侵植のプラン

魔王クロノス直属配下であるクロノス十二柱の一体。序列七位。
無数の蔦や枝が幾重にも絡まり合い、巨大で歪な人型を象ったかのような姿を持つ。
元々はヘルジャングルの奥地に生息していた植物型の魔物から生まれた存在。

身体から枝や根を伸ばして周囲の動植物を捕獲し吸収する能力を有する。
そうして取り込んだモノの生命力を利用し、疑似的な不死と化していたらしい。

トリナー王国に現れ、トリナー王国軍と現地の冒険者達、そしてとある勇者候補と交戦。
圧倒的なまでの生命力と再生力で猛威を振るったが、勇者候補の機転によって討伐された。


+ 顛末
突如としてルルファの森地方に出現したソレは周囲の木々や魔物を次々と取り込み、森の一角を自らと同化させると『動く森』となって『王都クレズヌン』へ向け移動を開始した。

伝令の知らせを受けた国王はすぐさま王国軍と近隣の冒険者ギルドに呼びかけ迎撃を要請。
しかし急行した軍人と冒険者達の奮闘を嘲笑うかのようにプランは森そのものな質量で圧倒。
彼等を蔦で尽く呑み込み、トリナーの岩山を伸びる根で蝕みながら王都目指して突き進んでいく。

しかしその時、森の中心に陣取ったプラン本体目掛けて飛来する一つの影。
それはデルモンガ島での修行を終え、スタートゥへの旅路に就いていた鏖金の明星のリーダー、グザンであった。

彼は既に外神形態となっており、妖刀を抜きざまに放たれた瘴気の斬撃がプラン本体を大きく抉り裂く。
その一撃で相手が他の有象無象とは一線を画した存在である事を察したプランは瞬く間に傷を再生させると、他の人間には目もくれず全ての根と蔓をグザンへと殺到させた。

妖刀と征剣を手に猛攻を次々に切り払っていくグザン。
だがプランも切り払われる以上の蔦を繰り出しグザンの身体を呑み込まんとする。

切った傍から即座に伸びる蔦の軍勢はやがて彼の身を捉え、そのまま徐々に包み込んでいく。
……が、グザンの血と精気を吸収しようとする自らの蔓にプランは違和感を感じた。
見ればグザンの体から生えた無数の触手が自身の蔓と絡み合い、その先端にある獣の牙と口腔が蔓に喰らいつき溶け合うかのように融合し始めていたのだ。

それは『かつての戦い』でグザンが相まみえた、自身と同じ異形の神の力を操る者が見せた『同化・吸収能力』。
戦いの中でその力を思い起こしたグザンが、数多の者を取り込み吸収してきたプランを“逆に取り込もう”としていたのである。

グザンの行動に驚愕しつつも、プランもまた怒りの咆哮を上げ更に大量の蔦を殺到させる。
異形の植物の怪物と、異形の神の血を宿す勇者の『喰らい合い』が続く中、突如としてプランの周囲で幾つもの爆発と火の手が上がった。

全ての攻撃をグザン一人に集中させていたその隙に展開を終えたトリナー軍の大砲部隊が一斉砲撃を開始したのである。
更に生き残った冒険者達も『鏖金の明星』の指示の下、炎魔法の集中攻撃を放っていたのだ。

本来、プランの生命力の前ではそれらの攻撃は有効打となり得る物ではない。
しかし、互いの存在を賭したグザンとのせめぎ合いの最中に放たれた攻撃はプランの注意を逸らすには十分であった。

拮抗が揺らいだ僅かな一瞬を見逃さず、グザンは叫び一気に己の力を解き放つ。
溢れ出した暗金色の神力の輝きがプランを包み、光に焼かれるかのようにプランの体がボロボロと崩れ落ちていく。
最後には『核』とも言える、赤く鼓動する不気味で巨大な『実』が露わになるとグザンはソレを無数の触手で絡めとり触手ごと自らの肉体へと一気に押し込み呑み込んだ。
グザンは腹の中で激しく胎動し暴れまわる実を抑え込み、やがてその胎動が治まると残っていたプランの残骸とも言える森は一瞬にして枯れ落ち荒野となった。

こうして数多の命を貪り続けた不死の怪物は、逆に自らを喰らい尽くされ消滅を迎えたのである。


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最終更新:2024年04月17日 01:30