。は前述してきたとおり、従業員は地域や地球のために、少なくとも第一義的には働いておらず、よって、従業員・株主・顧客・取引先に対するそれぞれのCSRからすれば、従業員は地域社会・地球環境に対するCSRから得られるアウトカムは低いと認識する。
このように、各ステークホルダーに対するモチベーションの向上は、本論文の主体である従業員との距離と強い関係性があると考えられる。この距離の関係を図示したものが下図である。

図5-4-1 従業員と各ステークホルダーとの関係



図5-4-1では従業員と各ステークホルダーとの関係と距離を表している。また、矢印の長さが長くなるほど、アウトカムの距離は長くなり、従業員にとっては認知しづらくなる。よってモチベーションへの影響も小さくなる。図5-4-1をみても、地域社会・地球環境は従業員にとって遠い存在であり、直接的でないことがわかる。
以上のことを踏まえて、本論文ではステークホルダーを以下の3つに分類することができる。

α;従業員
β;株主・顧客・取引先
γ;地域社会・地球環境

また、アダムスの公平理論の式を応用して、以下の式を導くことができる。

O_α/I>O_β/I>O_γ/I  ・・・③

③式で、Iは従業員が日々仕事をしているインプットを、O_αは従業員(α群)に対するCSRから従業員が得られるアウトカム、O_βは株主・顧客・取引先(β群)に対するCSRから従業員が得られるアウトカム、O_γは地域社会・地球環境に対するCSRから従業員が得られるアウトカムを指す。また、③式から

O_α>O_β>O_γ  ・・・④

を得て、結果としては単にα・β・γの各群に対するCSRから従業員が得られるアウトカムの大小関係になる。
よって以上のことから、従業員のモチベーションの向上につながるのは、αに対するCSRがもっとも大きく、以下βに対するCSR、γに対するCSRの順になることがわかる。これを実証分析によって証明する。

Social Behavior: Its Elementary Forms (1961)
下崎千代子、1991
Adams, J. S. Equity Theory, 1965
Vroom,V.H. 1964,邦訳






5 仮説
以上の理論構築により、以下の仮説を導いた。

5-1-1
CSRを行っている企業の従業員モチベーションは高い

5-1-2
CSRの規模が大きい企業の従業員モチベーションは高い。

ここでいう規模が大きいことは、各種CSRに対して、ある一定以上は力を入れていることを指す。

5-2
CSRをステークホルダーごとに分類した結果、各ステークホルダーに対して、企業が従業員に身近なCSRを行うほど、従業員の高いモチベーションを実現することができる。


6 実証分析
6-1 アンケートの実施
分析に先立って、営利企業に属する一般の従業員に対してアンケートを実施した。実施方法はウェブアンケートサイトの開設と紙媒体による直接的方法の2つを用いた。紙媒体として使用したアンケートは本論文の最後に掲載してあるので、参照していただきたい。また、岡本大輔研究会16期生三田祭論文作成Cチームの班員の知り合いをたどり、もしくは岡本大輔研究会のOB・OGの方々にご協力を仰ぎ、アンケート対象に該当する社会人の方々にアンケートを依頼した。結果102の回答を得て、その中で有効な回答数は101であった。
アンケートは、まず業種・業界を任意で回答していただき、各企業が同業他社と比べて、各ステークホルダーに対するCSR活動をどれくらい行っているかを尋ねた。さらに、各企業全体の雰囲気を職場の活気、仕事にやりがい、企業への誇り、チャレンジ精神、成長機会という5つの項目によって尋ね、これを各企業のモチベーションの度合いとした。以上、全29の項目に対し、1~6の数字から回答者の企業に最も近いものを選んでいただいた。
なお、仮説5-2の実証分析の手法として使った因子分析 ではCSR分野の質問に対して以下のような因子を抽出している。

表6-1-1
(1-1.等の番号はアンケート番号を指す)


この結果、6つの因子を抽出している点でアンケート項目の妥当性を示す。さらに因子負荷量を見ると、抽出された各共通因子とアンケート項目の変数には十分な相関が存在する。なお、顧客の因子は独立した因子として示すことができなかった が、4-4で言及したように、顧客と取引先は同じβ群としてみることができるので、この点は問題ないと判断した。


