爆撃にでも遭ったかのような、そんな惨状を晒す一角。
 呼延光と、大根卸樹魂が拳を交えた場所を、スプリング・ローズが歩いている。
 ローズの目指す先はブラックペンタゴン。いかにも刑務者が集まるだろう、馬鹿でかい建造物へと赴いて、適当な奴を見繕って殺すのだ。
 その為にローズは最短距離を選んで進み、Gー1からF-2へと入っていた。
 このまま進めば、草原を突っ切る事になるが、ローズにとっては瑣事でしかない。道を行く為に迂回して、時間を空費するよりもマシだった。あと遠回りはダルい。


 「……ゴジラでも居たのかよ」

 崩壊した工場に、倒れたクレーン。上下逆になって転がっているフォークリフト、中程で砕けて居る電柱に街灯。時々爆ぜる音を立てて燃えている街路樹。
 旧時代も人間ならば、市街戦でも起きたのかと思う所だが、今の時代の人間ならば、超力(ネオス)を用いた闘争を疑う。ましてや“ネイティブ世代”なら尚更だ。

 「此奴等と闘(や)るのは流石に骨だな」

 冷静に戦力を測る。ローズの刑期を考えれば、この破壊を為した奴等の相手をする必要は無く、ローズは実にあっさりと、此処で暴れた連中を相手にしない方針を決定した。
 但し、相手が喧嘩を売ってこなければ、という条件が着くが。
 売られた喧嘩ならば、買わねばならない。買った上で、手段を選ばずに、ブチのめさねばならない。
 それこそが、ローズの生きてきた世界。弱肉強食が唯一無二の法だった世界。

 恩赦は欲しいが、未だ相手を選ぶ余裕は有る。少なくとも、残り6時間を切るまでは。
 “燃費”のことも考えれば、20時間以上残っているというのに、こんな奴等を相手に消耗するのは愚劣にも程が有る。
 それでも、売られた喧嘩は買うし、買った以上は殺す。

 それはそれとして、これ以上旧工業地帯に留まる意味は無い。
 ここで暴れたフィジカルモンスターズ達とカチ合う可能性が有るのだから。
 サッサとここから離れて、ブラックペンタゴン辺りで手頃な獲物を狩る。そう決めたローズは、ふと立ち止まって、周囲の様子を窺った。

 奇妙な臭いを、ローズの鼻は捉えていた。
 数としては、一つ。
 しかして嗅ぎ取れる臭いは、三つ。
 人と獣が混じり合った、亜人系超力者の其れに似ているが、あくまでも似ているだけで、明白に異なる。
 複数の人間の臭いが混じり合って、一つの臭いを形成している。
 その臭いが、近付きつつある。
 明らかに、ローズの事を察知していて、ローズの方へと向かってきている。

 ────ケッ…胸糞悪ぃ……。

 ローズには、心当たりが有った。
 物心ついた時から一人ぼっちで、他者との繋がりに飢えていたストリート・チルドレンが発現させた超力。
 自分自身の存在を“個”から“群”へと変化させ、殺した相手を己が内に取り込み、自己の総量を増やしていく超力(ネオス)。
 取り込んだ者達のデスマスクを全身に貼り付け、10以上の死面と会話をしながら徘徊し、取り込んだ者達の数だけ増した身体能力で、更なる死を齎す存在。
 ハイヴ(巣)と名乗り、ローズの“飼い主”から、“レギオン”と呼ばれた子供。
 手当たり次第に人を襲い、アイアンハート及びイースターズにも甚大な被害を齎し、ローズが血みどろの死闘を演じた末に取り逃がし、ネイ・ローマンに仕留められた少女。
 その少女と、近しい臭い。

 正確には異なる超力だが、大まかな区分は同じだろうと当たりを着ける。
 殺されれば、取り込まれる。
 誰とも知れない奴の一部として、生き続ける羽目になる。


 ────“アレ“と同類なら…殺る気だよなぁ……。

 話し合いなど意味を為さないだろう。“レギオン”もまた、殺して群れの一部として取り込む事でしか、他者と関われず、関わろうとしなかったのだから。

 こんな所で死ぬ気は無く。ましてや何処の誰とも知らない奴の一部になるのも嫌だった。
 だが、”逃げる”という選択は、今は無い。
 “牧師”の威光が通じ無い、衝動と欲望と享楽に従って生きる刹那主義者が掃いて捨てるほど居る、ストレート・ギャングの世界では、強さこそが全てだ。
 “弱さ”を少しでも示せば、骨も残らず貪り食われる。
 そんな世界で生きてきたローズの選択に、どんな相手か全く判らない状態で、逃げるという選択肢は存在し無い。
 誘われる様に、ローズは匂いの元へと歩いて行き、一つの人影に邂逅するのだった。

 ◆

 ◆


 「や、やあ、お嬢、さん。僕のファミリーになろう」

 娑婆でなら即時に通報されそうな笑顔で、即時に善意の通行人に制圧されそうな事を言う男。本条清彦。
 無銘から得た30P全てと引き換えにしたボディ・アーマーで全身の守りを固め、五指を半端に開いた両手を胸元に構て、禁断症状を起こした薬物中毒患者の様に震えながら、ローズへとにじり寄る。

