「CROSS IMPACT THE 6th-混沌を視る者-」
作者: SS 本スレ 1-710様
663 :CROSS IMPACT THE 6th-混沌を視る者-:2016/02/08(月) 20:07:01
本スレ1-710 です
本スレ1-200様 の
お子様(設定スレ 2-014) とうちの子のスピンオフな二次SSの第6話を
仕上げましたので、投下します
以下、属性表記です
・
設定スレ 2-037 の共通設定を下敷きにした現代風ファンタジーな世界観での二次SSです
・今回は一応、できれば、前回分( 第5話 )も読んでいただいた方がより楽しめるはず
・参考:前回分までのページ →
→ 第1話
創作物スレ 2-251 、第2話
2-586 、第3話
2-599 、第4話
2-617、第5話
2-650
・ストーリーは長めで、ご都合主義的展開も多分にあり
・登場キャラクター&CPは、アレス様×メサイアです ( 二人の年齢は多分15-16歳位? )
・エロなし、厨設定的、途中で冗長かつ、説明的表記が続く箇所あり
・メサイアさんに世界最高峰機能を持つ個体との設定を付けたままになってます
・設定準拠ではない表記、設定矛盾のある表記を若干含みます
・キャラ&設定が1-200様の公式設定から外れている可能性あり
こんな感じですがよろしかったらどうぞ
664 :CROSS IMPACT THE 6th-混沌を視る者-:2016/02/08(月) 20:15:05
夢に見たのだ。
それは自らの記憶に強烈な印象を残した、アレスの邂逅を終えた後の事だ。
メサイアは自分自身のこれまでの記憶の中には一切の覚えのない、情景を垣間見る事にな
った。
それは、メサイア自らがアレスと邂逅したあの時の合間において、言葉にする事無くとも、
互いの意思が通じるようにと、自身の能力を施した故の名残でもあったのかもしれないが。
「ルーシェル」
まず、メサイアが耳にしたのは、誰かの名をそう呼ぶアレスの声だ。
その声質からも、アレスがこの名を持つ人物を愛おしく思っている事が解る。
メサイアの脳裏に小さな声で囁くように響くアレスの声は、相手の事を思い遣る心持ちに
満ちているかのようにも思えた。
次に自らの碧い瞳を開いた瞬間、メサイアが目にしたのは、淡い光の差す聖堂の中で聖歌
を唄う一人の青年――いや、少年にも思える人物の姿だ。
それは、聖堂内に満ちる陽光を受けて七色に輝く白銀の髪と、淡い紫水晶にも似た色の瞳
を持つ印象的な容姿の少年だった。齢の頃は16、7歳といったところか。
少年の髪はどちらかといえば短めに切り揃えられ、恐らくは聖職に就いている者が着用す
るのであろう法衣と思しき衣装を身に纏っている。
濃紺の生地で作られた衣装には、袖口や襟元などの一部に黄金色にも見える美しい色合い
の絹糸で精緻な刺繍が施されていた。
少年は中性的な美しい面差しを此方へと向けながら、この聖堂で唯、一人きりで聖歌を唄
っている。
聖歌の美しい旋律は、少年の声を以って、聖堂内へと響き渡り、辺りの空気を更なる神聖
さを帯びたものへと変えていた。
自らの記憶には全くない少年であるのに、メサイアはその少年の姿に何処か既視感に近い
感覚を持ちつつ、彼の詠唱が終わる時を待っていた。
あわせて、メサイアは、今までに自身が感じた事のない感覚をもってそれを聴いていた。
今、自らが共有しているこの感覚には、聖歌に対して特段の感慨めいた感情も何もない。
自らが感覚を共にしているこの思考の持ち主は、ただ、そこに唄が在るという事実だけを
明確に捉えている。
一方で、メサイアの記憶の傍らにいつも在った少年の唄には、周囲への思い遣りと慈愛に
満ちた心があった。此方側へと傾けられる直向な想いと切なる情熱が在った。
だから、いつもその志を汲みたいという想いをもって、彼の唄を聴いていたというのに。
今、感覚を共にするこの人物にはそうした何処か感傷めいた熱を帯びたかのような感情は
一切見受けられない。
ただ、其処に在るのは、目の前の少年を愛おしく思う慈しみに満ちた穏やかな感情のみだ。
やがて聖歌の詠唱を終えた少年は、穏やかな表情のままで、此方側へと声をかけてくる。
「……アレス?」
メサイアはその少年の言葉を聴いて、漸く得心がいった。
これは、アレスの古い記憶だ。彼がいつ経験したものなのかは解らなかったが、恐らく、
彼は、この目の前のルーシェルという名の少年の事をとても大切に想っていたのだろう。
それは、今もなお、メサイアの心の内へと流れてくる、アレスの暖かみを帯びた感情を追
えば解る。
この人物――アレスにとって聖歌などはただの添え物に過ぎないのだろう。
アレスが真に意識を傾けているのは、先程、彼、自らが「ルーシェル」と呼んだ目の前の
少年の事だけだ。
こんなにも穏やかな愛情に満ちた感情を自分自身が抱いたのは一体、何時以来の事だった