6-2 分析の手法
得られた回答をそれぞれ一次集計し、線形の単回帰分析、重回帰分析、因子分析を用いて分析を行った。各仮説に対する、分析手法の詳細は以下のとおりである。

6-2-1 仮説5-1-1に対する実証分析の手法
仮説5-1-1は、「CSRを行っている企業の従業員モチベーションは高い」ということである。これは本論文においてはメインの仮説である。この仮説ではまず、一次集計によって得られた各企業のCSRの度合いの和を説明変数とし、各企業のモチベーションの度合いの和を被説明変数とした。具体的には、アンケートのCSRに関する質問に対して得られた点数をすべて足し、モチベーションに関する質問の対しても同様とした。これによって得た説明変数と被説明変数を用いて、線形の単回帰分析を行った。使用したソフトはMicrosoft Office Excel 2007である。

6-2-2 仮説5-1-2に対する実証分析の手法
仮説5-1-2は、「CSRの規模が大きい企業の従業員モチベーションは高い」ということである。この仮説ではまず、一次集計におけるCSR分野での回答で、4ポイント以上の得点を回答したものの数の総和を説明変数とし、モチベーションに関しては6-2-1と同様に各企業のモチベーションの度合いの和を被説明変数とした。これによって、CSRの規模が大きい企業、すなわち各種CSRに対して、ある一定以上は力を入れているものを抽出した。一方で、様々なCSRのなかでも、企業はやっているだけでそれほど力をいれていないCSR、すなわち広く浅く行われている3ポイント以下のCSRをカウントしないことで、企業が行っているCSRの規模を区別し、各企業が行う、規模の大きいCSRの個数を数え上げた。なお、CSR分野の回答で、4ポイント以上の得点を回答したものを抽出した理由は、今回の選択肢1~6の回答基準では4以上で当該の質問項目に対して肯定的な見解を示していると判断できるからである。この仮説においても、この方法で得た説明変数と被説明変数を用いて、線形の単回帰分析を行った。使用したソフトはMicrosoft Office Excel 2007である。

6-2-3 仮説5-2に対する実証分析の手法
仮説5-2は、「CSRをステークホルダーごとに分類した結果、各ステークホルダーに対して、企業が従業員に身近なCSRを行うほど、従業員の高いモチベーションを実現することができる」ということである。この仮説ではまず、CSR分野において各ステークホルダーに対するCSRの度合いの和を求めた。さらにここで得た和を基準化して6つの説明変数を得た。一方で、各企業のモチベーションの度合いの和を求めた。そしてさらにここで得た和を基準化して被説明変数とした。この説明変数と被説明変数を用いて重回帰分析を実施した。使用したソフトはMicrosoft Office Excel 2007である。また、説明変数の因子を確実なものとするために、CSR分野の各変数に対して、因子分析を行った。使用したソフトはSPSS Statistics 17.0である。なお、因子分析の手法は、重みなしの最小二乗法で回転方法はエカマックス法を用いた。この因子分析によって得た各因子とサンプルにおける因子得点を6つの説明変数とし、先ほど使ったモチベーションの度合いの和を基準化したものを被説明変数として、重回帰分析を行った。

7 結果・考察

7-1 仮説5-1-1に対する考察
仮説5-1-1は、「CSRを行っている企業の従業員モチベーションは高い」ということである。これに対する線形の単回帰分析の結果は以下のとおりである。

表7-1-1


表7-1-2


まず、表7-1-1のピアソンの積率相関係数が正であることより、説明変数と被説明変数の間には正の相関があることがわかる。また、表7-1-1の相関係数と決定係数に着目すれば、説明変数と被説明変数の間には強い正の相関があるといえる。
よって、仮説5-1-1は実証することができ、CSRを行っている企業の従業員モチベーションは高いということが言える。

