破壊者と守護者と貫く正義(後編) ◆MiRaiTlHUI

PREV:破壊者と守護者と貫く正義(前編)


 目の前で繰り広げられる恐竜と怪人の戦いを、まどかはまるで他人事のように眺めていた。
 まどかとずっと一緒に行動していたあいつは、グリードだったのだ。この殺し合いの元凶、理不尽に殺された二人の少女を嘲笑った、あの怪人どもの仲間だったのだ。
 まどかの願いは「自分の手で誰かを救う事」であって、この殺し合いを促進させる事では断じてない。力のない参加者を救いこそすれ、自分達よりも強大な力を持った、得体も知れぬ怪人どもを助けたって、誰も喜びはしないに決まっている。

 そう、頭では分かっているのに。
 あの斧がガメルを斬り裂くのを見るのは、辛かった。
 あの恐竜がガメルを傷め付けるのを見ると、胸が苦しくなった。

 そんな感情を抱くのは、間違っている筈なのに。
 ガメルに、正義などある筈がない。正しいのはオーズだと言う事も分かっているのに。
 どうして、どうしてこんなにもガメルの事が、心配なのだろう。より多くの命を救う為には、グリードであるガメルはここで砕かれた方がいいに決まっているのに、それなのに。
 ガメルの優しく純朴だったあの笑顔を思い出せば、分かり切っている筈の「合理性」も、決まり切っている筈の「正義」も、酷く歪んだ冷たい虚像のように思えてならなかった。
 仮にそれを貫く事が正義であるというのなら、まどかはまだ正義には成り切れないし、なりたいとも思いはしない。
 まどかの願いは、欲望は――今ガメルを見捨てた所で、絶対に満たされはしない。
 それに気付いた時、まどかの胸中に蘇って来たのは、

 ――まどか、おれにやさしくしてくれた!――

「……そっか」

 ――まどかをいじめるやつ、おれがゆるさないっ!!――

「そうだよね」

 まどかの為に、「誰かの為に戦う」ガメルの絶叫だった。
 あの優しいガメルは、戦いなど好む訳もないガメルは、今まどかの為に戦っているのだ。例えガメルがグリードであったとしても、その願いは、自分と何の違いもない。
 誰かの為に戦える優しい心を持った者が、冷たい正義によって押し潰される様など、まどかは見たくないし、そんな非道を認めたくもない。
 この手の魔法は、いつだって優しい誰かを守る為に振るわれる力。
 それを思い出した時、まどかは傷の痛みなどはとうに忘れて、持てる魔力全てを推進力に回して、必殺の砲撃を放たんとバズーカを構えるオーズとガメルの間に割って入った。
 紫の鈍い輝きと、ブラックホールの如き暗黒を発生させ、いざガメルの身を砕こうと構えられた必殺砲の銃口を前にして、それでもまどかは臆する事無く、オーズと対峙する。
 一瞬狼狽したのだろうオーズは、ガメルを捉えていた筈の銃口を僅かにブレさせるが、すぐに再び構え直し、叫んだ。

「どいて、きみ!」
「私の名前は鹿目まどかです!」
「まどかちゃん……どうしてそこまで!」
「仮面ライダーオーズ……貴方が正しいって事は、分かります……グリードは砕かなきゃいけないって、それも、分かりますけど……
 でも……っ、こんなのはやっぱり間違ってる! 例え貴方が正義でも、こんなのっ……こんなの絶対おかしいよっ!」

 紡がれる言葉は決して上手とは言えないが、不器用でも、それでもまどかは思いの丈を叫んだ。
 オーズの表情は紫の仮面に隠れて見えはしないが、やはり動揺はあるのか、小さくかぶりを振ると、オーズもまた叫ぶ。

「それでもやらなくちゃいけないんだっ! でなきゃ、もっと多くの人が死ぬ! あの二人みたいな犠牲が、これからも繰り返される! だから――!」
「ガメルは、誰の事も傷付けてない! あんなに優しい笑顔で笑えるのにっ、今だって、私の為に、こんなに傷ついて……っ、誰の為に戦える人が、優しくない訳がない!」

