仮面ライダーアマゾンズ(シーズン2)の第1話

霧の満ちた森を、戦闘服姿の者たちが行く。
木々の中、ちぎれた異形の手足が見え隠れしている。

幼い少年が、血まみれの姿で泣き叫んでいる。
戦闘服姿の者たちが、少年を救い、銃を放つ。

異形の手足が肉片となって飛び散り、少年の慟哭が響く。

地平線の彼方に見える、アマゾンアルファの姿──


「まさか、アマゾンに育てられたって言うのか?」
「まぁ、その可能性も、というだけで、身元はまったく不明」

少年が、真っ白な検査室に閉じ込められる。

「成長の早さは、とてつもないです。ただ、ほとんど喋りません。我々を意図的に避けているというか」

少年が獣のように吠え、消毒服姿の者たちに噛みつく。

「お、おい!? 離せ!」「やめろ!」

少年は口を血で真っ赤に染めつつ、その者たちを威嚇する。
薬剤を注入され、少年が鎮まる。
その腕に、機械仕掛けの腕輪が巻かれる。



Episode 1
Neo




(『大丈夫…… 大丈夫だから』)

深夜、人通りのない街外れ。
主人公の少年・千翼(ちひろ)が項垂れている。
その脳裏で、女性と思しき声と共に、優しく誰かが彼を抱きしめている。

仲間の家出少年、長瀬裕樹が呼びかける。

裕樹「千翼!? 千翼! おい、聞こえてんのか? 千翼!」
千翼「……あぁ」」
裕樹「ボーッとしてんなよ。始めんぞ」

警官の自転車が、静まり返ったアーケード街を行く。
裕樹は仲間の山下琢己、北村健太と共に、バイクで密かに追う。

健太「狩り、開始」

裕樹たちが警官を、背後から金属バットで殴りつける。
警官が悲鳴を上げ、地面に転がる。
健太はその様子を、スマートフォンで配信し続ける。

裕樹たち「ハッハッハ!」「こんばんはぁ! チーム×(キス)でぇ~す!」
警官「お前たち…… 馬鹿な真似は、やめなさい」
裕樹「何言ってんだよ!? 今、正義の味方は俺たちだろぉ!?」

警官が銃を手にするが、裕樹がバットで銃を叩き飛ばす。

健太「ナイスバッティ~ング!」
裕樹「お前は、人食いの怪物『アマゾン』だってなぁ」

警官の肌に、異様な黒い血管模様が浮かび上がる。

警官「何の…… ことだか……」
裕樹たち「おおぉ!」「来る来るぅ!」

裕樹たちはバイクに飛び乗り、警官を跳ね飛ばして走り去る。
警官が蒸気と熱を吹き上げつつ、怪人態ヒョウアマゾンに変身する。

裕樹たちは嘲笑いつつ、バイクで走り去る。
ヒョウアマゾンが、獣のような脚力で彼らを追う。
千翼がその行先で、静かに佇んでいる。

裕樹たちを追うヒョウアマゾンを、千翼のバイク・ネオジャングレイダーが跳ね飛ばす。
バイクから降りた千翼が、変身ベルト・ネオアマゾンズドライバーを腰に巻く。

『Neo』

千翼「アマゾォン!!」

激しい熱と衝撃を放ちつつ、千翼もまた変身する。
かつてのアマゾンアルファやオメガ同様の異形の体に、金属状の装甲を纏った戦士、アマゾンネオ──!

アマゾンネオとヒョウアマゾンの戦いが始まり、獣のようなネオの攻撃が次々に決まる。


一方、対アマゾン特務機関、特定有害生物対策センター(Competitive Creatures Control Center)、通称4C(フォーシー)の、黒崎 武と札森一郎。
車内で、札森はスマートフォンで、チーム×の配信する動画を見て、彼らの動きを監視している。

札森「お──、動いてますよ。例のチーム×」
黒崎「クソガキどもが。てめぇらのやってるアマゾンの正体も知らねぇで、はしゃぎやがって」

別の車が近づいてくる。
黒崎らの後ろの座席には、物語のヒロインの少女イユが、無表情に佇んでいる。

黒崎「来たな。イユ、確認しろよ」
イユ「ターゲット、確認──」
黒崎「福田」

外では、シーズン1での志藤たち駆除班の一員、福田が銃を構えて待機している。

福田「了解」

福田が先の車目がけ、銃撃する。
車が横転し、窓から体液を滴らせつつ、異形の腕が伸びる。
黒崎や他の者たちが詰め寄り、次々に銃撃を加え、さらに火炎放射器の炎を浴びせる。