 「変なクスリでもやってるのか?」

 ラリってんのか此奴。
 本条清彦と一言交わして、ローズは心底そう思った。
 異様に気配が薄い癖に、胸糞悪い臭いとイカれた言動の所為で、妙に記憶に残る男だ。
 別れて一分経たぬうちに、この男の姿形や声を思い出せなくなる自身は有るが、臭いと言動は当分忘れられそうに無い。
 殺して取り込む事を“ファミリーになる”というのならば、此奴がやろうとしているのは、そういう事だろう。
 ローズの決断は早かった。

 鈍く湿った音が聞こえ、本条が白目を剥いて膝をついた。

 「きっっしょ!!チビのガキだと思って、ザケた事吐かしてんじゃねぇぞ!?あーーーーーッ!」

 元より暴力の切符を握りしめ、屍で出来たハイウェイを後ろを省みるどころか、ロクに前すら見ずに暴走するローズだ。刑務に乗って居るか居ないかなど関係無い。
 気に入らないから殺す。気色が悪いから殺す。今までも、これからも、些細な理由で他者を殺傷し続ける。
 ローズの取った行動は、単純に先手必勝。素早く距離を詰めると、鋭い蹴りで本条の睾丸を蹴り上げたのだ。
 弧を描くように蹴り上げ、爪先ではなく足の甲で、太腿と足の間に睾丸を挟み打つ。年齢に不相応な暴力の蓄積に基づく、殺傷効果を突き詰めた蹴撃。
 急所を護るファウルカップの存在と、脚に負った火傷の痛みで、蹴りの勢いが鈍らなければ、本条の睾丸は左右ともに潰れていただろう。
 幸にして潰れる事は無かったが、激痛により本条は尻を上げる格好で地面に倒れ込んだ。

 「わざわざケツ上げてよぉ!掘ってくださいってかーーーーッッ!!!」

 加減など微塵も感じさせ無い、渾身の爪先蹴りが、本条の肛門へと突き刺さる。
 プロテクターがあるとは言え、金的と並ぶ急所に追撃を受け、獣じみた叫びを上げてのたうち回る本条へと、ローズは更なる追撃を敢行。
 激しく動き回る本条のコメカミに、再度の爪先蹴り。頭部が派手に揺れて、完全に気絶した本条の動きが止まった。

 「ケッ…こんなカスが無期懲役かよ。得したが、腑に落ちねぇなぁ……。取り込んだ奴等はどうした?」

 “アビス”に送られる犯罪者は、程度の差は有るが、全員が只者では無い。
 先刻出逢ったアンリの様に、他者に危害を加えられない様な気質の者であっても、そこいらの警官程度なら蹴散らせる奴だって居る。
 ましてや下されし沙汰が“無期懲役”の重犯罪者。それがこんなにも脆い訳が無い。
 第一殺した奴を取り込んでいるのに、こうまで脆い訳が無い。
 “レギオン”との死闘を思い出し、ローズは気を引き締めると、油断無く本条の息の根を止めに掛かる。
 足を上げて、本条の頭へと思い切り踏み下す。
 再生能力持ちでも、頭部を潰せばほぼ全てが絶命する。
 一方的に殴り倒した相手に対して、一切の油断無く殺しに行ったのは、苛烈にして欺き欺かれが常のストリート・ギャングの抗争の体験が為せる業だった。

「あ……?」

 気がついた時には、地面に転がってお空を眺めていた。
 踏み下ろした足を払われ、軸足を掬われたのだと瞬時に悟り、全身の発条を駆使して跳ね飛ぶ事で、倒れていた場所から離れる。
 立ち上がると同時に、人体に穴を穿てそうな程に鋭い視線を、本条が倒れていた場所へと向ける。

 視界を覆ったのは、黒い影。
 靴の底だと認識するより速く、ローズの鼻っ柱に蹴りが直撃。ローズの矮躯がゴム毬のように路面を跳ねながら転がっていく。

 ────さっきまでの…奴じゃ無ぇ!

 取り込んだ奴等の身体能力を使うだけでは説明がつか無い。
 動きの質そのものが、劇的に向上────どころか別人のそれと化している。
 取り込んだ人間に姿を変え、技能までをも再現する超力(ネオス)。おそらくは取り込まれた者の超力(ネオス)さえも。
 ならば此方も、超力(ネオス)を用いて、変身────しようとした矢先、胃の部分に蹴りが突き刺さり、血の混じった胃液を吐き散らしながら、ローズの身体は再度地を転がる。
 立て直そうにも、立て直す暇を得られ無い。
 変身も、出来そうに無い。
 否。この窮地を凌ぐには、何も全身が変わる必要は無い。
 敵の攻勢を中断させられれば、それで良い。
 右腕に意識を集中。渾身の力を込めて、振るい抜く。
 赤い体毛に覆われた巨腕が空を裂き、ローズへの更なる追撃を停止させた。