 まどかが振りかざすのは、子供の理屈だった。
 戦場でそれを振りかざした所で、救える命などないのだろうという理屈は分かるが、それでもまどかは、そんな理屈に、正義に負けたくはなかった。精一杯の足掻きだった。
 例え戦う事になっても、自分の意思を押し通す。それくらいの覚悟で挑むまどかの足元に――蒼く燃え盛る炎の矢が突き刺さった。

「っ――!?」

 その場の全員が驚愕に息を呑んだ。
 突き刺さった炎の矢は、ごうと音を立ててアスファルトを焼き、暴力的なまでに熱を撒き散らす蒼い炎を巻き上げ、最も至近距離のまどかの肌すらも焦がそうと唸りを上げる。
 何が起こったのかも分からず、それでも反射的に、逆巻く炎から我が身を守らんと身をよじった、その時。

 まどかの肩を、大きく力強い腕が、ぐっと押し遣った。
 尋常ならざる怪力によって押し出されたまどかの身体が、数十メートル程遠くへ投げ出されると同時、さながら太古の肉食恐竜の咆哮の如く、オーズが構えた必殺砲が唸りを上げた。
 オーズが放った紫の輝きは、極太のレーザーとなって蒼い炎に焼かれるガメルを飲み込んだ。


 突然の矢による射撃によって、まどかの身はガメルの射線軸上から外れた。
 この一瞬を逃せば、きっとまたまどかに邪魔をされると判断したのだろう、オーズはようやく見付けたチャンスを逃すまいとして、グリードの身体を砕くには十分過ぎる威力を秘めた必殺砲の引鉄を引いたのだった。
 が、それは当然、まどかをも巻き込む可能性のある危険な策だ。普通は一度射線上から外れ、その上高熱の炎にまで見舞われれば、意志とは関係無く、身体が反射的に回避行動を取る筈だった。
 だが、そんな事情をガメルは知らない。
 あろう事か、ガメルは自ら前進した。それが自分の身を犠牲にする行為である事も意に介さず、ガメルはまどかの肩を押し遣り、自らの身で以てストレインドゥームの光の洗礼を受けた。

 当然、最早メダル二枚しか持たぬガメルがその一撃を受けて、耐え切れる訳がない。
 ガメルの身体は、まどかの目の前でただのセルメダルとなって、四方八方へとばらまかれた。首輪に内包されていたメダルと、ガメルの身体を形成していたのであろう大量のメダルが、雨のように降り注ぐ。
 つい先刻までガメルだったものは、その場に居るオーズと、まどかの首輪へと自動的に吸収されてゆくが、まどかにしてみれば、今目の前で何が起こっているのかなど、理解出来よう筈もなかった。

「……ぁ、あ……ガメ……ル?」

 名を呼ぶが、応えてくれるものはもういない。
 先程までガメルだったものは、今はもう、ただのメダルでしかないのだ。
 やがて、降り注ぐセルメダルの中に、白と黒のコアメダルが混じっていた事に気付く。サイとゴリラの紋章を描いたそれらは、オーズよりも、まどかの近くへ降り注いだのだ。
 すかさず駆け寄ったまどかは、それが先程までガメルの身体を成していたものなのだという事に気付き、二枚のコアメダルを握り締め、

「そんな……ぁ、どうしてっ……一緒に、メズールさんを探すって、言ったのに……ぃっ!」

 啜り泣くように。嗚咽と共に、果たせなくなったガメルとの約束を漏らした。
 ガメルの子供のように純朴な笑顔は、もう見る事が出来ない。一緒にメズールを探そうと約束したのに、それを果たす相手は、もうこの世には居ない。
 守ると誓ったものを、自分は守る事が出来なかったのだ。どうしようもない無力感に、まるで心の何処かに穴が空いてしまったかのような虚無感に、まどかはどうする事も出来ず、ただ二枚のコアメダルを握り締め、涙を流す事くらいしか出来なかった。
 そんなまどかに追い打ちを掛けるように、オーズは言った。

「まどかちゃん。その二枚のコアメダル、俺に渡してくれるかな」
「……っ!」

 手を差し伸べるオーズが、まどかの眼には、悪魔のように見えた。
 そんな訳はないと理屈では分かっていても、まどかはガメルの形見となったこのコアメダルを、ガメルを砕いたこの男にだけは絶対に渡したくはないと思う。
 そんなものは、ただの子供の我儘なのだと分かっていても、それでも。

