ろくでなしブルース(後編) ◆QpsnHG41Mg

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          ○○○

 地図上では、現在の居場所は中心部……寄り、である。
 寄り、というのは、中心部ではない、ということだ。
 ウヴァの走行コースは中心部だけは確実に避けているのだった。
“ヤバい奴が集まってそうな中心部は極力避けて通った方がいいだろ”
 ……そういう考えだった。
 一応今のウヴァなら大体の相手には勝てる自信がある。
 だが、それでも過信は禁物だ。この場にはヤバい奴が沢山いる。
 例えば魔人とか。例えばエンジェロイド……とくに、カオスとか。
 奴らはバースとかオーズとか、そういう仮面ライダーの比ではない。
 ウヴァはこういう男だ。こういうどうにもコスいやり方をする男なのだ。
 だからこそ、一生懸命頑張っている奴よりも、ズル賢く生き残れるのだ。
「おっ?」
 そんなウヴァが見つけたのは、一人とぼとぼと歩く少女。
 赤い髪の毛。コンパクトに折り畳んだ天使の羽根。
 ウヴァは、この場の参加者の大半は把握している。
 あれは、エンジェロイドのイカロス……ウラヌスクイーンだ。
 とくにヤバい参加者筆頭のヤツと早くも遭遇しちまった。
“……いや待て、アイツ、なんで歩いてんだ? 飛びゃあいいものを……”
 イカロスは、自分の首につながった鎖を辿って歩いていた。
 鎖はイカロスの目前ですぐに途切れているが、それでもソレを辿っている。
 おそらく桜井智樹に会おうというワケだろうが、ならば尚更飛べばいい。
 一体どういう理由があって、あの女は歩いているのだろうか。
“まさか……メダル切れか? あいつ燃費悪そうだしな”
 ……だとするなら、今のイカロスにろくな力はない。
 本来ならばエンジェロイドはヤバい敵なのだが、今なら――
“――容易く潰せるッ!!”
 そう思い、ニヤリと笑うウヴァだったが、そこでふいに気付く。
 イカロスの首輪のランプは、赤色ではなく……紫色になっていた。
“ハッ……! ハッハハハッ! なんだ、あのチビ、もう脱落したのか!”
 それが意味するところは、赤陣営のリーダーはすでにいないということだ。
 であるならば、次の放送までの間、赤陣営の参加者は全員無所属になる。
 だったら何も今すぐにイカロスを潰しに掛かる必要はどこにもない。
 むしろ、放送までの残り時間は十分を切っている、急ぐべきだ。
 ウヴァは再びバイクを走らせ、イカロスの前まで進み出た。
「よォー、ちょっと待てよ、イカロス~!」
「……あなたは、私の記憶にない……だから……敵……ッ!」
「ちょ! 待て待て! 俺はお前の味方だぜ、イカロスゥ~!?」
「私の記憶にない者は……全て敵……破壊して……マスターに会いにいく」
 なんだコイツは、頭おかしいんじゃあねーのか? と、そう思った。
 だが、考え方を改めれば、コイツは兵力としては素晴らしい逸材だ。
 融通の利かない人形のようなコイツを味方につけることは大きなプラスだ。
 ウヴァは両腕を広げ、無抵抗であることを示しながら語りかける。
「俺を破壊したって愛するマスターには会えねーぜ~?」
「偽物の世界は……全て破壊する……そうしたら、本物のマスターだけが残るから……」
 ……あ~ぁ、ご愁傷さま、もう完全にイッちまってるぜ、コイツ。
 そうするとなると、ウヴァも真剣にイカロスの相手をするのは馬鹿馬鹿しく思えてくる。
 もうこの際だ、嘘でもなんでもいい。
 適当なこと言って手懐けて、あとは放置でいい。
「まあまあ待てって、ちょっと落ちつけよイカロス」
「お前も知ってんだろ? その偽物の世界ってのにもルールってモンがあるんだ」
「そのルールには誰も逆らえねー。グリードの俺も、参加者のお前も、例外なく、だ」
「お前も今、メダルがなくて戦えねーんだろ? それが何よりの証拠じゃあねーか~?」
 イカロスの奴が、ハッと驚いた顔でウヴァを見上げる。
「なんだってメダル切れ起してることがバレちまったのか? そんな顔してるなァ」
「そりゃあ、お前みたいなキレたヤツが未だに俺に襲いかかってこねーんだ……」
「ブッ殺す、ブッ殺すといいながら一向に手を出してこねーんだぜ? おかしいだろ」
「だったらよォー、もうメダル切れしか考えられんだろ? それくらい俺にだってわかるぜ」
 図星を突かれた様子で、イカロスは目を伏せる。
 ウヴァはさらに力を込めて言った。
「いいか? お前みたいなヤバい奴はなァ……!」
「『ブッ殺す』、と心の中で思ったならッ!」
「その時スデに行動は終わっているモンなんだよッ!!」
 イカロスがウヴァに襲い掛からない理由はそれしかない。
 破壊するつもりだったなら、もうとっくに破壊に掛かっているハズだ。
 ついでに、お前にメダルがありゃあ今頃俺はヤバかったぜ~、とも付け足しておく。
 見透かされたイカロスは少しむっとした顔をしたが、何も言い返さなかった。