 「やってくれたじゃねぇか……」

 鼻から口へと流れ込んできた血と、口内に残る胃液の為に、舌が粘ついて上手く呂律が回らないが、戦意を表明する言葉は滞り無く紡げた。
 怒りと屈辱に血走ったローズの眼は、鋭い目付きと長い黒髪の精悍な男を捉えていた。

 「バラバラにしてやるよ」

 全身が膨張する、
 筋肉が膨れ上がる。
 骨格が獣へと変わる。
 鋭い爪牙が生え伸びる。
 赤い獣毛が身体中を覆う。

 矮躯の少女の姿は消え失せ、今此処に在りしは、人狼(ヒトオオカミ)。

 「狩の…時間だ」

 ローズが地を蹴って、男────無銘へと飛び掛かった。




 狼の腕から繰り出される突きの連打。
 踏み込みも回転も伴わぬ手打ちの連続。
 それだけに回転数は多く、手打ちが故の打撃の軽さは、鋭利な爪がカバーする。
 防具越しであっても、身体の何処に当たれば、皮膚が裂け肉を抉り、鮮血が噴き出す。打撃では無く刺突のラッシュ。

 一撃でも被弾が許されぬ爪の連撃を、無銘は悉く躱し、捌く。
 手打ちであるが故に、繰り出される爪は引きが早く、そして再度襲来するまでの間が極小しか存在し無い。
 掴みに行く事は困難で、踏み込む事は許され無い。
 組みに行けば、爪と牙が身体に食い込む。
 無銘ほどの達者が、防戦一方に徹しているのは、鋭く速い爪も有るが、ローズが未だ右腕しか使っていない所にある。
 迂闊に踏み込む、杜撰な攻撃を行う、そんな真似をするならば、左の凶爪が無銘の身体を裂き抉る。
 攻めるに際しては、ローズの攻め手を挫く一工夫を凝らした上でなければならなかった。

 無銘には、勝算が有る。
 ローズの攻撃的な性状は、一方的な攻撃を行いながらも、その実全く攻勢が成果に繋がっていないと言う事に耐えられまい。
 対して無銘は、如何なる状況下でも、精神の安定と平静を保てる超力(ネオス)が有る。
 このまま攻勢を凌ぎ続ければ、ローズは焦れて無理な攻撃を行う。
 その時こそが、勝機だった。

 眼球。眉間。人中。鼻孔。喉笛。鳩尾。心臓。胃。臍。肝臓。
 人体の急所を狙って放たれる爪撃の数々が、ローズの踏んできた場数の数を雄弁に物語る。
 成る程確かに、齢十三で“アビス”に落とされ、刑務者に選ばれるだけの事があった。
 苛烈な精神と、それに相応しい凶猛な超力(ネオス)。その二つがローズに齎した無数の闘争。それにより蓄積された経験値。
 戦闘の技能について学んだ事こそ無いが、超力(ネオス)による超強化と膨大な経験が併さって、ローズは確かに強者と呼ばれるに相応しく。
 強者たるローズの攻勢を凌ぎ続ける無銘もまた、強者と呼ばれるに相応しかった。

 爪が当たれば、それだけで決着となる連打を、無銘は悉く躱し捌く。
 先刻の、死に際して至った“境地”。
 あの経験が、無銘を更なる高みへと導き、ローズの攻撃を全て無為に終わらせる。
 攻めに攻め続けるローズの顔が、怒りに歪む。
 咆哮。飢えた虎ですらが、恐慌して逃げ出すだろう怒声と共に、大振りの右の爪撃。
 振われた爪は、無銘の左肩から右脇腹にかけて、凄惨な切り傷を作るものだったが、雑極まりない大振りが、今更無銘に当たる筈も無く。
 半歩退がってローズの攻撃を空振らせた無銘は、渾身の前蹴りをローズの臍を狙って放つ。
 確かに命中した蹴りは、異様な手応えを伝えて来た。
 明らかに、ローズの身体へと、ダメージが通っていない。
 身体の表面────体毛の部分で、威力が吸収されてしまっていた。
 狼のそれとなったローズの口元が歪む。 
 人の姿であったなたば、嘲笑を浮かべている事が分かっただろう。
 無理攻めは、無銘の狙いを精確に読んだ上での行為。
 無銘の思惑通りに動いて、攻撃を誘い、並の超力(ネオス)ならば弾く強靭な体毛と、頑強な筋肉で攻撃を受け止め、無銘の晒した隙を突く。
 初めて振われた左爪が、無銘の胸を切り裂いた。

 ローズの舌打ちが響く。
 無銘はローズの身体を足場に用いて、大きく後方に跳躍。
 迫る凶爪による損傷を、最小限に留めていた。
 確かに爪をくれてやったが、アレではプロテクターを裂いただけだ。
 瞬時に無銘の傷を測り、ローズは猛然と地を蹴って攻め掛かった。
 仕切り直すなど許さ無い。攻めて攻めて攻め殺す。
 脳の自認が肉体に作用して、身体機能をも変質させる。“ネイティブ”世代に顕著な特性。
 肉体そのものを変異させるローズが、この特性を発現してい無い訳が無く。
 昂る精神が、身体能力を更に更に引き上げる。