「出来、ません」
「まどかちゃん」
「このメダルは、貴方には渡せませんっ!」

 そう言って、かつてガメルだったメダルを強く握り締め、胸に抱く。
 オーズは、無理矢理にまどかからメダルを奪おうとはしなかった。
 そっか、と一言呟くと、斜めに倒れていたベルトを、カタンと音を立てて横一列に戻す。同時に、オーズの身体を覆っていた白のスーツと紫の鎧は、薄い光となって霧散した。
 オーズだった男――火野映司は、やはり儚げな、簡単に掻き消されてしまいそうな微笑みを浮かべる。その表情を見ていると、彼をこれ以上責め立てる気もおきず、まどかはそれ以上、何を言っていいのかも分からなくなった。
 そんな時だった。

「仮面ライダーオーズよ。何故その娘からメダルを奪わない?」

 感情を感じられぬ、酷く冷淡な声が、この場に響き渡った。
 はっとして顔を上げる。周囲をぐるりと見渡して――そして、声の主を見付けた。
 剥き出しにされた瞳と、薄く開いた唇が、見る者に酷く不気味な印象を与える、蒼い仮面の男だった。身に纏ったマントが裾からゆっくりと蒼い炎に焼かれ消失していくにつれ、その下に纏った蒼と白を基調としたスーツが姿を露わしてゆく。
 蒼い炎に焼かれるマントと、その下から現れた一艇のボウガンを見た時、まどかは一つの確信を得た。
 まどかを取り巻く状況の全てが変わったあの瞬間。まどかの足元目掛けて、蒼き灼熱の矢を放ったのは、あの仮面の男だ。
 涙を拭う事すらも忘れ、ぐんにゃりと歪んだ視界で怨めしげに蒼い仮面を見上げるまどかなど意にも介さず、仮面は映司に向かい、まるで味方に話し掛けるように、やや丸い語調で以て言葉を紡ぎ出す。

「きみの戦いにはそのメダルが必要なのだろう。そして、その娘は罪人を庇う悪魔。
 正義の為に罪人を断罪した筈のきみが、一体何故、どうして躊躇をする必要がある?
 さあ、早くその悪魔からメダルを奪い給え。私に正義を見せてくれ、仮面ライダー!」
「……アンタには悪いけど、今のこの子からメダルを奪う事は、俺には出来ないかな」
「ほう?」

 まるで壊れた人形のように、蒼の仮面が、カクンと首を傾げた。
 二枚のコアメダルを抱き締めたまどかは、警戒を隠しもせずに、蒼の仮面に誰何する。

「……貴方、一体何なんですか」
「私の名はルナティック。この世の闇を裂き、罪人を断罪する為に舞い降りた」
「つみ、びと……? そんな、どうして……ガメルが一体、どんな罪を……」
「どんな罪を……? おやおや、おかしな事を言うねえ、きみは」

 そう言って、ルナティックは仮面の下で薄く失笑し、嘲笑すらも多分に含んだ声音で「きみ」を強調して言った。
 むっとしたまどかは、つい反射的に声を荒げようと身を乗り出すが――まどかが次の行動に出るよりも先に、ルナティックが掌から生み出した蒼い炎の矢を、ボウガンに装填し、それをまどかに突き付けた。
 そんなまどかを庇うように、映司がさっと前へ歩み出る。

「……っ、ちょっと! 子供相手にやりすぎだって!」
「子供とは言え、罪人を庇う者もまた悪魔……。だが、案ずる事はない。無益な殺生は私の主義に反する。
 きみが大人しくそのメダルをオーズに差し出し、己の過ちを悔いると云うなら、命まで取る気はない」
「渡せません。貴方の言う事は、この人よりも、もっとおかしいから」
「ほう。懺悔をする気はないと?」