7-2 仮説5-1-2に対する考察
仮説5-1-2は、「CSRの規模が大きい企業の従業員モチベーションは高い」ということである。これに対し、6-2-2の実証分析の手法によって、線形の単回帰分析を行った結果は以下のとおりである。

表7-2-1


表7-2-2



まず、表の7-2-1のピアソンの積率相関係数が正であることより、説明変数と被説明変数の間には正の関係がある。しかし、表7-1-1の相関係数と決定係数に着目すれば、説明変数と被説明変数の間の相関は、十分に強いものとはいえない。ゆえに、仮説5-1-2における説明変数と被説明変数の間には必ずしも相関があるとはいえず、この仮説を実証することはできなかった。この原因としては6-2-2において、4ポイント以上の得点を回答したものの数の総和を説明変数としたことにあると考えられる。実際、アンケートの一次集計においてCSRを4ポイント以上の得点によって回答した割合は72.6%であった。このことにより、大多数の人が自社でやっているCSRを4ポイント以上と認知しているため、力を入れてやっているCSRとそうでないCSRを有意に区別することができなかった。よって大きな相関係数を得ることはできなかったのであろう。仮に規模の大小の区別する基準を5ポイント以上や6ポイントに設定すれば、説明変数と被説明変数の間にさらなる相関を見ることができたであろう。

7-3 仮説5-2に対する考察
仮説5-2は、「CSRをステークホルダーごとに分類した結果、各ステークホルダーに対して、企業が従業員に身近なCSRを行うほど、従業員の高いモチベーションを実現することができる」ということである。これに対し、6-2-3の実証分析の手法によって、重回帰分析を行った結果は以下のとおりである。

表7-3-1


まず、この重回帰分析において回帰統計を見れば、重相関係数、重決定係数ともに有意な数値を示している。これによって、この重回帰分析の結果は支持されているといえる。次にt値を見る。顧客の変数に対して低い値を示しているが、その他の変数に関して言えばおおむね有効な数値を示している。さらにP-値をみれば、そのすべてにおいて、十分小さい数値を示している。よって、この重回帰分析によって獲得した係数は、おおむね有効な数値を得られたと判断する。ここで、5章で各ステークホルダーをα、β、γの各群に分けた。これに基づいて、α、β、γの各群の係数を比較してみよう。α群、すなわち従業員に対するCSRであるが、その係数は0.48であり、得られた係数の中では最大値を記録している。さらにβ群に関して考えると顧客に対するCSRの係数において低い数値を示しているが、株主・取引先に関するCSRの係数は中堅ともいえる数値を記録している。最後にγ群に関しては、地球環境に対するCSRにおいてはマイナス値を記録している。こうした点からしても、γ群に対するCSRが従業員のモチベーションに最も小さく影響していると考えられる。よって、この重回帰分析の係数の結果を比較してもα群に対するCSR、β群に対するCSR、γ群に対するCSRという順で従業員のモチベーションに影響を与えているとわかる。
さらに、この重回帰分析の変数と結果を確実なものとするべく、因子分析を行った。まず、この因子分析によって獲得した因子は表の6-1-1を参考にしてほしい。ここで、先の重回帰分析において、顧客に対するCSRの変数に関してはt値が低い値を示していたが、これはこの因子分析によって、顧客という独立した因子を獲得できなかったことからも、顧客に関する質問の回答が他の回答とある程度の相関をもってしまった点にあることがわかる。しかし前述した、4-4で言及したように、あくまで本論文では顧客と取引先は同じβ群としてみることとする。
重みなしの最小二乗法で回転方法はエカマックス法による因子分析を行い、この因子分析から得た因子得点と基準化されたモチベーションの度合いの合計をそれぞれ説明変数・被説明変数と設定し、重回帰分析を行った結果は以下の表7-3-2のとおりである。

