「CROSS IMPACT THE 5th-終焉に視る夢-」
作者: SS 本スレ 1-710様
650 :CROSS IMPACT THE 5th-終焉に視る夢-:2016/01/02(土) 20:02:13
本スレ1-710 です
本スレ1-200様 の
お子様(設定スレ 2-014) とうちの子のスピンオフな二次SSの第5話を
仕上げましたので、投下します
以下、属性表記です
・
設定スレ 2-037 の共通設定を下敷きにした現代風ファンタジーな世界観での二次SSです
・続きものですが、多分、ここからでも読めるはず
・参考:前回分までのページ → 第1話
創作物スレ 2-251 、第2話
2-586 、第3話
2-599 、第4話
2-617
・ストーリーは長めで、続きあり、ご都合主義的展開成分も多分にあり
・登場キャラクター&CPは、アレス様×メサイアです ( 二人の年齢は多分15-16歳位? )
・エロなし、事後描写若干あり
・メサイアさんに世界最高峰機能を持つ個体との設定を付けたままになってます
・設定準拠ではない表記、設定矛盾のある表記を若干含みます
・キャラ&設定が1-200様の公式設定から外れている可能性あり
こんな感じですがよろしかったらどうぞ
651 :CROSS IMPACT THE 5th-終焉に視る夢-:2016/01/02(土) 20:03:21
アレスに与えられたメサイアとの邂逅の時間は終わりを迎えた。
この部屋にアレスが訪れる前の時点であらかじめ身に付けるように指示されていたリスト
バンドからアラーム音が鳴り響く。
それは、当初から指定された時刻にセットされていたものだ。
自らの手首にもう一方の手を遣り、アレスはそれを止める。
アレスには今、この場で自らにこうした指示を下している人間達に逆らおうという意識は
微塵も無かった。
今はまだ、自らと、自らを取り巻くこの環境に在る人間達が持つ権力との間に歴然とした
大きな差がある事を良く理解していたからだ。
例え、自らが人間の手によって創られた紛い物なのだとしても。無駄死にするのは御免だ。
僕を動かすこの意思は僕のものだ。
今、自らが置かれている環境を踏まえながら、アレスは常々、そんな風に考えていた。
アレスの傍には、その場に横たわり続けるメサイアの姿があった。
メサイアは、一言も発する事なく、まだ幾分荒い呼吸を繰り返している。
それだけではない。彼は先程からずっとアレスから受け続けていた行為の所為で、何処か
意識を朦朧とさせているようにも思えた。
つい先程、ほんの少し前まで――リストバンドにセットされていたアラーム音が鳴りびく
直前まで、アレスはメサイアを犯し、行為を強要し続けていたのだ。
それでも、自らに与えられていた時間を当初から自覚していたアレスは、その行為をある
程度の時間をもって予め止めていた。
アレスがそうして自らの身なりを簡易的ながらも整え、身支度をあらかた終えた、その時
に合わせるように、それは鳴ったのだ。
故に恐らく、メサイアには当初、アレスが何故、不意にその行為を止めたのか、解らなか
ったのではないか。
行為を止める直前まで、アレスは自身が望み、求める言葉をメサイアの口から吐きださせ
る為に、ある一定程度の抑制を加えた動作を施し続けていたのだから。
アレスは先に一度、メサイアが自らの性別を証する性器で達するのを見届けた後、再びそ
れで達する事を赦しはしなかった。
それでも、メサイア自身が自らの性器で達する事のない範囲においては、激しく揺さぶる
ような動作を途切れる事なく何度も加えてやった。
だが、メサイアがアレスの求める言葉を自らの唇に乗せる事は一切無い。
そうした感情に近しい思念をアレスの許へと送ってくる事も一切無かった。
また、メサイアは、結果として最後まで自らの意識を手放す事は無かった。
それは最中に意識を飛ばしそうになった都度、アレスがメサイアの流麗な面差しの外観を
損ねない程度に力を加減しつつ、頬を張ってやったからだとは思われたが。
腹ただしい事に、今のアレスには、現時点において充足感を得るには何処か足りぬ状況の
まま、コレを弄ぶという享楽的な行為に一旦、区切りを付けるという選択肢しか無かった。
メサイアは、未だに若干の荒さを帯びたままの呼吸を繰り返しながら、その身に何も纏う
事なく、年頃の少年らしい均整の取れた裸体を晒したまま、ただ、アレスの傍に在った。