 ルナティックの問いに、まどかは首肯で答えた。
 申し出を断ったのだから、いつあの蒼い炎の矢が飛んできてもおかしくはないと判断したまどかは、いつでも魔力を行使出来るように、ステッキを握る手に力を込める。
 まさに一触即発。どちらかが動けば、戦いが始まると思われた、その時。
 彼方から高速で飛来した赤く燃える炎が、未だボウガンに装着されたままの蒼く燃える矢を撃った。ボウガンを握るルナティックの手は弾き上げられ、装填されていた炎の矢も消失する。
 一体、何が起こったのだろうか。状況を完全には把握できず困惑するまどかの耳朶を打ったのは、男にしては余りにも女らし過ぎる抑揚だが、しかし女にしては余りにも低すぎる、何者かの声だった。

「……間一髪、かしら?」

 赤く燃え盛る炎を夢想させるマントを翻し、真紅の仮面に顔の半分以上を隠した彼の者は、ガメルが持っていたブロマイドカードの中にその姿を見た覚えがある。
 名前は何だったか、と考えるまどかに変わって、映司が誰何の声を掛けた。

「貴方は?」
「私はファイヤーエンブレム。シュテルンビルトを守る正義のヒーローよ。知らない訳じゃないでしょ?」

 知っているのが当然とばかりに、ファイヤーエンブレムは名乗った。
 まどかは、あのブロマイドに描かれていたヒーロー達はどれも架空の存在であるのだとばかり思っていたのだが、今自分が彼に救われた事を考えると、どうやら、どういう訳かヒーローと云う存在も実在するものらしい。
 仮面ライダーといい、ヒーローといい、グリードといい――この場には魔法少女とは非なる、未知の力を持った者が複数存在するのだと考えれば、自分の魔法少女の力が一体何処まで通用するのかというのも不安になって来るものだった。
 ファイヤーエンブレムは、ルナティックの眼下――火野の隣に並び立つと、語気を荒げて言った。

「爆発の音が聞こえたから来てみれば……ルナティック。アンタ、こんな子供にまで手を出すなんて、随分と堕ちたもんネ」
「何度も言わせるなファイヤーエンブレム。私は罪人に罪を償わせる為だけに舞い降りた。
 その娘は正義を否定し、罪人を庇い、今また正義の道を阻もうとしている」
「あら、私にはそうは見えなかったけど?」

 そう言って、ファイヤーエンブレムはいつでもルナティックに対処出来るよう、先の炎を繰り出せるよう、赤いスーツに覆われた腕をルナティックへと突き付けた。
 図らずもファイヤーエンブレムの背に隠れる形となったまどかに、彼は告げる。

「今の内に、逃げなさい」
「え、でも……っ」
「いいから。ここは私に任せなさい」
「まどかちゃん。俺のこと、憎いかもしれないけど、今はそのメダルを持って何処か安全なところに逃げてくれないかな……俺達は、大丈夫だから」

 まるで心からまどかを心配しているような、そういう物言いに、まどかは再び筆舌に尽くし難い複雑な感情を抱く。
 映司は、仮面ライダーオーズだ。ガメルを砕いた、ガメルを殺した憎い相手だ。変身すればルナティックにも遅れは取らないのだろうし、まどかが案ずる必要もないくらいに彼は強いのだろうが、そんな心配とは別の、暗い感情がまどかを項垂れさせる。
 別に、ガメルの仇を取りたいだとか、そういう事を考えている訳ではない。
 映司が間違った事を言っている訳ではないという事も、彼が本当は心優しい青年なのだという事も、こんな出会い方でなければ、きっともっと仲良くなる事も出来た筈であろう事も、頭では分かっている。
 が、それでも。まどかは、映司と一緒に居たくは無かった。
 ガメルは何も悪い事はしていない良いグリードだったが、それを砕いた映司もまた、誰かの為に戦う心優しい戦士なのだろう。だからこそ。ガメルが死んだ事への哀しみを一人で抱えるしか無くなって、それを吐き出す先がなくて、まどかはどうしようもなく落ち込んでいた。

 分かっている。今は、時間が必要だ。考える時間が必要なのだ。
 この二人ならばまどか一人が離脱したところで、たかが一人の敵を相手に負けるという事もないだろう。
 今は、ガメルの形見を誰にも奪わせない為に。そして、心に整理を付ける為に。

「……分かりました。お願い、します」

 まどかは大きく頭を下げ、礼と共にそう告げた。
 戦いに繰り出る前に、まどかの
 ガメルが持っていたデイバッグを引っ掴み、向かう先すら考えず、脇目も振らずに走り出した。
 それはさながら、このあまりにも非情過ぎる、不条理な暴力の蠢く殺し合いの現実から逃げ出そうとしているかのようだった。