一方、アマゾンネオたちの戦い。
ネオの右腕からブレードが伸び、その斬撃がヒョウアマゾンの右腕を叩き斬る。
絶叫するヒョウアマゾンに、さらにネオが斬撃を加え、ヒョウアマゾンが沈黙する。
なおも動かなくなったヒョウアマゾン目がけ、アマゾンネオは狂ったように滅多切りを浴びせる。
体液と肉片が、激しく飛び散る。
裕樹たちもさすがに、目を覆う。

健太「ちょい、ちょい。あんまエグイと、アップできねぇじゃん」
裕樹「またかよ。千翼! 撤収、撤収!」


黒崎たちのもとでは、目の前で先の車が炎上している。

黒崎「ターゲット、沈黙── 撤収」

イユは無言で立ち尽くしている。

黒崎「出番、なかったな」


裕樹「ハッハァ! 最高! 超気持ちいい──! っていうか千翼、何だよ、さっきの!? 熱くなりすぎんなって言ってんだろ!?」
千翼「別に…… 熱くなんて、なってない」
裕樹「ダラダラやってんのがダセェってこと!」
健太「ま、いいじゃん! だって千翼のおかげで、フォロワー500万人越えだぞ。動画の再生数もすげぇし、金なんかめっちゃ入ってくんだからな!」
琢己「そうそう! それにアマゾン狩り、超面白いっスよぉ! 長瀬くんも最近『つまんねぇ』とか言わなくなったじゃないっスか!」
裕樹「あ──、でもな、俺はもっと、すっきりやるのが好みなわけ!」
琢己「長瀬くん、オシャレだからな──!」
裕樹「てめぇ、馬鹿にしてんのか!? ハッハッハァ!」


翌朝、4Cの社屋。
シーズン1での野座間製薬の橘が局長を勤め、携帯電話で誰かと話している。

橘「はい、やはり今回も新種のアマゾン体でした。もうご報告するほど珍しくもありませんが」
相手「まったく。ようやく5年前の事件が収束するかと思ったら、今度は新しいアマゾンか。で、解決の目途は? 政府としては、長引いている理由を国民に説明──」
橘「とんでもない、長官。事態は5年前より深刻です。いいですか? 新種から発見された新しいアマゾン細胞、溶原性細胞と名付けましたが── これは、人間に感染します」
相手「感染だと!?」
橘「えぇ。今回のアマゾンは人間が変貌したものであり、しかも、今なお増殖中です。もちろん、極秘事項ですよ。ついては、センターへの予算増額をお願いしたいと」
相手「し、しかし、そんな予算は……」
橘「捻出していただきたい! では、失礼します」

野座間製薬の水澤令華の秘書であった加納が、現在は橘に秘書として付き従っている。

橘「政府は小回りが利かない。加納くんを見習ってほしいよ」
加納「この4Cは政府と野座間製薬の共同出資ですから、私も野座間から派遣されただけのことで」

加納が用意したタブレットの画面を通じ、朝の会議が始まる。
画面には、黒崎の率いる黒崎隊や、情報部などの各部隊の姿。

橘「諸君、おはよう! さて、黒崎隊。昨夜の出動、ご苦労だった。やはり新種だったよ。それについて、情報部から報告がある」
情報部「はい。課題だった溶原性細胞の感染ルートについてですが、我々は一つの仮説を立てました。溶原性細胞はウィルスより大きく、水分がなければ即座に死滅するため、呼吸や接触などによっての感染はあり得ません。また、感染者から人への二次感染もないことが確認されています。つまり感染源は同一と言うことになり、感染者の生活習慣、行動範囲などをつぶさに洗い出し──」


一方、街外れの地下のクラブ。
裕樹と琢己がはしゃいでいるところへ、健太が食事を運んで来る。

健太「ジャーン! 動画の再生数上がったし、取敢えずはピザ食べ放題!」
琢己「おぉっ! やったぁ!」
裕樹「またかよ!? たまには焼肉とかねぇのかよ!? 金あんのに」
健太「だって裕樹、外食いに行くの面倒くさがんじゃん」
琢己「すげぇ、すまそう!」
健太「せぇの」
一同「いただきま──す!」

喜々としてピザを頬張る一同をよそに、千翼はゼリー飲料を口にしている。

琢己「ねぇ千翼。おめぇ、そんなもんばっか食って飽きないの?」
千翼「別に……」
健太「千翼は食べること自体、嫌いなんだよなぁ」
琢己「そうなの!? 人間の基本じゃない?」
健太「嫌いとかじゃねぇよな」
琢己「嫌いとかじゃないよ。ただ普通に、おなかが空いたから食べる、それだけじゃない?」
千翼「食べてる姿って、汚らしいっていうか……」
健太「確かに! 確かに弘樹は汚い! 好き嫌いも多いしな!」
裕樹「悪かったな! アマゾンが人食ってるよりマシだろ!? 千翼、お前もこっそり人食ってんじゃないのか?」
一同「ハッハッハ!」
千翼「言うな!! 俺をアマゾンなんかと一緒にするな!」

