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片手だけつないで

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片手だけつないで ◆wKs3a28q6Q


ずうっとずうっと思っていたこと。
だけど、決して言えなかったこと。

私ね、貴女のことが――――






 ☆  ★  ☆  ★  ☆






「うわっ」
「きゃっ」

バッタリと、本当にバッタリとという表現が似合うくらいバッタリと、私は彼女と再会した。
彼女というのは一色麻矢、私の実の妹である。

「お、お姉ちゃんまでここにいたんだ……」
「麻矢こそ、何で……」
「何でって……多分、お姉ちゃんと同じでしょ」

偶然出会うことなんて、私達にとっては日常茶飯事だった。
普段はまるで別の趣向を持っていて、行動先も行動相手もてんでバラバラの私達。
なのに根本は似ているのか、何故かバッタリ出会ってしまうことがある。
目的地が違ってもそういうことが頻発するのは、俗にいう双子のテレパシー的なものの効果だろうか。

「そう……やっぱり、あの宇宙人に連れられてきたのね」
「うん。お姉ちゃんはどう思う? この殺し合いについて」
「そりゃあ、勿論……」

示し合わせたわけではないのに、せーので答え合わせになる。
でも、私達は知っている。
こうなった時、どういう結末が待っているのか。


             悪い夢に決まってるわ。こんなこと、あり得るはずがないもの」
「こんなの――
             認めたくないけど、現実なんだろうなぁ」


「「…………」」

ほら、ね。決まってこうなる。
私達双子は、似ているようで真逆の存在なんだから。


「……って、麻矢、支給品はどうしたの?」
「ん? ああ、捨ててきた。私のスタート地点、海が見えたから、こう、ブーンと放り投げて」
「捨て……ええええええええええ!?」

す、捨てたの!?
ものすごーく大事そうなこのデイパックを!?

「だってほら、邪魔だし、殺し合いなんてする気ないし」
「だ、だからって……それに麻矢、この殺し合いを現実だと思ってるんでしょう? なら……」
「それを言うならお姉ちゃんこそ、夢だと思っているのに何でそんなに大事そうにデイパックを抱えてるのさ」
「それは、その……」

怖いから、なんてこと、口が裂けても言えなかった。
冷静沈着で通っている私の弱点として、臆病というのがあげられる。
顔には決して出さないけれど、お化けの類をはじめ、苦手なモノが多数あった。
肝だめし好きの麻矢の誘いを断るために、肝試しの幼さを理路整然と語れるよう夏の前に文章を練った程である。

「とにかく! そんなことより今はどう動くかよ」
「お姉ちゃんは夢だと思ってるみたいだけど……どうする? 私と一緒に来てくれる?」
「当然よ。私としても、知人がいるのは心強いし」
「そこは、『家族がいると心強い』って言ってくれるべき場面じゃないかなぁ」

大げさなリアクションで肩を落とす麻矢の姿に、自然と笑みが漏れてしまう。
明るく、人を笑顔にさせる。
私にはない才能だ。

「一応、考えている方針はあるんだけど……」
「お、奇っ遇ー。私も一応ぼんやりとだけど考えてはあるんだよね」

ああ、これはまたいつもの流れになる予感。


                森の方に行ってみない?」
「行き先なんだけど、
                海の方に行ってみない?」


……ほら、ね。
大体行き先と名のつくもので意見が一致することなんて有り得ないのだ。


「何で海なのよ?」
「いやー、海を泳いで帰ってみようかなーって」
「呆れた……出来るわけないじゃない」
「分かってるって、だから、無茶を承知で殺し合いなんてやらねーぞって反逆してやるの。
 そして、誰も殺さず、誰にも殺されず、ひっそりと殺し合いから姿を消す――最高の反逆じゃない?
 これでもお姉ちゃんを見て育ってきましたから。私も十分しっかり物を考えられるんですのよ? オホホホホ」
「はいはい」

確かに、麻矢も十分しっかりしている。
けれどもそれを認めないのは、麻矢に劣った箇所を多数持ってしまった姉としてのつまらぬ意地だ。
せめて、お姉ちゃんらしく、麻矢よりすごく在り続けたい。
ただ、それだけの意地だ。

「そういうお姉ちゃんこそ、何で森?」
「首でも吊ったら目が覚めるでしょう?
 万が一苦しかったら、現実だって分かるわけだし」
「なぁんだ、お姉ちゃんも結局自殺コースだったんだ」