【1日目-午後】
【C-7/オフィス街 道路 シュテルンビルトエリア直前】


【火野映司@仮面ライダーOOO】
【所属】無
【状態】疲労(小)、罪悪感
【首輪】290枚:0枚
【コア】タカ、トラ、バッタ、ゴリラ、ゾウ、プテラ×2、トリケラ、ティラノ×2
【装備】オーズドライバー@仮面ライダーOOO
【道具】基本支給品一式
【思考・状況】
基本:グリードを全て砕き、ゲームを破綻させる。
 0.ごめんね、まどかちゃん……。
 1.まずはルナティックを何とかする。
 2.その後ファイヤーエンブレムと共に、ジャスティスタワーに戻ってユーリと合流したい。
 3.グリードは問答無用で倒し、メダルを砕くが、オーズとして使用する分のメダルは奪い取る。
 4.もしもアンクが現れても、倒さなければならないが……
【備考】
※もしもアンクに出会った場合、問答無用で倒すだけの覚悟が出来ているかどうかは不明です
※ヒーローの話をまだ詳しく聞いておらず、TIGER&BUNNYの世界が異世界だという事にも気付いていません。
※プトティラに変身した事でメダルは大幅に消費されましたが、ガメルがばらまいた大量のセルメダルを回収した事と、グリードを砕き目的が一つ達成された事で、メダルが大幅に増加しました。
※メダルを砕いた事は後悔していませんが、全く悪事を働いて居なかったガメルを砕き、あまつさえまどかの心に傷を与えてしまった事に関しては罪悪感を抱いています。


ネイサン・シーモア@TIGER&BUNNY】
【所属】赤
【状態】健康
【首輪】99枚:0枚
【装備】ファイヤーエンブレム専用スーツ
【道具】基本支給品一式、ランダム支給品(1~3)
【思考・状況】
基本:殺し合いには乗らず、出来るだけ多くの命を救い脱出する。
 1.まずはルナティックを何とかする。
 2.落ち着いたらイケメンで強そうな彼(=映司)と情報交換したい。
【備考】
※参戦時期は不明ですが、少なくともルナティックを知っています。


ユーリ・ペトロフ@TIGER&BUNNY】
【所属】緑
【状態】健康
【首輪】95枚:0枚
【コア】チーター
【装備】ルナティックの装備一式@TIGER&BUNNY
【道具】基本支給品一式
【思考・状況】
基本:タナトスの声により、罪深き者に正義の裁きを下す。
(訳:人を殺めた者は殺す。最終的には真木も殺す)
 1.ヒーローと戦うのは本意ではない。このまま離脱するか……?
 2.火野映司の正義を見極める。チーターコアはその時まで保留。
 3.人前で堂々とルナティックの力は使わない。
【備考】
※ルナティックの装備一式とは、仮面とヒーロースーツ、大量のマントとクロスボウです。
※一枚目のマントを自ら燃やしましたが、まだまだ予備はあります。




 まだ日は高く昇っているが、空から降り注ぐ暖かな陽光は、逃げるように走り続けるまどかの心の奥にまでは届きはしなかった。どんよりと雨雲が掛かったように暗く沈んだ心を抱えて、まどかは目的地も無くただ走る。
 ガメルと共に期待に胸を膨らませたあの街は、シュテルンビルトは、もうずっと遠い。見慣れた日本のビル群によって遮られているのだから、例え振り返ったところでシュテルンビルトなど拝めよう筈も無かった。
 数十分前のガメルとの会話が、今となってはとても、とても懐かしい過去の出来事だったように思えて。力及ばず喪ってしまった、守れなかった事実にまどかは打ちひしがれて、自分が如何に無力であったかを呪う。

 ――そうだ。真に呪うべきは、オーズではなく、自分自身なのだ。
 もしも自分にもっと力があれば、或いはもっと違った行動を取る事が出来ていたなら、きっと今頃はガメルと共にあの戦場をも切り抜ける事が出来ていた筈だ。
 力がないから。力が足りないから、だから守れない。だから喪う。
 どうしようもない事実に気付いたまどかは、何処とも知れぬ日本風の街並みの中で、礑と立ち止まった。膝に手を添え、俯いて息を切らす。まどかにはもう、それが疲労によるものなのか、それとも慟哭による嗚咽なのかすらも分からなかった。