ろうか。
形こそ違えてはいるが、アレスは、彼は自らと同じく唯一人の人を心から愛するという情
を自身の経験を交えて識っている筈だ。
メサイアがそんな事を思慮していく合間にも辺りの風景は刻々と変わっていった。
次にメサイアが、いや、アレスが、と言った方が良いだろうか。
彼が再び少年の名を呼ぼうとした、その瞬間に、辺り一面が強い金色の光に包まれ、風景
が一変してゆく。
離したくはないのに。別れたくはないのに。愛おしいその存在は、もう既に金色の強い光
の唯中にあって、その姿形の影のみだけしか捉える事は出来ない。
アレスの目の前には、その場に満ちる強い黄金色の光と、たった一人の愛おしい存在の影
のほかには、何もない景色が拡がるのみだ。
「…………っ、…………!!」
その不可思議な景色の中で、アレスはその身に赦された僅かな時間の限り、愛おしい存在
の名を何度も呼び続けた。
それがアレスの持つ古い記憶なのか、単にアレスの意識の内側に何等かの意図をもって新
たに深く刻み込むようにして形成された記憶の断片なのか。
その何れのものであるのか、メサイアには、今、この場では判断が付かなかった。
ただ、メサイアは目の前に映る光景に自身の既視感を一層強くすると同時に、アレスが自
らと同じ気質を持つ可能性が在る存在なのだということを改めて強く実感していた。
そうしたメサイアの意識や思考には、一切の影響や係わりを受ける事もなく、目の前に広
がる光景は、また不意に新たなものへと切り替わってゆく。
メサイアが新たに視たものは、炎に包まれる先程の少年――ルーシェルの姿だ。
あまりにも突然に目に入ってきた無残な光景にメサイアは一瞬、我を忘れたかのように思
考を止めた。
――止めろ! それはお前が唯一、唯一人、愛する者だろうに!!
だが、その直後に、メサイアは自らの思考を取り戻し、その場で力の限りに叫んだ。
自らの声は紅蓮の炎を放った当人――アレスには届かない。
それは解っている。
それでも、メサイアは、そう叫ばずにはいられなかった。
恐らくは今、この場で、実態を持つ姿など、持ち得てはいないのに。
メサイアは自らの頬に涙が伝ってゆくのを実感していた。
そうしてメサイア自身が、今、目にするこの光景を深く認識すればする程に、それがいか
に惨いものであるのかということを克明に思い知らされてゆく。
メサイアは、今、自身が目にし、体験する事実をもって、この光景が何時の日か現実に起
こり得る事柄なのであろうという事への認識も一層深めてゆくことになった。
今のメサイアには、この事象に介入する手立てなど何一つ無い。
此処でメサイアに出来るたった一つの事は、唯ひたすら傍観者として、この凄惨な光景を
自らの瞳に焼き付けるように見つめるだけだ。
炎に巻かれる直前に視たルーシェルは、今、この時代に最も良く用いられる形式の軍用服
を着用していた。
僅かな合間ではあったが、メサイアには、彼、ルーシェルが恐らくは自分自身やアレスと
同じ――人ならざる人工物として徴用される立場に置かれている事が認知出来ていた。
だが、メサイアを更なる慟哭の淵へと追い込んだのは、彼――ルーシェルに向けて炎を放
ったのが、アレスであるという直ぐには信じ難い事象だ。
それでも、ルーシェルに向けて炎が放たれる直前にメサイアの心の内側へと流れてきたア
レスの思考からは、そうした事を行う意図が明確に読み取れた。
其処には、ただひたすら従順に製作者等の命令に従う事しか出来ないルーシェルへの明確
な否定と蔑みや嘲りの意識に加えて、それを凌駕する憤りに満ちた感情が在るのが解る。
また、そんなルーシェルの存在そのものを、アレス自身の目前から消し去りたいのだとい
う明確な意図が在ってこその行動だという事もメサイアには充分すぎる程に伝わっていた。
それに何よりも――アレスには、ルーシェルが自らの大切な想い人だという事の記憶すら
何一つ無い。
メサイアが目の前で何も出来ずに涙を流し、それを見続ける中で、無残な光景は終わる事
なく続いてゆく。
ルーシェルが紅い炎の中で吐息のよう小さく細く零す悲鳴がメサイアの耳に届いた。
それとほぼ時を同じくして、規律に反した行動を取ったアレスに対しても間を置くことな
く直ぐに足止めを兼ねた制裁が加えられてゆく。
この場に同行していた監視官と思われる複数人の人間の指示によって、アレスがこうした
行動を取った直後に、散弾銃らしきものから一斉に多くの銃弾が放たれ、打ち込まれる。
アレスは自らの能力を用いて、即時に加えられたそれらの攻撃に対し、瞬時に応じていた。
放たれた銃弾の全てにアレスが無為に被弾する事は無かったが、ただその幾つかを被った
だけでも、彼をその場に足止めさせ、倒れ込ませるのには充分だった。
――もう止めろ!! 何故これを私に視せる! 私には何も出来ないというのに!!