「まあ安心しろよイカロス、言ったろ? 俺はオメーの味方だ」
「味方じゃない……私の記憶に……ないから……」
「いいから聞けよ、俺の言う通りにすりゃあ、マスターにも会えるんだからよォー」
「……マスターに……会える……?」
「ああそうだッ! 会えるぜッ!!」
「どうすれば……」
 ここまでくればもう簡単だ。
 偽物の世界の住人の言葉とはいえ、マスターに会えるとなれば話は別だ。
 恋は盲目、という奴か。これだから恋する乙女(笑)はチョロいのだと心中で笑う。
「いいか、今のお前は無所属だ。無所属はどんなに頑張っても勝ち残ることはない……」
「ムカつくのはわかるが、ルールだからな。どんなに嫌がってもルールには逆らえん」
「だからメダルが切れちまったお前は、ウラヌスクイーンの力も使えねーってワケだ」
 イカロスは、小さくコクリと頷いた。
 どうやら自分の置かれている状況はとりあえず理解してくれたらしい。
「困ったよなァ、それじゃあマスターに会いに行く途中で襲撃されるかもしれねー」
「だがな、俺と手を組めば別だ。俺の陣営に入るなら、お前にメダルをくれてやる」
「ついでに、だ。お前のマスターも緑に引き込みゃ、二人で一緒に帰ることも出来る」
「どうすりゃいいかって? 簡単だ、そいつんとこの陣営リーダーをブッ殺しゃいいんだよッ!」
「いいや、緑陣営以外は全部ブッ殺していい! そしたらマスターと一緒に帰れる!」
「そこら辺のナンパ道路やクラブで『ブッ殺す』『ブッ殺す』って大口叩いて仲間と
 慰め合ってる負け犬どもとワケが違うってことォ、見せつけてやりゃあいいッ!!」
「だってよォー、お前のマスターへの覚悟ってのはそんなクズどもとは違うんだろ?」
 ふふっ、とわざとらしく笑って、ウヴァは続ける。
「なんたってそういうルールだからなぁ、面倒だがこれは仕方のないことなんだよ」
「ルールには従わなきゃあならない。じゃなきゃマスターと一緒には帰れないからなァ~……」
「お前も馬鹿じゃあねーんだ、それくらいわかるだろ? ン~?」
 イカロスは、短い逡巡ののちに、再び小さく首肯した。
 交渉は成立だ。ウヴァは、自分の中のセルメダルをイカロスに投入した。
 時刻は、放送開始の五分前だった。放送が始まればイカロスは赤に自動復帰する。
 今このタイミングでウヴァがイカロスを引き込めたのは本当に運が良かった。
 イカロスの首輪のランプが紫から緑に変わるのを見届けたウヴァは、
「ところで、だ。お前コアメダルは持ってるか?」
「……二枚だけ」
 そういって取り出したコアは、無色透明となった二枚。
 クジャクのコアと、ライオンのコア。アンクカザリのコアだ。
 だったら用無しだ、緑だったらそれだけ貰おうと思ったのだが……
「その二枚、もう使えねーのか」
「……もう、使ったから」
「じゃあ俺の二枚と交換してやるよ」
 そういって、エビとカニの黒コア二枚を取り出すウヴァ。
 どうせコアメダルは一定時間が経過すればまた使用可能になる。
 緑でない時点で、黒だろうが赤だろうが黄だろうがなんだっていいのだ。
 二人の間を四枚のコアが通過して、それぞれが危なげなくメダルをキャッチ。
 次にウヴァが、身体から五十枚分のセルメダルを放出させた。
 それらは自動的にイカロスの首輪に吸収されていった。
“どうせ俺には貯蓄メダルもあるからな、五十枚くらい屁でもないぜ”
 あとでATMでメダルをおろしておこう。
 そう心に決めながら、十分な補給を済ませたイカロスに、
「合計百五十枚分だ、こんだけありゃ充分だろ?」
「ンン? なんだァ? 足りねえ? だったらあとは自分で補充するんだなァ」
「なあに簡単さ、緑以外のヤツらはぜ~んぶ偽物だからな、皆殺しにしてやりゃあいい」
「一人殺しゃあそれだけで数十枚、もっと殺しまくればメダルもザックザクってワケだ」
「……おっと! くれぐれも言っておくが、緑陣営の奴は殺すんじゃあねーぞ?」
「緑が優勝できなきゃあ、お前もマスターと一緒に帰れなくなっちまうからなぁ」
 そんな風に語りかける。
 イカロスは、わかったのかわからないのか、黙ったまま何も言わなかった。
 こういう人形みたいなヤツは何を考えているのかわからないから苦手だ。
 何を考えているのかわからない、カザリみたいなヤツはみんな苦手だ。
 この女はすでに緑陣営の強力な兵器と化した。
 これ以上ウヴァが一緒にいてやる必要はない。
 むしろ一緒にいたくない。
 再びバイクに跨りながら、ウヴァは言った。
「最後に一つだけ教えてやるよ」
「桜井智樹は、白陣営にいるぜ」
「ブッ殺すなら、白のリーダーだ」
「そうすりゃ桜井は無所属になる」
「そしたらまた俺のとこに連れてこいよ」
「この俺が、お前らが一緒に帰るために一肌脱いでやるぜ」
 なんとも心の広い、配下の心を集めることに長けた陣営リーダーである。
 そんな自分に酔いしれいい気分に浸りながら、ウヴァはバイクを発進させる。
 イカロスはウヴァを追いかけようともしなかった。
 ――間もなく、放送が始まった。