その場から微塵も動く事なく、メサイアは、ただ横たわり続けているだけだ。
未だに目許に涙の跡を滲ませながら、此方側へと背を向けたままの体勢を保つメサイアの
方へとアレスは自らの顔を寄せながら、囁くように声を掛けた。
「メサイア、次に逢う時も、君は必ず僕のものになるんだ。今日と同じように。
君の事だけをずっと愛し続けるから」
「ん、っ、……、……っ、……、…………」
殆ど意識を失くしかけていたようにも思われていたメサイアは、アレスの予想に反して、
此方からの呼びかけに応えた。
だが、それは何故か、アレスの呼びかけに応じて返されたものではないようにも思えた。
確かにアレスの呼びかけに応じて、メサイアは自らの唇に何かの言葉を乗せていた。
それがアレスの許に意味のある言葉となって届く事は無かった。それでも、僅かな間では
あるが、メサイアが自らの意思をもって、その場で口を利いていたのは紛れもない事実だ。
まるで何かに救いを求めるかのように、音として聞こえる状態にはないままで、メサイア
は何らかの言葉を呟いていた。
直後に、メサイアは、自身の頭頂部に位置する辺りの側へと自らの一方の手を緩々と伸
ばし、掌の中へとシーツを強く手繰り寄せて掴んだ。
自らの体勢を保持したまま、メサイアは不意に自身の碧い瞳から溢れるように涙を零す。
メサイアのそうした様子を間近で目にしていたアレスは、その姿に強く心惹かれ、自らの
胸中を激しく揺さぶり、掻き乱されたかのような、言いようのない、強烈な感情を覚えた。
だが、同時にアレスは、今、現時点において、自らに与えられていたメサイアとの邂逅に
費やせる時間がもう幾何も残されていない事も強く自覚していた。
それ故に、アレスは自らの目の前で溢れるように涙を零し続けるメサイアに対して、声を
掛ける事を敢えて一切しなかった。
アレスはそのまま、自らの背を向けたまま、ベッドから腰を上げ、この部屋のエントラン
スの在る方向へと向かって歩きだす。
そうして、自らの心の内にメサイアへの強い関心を残したまま、アレスはその場から去っ
ていくことになった。
後には、小さく肩を震わせながら、自らの掌に力を入れ、自身の意思に反するかのように
零れ落ち続ける涙を止めようとするメサイアの姿だけが残された。
※
夢を見たのだ。
それは自らの記憶に後々に渡って鮮烈な印象を残した、メサイアとの邂逅を終えた夜の事
だった。
アレスは、自らがこの世に生を受け、経験を重ねながら、生き抜いてきた自分自身のこれ
までの記憶の中には一切の覚えのない、その情景を垣間見る事となった。
その事象は、メサイアがアレスと邂逅を遂げた僅かな間に、言葉にする事など無くとも、
互いの意思が通じるようにと、奇異な能力を施した故の名残でもあったのかもしれないが。
アレスが夢の中で、自らの漆黒の瞳を開けた途端に、まず、最初に目にしたのは、深い藍
色の色合いの絹糸のような質感を持った髪と藍色の瞳を持つ少年の姿だ。
その姿を自らの視界に捉えた瞬間に、アレスは何故、自分がそれを迷う事無く、少年とし
て認識したのか、自身の思考に納得がいかなかった。
自らの視界に在ったその少年は、幼さを残しながらも、生来からの清麗さを併せ持ってい
るようでいて、なおかつ、中性的な印象を強く残したままの美しい風貌をしていたからだ。
齢の頃は15歳位だろうか。
少年は自らの長い髪を後頭部の高い位置で一束に結いあげ、それを精巧な細工が施され白
銀に輝く髪飾りで飾っていた。
まだ少年らしく華奢な印象を残す身体には、彼が身に纏っている法衣に類するのであろう
装束が良く似合う。
その装束には、純白に輝く生地に白銀のような色合いを帯びた銀糸か何かで精緻な刺繍が
施されており、彼が聖なる存在に仕える身であるのだろうという事を明らかにしていた。
そうした衣装を身に纏った姿のまま、少年は、聖堂らしき建物の祭壇と思しき場所の近く
に、唯一人で立っていた。
この建物の高い位置に備え付けられた窓からは荘厳な雰囲気をも感じさせる光が幾筋か差
し込み、小さく華奢な印象のある少年の姿をより一層、清麗で美しいものへと変えていた。
「メサイア」
少年はアレスに向かって、穏やかに微笑み、此方側へと、そう声を掛けてきたのだ。
ああ、これはやはり、メサイアが持つ記憶の断片なのか。アレスは、即座にそう思った。
メサイア自身がどうしてこうした記憶を持つに至ったのか、アレスには知る由もなかった。