いつもはバラバラなのに、肝心なとこはそっくりなのが私達。
どうやら私達は、二人共この舞台をそっと降りようと決めていたらしい。

「……で、どっちに行く?」
「私としては森がいいけど」
「私がすんなり頷くと思う?」
「……思わないわ」

二人共行きたい所はバラバラなのに、一緒に動くことへの疑問なんてものは持たない。
大事なことは一緒にやるのが当たり前すぎて、そんなこと疑問に持ちようがなかった。

「それじゃあ、ジャンケン?」
「仕方ないわね……」

麻矢が腕を交差させ、天を仰いでいるのが分かる。
負けられないジャンケンの時、麻矢はこうして運とジンクスに頼るのだ。
一方で私は麻矢が出しそうな手を過去の情報を元に分析することで勝とうとする。
こんなとこでも私達は真逆だった。

「ジャンケ――危ない!!」
「!?」

腕を振り下ろす前に、麻矢に突き飛ばされる。
傾く視界の向こう、私の立って居た所を何かが通りすぎるのが見えた。



「ちぃっ!!」
「げぇっ、何あれ!?」
「夢だからって何でもありなのね……」

所謂ガーゴイルだろうか。
そのガーゴイルを美少女化するという昨今の日本における恥ずかしい文化の集大成みたいな生命体が、木に足をかけこちらを睨みつけていた。
その手には、人を裂けそうな鋭い爪。

「やる気満々……みたいだねぇ」
「どうするの、貴女、武器捨ててきちゃってるんでしょう?」
「お姉ちゃんのデイパックに武器は……」
「あっても使えないようなのばかりよ! アレに通じそうにないし」

夢の中でとはいえ、武器を使うのは躊躇われた。
ついでに言うとスキルカードとやらも入っていたのだが、やはり効果が空恐ろしく使っていない。

「じゃあ勿論……」
「逃げるわよ!!」
「ガッテン!!」

いち早く走り出したというのに、あっという間に麻矢に抜かれる。
本当、運動神経の塊みたいな娘ね。

「私を置いていきなさい。そうすれば――」
「黙ってて! 舌噛むよ!」

私を犠牲にすればさっさと逃げ切れるっていうのに、わざわざ手を引くなんて……
全く、お人好しなんだから。

「大体、お姉ちゃんだって置いていかれたくないんでしょう!?」
「そりゃあ、ね」
「だったら黙ってついてくる!」

ガーゴイルは追って来ているが、何故か追撃をかけられずにいるようだった。
しかし、振りきれるというわけでもない。
何か、何かキッカケがなければ――

「仕方ない……わねっ!!」

右手を引かれていたのが幸いした。
フリーの左手でデイパックを振りかぶる。
私は左利き故に、左手の方が力を込めることができる。
渾身のスイングで、デイパックを放り投げてやった。

「!?」

相手は意表を突かれたのだろう。
運動を停止し、デイパックをキャッチした。
その間に、距離をグングン引き離す。

「どこに向かっているの!?」
「デイパックを捨てたとこ!」

背後を気にしながら、麻矢の誘導についていく。
後ろにガーゴイルは見えない。
いい加減手が痺れてきた頃、ようやく目的の場所へ着いた。


「うわ……」

思わず声を上げてしまう程断崖絶壁。
ここから落ちたら120%助からないなと思わされる。
正直、ちょっと怖かった。

「ここから落ちれば夢から絶対覚めるんじゃない?」
「……確かに、ここなら貴女もひっそり舞台を降りられるでしょうね。
 じゃあ何でデイパックと一緒にここから飛ばなかったの?」
「だってほら、これだと飛び降りっぽくて、海に入ってって感じじゃないじゃん。
 やっぱりこう、帰るんだったら母なる海へってのがいいじゃん」
「母なる大地、引いては森林に帰るべきだと私は思うけどね」

下は海。
でも確かにこれは入水自殺というよりも飛び降り自殺になるだろう。

「じゃあ、どちらかというとこれは森における自殺ってことになるわね」
「……は?」
「森じゃないのはアレだけど……山は森の親戚みたいなものだし、これは私のテリトリーにおける自殺ということになるわ。」
「いやいやいや。だったらまだ私のテリトリーって言った方がなんぼか近いでしょ。海だし。飛び降り先海だし」

こんなやりとりも、よくやっていた。
私達は似てないけど、決して仲が悪いわけではなかったのだ。
冗談めかしてこういうやり取りをしたりもする。

「……って、お姉ちゃん。自殺って言ってるけど……お姉ちゃんは目覚めると思ってるんじゃあ」
「まぁそうだけど……一応、夢の中では自殺ってことになるでしょう?」
「そりゃそうだ。けど意外だなービビリのお姉ちゃんが自殺を選べるなんて」
「だ、誰がビビりよ、誰が」

ば、バレてる?