 ローズは血に狂った餓狼そのままに、無銘目掛けて疾駆する。
 繰り出す左右の凶爪。上下左右から無銘の肉体を切り裂くべく振るい続ける。
 亜人系超力者は、それだけで人の域を超えた身体能力を発揮する。
 ましてや、並の亜人系を超える強化率を持つローズの人狼形態は、大振りの攻撃ですらが、常人には被弾してから漸く気付く程の速度に達している。
 それ程の速度で振われる凶爪は、人体など骨すら容易に断ち切るだろう。
 受ければ致命の、認識困難な攻撃の嵐。

だが、それすらも、無銘の“達した”境地の前には何ら結果を齎すことが出来無い。
 傍目から見れば、ローズの攻撃が無銘の身体を透過しているようにも見えるだろう。
 実際には透過しているのでは無く、無銘の体表ギリギリを、爪が過ぎ去っているだけだ。
 無銘の動きが極小で、爪と無銘の間の距離が、ゼロに等しい為に、傍目には爪が無銘の身体を透過しているように見えるのだ。
 だが、無銘もまた、踏み込めない。
 踏み込む動きをすれば、爪で切り裂かれて絶命する。
 それが分かっているからこそ、無銘は前に出ずに、再度ローズの忍耐が限界を迎えるのを待つ事にする。
 無銘のこの戦い方は、偏にローズの変身が、人と獣の双方の中間形態である事により成立している。
 北鈴安理の様に、幻想の生物に変身する能力であれば、幻想生物特有の異能を以って、無銘が未知の攻撃を行えただろう。
 家族だった王星宇の様に、完全な獣に変異する能力ならば、無銘は人とは勝手の異なる相手に、苦戦を強いられただろう。
 だが、ローズの変身する姿は人狼(ヒトオオカミ)。人に似た狼であり、狼に似たヒトである。
 狼の身体能力に、人の技巧を併せ持つ────と言えば聞こえは良いが。
 それは単純に中途半端でもあるということ。
 なまじ人の動きをする為に。無銘の様な達者ならば“読む”事を可能とする。
 なまじ人に似た身体構造の為に、狼の身体能力を活かしきれない。
 だからこそ、無銘はローズの猛攻を、無傷でやり過ごせている。
 ローズが焦れて無理押しをする時を、じっと待っていられる。
 嵐の海の様な激情を持つローズと異なり、無銘の制振は凪いだ冬の海の様に、熱も揺らぎも存在し無い。
 ローズが隙を晒すのを待つも良し、燃費の悪い“ネイティブ”が疲労するのを待つも良し。

無銘の狙いは、ローズも読めている。
 再度隙を晒しても、この男が乗ってくるとは思え無い。
 そこで、今度は別の手を用いる。
 深く踏み込む。両腕を大きく広げて、無銘を抱きしめに行くかの様に前に出る。
 爪を振るうだけでは当たらない。ならば密着して捕らえる。
 捕らえて、膂力で潰す。
 無銘が攻撃してきても、人狼(ヒトオオカミ)の耐久力で耐える。
 その意図のもと、広げたローズの両腕が閉じる────事は無く。
 ローズの視界が回転する。
 踏み込んだ脚を刈られて、転倒させられたのだ。
 咄嗟に地面に手を突いて、身体を支えようとした矢先。
 ローズの鳩尾に、無銘の爪先が突き刺さる。体毛と筋肉に阻まれ、ダメージこそ無かったものの。ローズの身体は地面へと倒れ込んだ。
 間髪入れずに上体を起こし────無銘の蹴りが鼻面へと直撃する。
 顔が上を向き、晒された喉へと突き刺さる爪先蹴り。
 ローズの口から、短い息と、苦鳴が漏れる。
 このままでは嵌め殺される
 身体を起こしたところへ、顔を蹴られる。
 蹴られて倒れ、起きあがろうとすれば、また蹴られる。
 かといって転がったままでは踏みつけられるだろう、
 嫌になる程に、巧い相手だった。
 ローズと複数回殺し合って、未だに決着を見ていない、“アイアンハート”のネイ・ローマンですら、超力抜きではこの男の比較対象となりはし無い。
 獣そのものの唸り声を上げて、ローズは身体を起こす。再度飛来する蹴り脚へと、大きく開けた口で喰らい付く。
 確かに噛み付き、骨まで一気に噛み砕いた筈が───虚しく牙が噛み合った事に、ローズの脳裏に疑問が浮かぶよりも早く。
 鼻面を左から右へと薙がれて、必然的にローズの顔が横を向く。
 ローズの意図するところを読まれて、無銘が蹴りの軌道を変えたのだと、ローズは気づけぬままに、首へlと踵を叩き込まれて、再度地面を転がった。 
 このまま馬鹿正直に起きあがろうとすれば、延々蹴られ続ける羽目に陥る。
 読み合いでもローズの上を行かれている以上、この状態から抜け出す為には、無銘を確実に上回っている身体能力を使うより他になく。
 ローズははうつ伏せになると、四肢の全力を駆使して跳ね飛び、跳躍先で奇跡的に残っていた街灯を、折れる程の勢いで蹴って、無銘へと飛び掛かった。
 今までの様な回避では、ローズとの激突は避けられ無い。
 必然的に、無銘の取る行動は回避しか無く。
 ローズの追撃を避ける為に、ギリギリまで引き付けてから横っ飛びに飛んで回避する。

