企業評価+企業倫理

基本情報

企業評価+企業倫理~CSRへのアプローチ~
岡本大輔・梅津光弘
2006年9月
慶應義塾大学出版会




要約(ただし特に自分たちに必要と思われるところ中心)


まず、本書で確認されている前提条件を明記する。

  • 良い企業とはスタートとしては収益性・成長性の高い企業である。
  • 成長性とは長期の維持発展目標の’発展’の部分である。
  • 社会性とは、企業の様々なステークホルダーに対する自らの収益性・成長性以外のコミットメント
  • CSR活動は、企業の様々なステークホルダーに対する自らの収益性・成長性以外のコミットメントを企業目標の1つと考え、戦略的にマネージメントの根幹として捉えること


CSRの定義を各論者別にあげると以下のようなものもある。
  • CSRとは、単に倫理的・道徳的問題としてのみ論ぜず、企業の維持・発展のために各種ステークホルダーの協力関係を確保することである(十川廣國、『CSRの本質』企業と市場・社会、2005)
  • CSRは、ステークホルダーの立場から、経済的価値だけではなく社会・環境業績を高めることで、企業価値を増大させようとする活動である。(櫻井通晴『コーポレート・レピュテーション』2005)
  • CSRは、広義の企業価値に結びつく活動(伊藤邦雄「CSRによるコーポレート・ブランド経営」、高厳+日経CSRプロジェクト編『CSR 企業価値をどう高めるか』2004)


ここで余談だが、NPO法人であるGRIは持続可能性に関してトリプル・ボトムラインを提唱している。

トリプル・ボトムライン
  • 経済的パフォーマンス指標(顧客に対する売上)
  • 環境パフォーマンス指標(原材料の使用量、リサイクル量)
  • 社会的パフォーマンス指標(労働慣行と公正な労働条件、人権、社会、製品責任)


CSR活動に関して、十川教授は「顧客・ユーザー、従業員への積極的な対応姿勢を持ちながら、株主、地域社会などのステークホルダーに配慮した企業経営を行っているような企業の組織は活性化の方向に向かう」(十川廣國、2000)と述べている。このように上述のCSRの定義や十川教授の意見にみられるように、CSR活動が企業価値であったり、企業組織といったものに正の効果をもたらしていることはすでに多くの研究によって明らかになっており、これを唱える論者も多い。

ただ、日本企業の中にはかつてCSR活動は陰徳の美として遂行されるべきという考えがあるが、陰でこそこそやるべきではなく堂々たやるべきである。メセナに対する投資はそれ自体が上質のPR活動であり、資金投入に見合った利益が跳ね返ってくることを意識してのうえの活動である(企業メセナ協議会調査、日本経済新聞、2004年11月22日)。


CSR活動をステークホルダーとの関係としてとらえると、当然地球環境もその重要な対象である。数年前まで負のコストとして考えられてきた環境対策は、今やそれをどのように競争優位の戦略として取り込むか、活用するか、が企業の命運を分ける時代になりつつある。Porter&van der Linde(1995a)は、’すべてのものが所与であれば確かに環境保護はコストになるが、技術、製品、プロセス、ニーズなどはすべて変化するものである。環境に対する負荷の少ない高度な資源生産性を実現すればそれは競争力につながる、環境保護は決してコストにのみ直結するものではなく、競争力を生み出す’と主張する。他にも、環境対策は多くの企業では当初企業イメージ低下を回避するためのリスク対策であったが、取り組んでみると収益に貢献することを発見したという。環境保護はもはや単なるコストではなく、競争力・イノベーションを生み出す原動力にまでなってきている。


過去の社会的責任ブーム、フィランソロピーブームに対して、CSRブームでは企業の社会性とは社会のためではなく、あくまでも企業のための社会性であり、下位の手段としてではなく、企業にとっての上位の目標として考える必要がある。企業の長期の維持発展を考えれば、社会性をこのように捉えることは当然である。

ここで、数多くの研究からも社会性と収益性・成長性とは正の相関関係があることは言及できる。これを実証分析によってアプローチしていくと、社会性と収益性・成長性との関係による企業は4つの分類が可能である。この前提として、高財務業績→高社会性という因果関係は推定できる。ただし、実証分析の結果からは、社会性は高業績の必要条件とは言えることは示すことができた。


最後の方は体力が尽きてしまい、薄くなってしまいました。もっと目からウロコ的なものは本の中に詰まっていました。時間があったら書き足していこうと思いますが、みなさんも適当に書き足してください。やっぱり、個々人がこの文献にあたることを強く勧めます。僕たちが知っていなければいけないことが盛りだくさんです。
最終更新:2009年06月28日 02:50
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