「お姉ちゃん、見栄っ張りだもんなぁ」
「……な、なんのことかわからないわ。それより!」

無駄だと分かっていてもついつい誤魔化しにかかる。
無理やり話題を切り替えに行くのだ。

「逃げ切ったかもしれないけど……最期の場所をここで妥協しちゃっていいの?」
「うーん……そりゃまぁ出来たら海行きたいけど、また遭遇しかねないし……」
「そうよねぇ……やっぱりここで妥協するしか……」
「それなんだけどさ」

急に、麻矢が真面目なトーンの声になる。

「ん?」
「何でお姉ちゃんは、自殺を選んだの?
 別に夢だと思っているなら、殺したり殺されたりでも問題ないじゃん」
「……それを言うなら貴女だって、殺したくないだけなら、あの娘――まあ、ガーゴイルだけど――に殺されてあげてもいいんじゃない?
 あの娘?には、きっと殺してでも生きなきゃいけない理由があったんでしょうし」

これは、私が感じていた疑問。
確かに飛び降りと比べ、痛くない保証はないが――
なんとなく、そんな理由ではない気がしたのだ。
これも、双子のテレパシーというやつだろうか。

「んじゃあ、せーので自殺を選んだ理由を言おっか」
「何でそうなるのよ……」
「いーからいーから。その方が、私達らしいじゃん」


確かに、そうかもしれない。
私達はよく双子だからという理由で同時に物を喋らされた。
それが同じ発言でも異なった発言でも、周囲はそれを聞いてリアクションを取る。
そんな日常。
――目が覚めたら、そんな日常に帰れるのだろうか。


             だってこれが夢だとしても、やっぱり誰かを人殺しなんてさせたくないから……」
「せーのっ――
             だって殺られるのムカつくし、それに誰かを人殺しなんてさせたくないじゃん!」


「……ぷっ」
「ふふふふふふ」

思わず笑みがこぼれてしまう。
なぁんだ、やっぱりこういう大事な所は一緒なんだ。

「なぁんだ、やっぱりお姉ちゃんも同じようなこと考えてたんだ」
「お人好しね、お互い」
「殺されるのは辛いけど、殺させちゃうのはもっと心苦しいからねぇ」

やっぱり私と麻矢は似た者同士かもしれない。
さながらコインの裏表。
いつもは相容れないくらいに趣向も思考もバラバラなのに、根本を見たら全く同じ。
裏も表も“同じコイン”なように。

「もう、逃げられないわよ」
「ありゃ、追いつかれちゃった」

相変わらずのガーゴイルが姿を表す。
ぜぇぜぇと息をし、見るからに苦しそうだった。

「……あんなにツラそうなんだ、殺されるわけにはいかないよねぇ」
「そうね。さっさと行きましょうか」

視線はガーゴイルから外さず、崖の方へと歩み寄る。
あまりの高さに少し体が震えてきた。
ジェットコースターの類も、正直得意じゃないのである。
そしてチラリと崖下を見たせいで、恐怖が頭から抜けなくなった。
瞬間記憶が憎たらしい。