 「殺った!」

 狼の眼は、無銘の動きを完全に捉えていた。
 ローズの身体が空中で向きを変え、四肢を突いて四足獣の様に着地。同時に未だに宙に在る無銘へと跳躍する。
 距離が近く、四肢を調薬に用いた為に爪は振るえず。勢いに任せて自重を用いた体当たりを無銘へと見舞う。

 宙に在る無銘の両手が、迫るローズへと突き出される。
 両腕でを以って押し留める?そんな事は不可能だ。彼我の勢いと体重さを考えれば、無銘の腕が折れるだけだ。
 そんな事を、歴戦の武人である無銘が理解していない訳が無く。
 ローズの身体に無銘の両手が触れた、その瞬間。
 無銘は全力で、ローズの身体を支えとし、跳び箱の要領で己の身体を上方へと打ち上げていた。
 ローズが蹴り折った街灯が、地面に落ちて硬い音を立てた。

 「F×ck!!」

 必殺を期した攻撃を、曲芸じみた方法で回避され、ローズが罵声を放つ。
 双方共に同時に着地し、攻勢に出たのは、今までと同じく、スプリング・ローズ。
 狼そのものの低い姿勢で、猛速の超低空タックル。
 姿勢が低すぎる為に迎撃する事は出来はしない。本来此処まで低いタックルなど、人類には行えないが、人狼(ヒトオオカミ)の身体ならば話は異なる。
 人と狼の身体を併せ持つ強みを活かし、狼そのものの低空タックルから、両腕を用いたクラッチ。
 捕まえて仕舞えば、身体の現状さと腕力を活かして絞め殺す。

 対する無銘は、タイミングを精確に見極めて、低い位置に在るローズの背中へ覆い被さりにいく。
 背中に被さった後、ローズが抵抗する間も無く寝技へ持ち込み、足首なり膝なりを破壊する。
 その為の詰み筋を瞬時に脳裏に描き、実行しようとした無銘の身体は、強い衝撃を感じた直後。空中へと飛ばされていた。

 「今まで私が殺し合った相手はなぁ、喧嘩殺法使う奴ばっかだと思ったかぁ!?格闘技使う奴だって居たんだぜ!!」

 無銘が瞬時に詰み筋を脳裏に描いたように、ローズもまた、無銘を詰ませる為の筋道を思い描いていたのだ。
 左右に逃げれば、方向転換して追撃。被さって来れば、四肢を使って全速で跳ね起きる事で、無銘を宙へと飛ばす。
 目論見通りに無銘を飛ばし、引導を渡すべく、ローズは五指の先から爪を生え揃わせた両手を翳し、駆け出した直後に、視界の右側が不意に暗くなった。

 「あ……?」

 最初に覚えたのは困惑。次いで、激痛。
 右眼を潰された事に気付いたローズが、怒りの咆哮を上げる。
 今までの戦闘で、過剰なまでに分泌されていたアドレナリンが、憤怒により更に分泌されて、痛みを瞬時に抑え込む。
 血走った眼で敵を睨みつけたローズの視界には、五点接地を完璧に決めて立ち上がる無銘の姿。

 ────ヤロウ…コレが切り札って訳だ。

 右眼を潰されたものの、無銘の超力(ネオス)が、何かしらの飛び道具を使うものだと知れたのは、大きな収穫だ。
 不意を突かれて目をやられたが、二度目は無い。
 飛び道具が切り札なら、接近する事で、用いさせなければ良い。
 ローズのスタイルは近接戦闘特化だ。何も問題にはなりはし無い。
 突撃、右目が潰れている為に、今までよりも深く踏み込み、打撃というよりも投げの間合いで爪を振るう。
 狙いが狂って爪が当たらずとも、この距離ならば腕が当たる。人狼(ヒトオオカミ)の膂力ならば、無銘を薙ぎ倒すには余り有る。
 勢い込んで振るった爪の描く軌跡から、無銘の姿が消失した。
 愕然とするより早く、ローズの視界が縦に回転する。
 何が起きたのか理解する事すらできず、ローズの延髄に硬さと重さを伴ったものが叩き付けられた。

迫る真紅の人狼(ヒトオオカミ)。
 人の狡知と闘志を有し、獣の力と速度とタフネスを有する難敵。
 一撃一撃が、ボディアーマー越しに無銘を戦闘不能にする強打。
 ローズの攻撃を全てを躱してはいるものの、余裕など一切無い。
 一撃でも当たれば終わる。対して何撃入れればローズは倒れる?
 ローズの攻撃を全て躱し、ローズが斃れるまで攻撃を繰り返す。
 考えただけで、気が遠のくが、無銘は無心に淡々と行い続ける。