表7-3-2


まず、この重回帰分析において回帰統計を見れば、重相関係数、重決定係数ともに有意な数値を示している。これによって、この重回帰分析の結果は支持されているといえる。次にt値を見る。若干、地域社会と地球環境の各変数に対して低い値を示しているが、その他の変数に関して言えばおおむね有効な数値を示している。さらにP-値をみれば、そのすべてにおいて、十分小さい数値を示している。よって、この重回帰分析によって獲得した係数は、おおむね有効な数値を得られたと判断する。続いて、各変数における係数をそれぞれ比較してみよう。これも先ほどと同様にα・β・γの各群という視点から見てみると、α群に対するCSR、β群に対するCSR、γ群に対するCSRといった順番に大きいことがわかる。このことから、仮説5-2を実証することができ、CSRをステークホルダーごとに分類した結果、各ステークホルダーに対して、企業が従業員に身近なCSRを行うほど、従業員の高いモチベーションを実現することができるということ言える。
ここで、今まで行った2つの重回帰分析の結果をみると、地球環境に対するCSRの係数がマイナス値を記録している。これは、一見地球環境に対するCSRが従業員のモチベーションに対し、マイナスの影響を持っているかのように見える。しかし、この原因はそれぞれの独立変数がお互いに相関を持ってしまっている点にあると考えられる。独立変数同士の相関係数表を見てみると以下のとおりである。

表7-3-3


この相関係数表をみると、独立変数同士で相関を持ってしまっていることがわかる。これによって、地球環境に対するCSRの係数がマイナスになってしまったと考えられる。ちなみに、地球環境に対するCSRの度合いの合計を説明変数とし、モチベーションの度合いの合計を被説明変数として、線形の単回帰分析を実施した結果は以下のようになる。

表7-3-4


この結果では決定係数が低いものの、係数より正の相関を見出すことができている。つまり、本論文での検討結果としては、地球環境に対するCSRは従業員のモチベーションに負の影響を与えるとは考えづらいのだ。



私たちは、慶應義塾大学商学部3年岡本大輔研究会の学生です。
この度は学生論文を執筆するにあたり、皆様のお力添えを得たく、ご連絡をさせて頂きました。
皆様の貴重なお時間を割いて頂き大変恐縮ですが、是非私たちのアンケートにご協力ください。

私たちはCSRについての論文を作成しています。
ここでいうCSR(Corporate  Social  Responsibility:企業の社会的責任)とは、「企業の様々な関係者に対して企業が果たすべき責任」のことです。

◆◆アンケート◆◆

まず初めに、差し支えなければ、あなたの企業に関する情報をお教えください。
記入されなくても結構です。
業種                                      
会社名                                    

以下の質問にそれぞれ該当する番号をお選びください。

以下の質問では、あなたの企業を同業他社と比較したうえで、最も近いものを1~6の中からお選びください。
6・・・(設問に対して)強くそう思う
5・・・まあまあそう思う
4・・・どちらかといえばそう思う
3・・・どちらかといえばそう思わない
2・・・あまりそうは思わない
1・・・全然そう思わない(CSR活動をやっていない、そのCSR活動に関して全く知らない場合も含む)

①あなたの企業の従業員に対するCSR活動についてお尋ねします。
 ・あなたの企業は教育活動に積極的に取り組んでいますか?
   具体例:社内外教育、環境教育、留学支援



 ・あなたの企業は労使関係の活動に積極的に取り組んでいますか?
   具体例:賃上げ、評価方法



・あなたの企業は福利厚生に積極的に取り組んでいますか?
  ここでの福利厚生とは、従業員が働きやすい環境を整えることです。
   具体例:社宅、休暇制度、安定的な雇用保証、保険



 ・あなたの企業は安全・衛生に積極的に取り組んでいますか?
  ここでの安全・衛生とは、従業員が働く際に従業員の安全と衛生を保証するこ  
とです。
   具体例:労働災害の防止、社内清掃



②あなたの企業の株主に対するCSR活動についてお尋ねします。
 ・あなたの企業は情報に関する活動に積極的に取り組んでいますか?
  ここでの情報に関する活動とは、企業・株主間で企業の運営や株式についての      
情報を公開 ・伝達することです。
   具体例:株主総会、IR活動(情報開示)、株主とのコミュニケーション



 ・あなたの企業は適切な配当がなされていますか?



 ・あなたの企業は株主に対する配当の安定・増加のために積極的に取り組んでいますか?



