地図上では、現在の居場所は中心部……寄り、である。
寄り、というのは、中心部ではない、ということだ。
ウヴァの走行コースは中心部だけは確実に避けているのだった。
“ヤバい奴が集まってそうな中心部は極力避けて通った方がいいだろ”
……そういう考えだった。
一応今のウヴァなら大体の相手には勝てる自信がある。
だが、それでも過信は禁物だ。この場にはヤバい奴が沢山いる。
例えば魔人とか。例えばエンジェロイド……とくに、
カオスとか。
奴らはバースとかオーズとか、そういう仮面ライダーの比ではない。
ウヴァはこういう男だ。こういうどうにもコスいやり方をする男なのだ。
だからこそ、一生懸命頑張っている奴よりも、ズル賢く生き残れるのだ。
「おっ?」
そんなウヴァが見つけたのは、一人とぼとぼと歩く少女。
赤い髪の毛。コンパクトに折り畳んだ天使の羽根。
ウヴァは、この場の参加者の大半は把握している。
あれは、エンジェロイドの
イカロス……ウラヌスクイーンだ。
とくにヤバい参加者筆頭のヤツと早くも遭遇しちまった。
“……いや待て、アイツ、なんで歩いてんだ? 飛びゃあいいものを……”
イカロスは、自分の首につながった鎖を辿って歩いていた。
鎖はイカロスの目前ですぐに途切れているが、それでもソレを辿っている。
おそらく
桜井智樹に会おうというワケだろうが、ならば尚更飛べばいい。
一体どういう理由があって、あの女は歩いているのだろうか。
“まさか……メダル切れか? あいつ燃費悪そうだしな”
……だとするなら、今のイカロスにろくな力はない。
本来ならばエンジェロイドはヤバい敵なのだが、今なら――
“――容易く潰せるッ!!”
そう思い、ニヤリと笑うウヴァだったが、そこでふいに気付く。
イカロスの首輪のランプは、赤色ではなく……紫色になっていた。
“ハッ……! ハッハハハッ! なんだ、あのチビ、もう脱落したのか!”
それが意味するところは、赤陣営のリーダーはすでにいないということだ。
であるならば、次の放送までの間、赤陣営の参加者は全員無所属になる。
だったら何も今すぐにイカロスを潰しに掛かる必要はどこにもない。
むしろ、放送までの残り時間は十分を切っている、急ぐべきだ。
ウヴァは再びバイクを走らせ、イカロスの前まで進み出た。
「よォー、ちょっと待てよ、イカロス~!」
「……あなたは、私の記憶にない……だから……敵……ッ!」
「ちょ! 待て待て! 俺はお前の味方だぜ、イカロスゥ~!?」
「私の記憶にない者は……全て敵……破壊して……マスターに会いにいく」
なんだコイツは、頭おかしいんじゃあねーのか? と、そう思った。
だが、考え方を改めれば、コイツは兵力としては素晴らしい逸材だ。
融通の利かない人形のようなコイツを味方につけることは大きなプラスだ。
ウヴァは両腕を広げ、無抵抗であることを示しながら語りかける。
「俺を破壊したって愛するマスターには会えねーぜ~?」
「偽物の世界は……全て破壊する……そうしたら、本物のマスターだけが残るから……」
……あ~ぁ、ご愁傷さま、もう完全にイッちまってるぜ、コイツ。
そうするとなると、ウヴァも真剣にイカロスの相手をするのは馬鹿馬鹿しく思えてくる。
もうこの際だ、嘘でもなんでもいい。
適当なこと言って手懐けて、あとは放置でいい。
「まあまあ待てって、ちょっと落ちつけよイカロス」
「お前も知ってんだろ? その偽物の世界ってのにも
ルールってモンがあるんだ」
「そのルールには誰も逆らえねー。グリードの俺も、参加者のお前も、例外なく、だ」
「お前も今、メダルがなくて戦えねーんだろ? それが何よりの証拠じゃあねーか~?」
イカロスの奴が、ハッと驚いた顔でウヴァを見上げる。
「なんだってメダル切れ起してることがバレちまったのか? そんな顔してるなァ」