 ローズの爪が迫る。
 真紅の死が、無銘を逃さぬと、必ず殺すと、迫り来る。
 無銘は身を沈め、ローズの右腕の下を潜り抜けた。
 右眼は潰れ、更に右腕で行った大振りの攻撃が、無銘が後背に回り込むだけの死角を生んだ。
 ローズの背後に回り込んだ無銘は、ローズの右膝裏を蹴り抜いて片膝を突かせると、腰を落とし中段正拳突きの構えを取る。
 踏み込みにより生じた推進力と、身体運用の妙により突き出した右拳に乗せた己が全自重。
 この二つを併せた、無銘の繰り出せる最大最強の一打が、ローズの延髄を直撃した。
 致命の急所へと撃ち込まれた、文字通りの全身全霊。
 時速百キロを遥かに超える速度で、無銘の全体重を乗せた拳が、延髄を撃つ。
 頑強な体毛と、屈強の身体を持つ亜人系超力者であっても、耐える事はでき無い一撃。
 しかし、無銘の顔には疑念が浮かんでいた。
 生命を“断ち切った”手応えが存在しないのだ。
 無銘の疑問は、即座に晴れた。
 過去に無銘が対峙した、変身した亜人系超力者の悉くを切って落とした断頭の一拳。
 無銘の全霊で放たれた鉄槌を延髄に受けて、それでもなお耐え切るローズの耐久力は、秀でているなどという言葉では表せない。
 獣のタフネスと、燃え盛る戦意とで、落頭する筈の一撃を耐え切ったのだ。

 「こんな…所で…くたばって…られるか!」

 ローズの脳裏に浮かぶのは、イースターズの面々。共に生き、共に死ぬと決めた家族。
 ローズの力が無ければ、“牧師”の庇護が有っても“喰われる側”に回る弱き者たち。
 帰らねば、ならなかった。イースターズこそが、ローズの戻る場所だった。
 こんな警務で死んで、死体袋に収まる訳には行かなかった。

凄まじい勢いで隆起したローズの筋肉が、無銘の拳を押し戻す。
 赤い竜巻と見紛う勢いで、ローズの身体が旋回し、無銘へと右の裏拳が飛ぶ。
 無銘は身を沈めて回避。回避した先へ掴みにきたローズの左手を避ける為に前転し、再度ローズの後ろに回る。
 旋回の勢いのままに、無銘の方へと向き直ったローズの顎へ、全身のバネを使ったカンガルーキック。
 並の身体強化系の超力者の脛骨ならば、確実に顎が砕け、脛骨が折れる程の痛烈な蹴撃が、ローズの顔を上向かせ、数歩後ずらさせる。
 低い動きで、無銘はローズへと迫る。その動きを例えるならば、蛇。
 獲物に這い寄り、毒牙を突き立てる毒蛇の様に、ローズの隙に乗じて攻め掛かる。
 ローズへ正面からの攻勢など出来はしない。攻撃したタイミングに合わせてカウンターを放たれれば、無銘はそれだけで死にかねない。
 だからこそ、後ろへと回る。死角へと、潜り込む。
 そして一点に集中して攻撃を加え、ダメージを蓄積させて、斃す。
 無銘から見ても、ローズは怪物だ。タフネスも身体能力も、それらを支える戦意も、全てが世の獣人達に冠絶している。
 その怪物を斃すには、これしか無かった。

 立て直したローズの視界に無銘の姿は無く。また後ろへと回られたと誤認したローズの身体が回転する。
 無銘は素早く立ち上がると、後ろを向いて隙を晒したローズの延髄に、体重の乗った渾身の肘打ちを直撃させた。
 ローズの膝から力が抜け、全身が崩れ落ちる。
 油断無く、無銘はローズの息の根を止めるべく、右足を上げて、俯せに倒れたローズの首へと踏み落とす。
 鈍い手応え。
 骨を踏み砕いた感触は無く。
 踏み下ろした足は、いつの間にか仰向いたローズの手に掴まれていた。
 信じ難いタフネスだった。強靭だとか頑丈という言葉で表せる域を超えている。
 無銘の戦歴に於いても、此処までのタフネスを誇る相手は存在しなかった。
 無銘の足首に凄まじい負荷がかかる。
 ローズが無銘の足首を捻じ折ろうとしているのだ。
 対する無銘は、ローズの加える捻りと同じ方向に身体を回転させ、足首が捻じ折られる事を阻止。
 左足をローズの口へと突き込み、思い切り身体を回転させて、ローズの口腔から喉奥を蹂躙する。
 凄惨な攻撃に、ローズの手が緩んだ隙に、無銘は跳躍。ローズの手から逃れると、コメカミへと爪先蹴り。
 凄まじい勢いでローズの身体が跳ね飛び、5mの距離を飛んで、路面に両手足を突いて着地する。