 ・あなたの企業はSRI活動に積極的に取り組んでいますか?
  ここでのSRIとは、社会的責任投資を意味し、CSR活動が盛んな企業に投資  
することです。



③あなたの企業の顧客に対するCSR活動についてお尋ねします。
 ・あなたの企業は顧客との情報に対する活動に積極的に取り組んでいますか?
   具体例:(個人)情報保護、情報開示



 ・あなたの企業は製品 ・サービスの品質や安全性向上に積極的に取り組んでいますか?
 具体例:ユニバーサルデザイン、ISO9000シリーズ取得



 ・あなたの企業は顧客とのコミュニケーション活動に積極的に取り組んでいますか?
 具体例:コールセンター、お客様相談室



④あなたの企業の取引相手に対するCSR活動についてお尋ねします。
 ・あなたの企業は取引相手に対する公正さを保つ努力をしていますか?



 ・あなたの企業は取引相手に対するコンプライアンスに取り組んでいますか?
  ここでのコンプライアンスとは、取引を進めていく上で、取引相手に積極的に自  
社の公正性を示すことです。



 ・あなたの企業は取引相手に対するCSR推進要請を行っていますか?
  ここでのCSR推進要請とは、CSRに取り組む企業と取引するために、取引相手にもCSR活動の推進を要請することです。



 ・あなたの企業は取引相手に対するSRI活動に積極的に取り組んでいますか?
  ここでのSRI活動とは資金調達先におけるCSRの情報開示を指します。



⑤あなたの企業の地域社会に対するCSR活動についてお尋ねします。
 ・あなたの企業は地域の環境改善活動に積極的に取り組んでいますか?
  具体例:ごみ拾い、緑化運動



 ・あなたの企業は災害復興活動に積極的に取り組んだことがありますか?
  具体例:復興支援に対する募金、食料配布、仮住まいの提供



 ・あなたの企業は雇用創出に積極的に取り組んでいますか?
  ここでの雇用創出とは、地域住民に対する雇用の機会を提供することです。
  具体例:障害者雇用、女性雇用



 ・あなたの企業は教育 ・学術支援活動に積極的に取り組んでいますか?
  具体例:講演会、インターンシップ



 ・あなたの企業は物的支援活動に積極的に取り組んでいますか?
  ここでの物的支援活動とは、地域社会にとって有益なものを提供することです。
  具体例:施設提供、寄贈品の授与

 ・あなたの企業はコンプライアンスに積極的に取り組んでいますか?
  ここでのコンプライアンスとは、地域住民が、企業と信頼した関係を築けるような取り組みを行っていくことです。
  具体例:地域住民との交流会、情報開示



⑥あなたの企業の地球環境に対するCSR活動についてお尋ねします。
 ・あなたの企業は環境負荷削減に取り組んでいますか?
   具体例:CO2削減、排ガス規制、植林



 ・あなたの企業は環境マネジメントに取り組んでいますか?
  ここでの環境マネジメントとは、環境に配慮した経営システムのことです。
   具体例:ISO14000シリーズの取得、環境会計



 ・あなたの企業は自然保護に取り組んでいますか?
  具体例:生物多様性の維持、砂漠化防止、



 最後にあなたのお勤めしている企業の雰囲気についてお尋ねします。
 ・職場は活気がありますか?



 ・あなたの企業の従業員は仕事に対してやりがいを感じていますか?



 ・あなたの企業の従業員は企業に対して誇りを感じていますか?

 ・あなたの企業の従業員はチャレンジ精神を持って仕事をしていますか?



 ・あなたの企業の従業員は自分を成長させる機会がありますか?



アンケートにご協力頂きありがとうございました。
皆様のアンケートをもとに、良い論文が作れるよう頑張ります。
何かありましたら、以下のアドレスまでご連絡ください。
 [email protected]

慶應義塾大学商学部岡本大輔研究会3年
薩佐恭平  加藤大地  黒田健史  山際梨恵  弓達貴文  横山有佳里
最終更新:2009年11月10日 23:40
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