ボクと魔王 ◆mu0IJdYU3g
「ん~、悪くはないんだけどねぇ?」
「えと、どこかマズい部分が?」
「まあ、具体的に言うとさ。
正直、今の時代王道ファンタジーとか受けないんだよねぇ。
大体可愛いキャラ出てこないじゃん?これじゃあ読者は釣れないよ。」
正直、今の時代王道ファンタジーとか受けないんだよねぇ。
大体可愛いキャラ出てこないじゃん?これじゃあ読者は釣れないよ。」
「しょうがないじゃん、俺のパーティー男しか居なかったんだから。」
「なんか言った?」
「いえ、別に。」
「ま、とにかく、文章力は悪くないんだから書き直してきてよ。君には期待してるよ。」
▽ ▼ ▽ ▼ ▽ ▼
「そうか、大変だったんだな。」
「ああ、まったく、世界を救った英雄だってのに、
元の世界に帰ったらだれも俺のことを認めやしねぇ。」
「で?書き直したのか?」
「んなことするわけねぇだろ。俺の自伝に嘘をついてどうする。」
「ああ、まったく、世界を救った英雄だってのに、
元の世界に帰ったらだれも俺のことを認めやしねぇ。」
「で?書き直したのか?」
「んなことするわけねぇだろ。俺の自伝に嘘をついてどうする。」
ここは非情なるバトルロワイアル会場。ヨグスと名乗る旧神なのか宇宙人なのか分からない
謎の存在によって集められた30人の参加者が生き残りをかけて殺し合うコロッセウムである。
その辺境の川縁で二人の男が並んで座って釣りに勤しんでいた。
一人はごく普通の16歳くらいの少年。そして一人は黒い禍々しい鎧に身を包んだ大柄な男である。
その姿を見た人は十人中十人が彼を魔王と呼ぶだろう。それくらい魔王的な姿をしていた。
謎の存在によって集められた30人の参加者が生き残りをかけて殺し合うコロッセウムである。
その辺境の川縁で二人の男が並んで座って釣りに勤しんでいた。
一人はごく普通の16歳くらいの少年。そして一人は黒い禍々しい鎧に身を包んだ大柄な男である。
その姿を見た人は十人中十人が彼を魔王と呼ぶだろう。それくらい魔王的な姿をしていた。
「で?なんで魚釣ってんだよ、魔王?」
「んん?いや、まずは腹ごしらえだろう、常識的に考えて。」
「んん?いや、まずは腹ごしらえだろう、常識的に考えて。」
期待通り鎧の男を魔王と呼んだ少年、篠田勇の答えに生返事をした魔王は
手ごたえを感じた釣り糸を一気に引き上げる。なかなかの大物が掛かっていた。
手ごたえを感じた釣り糸を一気に引き上げる。なかなかの大物が掛かっていた。
「おぉ、お見事。」
「よし。こんなものだろう。お前も食うか?勇者よ。」
「その名前で呼ぶんじゃねーよ。大体なんでそんな慣れなれしいんだ?
俺はお前を一回殺したんだぞ。殺し合いはしなくていいのかよ?」
「ふむ、そのことか。勇者よ、ワシがあの程度で死ぬと思うか?
ちょっと眠くなったから100年くらい眠ろうと思っただけじゃ。」
「なにっ。」
「それに、なんでワシが誰かに命令されて殺し合わなきゃならんのだ。
ヨグスだか何だか知らんがワシを侮辱したことを後悔させてくれるわ。」
「……ははっ。まいったな。」
「どうした?」
「よし。こんなものだろう。お前も食うか?勇者よ。」
「その名前で呼ぶんじゃねーよ。大体なんでそんな慣れなれしいんだ?
俺はお前を一回殺したんだぞ。殺し合いはしなくていいのかよ?」
「ふむ、そのことか。勇者よ、ワシがあの程度で死ぬと思うか?