 「やって…くれ、たじゃねえ、か……。アタ…シに、此、処まで、やった…奴は……何、年、ぶりだ?」

 ローズの四肢が膨張する。筋肉に凄まじい力を込めて、ローズは“奥の手“の開陳を決めた。

 「ローマ…ンの、野、郎を…殺す…為…に考えた、ん、だが、なぁ……テ、メェで…試し、てやるよ……」

 無銘が行った執拗な首攻めで、発声機関が傷ついたのか、声が途切れ途切れで、発音もおかしいが、それでもローズの殺意を窺い知るには充分だ。

野獣そのものの咆哮を轟かせ、アスファルトの路面が砕ける音を残し、ローズの姿が描き消えた。
 無銘の前後左右でアスファルトが砕ける音が連続し、あらゆる方向から殺意が押し寄せる。
 無銘の眼にも、真紅の影としか映らぬローズの速度。
 超絶の速度で跳ね回り、前後左右はおろか上下からも猛攻を仕掛けて来る。
 壮絶な破壊を齎すネイ・ローマンの超力(ネオス)を回避して、致命の一撃を叩き込む為に、考案した戦闘法。
 乱れ飛ぶ言葉で狙いと予測を困難とし、高速で死角へと回り込んで痛打を見舞う。
 相手は想定していたローマンに非ず。しかして基礎戦闘力ではローマンを遥かに超越する無銘なれば、試しとするには充分に過ぎた。
 振われる凶爪禍爪凶爪狂爪。躱したと思えば二の爪が既に身体に触れ、更に三の爪が襲い来ている。
 僅か数秒で、ボディアーマーは既に意味を為さぬ程に切り裂かれ、全身が赤い霞に覆われて、それでもなお深傷を負わぬ無銘の回避能力は、新人類を基準としても、人間の域を超えている。
 それ程の無銘の能力を以ってしても、ローズの優位を揺るがす事は叶わない。
 跳ね回るローズの速度と、間断無く振われる爪は、反撃を行う事を不可能とし、回避すらも赦さない。
 無銘に出来る事は、振われる爪から受ける傷を、最小に抑えることくらいだった。
 だが、ローズの様子を具に見れば、明確に焦っている事が見て取れただろう。
 最初からこの嵐の様な攻撃を用いなかったのは、身体への負荷を無視できないからだ。
 アスファルトが砕ける程の勢いで跳び続ければ、四肢へ掛かる負担が時間と共に乗算的に増して行く。
 更にローズの変身は任意発動型。意図的に“力んで”いる状態である為に、必然的に負荷は大きい。燃費の悪い“ネイティブ”ならば尚更だ。
 しかも、今のローズは無銘の攻撃で首を痛めている。飛ぶ際の振動と衝撃が、首の負傷を悪化させ続ける。
 首の痛みに、四肢の負荷、これまでの戦いの疲労。無銘が全身から鮮血を噴いているとはいえ、ローズが先に力尽きてもおかしくは無かった。

 ローズの猛攻が始まって83秒が経過した時。遂にローズは“決めに”行った。
 獲物に襲い掛かる四肢を突き、低い姿勢で構える。
 その姿は、人狼(ヒトオオカミ)では無く、完全な狼のそれ。
 脳の自認が肉体に作用して、身体機能をも変質させるネイティブの特性が、ローズの身体を完全な狼のものへと変貌させた。
 周囲に転がるアスファルトの破片が、宙に舞う程の咆哮。
 咆哮と共に、真紅の狼が奔る。
 狙うは、体当たり。
 完全に狼と化した事で獲得した速度と、重量を以って無銘の身体を砕いて潰す。
 突っ込んでくるローズに対し、無銘は微笑を以って迎えた。
 絶命の窮地。困難を絵に描いた様な強敵。
 死して後に、これ程の敵に巡り合う────その幸運感謝し、巡り合わせの皮肉を思う、
 再度死しても良しと思う程の敵ではあったが、無銘には、護らねばならぬ“家族”が居る。
 心静かに、無銘はローズと距離を測る。
 ローズの行った猛攻を凌ぐ間に、ローズの動きには大分目が慣れてきた。
 だからこそ、細かい動きは追えないが、迫るローズとの距離を測る事は出来た。
 ローズの突撃を、精確に見極めて跳躍。空中で百八十度回転して、ローズの背中に飛び乗ると、両手をローズの頭に置き、全力で頭を押さえつけた。

 「ゴガっ!」

 猛速で奔る勢いそのままに、アスファルトに顔面を叩き付けられ、ローズの動きが止まる。
 アスファルトが砕ける勢いで顔を打ちつけ、ローズの牙が数本折れ砕けて口内の傷を抉り出す、強い痛みを与えて来る。

 無銘は素早くローズの胴に脚を回すと、両腕を喉に絡み付けて裸締めを掛けた。
 無銘を振り解くべく暴れ回るローズだが、両手足でガッチリとホールドされては、狼の姿では振り解けない。
 人狼であったならば、無銘の腕を切り裂いて脱出出来たろうが、狼の身体では不可能だ。
 ましてやこれ迄に受けたダメージが大き過ぎる。
 それでも尚、ローズは数分に渡って暴れ回り、意識が断絶する寸前。無銘の腕の力が脱けた。