何故、こうして、メサイアの記憶の断片めいたものを辿る事になったのか。
アレスには、理由もよく分からないままだった。
だが、アレスは自らの意思には一切関係なく、脳裏に流れ続ける、この不可思議な記憶に
敢えてそのまま身を任せた。
「……本当は、聖霊と……皆の為に唄わなければならないのだけど。
……ううん、違う。違うんだ。
僕は、ずっと前から、本当は貴方の為だけに、これを唄いたかったんだ。
だから、聴いていて」
何処か辿辿しい様子を残しつつ話し始めた少年は、次第に自らの気持ちを切り替え、自身
の目途を改めて此方側へと表明するように、前置きらしき言葉を一息に述べた。
恐らく、少年自身は、自らの感情を内に秘めたままにしているつもりなのだろう。
それでも、相対する少年の表情には、此方側への憧れにも似た感情と淡い好意を乗せたか
のような表情が見て取れる。
未だに何処か幼さを残す無垢で素直な性格を持つが故に、この少年は、自らの内側に秘め
おきたいと思っている、そうした感情を完全に隠し切る事などが少々不得手なのだろう。
それは、此処から少年の姿を目に留めているだけでも十分に理解できる。
もっとも、それは、今、現時点において、この少年とメサイアが唯二人きりでこの場に居
るといった状況に置かれているようであったからなのかもしれないが。
だが、少年自身がそれに気付いている様子は一切無い。
また、この少年が、そうした状況置かれている事に対して、自らの感情を更に大きく揺ら
しているかのように受け取れる様子は今、この場では見受けられなかった。
少年は、ほんの少しの間を空けて自らの呼吸を整えるようにして、瞳を一度、軽く閉じた。
それを機に、少年は先程来の厳かな面持ちを取り戻し、此方側へと正面を向くように、自
ら姿勢を正す。
自らの面差しを此方側へと向けた後に、少年はごく僅かな間、穏やかな面持ちで微笑んだ。
それから間を置くこと無く、少年は美しい旋律を持つ聖歌を高らかに、朗々と唄い上げ始
める。
少年の伸びやかな歌声は周囲へと響き渡り、辺りの空気さえも光輝く清冽な気配を帯びた
ものへと変えてゆく。
まるで自身の想いや、魂の一片さえも込めるかのように、少年はその場で、ただ、切々と
聖歌を唄い上げていった。
何処か懐かしい響きを帯びた聖歌の旋律に自らの想いを添えるかのようにして、ただ一心
に唄いあげてゆく少年の歌声は、聴き入る者の胸を強く打った。
また、それは、この少年の歌声を初めて聴いたアレスの心の内側にさえ、熱く熱を帯びた
ような感覚を届けてくる。
「アルシエル」
この少年の名前だろうか。誰かが発したその言葉が自らの脳裏に響くと同時に再びアレス
の目の前の光景は一変した。
次にアレスが目にしたのは、この研究所内の施設の一角であろう場所の何処かに在る部屋
の中のものだ。
其処には、先程とほぼ同じ容姿の長いくせの少ない藍色の髪の少年が生命維持装置の中で、
その身に何も纏わぬ姿のまま眠りに就いていた。ただ、少年の姿は先程よりも若干、幼く
見える。
先程、アレスが自らの思念に感じた名前らしき言葉は、恐らくメサイアがこの幼い容姿の
少年に向かって、名前を呼びかけたものなのだろう。
メサイアが自らの思念で呼びかけたものであるのか、または自身の声で音として認知でき
る形式をもって呼びかけたのか。その判別は今、現時点において、メサイアの思考を追体
験しているアレスにも判断しかねた。
ただしかし、アレスの目の前に映る藍色の髪の少年は、此方側からの呼びかけに応じる事
なく、生命維持装置の中で昏々と眠り続けている。
――いつか必ず君を――。
その思念が脳裏に響いた瞬間、アレスは得心がいった。
あいつ――メサイアが真に欲しているのは、この少年の自由だ。
いや、メサイア自身が、意識を取り戻したこの少年と共にある事なのだろう。
それを確信したと同時にアレスは強い憤りにも似た感情を覚えた。
直後、激しさを帯びてゆくアレスの感情に引き摺られるように、周りの景色は不意に暗転
し、何も視えなくなった。
自身の直情的かつ、激しい感情に引き起こされるようにして、アレスは急速に夢から覚め、
自らが置かれた現実の環境へと立ち戻る事になった。
アレスが再び目を覚ましたのは、施設内で自らに与えられた手狭な部屋のベッドの上だ。
周囲は暗く、恐らくは未だにアレス自らが日常的に起床する時刻には至っていない。