「そりゃあ、お前みたいなキレたヤツが未だに俺に襲いかかってこねーんだ……」
「ブッ殺す、ブッ殺すといいながら一向に手を出してこねーんだぜ? おかしいだろ」
「だったらよォー、もうメダル切れしか考えられんだろ? それくらい俺にだってわかるぜ」
図星を突かれた様子で、イカロスは目を伏せる。
ウヴァはさらに力を込めて言った。
「いいか? お前みたいなヤバい奴はなァ……!」
「『ブッ殺す』、と心の中で思ったならッ!」
「その時スデに行動は終わっているモンなんだよッ!!」
イカロスがウヴァに襲い掛からない理由はそれしかない。
破壊するつもりだったなら、もうとっくに破壊に掛かっているハズだ。
ついでに、お前にメダルがありゃあ今頃俺はヤバかったぜ~、とも付け足しておく。
見透かされたイカロスは少しむっとした顔をしたが、何も言い返さなかった。
「まあ安心しろよイカロス、言ったろ? 俺はオメーの味方だ」
「味方じゃない……私の記憶に……ないから……」
「いいから聞けよ、俺の言う通りにすりゃあ、マスターにも会えるんだからよォー」
「……マスターに……会える……?」
「ああそうだッ! 会えるぜッ!!」
「どうすれば……」
ここまでくればもう簡単だ。
偽物の世界の住人の言葉とはいえ、マスターに会えるとなれば話は別だ。
恋は盲目、という奴か。これだから恋する乙女(笑)はチョロいのだと心中で笑う。
「いいか、今のお前は無所属だ。無所属はどんなに頑張っても勝ち残ることはない……」
「ムカつくのはわかるが、ルールだからな。どんなに嫌がってもルールには逆らえん」
「だからメダルが切れちまったお前は、ウラヌスクイーンの力も使えねーってワケだ」
イカロスは、小さくコクリと頷いた。
どうやら自分の置かれている状況はとりあえず理解してくれたらしい。
「困ったよなァ、それじゃあマスターに会いに行く途中で襲撃されるかもしれねー」
「だがな、俺と手を組めば別だ。俺の陣営に入るなら、お前にメダルをくれてやる」
「ついでに、だ。お前のマスターも緑に引き込みゃ、二人で一緒に帰ることも出来る」
「どうすりゃいいかって? 簡単だ、そいつんとこの陣営リーダーをブッ殺しゃいいんだよッ!」
「いいや、緑陣営以外は全部ブッ殺していい! そしたらマスターと一緒に帰れる!」
「そこら辺のナンパ道路やクラブで『ブッ殺す』『ブッ殺す』って大口叩いて仲間と
慰め合ってる負け犬どもとワケが違うってことォ、見せつけてやりゃあいいッ!!」
「だってよォー、お前のマスターへの覚悟ってのはそんなクズどもとは違うんだろ?」
ふふっ、とわざとらしく笑って、ウヴァは続ける。
「なんたってそういうルールだからなぁ、面倒だがこれは仕方のないことなんだよ」
「ルールには従わなきゃあならない。じゃなきゃマスターと一緒には帰れないからなァ~……」
「お前も馬鹿じゃあねーんだ、それくらいわかるだろ? ン~?」
イカロスは、短い逡巡ののちに、再び小さく首肯した。
交渉は成立だ。ウヴァは、自分の中のセルメダルをイカロスに投入した。
時刻は、放送開始の五分前だった。放送が始まればイカロスは赤に自動復帰する。
今このタイミングでウヴァがイカロスを引き込めたのは本当に運が良かった。
イカロスの首輪のランプが紫から緑に変わるのを見届けたウヴァは、
「ところで、だ。お前コアメダルは持ってるか?」
「……二枚だけ」
そういって取り出したコアは、無色透明となった二枚。
クジャクのコアと、ライオンのコア。
アンクと
カザリのコアだ。
だったら用無しだ、緑だったらそれだけ貰おうと思ったのだが……
「その二枚、もう使えねーのか」
「……もう、使ったから」
「じゃあ俺の二枚と交換してやるよ」
そういって、エビとカニの黒コア二枚を取り出すウヴァ。