ちょっと眠くなったから100年くらい眠ろうと思っただけじゃ。」
「なにっ。」
「それに、なんでワシが誰かに命令されて殺し合わなきゃならんのだ。
ヨグスだか何だか知らんがワシを侮辱したことを後悔させてくれるわ。」
「……ははっ。まいったな。」
「どうした?」
「いや、ここに連れてこられたときさ、正直ちょっと嬉しかったんだよね。
また嫌な現実から解放されて好き放題暴れられるんだってさ。
初っ端で会ったお前があんまりにもやる気ないんで頭が覚めちまったけどさ。
俺は勇者なんかじゃねーよ。現実じゃただのモブキャラさ。」
「まあ、そう言うな。いままで会った奴じゃお前が一番勇者っぽかったぞ、篠田勇。」
「え?」
「いや、人間どもがしょっちゅう誰か召喚してくるんだがすぐ寝返ってワシの軍門に下ったり
人間も魔物も関係なく殺しまくる基地外だったり碌な奴が居なかったからな。
篠田みたいな王道的な勇者は逆に珍しい……ん、どうした篠田?泣いてるのか?」
「……うるせーよ。」
また嫌な現実から解放されて好き放題暴れられるんだってさ。
初っ端で会ったお前があんまりにもやる気ないんで頭が覚めちまったけどさ。
俺は勇者なんかじゃねーよ。現実じゃただのモブキャラさ。」
「まあ、そう言うな。いままで会った奴じゃお前が一番勇者っぽかったぞ、篠田勇。」
「え?」
「いや、人間どもがしょっちゅう誰か召喚してくるんだがすぐ寝返ってワシの軍門に下ったり
人間も魔物も関係なく殺しまくる基地外だったり碌な奴が居なかったからな。
篠田みたいな王道的な勇者は逆に珍しい……ん、どうした篠田?泣いてるのか?」
「……うるせーよ。」
▽ ▼ ▽ ▼ ▽ ▼
「おら、焼けたぞ。」
基本支給品に入っていたピーナツバターを燃料にしてこんがりと焼けた魚を
葉っぱで作った皿に乗せて魔王に渡す。
葉っぱで作った皿に乗せて魔王に渡す。
「おお、旨そうだな。城の食堂で食う料理と違って
外見からして素材の味が滲み出ておるわ。」
「冒険中は結構サバイバルしてたからな。大ガエルとか結構旨かったぞ、特に太股。」
「うむ、我々の命を食いつなぐ生命すべてに感謝せねばならぬな。さっそくいただこう。」
外見からして素材の味が滲み出ておるわ。」
「冒険中は結構サバイバルしてたからな。大ガエルとか結構旨かったぞ、特に太股。」
「うむ、我々の命を食いつなぐ生命すべてに感謝せねばならぬな。さっそくいただこう。」
両手を合わせてお祈りを済ませた魔王はぱきんと割り箸を割り器用に魚の身を骨から分ける。
(すごい、魔王の奴、あんな上手に魚を食べるんだ。)
魔族の王に恥じぬよう徹底した礼儀作法を心得ているのだろう。
食い終えた魚は散らばり放題な自分と違い綺麗に骨だけが残っていた。
そういえば魔王を倒せと王様から指令を受けていたが、俺はこの男の何を知っているんだろう?
食い終えた魚は散らばり放題な自分と違い綺麗に骨だけが残っていた。
そういえば魔王を倒せと王様から指令を受けていたが、俺はこの男の何を知っているんだろう?
