チンプイ(アニメ版)の最終回


はじめまして、
ルルロフです



マール星。
ワンダユウが、ルルロフ王子のもとを謁見している*1

ルルロフ「その後、どうだい? ワンダユウ」
ワンダユウ「はぁ…… その、まことに申し上げにくいのですが、未だ……」
ルルロフ「そうか」
ワンダユウ「すべては、私の努力が足りぬばかりに……」
ルルロフ「いや、爺のせいじゃないよ。やっぱり、僕が直接逢ったほうが──」
ワンダユウ「わぁ~っ! しかし、それは……」
ルルロフ「王室典範で固く禁じられている』と、いうんだろう?」
ワンダユウ「はぁ」
ルルロフ「でも、逢いたいんだ。エリさんに……」


エリの家の朝。

「3、2、1、0 !」

エリ「おはよう、チンプイ!」
チンプイ「おはよう、エリちゃん!」

エリ「行って来まぁす!」
チンプイ「行ってらっしゃい!」

エリと父・のどかが、桜並木に囲まれた小道を行く。

エリ「わぁ~、きれい!」
のどか「あぁ、きれいだなぁ」
エリ「でも、どんどん散っちゃって、なんだかもったいないなぁ……」
のどか「でも、今年散るからこそ、来年の桜がまた楽しみになるんじゃないかな」
エリ「そっか、そうだよね。そうだ、そうだ! さすがパパ、いいこというなぁ」
のどか「よせよ、照れちゃうなぁ」
エリ「純情!」
のどか「こらっ!」
エリ「じゃあねぇ!」


エリたちの学校の授業中。

先生「宇宙には無数の星があるが、これを分けると、恒星、惑星、衛星の3種類があるんだ。さて、恒星についての説明ができる者はいるかね?」
内木「はい!」
先生「よし、内木、答えてごらんなさい」
内木「はい。天球上での位置をほとんど変えない、空に見える、自分で光を出している星のことです」
先生「うぅむ、完璧だ!」
内木「いやぁ、簡単な問題ですから」
エリたち女生徒「内木さん、格好いい~!」
大江山「チッ!」


エリの家で、母の百合とチンプイがくつろいでいる。

チンプイ「ねぇ、ママさん。ラーメン食べてもいい?」
百合「食いしん坊ねぇ。いいわよ。食べ過ぎないようにね」
チンプイ「わぁい!」

チンプイは、大好物のラーメンにありつく。

チンプイ「ふふ、美味しそう! いただきまぁす! ズルズル。あぁ、幸せ! ……こうして僕がラーメン食べてると、決まって『大変だ大変だ』って、爺さんが飛び込んで来るんだけど、でも今日は大丈夫、フフッ! ズルズル」

そこへ、ワンダユウが飛び込んでくる。

ワンダユウ「大変だぁ! 大変だぁ! 大変だぁ!」
チンプイ「で、どう大変なの? 爺さん」
ワンダユウ「大変じゃ! チンプイ、チンプイ! ……おや? 顔はどうした、チンプイ?」
チンプイ「爺さんが逆さまなの!」

ワンダユウは慌てたあまりひっくり返っており、チンプイの下半身しか視界に入っていない。

ワンダユウ「あ、そうか」
チンプイ「もう、慌てもんだなぁ」
ワンダユウ「何を言ってるんだ! わしのニュースを聞けば、お前だって慌てるわい!」
チンプイ「だから何なの?」
ワンダユウ「実はな、ルルロフ殿下…… いかんいかん、誰が聞いてるかわからん。耳貸して。ゴニョゴニョ、ルルロフ殿下が、お忍びで……」
チンプイ「え~っ!? 本当にぃ!?」
ワンダユウ「本当に!!」
チンプイ「……大変だぁ~っ!! 大変だぁ! 大変だぁ!」
ワンダユウ「な、大変だろう?」


先生「よし、今日の授業はここまで」
内木「起立!」「礼!」
先生「じゃ、また明日な」

エリ「終った、終ったぁ!」
友人たち「エリ、一緒に帰ろうよ」
エリ「OK、OK~!」
内木「エリちゃん。ちょっと、話があるんだけど。帰り、一緒にいいかな?」
エリ「えっ? うん」


チンプイとワンダユウは、内木の部屋に上がり込んでいる。
奇妙な機械がある。

チンプイ「内木くん、いないね」
ワンダユウ「チンプイ。これが、19時間変身できる、科法『トッカエッコ・マーク2』じゃ」
チンプイ「じゃ、本当に、ルルロフ殿下は……」
ワンダユウ「うむ、間違いないはず」
チンプイ「確かめよう、タイムホールで! チンプイ! 昨日の夜を映し出せ! チンプイ~っ!」