 「はあーっ…はぁー」

 人狼の姿を維持する余力も無くなって、人の姿で俯せに倒れて、ローズは荒い息を吐いていた。
 アスファルトの冷たさが、火照った身体に心地良い。
 体の熱が、アスファルトに吸われていく感覚と、痛みと疲労が、全身に広がっていく感覚。
 勝敗を分けたのは、結局は人と獣のタフネスの差。
 一撃貰えば死ぬ闘いを長時間続け、多量に出血し、死力を振り絞って裸締めを掛けて、激烈な集中と死闘を行った無銘の体力が、ローズの意志より先に尽きたのだ。
 恐ろしい、敵だった。
 最初に沈めたカスが、この強敵を殺して取り込んだとは到底思えない。
 きっと此奴が本人格。それが倒れたのだから、もうこの敵は無力。
 そう思ったローズは、無銘に止めを刺すべく身体を起こそうとして…動けなかった。
 苦笑する。これ程までに疲労したのは“レギオン”以来か?いや、奴以上か。
 取り敢えず、自分と同じく伸びているであろう強敵の姿を眺めて、勝利の余韻に浸るべく身体の向きを変えて────見知らぬ女が立っていた。

 「無銘さんが負けるなんてねぇ…んん、これは相討ちかな」

 呑気な言葉とは裏腹に、ローズが感じたのは濃厚な死の気配。

 「無銘さんが勝てば良し、勝てなくても弱らせて、私が仕留める。完璧な役割分担だね」

 空気が震え、ローズの眉間に穴が開いた。

 ────アタシ、右眼、此奴が。

 隠され続けていた、“家族”の切り札に、ローズが気づいた時には既に手遅れで。

 「ようこそ、今日から貴女も私達(ファミリー)よ」

 ローズの意識が、巨大な力に飲み込まれ、魂が加工され、狭苦しい弾倉へと押し込められる。
 今までに体験したドラッグセックスも、遠く及ばぬ至高の悦楽。
 自我が溶け、再構築されて、新たな“家族”の一員として造り替えられる。

 「君には、生きてほしいと思う」

 加工されるローズの意識に浮かぶ、アンリの声。

 ────私は死んでいないぜ、此奴らの家族(ファミリー)になっただけさ。

 リフレインするアンリの声に応えて、スプリング・ローズは、弾丸と為った。

【スプリング・ローズ 死亡】





 「無銘さんは暫く戦えそうに無し…スプリングちゃんに頼るしかないね」

 凄惨な暴力を受けて、絶賛気絶中の本条を無視して、サリヤは今後について考える。

 「ああ、任せとけよ」

 「じゃあ、戦闘は任せたよ。仕留めきれなかったら、私がやるから」

 立ち尽くす女の口から、女と少女の声が聞こえる。

 「後二人、見つけないと」

 「残り二つ、埋めないと」

 女と少女。二つの声が唱和する。

 「ブラックペンタゴンへ、いこうと思うんだ」

 「あそこなら、狩る獲物には事欠かないしな」

 サリヤの意志に、ローズも否を唱え無い。
 後二人家族にしなければならず、その為には、刑務者が多く集まるだろう、ブラックペンタゴンは最適の場所だ。

 「家族に加えたい奴が居てねぇ、多分向かってるだろうし、ブラックペンタゴン」

 「誰だよ。其奴は?」

 「メリリン・"メカーニカ"・ミリアン 。私の親友でね。寂しがってると思うんだ」

 「だったら、“家族”にむかえてやらないと」

 復活した死者は、先ず家族や親しかった者の元へ向かうとされる。
 メリリンを求めて、ブラックペンタゴンを目指すサリヤの姿は、正しく蘇った死者そのものだった。




【F-2/旧工業地帯・廃工場近く/1日目・黎明】
【本条 清彦】
[状態]:
喉にダメージ(大)、全身にダメージ(小) 肛門と睾丸に大ダメージ 気絶中(現在はサリヤの姿)
[道具]:なし
[恩赦P]:18pt(スプリング・ローズの首輪から取得)
[方針]
基本.群生として生きる。弾が減ったら装填する。
1.殺人によって足りない3発の人格を補充する。
2.それぞれの人格が抱える望みは可能な限り全員で協力して叶えたい。
3.ブラックペンタゴンへ行って“家族”を探す

※現在のシリンダー状況
Chamber1:本条清彦(男性、挙動不審な根暗、超力は影が薄く人の記憶に残りにくい程度 睾丸と肛門に大ダメージ 気絶中
Chamber2:欠番(前2番の山中杏は無銘との戦闘により死亡、超力は口づけで魅了する程度だった)
Chamber3:無銘(前3番の剛田宗十郎は弾丸として撃ち出され消滅、超力は掌に引力を生み出す程度だった 全身に切り傷。気絶中)
Chamber4:欠番
Chamber5:サリヤ・K・レストマン(女性、詳細不明、超力は指先から空気銃を撃ち出す程度)
Chamber6:スプリング・ローズ(前6番の王星宇は呼延光との戦闘により死亡、超力は獣化する程度だった)

※30pでボディアーマーを取得。スプリング・ローズとの戦闘で全損しました。


059.災害の開闢 投下順で読む 061.1
時系列順で読む 065.BY-SEXUAL
名無し(ノーネーム)vs多重名(マルチアカウント) 本条 清彦 [[]]
ランブルフィッシュ スプリング・ローズ 懲罰執行

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最終更新:2025年04月11日 20:43