「……大丈夫、一緒だから」

そう言って、ぎゅっと手を握りしめてきた。
私の利き手の左手が、麻矢の利き手の右手で強く結ばれる。

「……そういう麻矢こそ、震えてるわよ」
「そりゃあね。ついでに言うと、ぶっちゃけ泣きそう」

そう言って、麻矢は口端を吊り上げてみせた。
そうやって自分の弱みをネタに出来る強さが、少しだけ、いや本当はすっごく羨ましかった。
今も、そして日常でも。



「でもね――お姉ちゃんがいてくれるから、怖くないよ」
「そう……私もよ」

自然と笑みがこぼれてしまう。
ガーゴイルがこちらのやりとりに戸惑っているのが分かる。
そりゃあそうよね、追い込まれてなおこんな呑気にしているのだから。

でも、大丈夫。
貴女はそうしているだけでいいわ。
人なんて殺す必要もないし、これ以上疲弊する必要もない。

「「あのね――」」

最期に。
何か言葉を紡ごうとして、うっかりハモってしまう。
それが何だかおかしくて、二人一緒に笑い出してしまった。

「あはははは……お姉ちゃん!」

繋いだ腕を引っ張られ、転ばされる。
またも先程居た場所をガーゴイルが通り過ぎていた。

「また助けられたわね」
「いいっていいって。今までもっといっぱい助けてもらったから」
「あら、やけに素直じゃない。やっぱり夢ね、この世界は」
「酷いなあ」

またクスクスと笑いが起きる。
だけどもう猶予はない。
怖いけど、震えるけど、もう行かないといけないのだ。

「行くよ、お姉ちゃん! 合図よろしく」
「いいわよ。せーーーーのっ!!」

地面を蹴り上げ、私の世界の親戚である山の大地にさよならを告げる。
そしてこの身を、麻矢の世界であった海へと放り出した。



「お姉ちゃん!」
「麻矢!」

繋がれた手をぎゅっと握る。
麻矢の目から涙がこぼれおちていた。
私の目からも大粒の水が溢れ出ている。
落下時の風の影響なのか、二人とも震えていた。

それでも、無理やり笑顔を作った。

私達は、この悪夢から逃走する。
自分達だけのためではない。
あのガーゴイルの少女に、罪を犯させないためにこの舞台を降りるのだ。
そのことを誇り、無理やりにでも笑ったまま降りてやる。

ジェットコースターよりも数十倍も恐ろしいけど、目は最後まで閉じなかった。
視線の先は、特に好きというわけでもない海ではない。
海よりも、そして森よりも大好きだった姉妹の顔。
彼女もまた、無理やりな笑顔でこちらの事を眺めていた。

「「あのね――――」」

今度こそ、伝えたいことを伝えよう。
そう思ったのに、その前に“終わり”が訪れてしまった。
海に飲まれる私達。
それでも片手を固く固く繋いでいたため、その身が離れることはなかった。



【一色亜矢 死亡】
【一色麻矢 死亡】






 ☆  ★  ☆  ★  ☆






不覚だった。
愛する人の安全のために支給品を全部置いてきたのが完全裏目に出た。

ガーゴイルは、確かに優れた能力を持っていた。
市街地を斜めに突っ切ることを可能とする超スピード。
その間に獲物を見つけても逃さないであろう視力。
どれをとっても申し分ない。

しかし、それほどの能力がデメリット0で手に入るわけがなかったのだ。
変身は、たった十分で解除されてしまった。
それも、とんでもなく疲労が襲ってくる。


このままでは、まずい。
何一つ果たせない。

とりあえず人気のない山岳で休息を取り、再び変身するだけの余力が出来たら仕切り直そうと考えた。
しかしそこで、獲物を発見してしまう。
相手はどう見ても弱そうな女子高生二人組。
様子を見ていると、呑気にジャンケンを始めた。

今なら、殺れる。

そう思って変身して襲ったのだが――

疲労したうえの変身のせいか速度も先程よりは出ず、あっさり回避されてしまった。
しかもその後の鬼ごっこでも、追いつくことすらままならない体たらく。
どうやら疲れているときに無理に変身するものではないらしい。

武器が、いる。
変身せずとも獲物を仕留められる武器が。

そう考えていた矢先だった。
少女がデイパックを投げつけてきたのは。

これ幸いとはこのことだ。
ヤツらを追うのは大事だが、まずは中身を確認することが大事だ。
武器は抜かれているだろうが、この超人的肉体をもってすれば役立つモノが入っているかもしれない。

速度が犠牲になったものの、デイパックの中を確認することが出来た。
どうやら何も抜いていなかったらしく、デイパックには小さなダイバーズナイフが入っていた。
ナイフを握り、スピードを上げる。

姿はもはや見えないが、嗅覚も成長しているため、
彼女達のつけた香水の匂いを辿ることくらい容易だった。

「もう、逃げられないわよ」

なのに彼女達は、慌てる様子を見せなかった。
それどころか、崖の方へと近寄っていく。

(何か、企んでる?)

今の疲労具合を思うと、簡単には近寄れない。
罠にはめられた場合、回避する術がないのだ。

(……これは……)

この雰囲気を、知っている。
それが何なのかすぐには思い出せなかったが――ようやく分かった。
さっきまでの私なのだ。
日常を最期に惜しんでいた、あの時の私。
それと同じ雰囲気を、二人からは感じるのだ。

(ならばこれは、罠じゃない!)