別の時間に通じる「タイムホール」により、周囲は昨夜の光景となる。
内木が机に向かっている。

チンプイ「まだ何も起きてないみたいだよ」

突如、窓の外から光が差し込み、ルルロフ王子が姿を現す。

ルルロフ「こんにちは、内木くん」
内木「君は……!?」
ルルロフ「はじめまして。マール星の王子、ルルロフです」
内木「君がか…… でも、どうして僕のところへ?」
ルルロフ「実は、折り入って内木くんに、お願いがあるのです。1日だけ、内木くんにならせてほしいのです」

ワンダユウ「やはりな。よし、チンプイ、元に戻すのじゃ」
チンプイ「チンプイっ!」

周囲の光景が元に戻る。

ワンダユウ「今、内木くんにはルルロフ殿下の心が、マール星の殿下には内木くんの心が入っているのじゃ。よいな、チンプイ」
チンプイ「うん」
ワンダユウ「一刻も早く、内木くんを見つけるのじゃ!」
チンプイ「わかった!」


一方でエリは、内木と一緒に下校途中。

エリ「内木さん、話って?」
内木「あ、うん。これから僕が言うことを聞いても、びっくりしないでほしいんだ」
エリ「……?」
内木「実は……」

ガキ大将の大江山、その腰巾着の小政が現れる。

大江山「よぉよぉ、俺にも話を聞かせろよ」
小政「聞かせろよ」
大江山「どんな話なんだよ。えぇ、内木! イチャイチャしやがって!」

チンプイが飛んで来る。

チンプイ「チンプイっ!」

大江山たちの頭上に、雨雲が現れる。

小政「親分! これって、もしかして!?」

チンプイ得意の科法・人工降雨で、大江山たち目がけて雨が降り出す。
すかさず大江山たちは、傘をさす。

大江山「やったぜ、小政!」
小政「こんなこともあろうかと、用意しておいたんですよね!」
チンプイ「チンプイ~っ!」

傘の内側から雨が吹き出し、大江山たちはずぶ濡れとなる。

大江山「何でこうなるの~っ!?」

大江山たちが退散していく。

チンプイ「エリちゃん!」
エリ「ありがとう、チンプイ」
内木「ありがとう、チンプイ」
チンプイ「あっ! う、内木くん!?」
内木「やぁ」
チンプイ「あ、あの、内木くん、ワンダユウさんが捜してました」
エリ「どうしてワンダユウさんが、内木さんを捜してんの?」
チンプイ「うぐ、え、えっと…… そ、そうだ! 僕、ワンダユウさんに知らせて来なくちゃ! す、すぐに呼んで来るから、ちょっと待っててねぇ~!」

チンプイが飛び去る。

エリ「変なチンプイ。どうせワンダユウさんが来たって、またおかしな騒動を起こすだけなんだもん」
内木「……」
エリ「逃げちゃおっか?」
内木「えっ!?」
エリ「逃げちゃお、逃げちゃお!」

エリが内木の手を取り、駆けだす。
内木は戸惑っていたものの、次第にエリの陽気さにつられて、笑顔になる。

エリ「フフッ、逃げちゃお、逃げちゃお!」
内木「待ってよ、エリちゃぁん!」


内木の部屋で、ワンダユウが待っている。

ワンダユウ「変身時間はあと1時間11分11秒。チンプイの奴、内木くんに会えたじゃろうか?」
チンプイ「ワンダユウさぁん!」
ワンダユウ「おぉ、チンプイ! どうじゃ、見つかったか?」
チンプイ「エリちゃんと一緒」
ワンダユウ「よし、チンプイ! イチかバチか、科法で内木くんを引き寄せるのじゃ!」
チンプイ「わかった、チャレンジだよ!」
ワンダユウ「科法・内木くん、いらっしゃぁ~い!」

何かが2つ、空から飛んで来る。

チンプイ「2つだ!」
ワンダユウ「何と!?」

エリと内木のランドセルが、2人の顔面に激突。

チンプイ「し、失敗したみたい……」
ワンダユウ「だな……」


エリと内木が、町外れの丘にやって来る。

エリ「ここなら、誰にも邪魔されずに話ができるわ」
内木「そ、そうだね…… えっと…… な、何から話そうかな……」
エリ「──あなたがルルロフ殿下だ、ってことからにしたら?」
内木「うん、そうだ…… えっ!? どうしてそれを!?」
エリ「やっぱり! 女の子の勘を見くびってもらっちゃ困るわ。ちゃぁんとお見通しなんだから!」
内木「いや、騙そうとしたわけじゃないんだ。内木くんと話して、ちょっと借りてるんだ。でも、フェアなやり方じゃなかったよね。ごめん…… ルルロフ!」