この部屋には、元来、窓ひとつ無かった。
このため、その時刻を告げるのは、予めセットされているタイマーに従って、徐々に明る
くなるように設定された室内灯のみであったが。
結果として、この日、アレスは暗闇の中、酷く不機嫌な気持ちと憤りを抱えたまま目を覚
ます事になった。
つい先程まで夢に見ていた事柄から推察出来得るメサイアを取り巻く現況は、アレスを酷
く腹立たしい気分にさせた。
アレ――メサイアは、自らが望む少年の醒覚と引き換えに、その他の全ての事項を犠牲に
するという明確な意図を持って、常日頃からの行動を選択しているのだ。
メサイアを取り巻く人間等からの命令に極力逆らう事なく、従順な様を保ち続けているの
は、恐らくはその所為だ。
アレスが今、現在、持ち得ている様々な情報を許に今、この場で判断する限りでは、それ
はメサイアが自らの全てを懸けて願うには、あまりにも不釣り合いで小さな望みに思えた。
また、そうした希いを叶えようと、メサイアが実際に常日頃から注力を傾けているらしき
様子も見て取れる有様に酷く腹が立った。
夢に見た状況を踏まえる限りでは、あのアルシエルという少年にメサイアと同程度の強い
能力や、人を惹きつけて止まない魅力があるようには到底思えなかった。
例えば仮に、あの少年が今も夢の中で垣間見たのと同じようなレベルで歌が唄えたからと
いって、それ自体が一体なんの価値を生むというのか。
メサイアの隣に並ぶには、あの少年はあまりに凡庸で無価値だろう。
それにも拘わらず、メサイアは己の全身全霊を懸けて、いつか機会を得て、あの少年を救
い出そうと、自らの意思を固めている。
アレスには、メサイアの決意は酷く馬鹿げたもののように思えた。
こんなにも馬鹿げた希みの為にアレ――メサイアは、自らの意識下において、アレスのも
のになるという事を頑なに固辞し続けたのだ。
今更の事ながら、アレスはメサイアのそうした態度に強い怒りしか感じなかった。
恐らく、メサイアは自らの深層意識に触れる範囲外で思考を続けている限りにおいては、
今後もずっと、必要に応じて、誰のものにでもなるのだという態度を取り続けるのだろう。
少なくとも今、現在の施設に留まっている間は――メサイアは今後も、そうした対応を取
り続ける筈だ。
だが、メサイアは、深層意識下では他の誰のものにも絶対にならない。
そう、アルシエルという、あの少年以外の存在の何者にも心動かされる事はないと、自ら
の意思で硬く心に決めているのだ。
灯り一つ差していない、自らに与えられている些か狭すぎる部屋のベッドの上で、アレス
は暫くの間、自らの瞳を開けたままま、思慮を廻らせ続けた。
今のあの態度を見る限り、メサイアは他者がアルシエルに手を掛け、絶命に至らせた場合
は、相手の息の根を即刻止めにかかるだろう。
手に掛けた相手を赦す事など絶対にないだろうし、万一、メサイア自らが敗北を喫した場
合でも服従し、屈服する事など絶対にないだろう。
アレスは自らの頭の下に腕を組んだ姿勢を取り続け、自らの漆黒の瞳を開いたまま、暫く
の間、無機質な天井を見上げつつ、そうした事柄について思考していた。
そこまで思慮を廻らせた後に、アレスは不意に自らの口元に僅かに微笑みを乗せる。
――面白いじゃないか。でも、それでもアレは、メサイアは僕のものだ。
「メサイア、いつか必ず君を僕のものにするから」
小さな声で囁くようにそう言うと、アレスは未だに灯りひとつ付いておらず、暗いままの
状況にあったこの部屋のベッドの上で自らの身体を起こした。
続けてアレスが自らの両脚をベッド脇のリノリウムの床へと下ろすと、その動きに合わせ
て、ベッドサイドのフットライトの小さな灯りだけが点灯される。
未だに多分に波立つように苛立つ自らの気持ちを切り替えようと、アレスは、この場を後
にして、室内に併設された簡素なバスルームへと向かって歩き出した。
【 続く 】
お読みいただきありがとうございました!
メサイアさんの思考とかを改めて追うのに思ったよりも手間がかかってしまい、当初仕上がっていた分と
書き足し分を延々と手直しする事になり、結局、年末年始はこれを書くだけになってしまいました;
でも、このSS、まだあと1回分続きます……大変恐縮ですが、また気長にお待ちいただけると幸いです
引き続きどうぞよろしくお願いいたします
最終更新:2016年02月08日 20:44