「ふう。ごちそうさま。さて、これからどうする篠田?」
「ああ、そうだな、取り敢えず主催者に対抗するなら仲間を増やさないとな。
それに首輪もどうにかしないと。」
「仲間、か……ぬぅ!?」
「ああ、そうだな、取り敢えず主催者に対抗するなら仲間を増やさないとな。
それに首輪もどうにかしないと。」
「仲間、か……ぬぅ!?」
魔王がこちらを凝視して険しい顔をする。
「どうした?」
「伏せろ!」
「なに?――うわぁぁぁ!」
「伏せろ!」
「なに?――うわぁぁぁ!」
突然、魔王が飛びかかって覆いかぶさってきた次の瞬間、激しい爆発音が鳴り、
二人で数メートル吹き飛ばされた。
二人で数メートル吹き飛ばされた。
「……ぐぉぉぉ!!」
「おい大丈夫か魔王!?」
「おい大丈夫か魔王!?」
「うー、むふっふっふ。命中したと思ったんだけどなぁー?」
「誰だ!?」
「誰だ!?」
背中を吹き飛ばされ項垂れる魔王の背中越しにこちらに近づいてくる手榴弾を持った少女。
振り向いてその姿を見た魔王は叫んだ。
振り向いてその姿を見た魔王は叫んだ。
「お……お前は……藍葉水萌!!」
「知ってるのか、魔王!?」
「ああ、奴はお主が来る直前に召喚された勇者だ。
奴は強かった。私の部下の四天王も八大将軍も守護天使も全員奴一人に惨殺された。」
「え?そんなのいたの?じゃあ、お前の城に全然人がいなかったのって……。」
「代わりのいい人材が見つからなかくてな。あの時期は城の管理とか
地方のモンスター指揮とか資金の計算とか全部ワシ一人でやってたんじゃ。」
「うわぁ、大変だったんだな。」
「知ってるのか、魔王!?」
「ああ、奴はお主が来る直前に召喚された勇者だ。
奴は強かった。私の部下の四天王も八大将軍も守護天使も全員奴一人に惨殺された。」
「え?そんなのいたの?じゃあ、お前の城に全然人がいなかったのって……。」
「代わりのいい人材が見つからなかくてな。あの時期は城の管理とか
地方のモンスター指揮とか資金の計算とか全部ワシ一人でやってたんじゃ。」
「うわぁ、大変だったんだな。」
「話し込んでるところ悪いんだけど、邪魔しないでくださらない?
そいつ魔王でしょ?前は殺し損ねちゃったしせっかくだから今ここで死んでもらおうと思ってるんだけど?
私の最終目標からすれば過程に過ぎないけれどほら、勇者が魔王を倒すのは義務みたいなもんじゃないですか?」
そいつ魔王でしょ?前は殺し損ねちゃったしせっかくだから今ここで死んでもらおうと思ってるんだけど?
私の最終目標からすれば過程に過ぎないけれどほら、勇者が魔王を倒すのは義務みたいなもんじゃないですか?」
隠れ気味の前髪から、すべての生き物を見下すような視線を向けられゾッとする。
異世界から途中で退場させられた勇者。ヤバいことはよく分かる。
異世界から途中で退場させられた勇者。ヤバいことはよく分かる。
「……勇者?お前が?ワシにはただの快楽殺人者にしか見えなかったがね。」
「私はあんたみたいな中途半端な悪人と違って生き物すべてを平等に扱っているのよ。
人間も魔物も、みんな平等に私に殺されるべきだわ。そうすれば世界は平和になるのよ。」
「私はあんたみたいな中途半端な悪人と違って生き物すべてを平等に扱っているのよ。
人間も魔物も、みんな平等に私に殺されるべきだわ。そうすれば世界は平和になるのよ。」
電波なことを言いながら徐々に近づいてくる。
篠田は魔王をどけて藍葉の前に立ちはだかった。
篠田は魔王をどけて藍葉の前に立ちはだかった。
「……何をしている篠田、早く逃げろ!」
「わりぃな魔王。今そんな気分じゃないんだわ。」
「んむー?何あんた?すごく邪魔なんですけどー?」
「嫌だって言ったら?」
「こうするのっ。」
「わりぃな魔王。今そんな気分じゃないんだわ。」
「んむー?何あんた?すごく邪魔なんですけどー?」
「嫌だって言ったら?」
「こうするのっ。」
篠田と藍葉は同時に背中に隠していた支給品の西洋剣を片手で抜き、刀身をぶつけた。
火花を散らしながら鍔釣り合いを繰り広げる二人。しかし徐々に篠田が押されていく。
火花を散らしながら鍔釣り合いを繰り広げる二人。しかし徐々に篠田が押されていく。
「な、なんて握力だっ!」
「んふぅー。そういやモンスター殺しまくってたら途中から成長しなくなっちゃってさー。
まーその頃には大抵のヤツは一発で死ぬようになってたけどねー。」
「パラメーターの上昇が限界まで来てたんじゃねーの?つまり俗に言うレベル99ってヤツ?」
「あーなるほどー?で、君も勇者みたいだけどレベルいくつくらいで魔王倒したのー?」
「……36くらいかな?」
「あははは!君、戦闘で逃げすぎだよー。」