「おい、お前」
「――えっ」

 そんなまどかに声を掛けたのは、一人の男。
 己が無力を実感し、沈思に耽っていたまどかははっとして顔を上げる。
 前方からゆっくりと歩いて来たのは、やや目付きの悪い、長身痩躯の若い男だった。
 警戒も露わに数歩後ずさったまどかだが、大変な長距離を無我夢中で走り続けて来た事と、心に圧し掛かる重圧によって辟易し切っていたまどかは、男から逃げる事もかなわず、あっという間にビルの壁へと追いやられた。
 男は、至近距離からまどかの身体を、頭から爪先まで舐めまわすように矯めつ眇めつした。
 こんなにも居心地の悪い事はない。まどかは、おずおずと口を開いた。

「あ、あの……」
「お前、傷だらけだな。誰かに襲われたのか」

 男はまどかの言葉に興味などないと言わんばかりに、自分の問いを一方的に投げる。

「……ま、まあ。そんな感じというか、何と言うか……」

 それに対してまどかが返せた返答は、あまりにも曖昧なものだった。
 オーズが襲ったのはあくまでガメルであって、彼はむしろまどかに対しては友好的ですらあったように思う。それをまどかまでガメルと同様に襲われた、と表現してしまうのは、流石に良心が痛む。何もオーズを悪者にしたい訳ではなかった。
 そういった葛藤を抱いての返答だったのか、男は気に入らなかったのか、むっとして言った。

「何だ、ハッキリしない奴だな」
「……ごめんなさい」
「チッ……まあいい。ところでお前、仮面ライダーって奴を知らないか」
「えっ、仮面ライダーって……ひょっとしてオーズのこと――」
「――知ってるのかっ!」
「ひ……ぇっ!?」

 まどかの言葉を遮って、男は突然まどかの襟首を掴んだ。
 痩せ形のその身体の一体何処にそんな力があるのか、男はまどかの襟首を支点にぐっと持ち上げる。後方のビルの壁に背を打ち付けられ、まどかは僅かに咳込んだ。
 一体何が男の逆鱗に触れたのか。訳も分からぬままに一方的に掴み上げられたまどかは、ただ男の腕にしがみ付き、男の冷淡な瞳を見据え睨み付ける事くらいしか出来まい。
 激昂した様子の男は、まどかの事など意にも介さず、怒鳴る様に男は問うた

「答えろ。お前、仮面ライダーを見たのか!?」

 剣呑な双眸は、突き刺すようにまどかを捉える。
 一体何の尋問なのか、そんな事を聞いてどうするのかも知れないが、まどかは半ば反射的に小さく頷いた
 男は「そうか」と呟くと、まどかの襟から手を離した。
 身を貫く様な威圧感から解放されたまどかは、ビルの壁を背もたれに、力無く項垂れるが、すぐに自分の判断がミスであった事を悟った。

 この男は恐らく危険人物だ。その厳めしい双眸に宿った光は、ガメルのような優しい人種とは真逆のそれだ。
 まどかへの対応を見るに、この男が穏便に物事を解決してくれるタイプの人間であるようには到底思えない。仮面ライダーが居る、という情報を得た事によって、この男はもしかしたら仮面ライダーを排除に掛かる可能性だってあるのだ。
 殺し合いを是としないまどかにとって、そういった人種に情報を与えてしまうのは、致命的な判断ミスでしかなかった。

「……乱暴して悪かったな。その仮面ライダーには、お前が走って来た方角に行けば会えるんだな」
「ち、違います……!」
「ハハッ、お前、嘘が下手だな」

 男は先程までの激昂が嘘のように、朗らかに笑った。
「ありがとな」と一言告げ、背を向けて歩いて行く男が、どうにもただの悪人のようには思えなかったまどかは、突然襟首を掴まれ怒鳴られた恐怖も一時的に忘れ、去りゆく男の背に質問を投げた。