メサイアが再び無意味にもその場で叫ぶと同時に、目の前の光景はまた一変してゆく。
それは、アレスがその場でショック剤を投与され、意識を失う様を目にしたのと同時期で
もあった。
再びメサイアが目にしたのは、先程と同じく金色の光に包まれた唯一人の人物の人影と、
何処かで聞き覚えのある清冽な印象を受ける唄声に包まれた世界だ。
その人影は、先程と同じく金色の強い光の唯中にあって、姿形の影のみだけしか解らない。
それでも、メサイアにはその人影が誰の者であるのか、直ぐに解った。
メサイアの視線の先に映るのは、ルーシェル、その人、唯一人の影だ。
それにも拘らず、其処に重ねられたアレスの思考めいた声と意識が、メサイアの感情に更
なる追い打ちをかける。
アレスの思考めいたその意識は、その人影に向かって――明らかにメサイアの名を呼んで
いた。
何処か混濁した状況にある事が読み取れるアレス自身の意識がそうした錯誤や誤認を呼び
起こしているのだろうか。
このような認識錯誤らしき状況を精神の深い部分で引き起こすような状態に何故、アレス
が追い込まれているのかまでは、メサイアに特定する事は出来なかった。
メサイアが認識可能であったのは、ただ、その場で、アレスが、メサイアの名を幾度か呼
んでいたことだけだ。
――止めろ。それは私ではないのに。お前が真に求めるものは私などではないのに。
この場に実態を持たない事を認識しながらも、メサイアは自身の碧い瞳から零れ落ちる涙
をその感覚を止める事が出来ずに、自らの手の甲でそれを拭う動作を加えた。
直後に周りを囲む景色が一変し、不意に今、聞こえる筈のない少年の声がメサイアの脳裏
へと響く。
――メサイア、例え全ての記憶を失っても。僕はまた必ず最初から貴方を好きになるよ。
貴方の事だけをずっと愛し続けるから。だからどうか僕を……。
「アルシエル、っ……アルシエル……!!」
それが、自分自身が望んだ故に引き起こされた幻聴なのか、自らが持つ古い記憶の断片で
あるのか、メサイアには判断が付かなかった。
幼さを残す小さく華奢で愛らしい容姿と深い藍色の髪と瞳を持つ少年の姿をその場で思い
起こしながら、メサイアは吐息を吐き零すかのように、声を絞り彼の名を幾度か呼んだ。
自分自身のみが残され、霧に囲まれて辺りのものが何一つ見渡せない、それでいて、清冽
な光に包まれた風景の中で唯一人、メサイアは涙を零し泣き続けた。
その光景を最後にメサイアは再び目を覚まし、現実へと引き戻される事になった。
※
メサイアが再び瞳を開けて最初に目にした光景は、研究所施設内の最上階にある隔絶され
たフロアのベッドの上のものだ。
此処はメサイアが常日頃から複数台の監視カメラに囲まれながら、ほぼ、唯一人だけの隔
絶された状態の中で生活を送り続けている場所だ。
未だに充分に覚醒しきってはいない、何処か虚ろな感覚を伴う視界の中で、自らの手許に
シーツが在る事を確認したメサイアは、漸くこの場で目を覚ました事を認識し始めていた。
このフロアの二つの壁面は、分厚く透明な強化プラスチックで造られている。
其処から望む眺望から、今、メサイア自らが視認する限りにおいては、既に夕刻を過ぎ、
夜に差し差し掛かる時刻のようだという事は解る。
此処から望めるのは、施設内の敷地に含まれる広大な森林と研究施設の別棟の僅かな灯り
のみであったが、今、その光景を目にする限り、陽光は既に完全に落ちていた。
メサイアは今更ながら、先刻、アレスがこの部屋から去った後、此処でそのまま暫く眠り
続けていたという、決して好ましくはないこの状況を、改めて強く実感する事になった。
夜に差し掛かった時刻の研究棟別棟からのごく僅かな灯りが差すのみの暗闇の中で、メサ
イアは自らの目許に残っていた乾いた涙の跡を再び軽く拭う。
その後にメサイアは、その場で自身の身体をゆっくりと引き起すようにして、ベッドの上
で自らの上半身を起こした。