怒鳴りつける千翼に、裕樹たちが鎮まる。

千翼「今度言ったら、絶対に許さないからな。絶対に……」
裕樹「おい。何だよ、それ?」

健太が裕樹を制するが、裕樹は彼を突き飛ばし、千翼に詰め寄る。

裕樹「お前、俺たちが助けたこと、忘れたのか!?」
琢己「落ち着いて、長瀬くん」
裕樹「何とかってとこから逃げ出して、フラフラしてんのを拾ってやったのは俺だぞ? そんなもんしか食えねぇって言うから取って来てやったのも、オーナーに頼んでここ住まわせてやってんのも、全部俺たちだよ! アマゾンのお前をな!!」
琢己・健太「……」
裕樹「そりゃ、つまんねぇ学校行くより何倍もおもしれぇし、稼がせてもらってっけどさぁ、俺の言うことは聞かねぇくせに、てめぇだけ偉そうに指図してんじゃねぇぞぉ!!」

裕樹が千翼の胸倉をつかみ上げる。

裕樹「気に入らねぇなら、出てけ」
琢己「ちょっと、長瀬くん!? 落ち着いて!」
千翼「……わかってるよ。ごめん。ここに、いさせてほしい。でも、お願いだから……」

千翼が裕樹を突き飛ばす。

千翼「俺に触るな!!」
裕樹「てめぇ!? おい!!」

声「何やってんだ、お前ら!?」
健太「オーナー」

クラブのオーナー。
シーズン1の駆除班のリーダー、志藤。

志藤「面倒起こすんなら、ここは貸さねぇぞ」
琢己「全然。ちょっとふざけてただけっスよ」
志藤「お前ら、まさかもう面倒起こしてんじゃねぇだろうな?」
一同「いやいや」「全然、全然」
志藤「ちゃんと学校行けよ」
一同「うぃっス!」


橘「では、本日の会議はここまでだ」

廊下を行く黒崎を、橘が呼び止める。

橘「黒崎くん! 千翼のことだが、連れ戻す件はどうなっている?」
黒崎「俺たちには無理だよ。放っときゃいいだろ? ガキ同士つるんで、勝手にアマゾン狩りやってますよ──」
橘「いや! 新たにアマゾン体を作ることを禁止されている以上、我が組織にとっては貴重な戦力だ」
黒崎「どうですかねぇ…… 前に駆除に使ってたアマゾンも、結局裏切ったって話じゃないですか」
橘「確かに! だが彼については、生い立ちから何までまだまだ調べたいことが、山ほどあるのだよ。新種のアマゾンとも関係があるかもしれないしね」
黒崎「了解──」
橘「よろしく頼むよ! 私の秘蔵っ子のほうもね」
黒崎「あ──、あれはあれでまた…… 局長! あんた何考えてんか、わかんねぇな」

黒崎が去る。

橘「私はただの、雇われ局長だよ」


黒崎隊の部屋。
隊員たちがそれぞれ待機する中、イユが無表情に立ち尽くしている。
札森はスマートフォンで、ネットの掲示板をチェックしている。

札森「あ~あ。ま~たウチ、叩かれてる。『若い子の方がしっかりアマゾン駆除してる』『税金の無駄』ですって」
黒崎「そいつら、馬鹿に発言権があると勘違いしてやがる。賭けてもいいが、そういう奴らが払う税金じゃ、銃弾1発も撃てねぇな……」
札森「あ~ぁ、大炎上発言」
黒崎「おい、福田。お前、トラロック事件のとき、アマゾンと組んでたんだろ? どういう奴だった?」
福田「わかっていたつもりでいて、わかっていなかった……の、かもしれん」
黒崎「あぁ? ま、そりゃそうか…… アマゾンだもんなぁ」
福田「いや。アマゾンとして、というより、生き物として」
黒崎「生き物、ねぇ……」


結婚式場の教会。
タキシード姿の花婿と、ウェディングドレス姿の花嫁の幸せそうな姿。
突如、花嫁の肌に醜い血管跡が浮かび上がり、牙をむいて花婿に襲いかかる。

千翼や裕樹たちが、その教会へと向かっている。

千翼「いる。この先、右」
裕樹「アマゾンか?」
千翼「あぁ」
琢己たち「相変らず千翼のアマゾンセンサー、凄いね!」「また再生数、伸びちゃうなぁ!」
一堂「狩り、開始──!」「ヒャッハァ!」