あふれる光と共に、内木が姿を変えてルルロフ王子となり、エリの前に初めて姿を現す。

ルルロフ「はじめまして、ルルロフです」
エリ「はじめまして、春日エリです」
ルルロフ「えっと…… 何から話そうかな。……困ったなぁ」
エリ「どうしたの?」
ルルロフ「いざとなったら、何も言えなくなっちゃった。困ったなぁ……」
エリ「フフッ。今までたくさんのプレゼント、どうもありがとう。でも私、殿下との婚約なんて……」
ルルロフ「あっ、待って待って。僕だって、プレゼントを貰ってくれたから、すぐ結婚してくれなんて言うつもりじゃないんだ。ただ、少しでも僕のことをわかってもらおうと思って…… 強引すぎたかな?」
エリ「そうね…… 強引だわ。強引よ!」
ルルロフ「ごめん…… あの、取りあえず、友達になってもらえるかな?」
エリ「フフッ! そういうことなら、もちろん!」

エリの差し出す手を、ルルロフ王子が握り返す。

エリ「よろしく!」
ルルロフ「よろしく!」

ルルロフ「じゃあ、また」
エリ「またね」

しばし後、エリが目を開くと、内木が目の前にいる。

内木「エリちゃん!」
エリ「内木さん! お帰りなさい。どうだった、マール星は?」
内木「あはっ、知ってたのか」
エリ「うん!」
内木「それがね、すごいんだぁ!」
エリ「へぇ~っ!」


内木の部屋。
変身に使われていた「トッカエッコ・マーク2」は稼働を停止している。

ワンダユウ「止まっとる」
チンプイ「ってことは、元に戻ったってことだよね?」
ワンダユウ「まぁな。もう、わしゃ何のために、こんなに努力したんだぁ!?」

ワンダユウが「トッカエッコ」を蹴飛ばすと、機械が大爆発し、2人がひっくり返る。

チンプイ「知らんプイ……」


夜。
エリの家に、父・のどかが帰宅する。

のどか「ただいまぁ」
エリ「お帰んなさい!」

家族そろっての夕食。

のどか「今日はいいことあったかい、エリ?」
エリ「うん。まぁね」
百合「ほらほら、食べながらおしゃべりしないで」


そして、エリの部屋。

チンプイ「何だか、大変な1日だったなぁ……」
エリ「大変な1日だったなぁ……」
チンプイ「それで、どうだったの? ルルロフ殿下とは」
エリ「べ~つに」
チンプイ「あらら…… 爺さん、ガッカリするなぁ」
エリ「でも、友達になったわ」
チンプイ「本当にぃ!?」
エリ「悪い人じゃ、なさそうね」
チンプイ「爺さん、喜ぶぞぉ!」

突如、ファンファーレとクラッカーの音。
紙吹雪と紙テープが降り注ぎ、内木がワンダユウと共に現れる。

内木「おめでとうございまぁ~す!」
エリ「内木さん!? ワンダユウさんに科法かけられたのね!」
内木「あ、いや、ワンダユウさんに頼まれてやったんだけど……」
ワンダユウ「いやぁ、エリ様、おめでとうございます! ルルロフ殿下に置かれましては、内木くん・エリ様というご友人ができましたことを、ことのほかお喜びになりまして、こうしてご報告に参った次第です。今日は、お供の者も連れて参りました」

マール星人のジャラシー、ピヨピヨ、フクワウチ、デブラ・ムーたちも登場する。

一同「こんばんは~!」
ワンダユウ「はいっ! エリ様、ご婚約を~!」
エリ「嫌だぁ~っ!」
ワンダユウ「ご婚約を~!」
エリ「嫌だ嫌だぁ~っ!」

エリとワンダユウの追いかけっこ、マール星の一同の大騒ぎで、にぎやかに夜がふけてゆく。



私、春日エリ、12歳。
これからも毎日、
元気元気でがんばります。

じゃ、またね!



おしまい

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2021年03月19日 22:06

*1 これまでルルロフ王子の素顔は作中に登場しなかったが、この最終回でも画面には映らず、放映終了まで、ルルロフ王子の素顔は謎のままであった。