これから先、暫くの間、あの子の特殊能力系統への再検査などに直に立ち会う事も叶わな
くなるかもしれない。それ以外にも憂慮すべき事項が山程在るのは解っている。
自らが下手な行動を採れば、それに影響を受けるのは、何もあの子だけではない。
自身が比較的高い関心を寄せている対象が、当人以外の他の事象に注力を傾けているとい
う事項に確証に近しい事実を得れば、得る程に誰だって興が削がれるというものだろう。
自らの制作者たる氏の関心がメサイアから逸れる事によって起きる代償は、当事者以外に
とっては些末な事だろう。だが、それは、当事者たる者等にとっては比較的多岐に渡るも
のになるのだろうという事については想像に難くはなかった。
恐らくは、自分と同様の立場に置かれている人工生命体の中から、これまでの者に加えて、
また新たな犠牲者が幾人も生じてゆく事になるのだ。
それでも、これから当面の間、あの子――アルシエルと直接的に逢える機会が無くなる可
能性が高いのだろうという事実が今のメサイアには一番堪えた。
あの子と自らの立場を危うくする事になりかねない状況下に在るというのに。
更には下手をすると、無意識のうちにあの子の名を呼んでいた可能性さえあるのだろう。
そうした極めて不本意な様を恐らくは、いや、少なくとも、あの男――この施設の研究者
共の中でも上位に名を連ねるあの人は全て視認しているのだ。
今でさえ、あの子に直接的に逢える機会は年に1、2回程度しか無いというのに。
また次にあの子とまともに逢えるのはいつになるのか。
その見通を立てる事さえ難しくなるのだ。それ思うとメサイアの心は更に重くなった。
今の自分自身の未熟な力と立場では、あの子の傍に居る為の正当な権利を得る事も、あの
子を守り切る事も出来ないから――。
だからこそ、これまで敢えて、他の事を全て犠牲にして周りに従順な素振りを示す事だけ
を優先し続けてきたのだ。
現時点において、自らがあの子に強い関心を寄せているという事実が明らかになるのは、
何ひとつ良い結果を及ぼさないというのも解っている。
それを踏まえれば、あの子に暫く逢えなくとも、このまま平静を装い続ける方が余程、自
らの利に適う事も解っていた。
それでも、メサイアの心の内には、自らが愛おしく想い、恋焦がれ続けている、あの少年、
アルシエルの傍に在りたいという気持ちだけが、ただ強く在った。
――今すぐに叶えられるものではないが。
いつの日か必ず。あの子と自らの自由を獲てやる。必ず、絶対に。
自身の心の内側へと、一層深くその思いを刻み付けるようにして、自らの思考を強めなが
ら、メサイアはベッドの上で自分自身の姿勢を変えた。
そうして、彼はベッドの淵へと自らの両脚を降ろして改めて座り直し、一方の手で自らの
長い金色の髪を梳くようにして掻き上げた。
その動作の最中に俯くような姿勢を取ったままの状態に在ったメサイアの視線の先に不意
に、ベッド上に幾つか残されたままとなっていた緋色の羽根が映り込んだ。
メサイアは、それを自らの視線に入れたまま、暫くの間、自らの思考を巡らせ続けた。
これから先、幾許かの期間を経た後に、恐らくは、あの齟齬をきたした意識を持ったまま
のアレスの行動が此方側にとって新たな弊害となってゆくのだろう。
それでも、自らにアレスのあの思念を変える程の確固たる能力はない。
自らに出来る事は、今までどおり、それに対しても真摯に向き合う事だけだ。
例え何があっても。アルシエルには、あの子にだけは、絶対に手出しはさせない。
――まずは、これまでと同様に、再び平静を装う事から始めればいい。
メサイアは自らに向かって再び強く言い聞かせるように、そう思念してから、その場で、
表情に普段と変わらぬ平静さを取り戻した自らの面差しを僅かに上げた。
この部屋は既に夕刻を過ぎた暗闇に外界からの僅かな灯りが差し込のみのままの状況にあ
った。
その暗闇の満ちた部屋の中に唯一人、佇んでいたメサイアは、やがて普段と何一つ変わら
