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ヒストリー・オブ・バイオレンス

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ヒストリー・オブ・バイオレンス ◆ORI/A.SOic


「…マジっスか、コレ」
 別に誰に問うとでもなくそう呟く。
 空には月。
 周りには木々。
 そして、目の前には、倒れた少女。
 その少女の頬がこれより僅かにでも桃色を帯びていれば、彼、田崎紀夫は歓喜していただろう。
 その細い脚に、くびれた腰に、艶やかな髪に、滑らかな肌に、歓喜していただろう。
 しかし今は違う。
 目の前に倒れている少女の顔色は、明らかに紫色に鬱血し、目はぎょろりと見開き虚空を見ている。
 体は捻れ、両手は何かを掴もうと掲げられ、口の端からは涎と泡が垂れている。
 初めて、だ。
 厳密には、小五の頃に見た棺の中の祖父の次ではあるが、それでも、「たった今さっき殺されたばかりの死体」などは、初めてだ。
 苦しみ、藻掻いて死んだ、少女の死体。
 それが、田崎紀夫がここに連れてこられて初めて目にした、自分以外の誰か、だった。

 そして、次に目にする人物こそが、田崎の運命をさらに一変させる。

 がさ。
 下生えの草の揺れる音。
 鈍い田崎にも、それが何かは分かった。
 振り向く先にあるのは、驚愕と恐れを露わにした男の顔。
「あ」
「ひっ」
 双方が、ほぼ同時に声を漏らす。
「や、マジ、これ、違うっスから。
 俺、来たときから、その、こうなってて…」
 しどもどと言い訳がましい言葉を口にする田崎だが、自分でもそれが響かない。
 男が後じさる。
 田崎が、一歩踏み出す。
 男が更に後じさる。
 田崎が両手を挙げて、さらに弁明を続けようとする。
 奇妙な鬼ごっこの始まりだった。


◆◆◆

 歩ける。
 ひとまずそれを確認して、彼女、聖澤めぐるは安堵する。
 幼い頃からの病により、彼女は極端に体力が低く、常人なら苦も無くできることの多くが出来ない。
 いや、出来なかった。
 異世界から来たというその小さな妖精によって魔法少女となるまでは、ずっと病院のベッドの上だったのだ。
 魔法を得て、彼女の人生は変わった。
 魔法の能力を得ただけではない。
 ただ普通の人と同じように、普通のことをするだけの能力も、魔力により与えられたのだ。
 歩ける。ご飯も一人で食べられる。学校に行ける。遊びに行ける。友達も出来た。
 ただ当たり前の日々、当たり前の日常こそ、彼女が望んだ全てであり、夢だった。
「よかった…」
 ぽそりと、思わずそう声が漏れる。
 魔法の力は失っている。いるが、それでも「ただ当たり前の日常」という奇跡に等しい時間を得るだけの力は、失われていなかったからだ。

「あっ」
 けれどもそう思ったのも束の間、背後から聞こえたその小さな声に、めぐるは体を強ばらせる。
 振り返るとそこには、丸顔の小柄な男が一人。
 口を開けて、戸惑ったようなその表情は、いかにも日常的で、先程「殺し合い」とやらを宣言した、宇宙人とやらの言葉など忘れてしまいそうだった。
「や、その、お嬢ちゃん…そのぉ~…」
 なにやらしどもどと言いよどむ"おじさん"に、一応は警戒しつつ向き直る。
「…何ですか?」
「うん、何って、変なことを聞くようだけどさ、その。
 もしかして、宇宙人から何か聞かされたりした、なんてこと、ないか…な?」
 男のその言葉に、ああ、と、合点がいった。
 そうだろう。それが"普通の反応"だ。


「…そうか。じゃあ君も聞いたのか」
 宇宙人のメッセージを。
 めぐるにとって、"常識では考えられない存在"との遭遇は、初めてではない。

 めぐるにとって、"常識では考えられない存在"との遭遇は、初めてではない。
 彼女に魔法少女としての力を授けてくれた異世界の妖精。同じく魔法の力を持った魔法少女。或いはそれらを害する敵対者達。
 今現在彼女の魔法の力自体は失われているが、それでも彼女は、今回の出来事にすぐくじけてしまう事はない。
 経験があるし、何より魔法の力を得た上での、ある種の責任感がある。
 この力は、人々のために役立てるべき力だ。
 そう信じていたからこそ、彼女は魔法少女として活動を続けていられた。
 しかし、他の人たちはどうだろう?  
 宇宙人を自称する奇怪な人物に拉致され、見も知らぬ場所へと放り出され、突然「殺し合いをしろ」等と言われる。
 もちろん、めぐるとてそんな事態に遭遇したことはないし、想定もしては居なかった。
 けれどもまだ、気持ちとしてはある種の心構えが持てる。
 他の人たちに、そんなことはそうそう期待できないだろう。
 実際、目の前の丸顔の男性も戸惑い気味であった。
 どう見ても、ごく普通のおじさんでしかない。朝の通学途中ですれ違うこともあるだろう。町内会のお祭りに行けば、御輿を担いだり盆踊りを踊っているかもしれない。
 そんなごく普通の人が、突然こんな目に遭ったとしたら…。
「…大丈夫ですよ。なんとか…なんとかなりますよ」
 めぐるはそう考え、ついそう口にしてしまう。
「だって、ほら。宇宙人なんて、言うだけなら誰だって出来ますし。
 頭のおかしな…変な人が企んでるだけかも…って、それはそれで、問題ですけど…」
 気休めを言っているに過ぎないか、とも思う。
 言っている内容自体は真っ当だ。しかし、今のめぐるにはどちらの確証もない。
 本当に宇宙人に拉致され、殺し合いをさせられようとしているのか。或いはタチの悪い悪戯に巻き込まれているのか、も。
「…はぁ…」
 男はそう深く溜息をついて、めぐるを見やる。
「お嬢ちゃんは、落ち着いているねぇ…」
 不意にそう言われて、少し面食らう。
「そ、そんな事無いですよ! でも、ほら、だって…」