「あの……っ! 貴方は、仮面ライダーをどうするんですか?」

 男は、背を向けたまま答える。

「潰すのさ」
「そんなっ……どうして」
「それが俺の義務だからだ。その為に俺は居る」
「貴方もルナティックみたいな事を……」

 男の答えに、まどかは「自分は悪人を裁く為に存在する」とまで豪語したあの男の狂気――ルナティック――を連想した。
 義務だとか正義だとか、そんな感情を押し殺した理由で戦い、その為に自分は存在しているのだと言い切ってしまう者が、まどかには理解出来ない。……その理由には、そうして壊れて行ったさやかを夢想してしまうから、という理由も多分に含まれているのだろうが。

 そもそも、まどかはまだ子供だ。普通の家庭に育った、普通の中学生だ。
 背負うべき責任も、義務感もない。ただ人並みに、人の命が奪われるのを見過ごせないから、誰かの為に戦いたいから、だから魔法少女をやっているだけの事。
 仮面ライダーオーズや、――ヒーローなのか仮面ライダーなのかは知れないが――ルナティックが翳す「正義」というものだって持ち合わせては居ない。
 何が正しくて何が悪いのかだって、まどかにとっては曖昧だった。
 そんな、決定的な価値観の違いに苦しみ緩く歯噛みするまどかに追い打ちを掛けるように、男は背を向けたまま、片手を軽く振り上げ、言った。

「オーズとルナティックか。大体分かった」

 まどかが走って来た方向に居るのは、オーズとルナティックである。
 以上の情報を、殺し合いを否定する筈のまどかが、自ら危険人物の男に教えてしまったのだ。

 自分のあまりの体たらくに、まどかの身体から、ふっと力が抜ける。
 結局、誰かを救うなど幻想だったのだろうか。心を覆う虚無感に打ちひしがれ、立ち去ってゆく男をすぐに追い掛ける気にもなれなかったまどかは、ビルの壁に体重を預けたまま、不意に左手に握っていた白と黒のコアメダルへと視線を移した。
 このコアメダルは、ガメルの形見であると同時に、守れなかったまどかの戒めだった。

(私が、もっと強ければ……)

 力が欲しい。もうこれ以上、何も喪いたくはない。
 何者をも見捨てる事無く、全てを救う事が出来る優しい魔法少女になりたい。でなければ、幾ら魔法の力があった所で、何の役にも立ちはしない。
 この程度では、あまねく人々を助けたいというまどかの欲望は、まだまだ満たされはしないのだ。

 力が欲しい。誰にでも差し伸べる事が出来る、誰にでも届く、強い力が。
 どんな時でも、どんな相手でも、絶対に救う事が出来るだけの力が欲しい。
 今以上の力を希い、無意識のうちにぎゅっとメダルを握り締めるまどかの手の中に――二枚のメダルは、まるで溶け込むように入っていった。

 数秒間の沈思黙考に意識を傾けているうちに、手の中からメダルが消えていた事に気付いたまどかは、あれ、と一言呟く。
 二枚のコアは何処へ消えてしまったのかと一瞬慌てるが、体内には確かに三枚分のコアメダルを感じる。どうやら首輪に入ったメダルを、参加者は己が身体のことのように知覚出来るらしいという事に既に気付いていたまどかだからこそ、勘違いなどではなく、確かにメダルが三枚分存在している事にも確証が持てた。

 とするならば、メダルが自動的に首輪へ転送されたのだろうか。
 ふとそんな疑問を浮かべるが、それは今のまどかにとってあまりにもどうでもいい事だと気付くまでに、それ程の時間は掛からなかった。
 今は、そんな事よりもこれからどうやって生きていけばいいのか。今の自分に何が出来るのか、それを考えた方がよっぽど建設的だ。
 それは分かっているが、しかしまどかは、もう随分と小さくなった男の背中を見ても、今すぐに走って追い付いて止めるべきだという思考には至れそうになかった。