どうせコアメダルは一定時間が経過すればまた使用可能になる。
緑でない時点で、黒だろうが赤だろうが黄だろうがなんだっていいのだ。
二人の間を四枚のコアが通過して、それぞれが危なげなくメダルをキャッチ。
次にウヴァが、身体から五十枚分のセルメダルを放出させた。
それらは自動的にイカロスの首輪に吸収されていった。
“どうせ俺には貯蓄メダルもあるからな、五十枚くらい屁でもないぜ”
あとでATMでメダルをおろしておこう。
そう心に決めながら、十分な補給を済ませたイカロスに、
「合計百五十枚分だ、こんだけありゃ充分だろ?」
「ンン? なんだァ? 足りねえ? だったらあとは自分で補充するんだなァ」
「なあに簡単さ、緑以外のヤツらはぜ~んぶ偽物だからな、皆殺しにしてやりゃあいい」
「一人殺しゃあそれだけで数十枚、もっと殺しまくればメダルもザックザクってワケだ」
「……おっと! くれぐれも言っておくが、緑陣営の奴は殺すんじゃあねーぞ?」
「緑が優勝できなきゃあ、お前もマスターと一緒に帰れなくなっちまうからなぁ」
そんな風に語りかける。
イカロスは、わかったのかわからないのか、黙ったまま何も言わなかった。
こういう人形みたいなヤツは何を考えているのかわからないから苦手だ。
何を考えているのかわからない、カザリみたいなヤツはみんな苦手だ。
この女はすでに緑陣営の強力な兵器と化した。
これ以上ウヴァが一緒にいてやる必要はない。
むしろ一緒にいたくない。
再びバイクに跨りながら、ウヴァは言った。
「最後に一つだけ教えてやるよ」
「桜井智樹は、白陣営にいるぜ」
「ブッ殺すなら、白のリーダーだ」
「そうすりゃ桜井は無所属になる」
「そしたらまた俺のとこに連れてこいよ」
「この俺が、お前らが一緒に帰るために一肌脱いでやるぜ」
なんとも心の広い、配下の心を集めることに長けた陣営リーダーである。
そんな自分に酔いしれいい気分に浸りながら、ウヴァはバイクを発進させる。
イカロスはウヴァを追いかけようともしなかった。
――間もなく、放送が始まった。
【
フェイリス・ニャンニャン@Steins;Gate】
【所属】無所属
【状態】健康、戦いに対する不安、イマジンズへの信頼
【首輪】100枚:0枚
【装備】IS学園女子制服@インフィニット・ストラトス
【道具】IS学園男子制服@インフィニット・ストラトス、
デンオウベルト&ライダーパス+ケータロス@仮面ライダーディケイド
【思考・状況】
基本:仲間と共にコアメダルを全て集めて脱出し、マユシィを助けるニャ。
0.今はまだ、誰かと戦う覚悟はニャいけど……いつかはフェイリスも……?
1.アルニャンとセシニャンを止めなくちゃいけニャい!
2.凶真達とも合流したいニャ!
3.変態(主にジェイク)には二度と会いたくないニャ……。
4.イマジンのみんなの優しさに感謝ニャ。
5.世界の破壊者ディケイドとは一度話をしてみたいニャ!
6.ラウニャンに人殺しはさせたくニャい。とくに友達を殺すニャんて……
【備考】
※電王の世界及び仮面ライダーディケイドの簡単な情報を得ました。
※モモタロス、ウラタロス、キンタロス、リュウタロス、ジークが憑依しています。
※イマジンがフェイリスの身体を使えるのは、電王に変身している間のみですが、
ジークのみは特別で、その気になれば生身のフェイリスの身体も使えるようです。
※タロスズはベルトに、ジークはケータロスに憑依していました。
※ジークがまだフェイリスを認めていないので、ウイングフォーム及び超クライマックスフォームにはなれません。通常のクライマックスフォームまでなら変身できます。
※イマジンたちは基本的に出しゃばって口出しする気はありません。フェイリスの成長を黙って見届けるつもりです。