ぬ様子で、バスルームに向かって歩き始めた。
※
それがいずれ此処に来るのは解っていた。
これまでの間、此処から、その様子を視ていたのだから、間違える筈がない。
そして、それが述べる第一声についても概ね見当が付いている。
メサイアは意味もなく高鳴りつつある自身の鼓動を抑える為に、改めて自らに言い聞かせ
るように思考を巡らせつつ、その場で一度、軽く瞳を閉じた。
あれから後、メサイアは年齢を重ね、18歳の青年となっていた。
今、現在、メサイアは、自らが所属していた東欧州連合の研究施設を抜け、彼自身の最愛
の少年――アルシエルと共に、この日本国で暮らしている。
その場で一度、軽く瞳を閉じた後に、メサイアは再び両瞳を開き、自らの居室から、この
高層アパートメント内の共用区域へと通じる個別エントランスへと向かって歩いていく。
メサイアは、その場所で常日頃からの日常とは異なる面々を出迎える事になった。
其処には何時もと変わらず、メサイア自身にとって、今もなお、愛おしい存在で在り続け
る、幼さを残しながらも、美しい容姿をした藍色の瞳の少年、アルシエルの姿がある。
少年は、光学迷彩の効果によって、自身の長い髪の色を本来持つ藍色から黒髪へと変えて
いた。だが、そうした事はもう既に彼等の常日頃からの日常の一部となっていた。
併せて、その場にアルシエルの護衛役を引き受けてくれている、二人の少年の姿が在るの
も何時もの事だ。
だが、それが常日頃のものとは異なるのは、何時もの少年達の姿のほかに、もう一人の青
年の姿が在る事だ。
今、この場には、彼等のほかに、短く整えられた漆黒の髪と、強い意志に満ちた漆黒の瞳
に彩られた精悍な顔つきと、しっかりとした筋肉を備えた体躯を持つ青年の姿が在った。
その青年――アレスは、メサイアの姿を彼自身の目に留めてから、一拍の間を置いた後に、
目の前の相手へと向かって、声をかける。
「やあ、メサイア、久し振りだね。まさか僕の事を忘れていたりはしないだろう?
あの時、あんなにも深く愛し合ったんだからね」
「忘れた事など一度もないよ。君に確認したい事があったからな」
自らの碧い瞳に鋭さを帯びた強い光を宿し、その双眸の視線の先にアレスを見据えながら、
メサイアは冷静な声色で返答を述べた。
直後にメサイアは、その場で僅かに目を伏せるかのような動作をもって、自らが視線を向
ける位置をほんの少しだけ変える。
先程と同じように自らの瞳のほぼ中心へとアレスを捉えたままのメサイアの視線の端には、
心配そうな表情を浮かべた藍色の瞳と長い黒髪を持つ少年の姿が僅かに映った。
少年の藍色の瞳には幾許かの哀しみの情が浮かんでいるようにもメサイアには思えた。
【 END 】
※wiki収録後に、一部修正を加えました。
お読みいただきありがとうございました!
い、一応、書きたかったことを余すことなく書き連ねてSSにしたら、こんな感じに……
ここまで本当に長かったです……
メサイアさんが15歳当時のお話しという事で年齢相応に心揺らして、泣いたりしてほしいなあと思いながら
書いたらこんな感じになりました
最初から改めて読むと、恥ずかしながら、結構感情の起伏が激しい単なる世間知らずなお子様になってしま
っている気がしますが、それはそれってことでw
それから、アレス様については、メサイアさんなりに?ずっと気にかけてるんですよ
という辺りも少しは表現できてるといいなあと思っていたりはするのですが、作者がまだまだ未熟なもんで、
このような形になってしまいましたが、何卒ご容赦いただきたく!
長いお話しにお付き合いいただだき、本当にありがとうございました
また形を変えて色々と書いていきたいと思っておりますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします
最終更新:2016年02月08日 20:55