「まぁね。」
「んふぅー。そういやモンスター殺しまくってたら途中から成長しなくなっちゃってさー。
まーその頃には大抵のヤツは一発で死ぬようになってたけどねー。」
「パラメーターの上昇が限界まで来てたんじゃねーの?つまり俗に言うレベル99ってヤツ?」
「あーなるほどー?で、君も勇者みたいだけどレベルいくつくらいで魔王倒したのー?」
「……36くらいかな?」
「あははは!君、戦闘で逃げすぎだよー。」
「まぁね。」
こいつみたいなパワープレイヤーは俺のような低レベルクリア派とは相性が最悪に悪い。
力量差は歴然。このまま戦っても仕方がないだろう。だから。
力量差は歴然。このまま戦っても仕方がないだろう。だから。
「今回も逃げさせてもらうよ。」
「え?」
「え?」
空いてる片手をポケットに入れ、もう一つの支給品、フラッシュグレネードを放り投げ目を瞑った。
「うわぁ!まぶしっ!」
強烈な光を突然浴び、体を丸める藍葉。
数秒悶えてようやく視覚が戻った時は既に二人の姿は無かった。
拍子抜けした藍葉その場に座り込み、にやりと笑う。
数秒悶えてようやく視覚が戻った時は既に二人の姿は無かった。
拍子抜けした藍葉その場に座り込み、にやりと笑う。
「きひひ、勇者の面汚しぃめぇ、逃ぃがさないよぉっ。」
【一日目・深夜/E-4 川縁】
【藍葉水萌】
【状態】健康
【装備】フランベルジュ(西洋剣)
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、不明スキルカード1~2(未確認)、手榴弾×4
【思考】
1.世界平和の為すべての参加者に平等な死を与える
2.魔王と篠田勇を殺す
【藍葉水萌】
【状態】健康
【装備】フランベルジュ(西洋剣)
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、不明スキルカード1~2(未確認)、手榴弾×4
【思考】
1.世界平和の為すべての参加者に平等な死を与える
2.魔王と篠田勇を殺す
「……ぐぬぅ。」
「おい大丈夫か魔王!?」
あの場を脱出した二人は建物に隠れながら移動する。
肩を支えて歩く魔王はいかにも苦しそうである。
以前戦ったとき勇者の固有魔法の雷を何発くらってもびくともしなかった耐久力が
今は見る影もない。あまりにも強すぎる参加者は制限がかかるということか。
肩を支えて歩く魔王はいかにも苦しそうである。
以前戦ったとき勇者の固有魔法の雷を何発くらってもびくともしなかった耐久力が
今は見る影もない。あまりにも強すぎる参加者は制限がかかるということか。
「心配すんな、すぐ手当てするところを探そうぜ。近くに病院があった筈だし。」
「す…すまんな…。」
「す…すまんな…。」
魔王が弱気につぶやく。
「気にすんなよ。俺たちは仲間だろ。」
熱い視線を向ける篠田に応えるように、魔王は少し微笑みながら呟いた。
「仲間か、そうだな、それも悪くないな。」
【一日目・深夜/F-4】
【篠田勇】
【状態】疲労(小)
【装備】エストック(西洋剣)
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、不明スキルカード1~2(未確認)、フラッシュグレネード×4
【思考】
1.殺し合いを潰す為仲間を増やす
2.魔王を病院に連れていく
【篠田勇】
【状態】疲労(小)
【装備】エストック(西洋剣)
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、不明スキルカード1~2(未確認)、フラッシュグレネード×4
【思考】
1.殺し合いを潰す為仲間を増やす
2.魔王を病院に連れていく
【魔王】
【状態】疲労(大)、背中に火傷
【装備】なし
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、不明スキルカード1~2(未確認)、釣り竿
【思考】
1.ヨグスに立ち向かう為仲間を増やす
2.傷の手当て
【状態】疲労(大)、背中に火傷
【装備】なし
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、不明スキルカード1~2(未確認)、釣り竿
【思考】
1.ヨグスに立ち向かう為仲間を増やす
2.傷の手当て
02:嵐のような愛を込めて | 時系列順 | 04:ヒストリー・オブ・バイオレンス |
02:嵐のような愛を込めて | 投下順 | 04:ヒストリー・オブ・バイオレンス |
藍葉水萌 | 22:蛮勇引力 | |
篠田勇 | 22:蛮勇引力 | |
魔王 | 22:蛮勇引力 |