4Cの黒崎隊では、札森がスマートフォンで彼らの動きをキャッチしている。

札森「はいはい、例のチーム×、動き出しましたよ──。完全覚醒のアマゾン体、見つけったっぽいス」
黒崎「チッ。何も知らねぇ癖に、いい気になりやがって。なんで俺たちが、そんな素人の後追いなんだよぉ!?」
福田「同じアマゾンでも、鋭い奴と、そうでもない奴がいる」

イユは依然、無表情に立ち尽くしている。

黒崎「おめぇは実際に見ねぇとわかんねぇもんなぁ…… 札森ぃぃ!! 場所、特定しろ」
札森「は──い」


千翼らが教会に到着する。
結婚式場の礼拝堂には、誰もいない。

健太「何だよ、千翼。いねぇじゃん」

千翼が別の部屋へと向かうと、花嫁の変身したクワガタアマゾンが、息絶えた花婿の遺体をむさぼり食っている。

『Neo』

千翼「アマゾン!」

千翼がアマゾンネオに変身し、クワガタアマゾンの戦いが始まる。
教会の窓を突き破り、戦いの場は外に移る。
裕樹たちも続き、スマートフォンで動画を配信する。

裕樹たち「おぉ! すげぇ、すげぇ!」

突如、クワガタアマゾンに銃弾が撃ち込まれる。
黒崎隊が銃を携えて駆けつける。

黒崎「よ──」
ネオ「4C!?」

4Cの隊員たちの激しい銃撃。クワガタアマゾンが退散してゆく。
しかし、その退路の先には、イユが静かに佇んでいる。

ネオ「何だ!?」
弘樹「え!? あれって……」
ネオ「危ない!」

クワガタアマゾンが襲いかかるが、イユは人間離れした跳躍力で、攻撃をかわす。

イユ「アマゾン」

イユもまた熱と蒸気を放ちつつ、カラスアマゾンに変身する。

琢己「あの子もアマゾン!?」
ネオ「違う! その子は、人間だ! でも、どうして!?」

クワガタアマゾンの触手が長く伸び、槍のようにカラスアマゾンの胴を貫く。
だがカラスアマゾンは胴を貫通されたまま、なおも立ち向かってゆく。
体液が激しく滴る。

黒崎「ったく!」
札森「いくら何でも、あれは……」
黒崎「ありゃ、戦い方を教えたほうがいいな」

福田が銃撃で、触手を砕く。
続いて福田が、アマゾンネオ目がけて銃を放つ。
頭を銃弾が掠め、戦いを傍観していたアマゾンネオが我に返る。

福田「おい!」

福田に煽られ、アマゾンネオも戦いに加わり、2対1の激しい戦いとなる。
カラスアマゾンの蹴り、アマゾンネオの斬撃を食らい、クワガタアマゾンが沈黙する。

ネオ「君は……!?」

アマゾンネオが変身を解き、続いてカラスアマゾンも変身を解く。

千翼「君は…… 君は、何なんだ?」

相変らず無言で立ち尽くすイユに、千翼が恐る恐る手を伸ばし、そっと頬に触れる。

千翼「初めてだ…… 俺が、食いたいって思わないでいられる、人間……」

服の隙間から、黒い血が滴る。

千翼「こんなに触っても、全然…… どうして?」

裕樹「千翼、お前……!?」

そへ、結婚式参列者の女性3人がやって来る。
彼女らもまた、肌に醜い血管模様が浮かび上がる。
熱と蒸気と共に、3人がサイアマゾン、カマキリアマゾン、ヘビアマゾンに変身する。

札森「黒崎さぁ~ん」
黒崎「アマゾンの結婚式かよ……」

イユ「ターゲット、確認」

黒崎隊とアマゾンたちとの戦いが始まり、イユもそこへ歩き出す。

千翼「ちょっと!? そんなケガしてんだから、じっとしてなきゃ!」
黒崎「問題ねぇよ! ザコしかいねぇから、今のイユでも十分だ」

骨の砕けるような音が響き、次第にイユの足取りが鈍くなる。

黒崎「ま、ダメージはあるが」
千翼「そんな……? (何だ!? 気付いてないのか!? ケガに。そんな、バカな!?)」

イユは千翼の手を振り払い、傷ついた体のまま、再び戦いの中へと立ち向かってゆく。

イユ「アマゾン──」


(続く)

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最終更新:2018年04月22日 18:11