【一日目-夕方(放送直前)】
【E-5/市街地 中心よりやや南西寄り】

【ウヴァ@仮面ライダーOOO】
【所属】緑・リーダー
【状態】健康、絶好調、大満足
【首輪】270枚:250枚(増幅中)
【コア】クワガタ(感情)、カマキリ×2、バッタ×2、サソリ、ショッカー、ライオン、クジャク、カメ
   (ライオン、クジャク、カメの三枚は一定時間使用不可)
【装備】バースドライバー@仮面ライダーOOO、バースバスター@仮面ライダーOOO、サタンサーベル@仮面ライダーディケイド
【道具】基本支給品×3、参加者全員のパーソナルデータ、ライドベンダー@仮面ライダーOOO、メダジャリバー@仮面ライダーOOO、
    ゴルフクラブ@仮面ライダーOOO、首輪(月影ノブヒコ)、ランダム支給品0~4(ウヴァ+ノブナガ+ノブヒコ)
【思考・状況】
基本:緑陣営の勝利。そのために言いなりになる兵力の調達。
 0.あとでATMからセルを補充しておくか。
 1.もっと多くの兵力を集める。
 2.月影を倒したネウロを警戒。下手に戦わない。
 3.屈辱に悶えるラウラの姿が愉快で堪らない。
 4.緑陣営の兵器と化したイカロスに多大な期待。
【備考】
※参戦時期は本編終盤です。
※ウヴァが真木に口利きできるかは不明です。
※ウヴァの言う解決策が一体なんなのかは後続の書き手さんにお任せします。
※イカロスという最強クラスの兵器を味方に引き込めたので大変満足しています。
 その影響でメダルがどーんと二十枚も増加しました。