【1日目-午後】
【C-6 キバの世界 路上】


【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
【所属】白
【状態】哀しみ、疲労(小)、全身に小程度の打撲
【首輪】300枚:30枚
【コア】サイ(感情)、ゴリラ、ゾウ
【装備】ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ
【道具】基本支給品一式×2、ランダム支給品0~3(うち二つは用途の分からないもの、一つはガメルが所持していたもの)、
    詳細名簿@オリジナル、ワイルドタイガーのブロマイド@TIGER&BUNNY、マスク・ド・パンツのマスク@そらのおとしもの
【思考・状況】
基本:この手で誰かを守る為、魔法少女として戦う。
 0.みんなを守る為の力がもっと欲しい。
 1.目の前の男(=士)を引き止めるか……?
 2.仮面ライダーオーズ(=映司)がいい人だという事は分かるけど……
 3.仮面ライダールナティック? の事は警戒しなければならない。
 4.マミさんがもし他の魔法少女を殺すと云うなら、戦う事になるかも知れない……
 5.ほむらちゃんやさやかちゃんとも、もう一度会いたいな……
【備考】
※白陣営の現リーダーです。
※参戦時期は第十話三週目で、ほむらに願いを託し、死亡した直後です。
※まどかの欲望は「自分自身の力で誰かを守る事」で刺激されると思われます。
※火野映司(名前は知らない)が良い人であろう事は把握していますが、複雑な気持ちです。
※仮面ライダーの定義が曖昧な為、ルナティックの正式名称をとりあえず「仮面ライダールナティック(仮)」と認識しています。
※ガメルが所持していたセルメダルと、ガメルの身体を形成していたセルメダルを吸収し所持メダルが大幅に増えました。
※サイのコアメダルにはガメルの感情が内包されていますが、まどかは気付いていません。
※サイとゴリラのコアメダルが、本人も気付かぬうちにまどかの身体に取り込まれ同化していますが、まどかの意思次第でメダルは自由に取り出せます(まどかはまだ人間です)。


門矢士@仮面ライダーディケイド】
【所属】無
【状態】健康
【首輪】115枚:0枚
【コア】シャチ
【装備】ディケイドライバー&カード一式@仮面ライダーディケイド、
【道具】ユウスケのデイパック(基本支給品一式、ランダム支給品0~2)、基本支給品一式、ランダム支給品1~3
   (これら全て確認済み)
【思考・状況】
基本:「世界の破壊者」としての使命を全うする。
 1:あの中学生(=まどか)が走って来た方角へ向かい、仮面ライダーオーズと仮面ライダールナティックを破壊する。
 2:「仮面ライダー」と殺し合いに乗った者を探して破壊する。
 3:邪魔するのなら誰であろうが容赦しない。仲間が相手でも躊躇わない。
 4:セルメダルが欲しい。
 5:最終的にはこの殺し合いそのものを破壊する。
【備考】
※MOVIE大戦2010途中(スーパー1&カブト撃破後)からの参戦です。
※ディケイド変身時の姿は激情態です。
※所持しているカードはクウガ~キバまでの世界で手に入れたカード、 ディケイド関連のカードだけです。
※まどかから得た情報を一部誤解しています。ルナティックの事も仮面ライダーだと思っています。





【ガメル@仮面ライダーOOO 自律行動不能】





【全体備考】
※C-7、ガメルの身体が砕かれた場所に、ワイルドタイガー以外のヒーローのブロマイドが散らばっています。
※ガメルの身体が砕かれた事で、白のメダルの最多保有者であり、また、体内に白のメダルを内包するまどかが白陣営のリーダーになりました
※一日目午後、リーダーがガメルからまどかに移り変わるまでの数分間、リーダー不在の時間帯があります。その間は全参加者の白の首輪は無所属扱いとなっていました。
※プトティラコンボによって、ゾウのコアメダルが一枚砕かれました。白のコアメダルは残り八枚です。




036:Re:GAME START 投下順 038:He that falls today may rise tomorrow.(七転び八起き)
034:創世王、シャドームーン 時系列順 038:He that falls today may rise tomorrow.(七転び八起き)
020:正義のためなら鬼となる 火野映司 056:戦いと思いと紫の暴走(前編)
ユーリ・ペトロフ
012:A New Hero. A New Legend. ガメル GAME OVER?
011:いつかは今じゃないだろ 鹿目まどか 056:戦いと思いと紫の暴走(前編)
017:誓いと笑顔と砕けた絆 門矢士
GAME START ネイサン・シーモア



タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2013年11月01日 15:38