ダイバーズナイフを握りなおし、二人に対して突っ込んでいく。
しかししゃがまれ回避されてしまった。
崖の向こうへの墜落を避けるべく、上昇しながら斬りかかったのが仇となったか。

しかしここで異変が生じた。
旋回し再び攻撃しようと考えたところで、少女達が崖から身を投げたのだ。
罠か、もしくは逃走の算段でもあっての行為なのか――
分からないが、とにかく追いかける気力はなかった。
下手においかけて、途中で変身が解除されでもしたら目も当てられない。

今はとにかく休憩しよう。
変身というカードのアドバンテージを活かすためにも。
手に入った武器とスキルカードを使いこなすためにも。

……しかし一人だと休憩がなかなか取れないのではないかということに気がついた。
常に気を張らねばいけない。
ましてやこちらの武器はダイバーズナイフ一本。
あまり悠々とは休めないだろう。

ならば、いっそ同盟も視野に入れるか。
途中で裏切られる恐れはあるが、少なくとも放送までは同盟を組んでくれるだろう。
もっと言えば、誰かと対決するまでは、割と安全だと言える。
切り捨てるタイミングではないからだ。

もしくは、力の強い善人に保護してもらうか。
演技をすれば何とかなるはずである。
一応、まだ硝煙の匂い一つ付いてないし。
そして、やはり期を見て裏切る。
こっちの場合、利害がはっきりしている同盟と違い、相手の善意などという不確かな物に頼らざるを得ないので、出来ることなら避けたいが――

まあとにかく、誰かに会ったら考えよう。
そう思いながら、もう少し安全そうな休息場所を求めて重い足を動かし始めた。

そして、ふと思い立ち崖を覗き込む。
罠にしては時間が経ったし、逃げたのならどの道手遅れだろうから、問題ないと判断してのことだ。
本当ならずっと待っていた可能性もあったのだが――そこまで頭が回らなかった。
ただ、誰かを騙して保護される際、正体を知った者が生きているか死んでいるか知っておきたかったのだ。

「…………いいな」

ぼそりと、呟く。
海面には、二枚のスカーフが仲良く漂っていた。
それはまるで生前の姉妹のようで。

自分はもう愛しい人とあんな風には寄り添えない。
そのことに胸をチリチリと痛めながらも、崖を背に一層重くなった足を動かし始めた。



【一日目・黎明/B-3 山岳】
椎名祢音
【状態】疲労(極大)
【装備】ダイバーズナイフ
【スキル】『変身』
【所持品】基本支給品×2、不明支給品×0~2(確認済み、武器はなし)、不明スキルカード×1
【思考】
1:片嶌俊介以外全員殺す
2:しばらく休む。場合によっては同盟の結成や保護対象として演技をすることも視野に。







 ☆  ★  ☆  ★  ☆






好きなものが違ったから、いつも一緒には居られなかったね。
それでも二人、彼氏と長続きしなくて、イベント事ではいつも一緒に居たよね。
お父さんもお母さんも必死に働いていたから、いつも二人ぼっちだった。
だけど寂しくはなかったんだよ。

……ねえ。何でだか分かる?
私ね、ずうっとずうっと思っていたことがあるんだ。
だけど、決して言えなかった。
だって、小っ恥ずかしいじゃない。
母の日とか父の日みたいに、姉妹に対して日頃のお礼を言える日があればもっと普段から言えたのにね。

最期だから、言うよ。
一度だけ、もう二度と言わないから。

あんな怖いこと、本当に出来た理由。
最期まで、笑顔を保てた理由。


貴女が傍に居てくれた――それが、理由なんだよ。


今回も、普段でも。
貴女の存在、結構大きかったんだよ。

本当に、ありがとう。
貴女が居てくれて本当によかった。



                     万事で私をすぐに追い抜く、生意気だけどいつも笑顔で周囲を照らしてくれる、私の大切な妹。
ずっとずっと大好きだよ――――
                     いつでも私を見守ってくれる、クールに見えて可愛い所も持っている、私の優しいお姉ちゃん。

16:許されざる者 時系列順 18:思い出依頼
16:許されざる者 投下順 18:思い出依頼
02:嵐のような愛を込めて 椎名祢音 27:さよなら、私
一色亜矢 死亡
一色麻矢 死亡


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