【イカロス@そらのおとしもの】
【所属】緑
【状態】健康、ある程度落ち着いた
【首輪】50枚:0枚
【コア】エビ、カニ
【装備】なし
【道具】基本支給品×2、アタックライド・テレビクン@仮面ライダーディケイド
【思考・状況】
基本:本物のマスターに会うため、偽物の世界は壊す。
0.マスターと緑陣営以外の参加者を皆殺しにすればマスターと一緒に帰れる?
1.本物のマスターに会う。
2.嘘偽りのないマスターに会う。
3.共に日々を過ごしたマスターに会う。
4.ルールには逆らえない。従えばマスターと元の日常に帰れるらしい。
【備考】
※22話終了後から参加。
※“鎖”は、イカロスから最大五メートルまでしか伸ばせません。
※“フェイリスから”、電王の世界及びディケイドの簡単な情報を得ました。
※このためイマジンおよび電王の能力について、ディケイドについてをほぼ丸っきり理解していません。
※「『自身の記憶と食い違うもの』は存在しない偽物であり敵」だと確信しています。
※「『自身の記憶にないもの』は敵」かどうかは決めあぐねています。
※最終兵器『APOLLON』は最高威力に非常に大幅な制限が課せられています。
※最終兵器『APOLLON』は100枚のセル消費で制限下での最高威力が出せます。
 それ以上のセルを消費しようと威力は上昇しません。
 『aegis』で地上を保護することなく最高出力でぶっぱなせば半径五キロ四方、約4マス分は焦土になります(1マス一辺あたりの直径五キロ計算)。
※消費メダルの量を調節することで威力・破壊範囲を調節できます。最低50枚から最高100枚の消費で『APOLLON』発動が可能です

【アタックライド・テレビクン@仮面ライダーディケイド】
 シャルロット・デュノアに支給。
 ディケイドが使用する事で、クウガ~キバまでの平成九人ライダーの最終フォームを同時に召喚、
 ディケイド自身と、九人ライダー全員の必殺技を一斉に発動させるアタックライドカード。
 本ロワでのこのカードは、一度でも使用すると消滅する。