 しかしその言葉の続きは、最期まで喉の奥から外に出ることは無かった。


◆◆◆

「…分かった、信じるよ。
 田崎君…と言ったね? 君は人殺しなんかじゃない。
 人を殺せるようにも、嘘をつくようにも見えないしね…」
 追いかけ、追いつき、落ち着いて話し会える状態になってから、田崎はなんとか経緯を説明し、納得して貰えたことに安堵する。
「はぁ~…マジ良かったっスよ。信じて貰えて」
 深く溜息をつきそう言うと、丸っこい体に丸っこい顔で、肉の間に埋もれているような細い目を下げる様が、まるで真剣味が無く滑稽に見える。
「しかし、君もアレだろ? あの、"よごす"だか何だか言う奴のメッセージを聞いて、それからほっぽり出されているんだろ?」
「…あ、そうっス。なんだかさっぱり分かンねェっスけど、殺し合えとか何だとか、意味わかんねー事言ってて」
「…参っちゃったねぇ」
「…参っちゃったっスよ」
 二人して顔を見合わせつつ、溜息をつく。
「実際、僕らが来る前に、あんな年端もいかない少女を殺した奴が、居るんだよな」
 改めて、先程見た少女の遺体があった方へとちらりと視線を送る。
 田崎はぶるりと震えて、申し訳なさげに目をそらす。
「…ヤバイっスよね、マジで」
「そうだな…うん…。可哀想に……」
 途方に暮れる田崎だが、しかし男はそう言いつつも、
「まあ、しかし、だ。
 人生には不条理や困難が常に付きまとう。
 だが、だからってただ流されるままそれに打ち負かされて良いって事ァ無い。
 だろう? 田崎君!」
 不意にそう言われ、びくりとしつつ、
「あ、ハイ、そ、そうっスね」
 と、たいして理解せぬまま返事をしてしまう。
「取りあえず、ここで会ったのも何かの縁だ。
 なんとか協力して、この状況から脱け出そうじゃないか!? な?」
 ばんばん、と再び肩を叩かれる。
 何も分からないまま、はいはいと頷いてしまう田崎。
 とはいえ、その無闇な檄によって、少しずつだが調子を取り戻しつつあった。

「お、そう言えば自己紹介がまだだったな!
 僕は猪目。猪目道司だ。猪のイノに、目玉のメ! 猪突猛進モーレツがモットー!
 君から見たらただの老けたオヤジだろうけど、それなりに頼りになるんだぜ?」
 快活なその声に、やはり何が何やら分からぬまま、はい、よろしくお願いします、等と、とつられて変な返事をした。

 その猪目自身が、田崎が来る前にあの少女、聖澤めぐるの首を絞めて殺したのだなどという事は、つゆと知らずに。

◆◆◆

 猪目に支給されていたカードは、『未来予知』だった。
 宇宙人の言葉など半ばも信じていなかった彼は、とりあえず試しにとカードを使ってみたところ、「自分が少女の首を絞めて殺し、バッグの中身を奪い、その後そこに丸っこい間抜け面の男が現れる」未来を見た。
 それらしき風景を辿ると、正に予知で見た少女が呆然と立っているのが目に入ったのだ。
 ならば、と、彼は素直にその予知に従った。
 何せ何人もの人間を密かに殺し、金を奪い山奥で死体を解体して始末してきた連続殺人犯である彼にとって、それは、慣れ親しんだ行為だったのだから。
 猪目はこの太った間抜け男には、利用価値があると考えている。
 まず2人で居れば、それだけで安全度が増す。
 この男自体は、見た目の通りに間抜けだし殺意や敵意も無い。
 そしてその見た目が如何にも善人そうだからこそ、新たな遭遇者と交渉するのにも有利に働く。
 巧く騙せば、或いは手駒に出来るかも知れない。
 さらには不意の襲撃にも、文字通り肉の盾として価値がある。
 唯一難を言えば、まあ、男だという事だ。
 女であれば、もっと色々と楽しめたものを ―――。

 何れにせよ、猪目はここで死ぬつもりも殺されるつもりも毛頭無い。
 このイカれた状況から脱出できるのならそれでも良い。
 もっと言えば、複数の殺人罪で服役中の自分にとってみれば、そこから抜け出せただけでも儲けものなのだ。
 とはいえ、誰が何の目的で、どうやって自分を浚ったかは、知っておかねば不安ではある。
 カードのことも考えれば、本当に宇宙人によるものかもしれないとも思うが、だとするならばここは確かに法の外なのだろう。
 全員殺してやるのは手間が掛かるが、それでも ――― 出来なくはないだろうと、そうも思っている。
 巧く、やりさえすれば、だ。
 誰にも支配されず、屈服させられず、そして誰にも悟られぬように。



【聖澤めぐる:死亡】

【一日目・深夜/C-6 森林】
【田崎紀夫】
【状態】健康
【装備】なし
【スキル】なし
【所持品】基本支給品 、不明カード1、不明支給品1~2(未確認)
【思考】
1.いやこれ、マジすかー? 本当、マジすかー?


【猪目道司】
【状態】健康
【装備】
【スキル】『未来予知』
【所持品】基本支給品 、不明カード1、不明支給品2~4
【思考】
1.生き残って自由になる。

03:ボクと魔王 時系列順 05:素晴らしき哉、人生
03:ボクと魔王 投下順 05:素晴らしき哉、人生
猪目道司 21:少女観察記
田崎紀夫 21:少女観察記
聖澤めぐる 死亡


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