          ○○○

「今までのメイド装束は……フェイリスの仮初の姿――」
「今ここに、全ての封印を解き放ち、真の姿を解放するニャッ!!」
 高らかな宣言。そこにいるのは、もはや一介のメイドなどではない。
 純白のワンピースタイプの制服。首元で揺れる青く清楚なリボン。
 フェイリスの一回転に合わせて、短いスカートがひらりと舞う。
 制服に入った赤いラインのワンポイントが可愛らしい。
 前から引き継いでいるのは、靴とニーソックス、そして猫耳だ。
 自らも猫の手をしながら、ラウラの隣でポーズを決める。
 こうして同じ制服で並び立つと、とても見栄えがいいように思えた。
「……随分と気に入っているようだな……」
「フェイリスは形から入るタイプなのニャ」
 無事生還するための可能性も見出したのだ。
 心機一転、気分を入れ替えて、フェイリスは生まれ変わったのだ。
 今までの姿は、闇の呪縛に抗うための拘束具にすぎず――
 光が見えた今、今まで共に闘ってくれた衣装に感謝の思いを懐きながらも、
 それすらも脱ぎ捨て、新たなる一歩を踏み出す必要があった。
 これは、言わばフェイリスの新フォームともいえるのだ。
『新フォームと言やよォー、これで俺たちも超クライマックスになれるワケだよな』
「ニャニャ? すーぱーくらいまっくす……ニャ?」
『フッ……満を持して……我、ここに降臨したからには……それくらい造作もなかろう』
 頭の中で、白い鳥の姿をしたイマジンが偉そうに言った。
 彼はモモタロスらの仲間で、その名をジークというらしい。
 ケータロスに憑依させられていたのだが、今の今まで眠っていたのだとか。
 こんな状況でもグースカ寝ることが出来るのだから、なるほど確かに大物である。
 曰く、ほかのイマジンよりも多少特別な存在で、"存在の強さ"自体も上位なのだとか。
 その気になれば生身のフェイリスの身体にも憑依して使える、と本人は言うが、しかし。
『そんなことをする意味がないからな。雑魚の相手は家来のお前たちに任せる。我は眠っているぞ』
 と、こんなことを言うのだ。
 本人に戦う気がないし、何もする気がないというなら、居ないも同然だ。
 四人のイマジンたちも、ジークの言動には呆れながらも何も言おうとはしない。
 もうジークのそういう態度にはすでに慣れてしまっているのだろう。
「……で、すーぱーくらいまっくすって何ニャ?」
「ん、スーパークライマックス? 何の話だ」
「ごめんニャ、ラウニャンに言ってるんじゃないのニャ」
「…………そ、そうか……」
 ヤバい人を見る目で、ラウラはフェイリスを見ていた。
 そんな痛い視線など意に介さず、フェイリスは問いを続ける。
「もしかして、フェイリスのように禁断の姿へ覚醒するのかニャ!?」
『あー……まぁ、そんなトコだ。あながち間違っちゃいねーよ』
『ま、超クライマックスになれれば、実際ボクらは敵なしだろうね』
『またあのセシリアとかいうヤツが襲ってきても、今度はやっつけれるよね~』
「そんなに凄いのかニャ? その超クライマックスって」
 超クライマックス。
 それは、電王全フォーム中最強にして最速、最終形態の姿。
 五人のイマジンの心を一つにして、空翔ける電王となるのだ。
 確かに、その姿になれれば、空を飛ぶISとも戦えるのだろう。
 だが、フェイリスはそれを素直に喜べずにいた。
「でも……戦う力があったって……」
『フェイリス……お前、戦うのが不安なのか』
 モモタロスの問いに、フェイリスは緩い首肯で返す。
 戦いとは、すなわち殺し合いだ。
 さっきのセシリアとイカロスがやっていたことだ。
 フェイリスには誰かを殺す覚悟などないし、そんな覚悟はしたくもない。
 そう思い悩むフェイリスに、モモタロスは静かに言った。
『そうかよ……だったら、無理に戦えとは言わねえよ』
「え……?」
 モモタロスがそんなことを言うのは、意外だった。
『お前が本当に守りたいものが出来た時はよ……俺たちが力を貸してやる』
「モモニャン……」
『ヘッ、そんなしみったれた顔すんじゃねーよ!
 それまでは俺たちもじっくり待っててやらぁ』
 てっきりモモタロスは、逃げるな!戦え!と主張するだけだと思っていたのに……
 今まで何度も戦うチャンスが巡って来ていながら、モモタロスは変身を強要しなかった。
 それは、彼らはずっとフェイリスに気を遣ってくれていた、ということなのか。
「モモニャンは……守るべきものが何か、とかって……わかってるのニャ?」
『あ? そんなモン知ったこっちゃねーよ。
 けどな、守りたいって思ったら、そん時ゃあ戦う時だろうが』
「……そっか」
 モモタロスは、彼らイマジンは、何を守らなければならないのかを知っている。
 そして、それを守るために、命をかけて戦う覚悟を持っている。
 今の一瞬の会話でフェイリスは、そういう"自分にないもの"を見た。
 人の命を守らなければならないとか、そういってしまえば簡単な話だ。
 だが、そんな素朴な正義感だけで人は命を投げ出して戦えはしない。
 それが何なのかわかった時、フェイリスは彼らと一緒に戦えるのだろうか。
「いつか、フェイリスもみんなみたいに戦える時が来るのかニャ……」
『ま、焦らなくてもいいんじゃない。ボクらはそれまで逃げも隠れもしないし』
『俺らはそれまで口出しせえへん。困った時だけ頼ってくれたらええ』
 ウラタロスに続いたのは、ついさっきまで寝ていたキンタロスだった。
 彼らは基本的にフェイリスの行動に口出しをしないし、無理にでしゃばりもしない。
 時には居ないも同然かと思しき時もあるが、それも彼らなりの優しさなのだろうか。
 ともかく、この言葉のおかげでフェイリスが安心したのは確かだった。
『さ、ラウラちゃんとももっとお話ししたいんでしょ?
 ボクらは裏に引っ込んでるから、また困った時に呼んでよ』
「うん、ありがとニャ……ウラニャン」
 イマジン四人に対する気負いがずっと楽になった。
 彼らはいずれも野上良太郎と共にずっと戦い続けてきた戦士たちだ。
 子供っぽくても、実はフェイリスよりもずっと大人びている。
“フェイリスも出来る限りは自分で頑張るニャ……!”
 ギリギリまで頑張って、ギリギリまで踏ん張って。
 それでも……ピンチの連続で、どうにもなくなった時が来るまでは。
 もうそれ以上何も言わなくなったイマジンたちに心の中でお礼を言いながら、
「ラウニャン、お待たせしたニャ!」
「……大丈夫、なのか……?」
「えっ? 何がニャ?」
 突然話しかけてきたフェイリスに、おずおずと質問するラウラ。
「その……言いにくいんだが……頭の方、とか……」
「フェイリスの中には、人よりちょっぴり多く魂が宿っているのニャ」
「そ、そうか……まぁ、そういうこともあるかもしれないな……」
 すでに完全にヤバい人扱いをされていた。
 だがしかしフェイリスにとってそんなものは日常茶飯事。
 とくに気にすることもないのだが……しかし、ふざけていると思われたくはなかった。
「ラウニャン、これだけは言っておくけど……フェイリスは真剣ニャ」
 ラウラがじっとフェイリスの眼を見る。
 この時ばかりはフェイリスもへらへら笑えなかった。
 だが、そんなフェイリスの表情を見て、ラウラは、
「……どうやらその言葉だけは本当のようだな」
「"だけ"じゃないニャ。フェイリスの中に五つの魂が宿ってるのも本当ニャ!」
「ま、まぁそれは確かめようがないから今は保留ということにしよう」
「むう……なんだか微妙に納得いかニャいけど仕方ないニャ……」
 イマジンたちは、電王とやらに変身した時しか表には出れない。
 だから、今この場で彼らの存在を証明する手立ては何もなかった。
 しかし、ムキになって説明をする必要もないと、今では思う。
 無理に存在を主張しなくたって、たとえ黙っていても、彼らはそこに居る。
 いつかフェイリスと一緒に戦える時が来るまで、じっと待っているのだから。
 ――それが、絆というものだ。
「さあ、ラウニャン、早速アルニャンとセシニャンを探しに行くのニャ!」
「待て、何処を探しにいく気だ?」
「……アテはないニャ」
 はぁ、と嘆息するラウラだった。
 そのラウラの嘆息をかき消すように、放送が始まった。


【一日目-夕方(放送直前)】
【E-4/市街地】

フェイリス・ニャンニャン@Steins;Gate】
【所属】無所属
【状態】健康、戦いに対する不安、イマジンズへの信頼
【首輪】100枚:0枚
【装備】IS学園女子制服@インフィニット・ストラトス
【道具】IS学園男子制服@インフィニット・ストラトス、
    デンオウベルト&ライダーパス+ケータロス@仮面ライダーディケイド
【思考・状況】
基本:仲間と共にコアメダルを全て集めて脱出し、マユシィを助けるニャ。
0.今はまだ、誰かと戦う覚悟はニャいけど……いつかはフェイリスも……?
1.アルニャンとセシニャンを止めなくちゃいけニャい!
2.凶真達とも合流したいニャ!
3.変態(主にジェイク)には二度と会いたくないニャ……。
4.イマジンのみんなの優しさに感謝ニャ。
5.世界の破壊者ディケイドとは一度話をしてみたいニャ!
6.ラウニャンに人殺しはさせたくニャい。とくに友達を殺すニャんて……
【備考】
※電王の世界及び仮面ライダーディケイドの簡単な情報を得ました。
※モモタロス、ウラタロス、キンタロス、リュウタロス、ジークが憑依しています。
※イマジンがフェイリスの身体を使えるのは、電王に変身している間のみですが、
 ジークのみは特別で、その気になれば生身のフェイリスの身体も使えるようです。
※タロスズはベルトに、ジークはケータロスに憑依していました。
※ジークがまだフェイリスを認めていないので、ウイングフォーム及び超クライマックスフォームにはなれません。通常のクライマックスフォームまでなら変身できます。
※イマジンたちは基本的に出しゃばって口出しする気はありません。フェイリスの成長を黙って見届けるつもりです。

【IS学園制服セット@インフィニット・ストラトス】
 シャルロット・デュノアに支給。
 IS学園指定の白い制服で、ビニール袋に入れて支給されている。
 シャルのための着替え用で、男性用・女性用の両方が用意されていた。

ラウラ・ボーデヴィッヒ@インフィニット・ストラトス】
【所属】緑
【状態】ダメージ(小)、疲労(小)、精神疲労(大)、力への渇望、セシリアとウヴァへの強い怒り(ある程度落ち着いた)
【首輪】80枚(増加中):0枚
【コア】バッタ(10枚目):1(一定時間使用不可)
【装備】シュヴァルツェア・レーゲン@インフィニット・ストラトス
【道具】基本支給品、魔界の凝視虫(イビルフライデー)×二十匹@魔人探偵脳噛ネウロ、ランダム支給品0~2(確認済)
【思考・状況】
基本:グリードに反抗する仲間とコアメダルを集めて優勝し、生還する。
 0.フェイリスは本当に大丈夫なのか……? 少し不安
 1.セシリアを止める。無理なら殺すことにも躊躇いはない。
 2.陣営リーダーとして優勝するため、もっと強い力が欲しい。
 3.もっと強くなって、次こそは(戦う必要があれば、だが)セイバーに勝つ。
 4.一夏やシャルロットが望まないことは出来るだけしたくはない。
【備考】
※本当の勝利条件が、【全てのコアメダルを集める事】なのでは? と推測しました。
※"10枚目の"バッタメダルと肉体が融合しています。
 時間経過と共にグリード化が進行していきますが、本人はまだそれに気付いていません。


【全体備考】
※シャルの支給品残り二つは「アタックライド・テレビクン」と「IS学園制服セット」でした。
※ファイズギアがケースごとブルーティアーズのレーザーに貫かれ完全に破壊されました


078:ナイトメア・ビフォア(前編) 投下順 080:姉妹と兄弟とワイルドカード
時系列順
072:はみだし者狂騒曲 セシリア・オルコット 085:さよならの時くらい微笑んで
ラウラ・ボーデヴィッヒ 105:破壊者と中二病が出逢う時
ウヴァ 103:綿棒の報い~イジメ、ダメ!~
073:流浪の心 イカロス 096:アンブレイカブル・シャドームーン
フェイリス・ニャンニャン 105:破壊者と中二病が出逢う時


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最終更新:2013年10月02日 00:23