沈みゆく月の光が剣士を照らす。
征十郎は、ブラックペンタゴンへの足を止めない。
道を少し外れ、森に入って遠回り。
身を隠すためにも最適である。
「…森の出口はまもなくか」
フレゼアの炎を切り裂き、その後は森の中からペンタゴンに向かっていた。
「…出たのは鬼のようだったな」
「あぁ、いい感だな、サムライ」
征十郎の歩みは止まった、気で分かる、邪悪さが、それから滲み出いた。
現れたのは、裏社会の厄災。
◆
その厄災は、老人だった。
しかも雨に濡れ、ある程度は乾いているが、シミは消えていない。
無知な者が見れば、さしずめ、"水たまりに突っ込んだトラックが跳ねた水に思いっきり当たった人"
とでも評すだろうか。
だが知るものにとっては、厄災を届ける牧師。
旧時代、差別への解放を行った男と同じ名を持つもの。
名を、ルーサー・キング
「行先は…さしずめペンタゴンと言ったところか」
「…先は急ぐのでな、話は切り上げさてもらうぞ」
ルーサーの話を切り上げ、征十郎は進む。
「まぁ、待て、少し話をしよう」
だが、牧師は話さない。
誘うような話を、征十郎に持ちかける。
「…反応を見る限り、俺を知ってる人間じゃなさそうだな…だが、その雰囲気、裏の人間であるのは間違いないだろ」
「…だからなんだというのだ?」
征十郎は足を止めない
「そう機嫌を悪くするな、あぁ、なら名を教えてやろう、ルーサー・キング、それが俺の名だ」
征十郎の足が止まった。
その名は聞き覚えがあった、間違いない、沙姫が下部の人間だけとはいえ、取引していた裏社会の大物。
「…名を聞かされたことが有りか、さて、誰か…」
「…」
征十郎は無言を貫く、ルーサーの表情は見えない。
「"アビスの申し子"といたマルティーニ坊やは無い…イースターズのスプリング・ローズやアイアンハートのネイ・ローマン…それかジャンヌに怪盗ヘルメス…後は…こいつか…?」
疑問符を浮かべながらも、ルーサーのその問いは、まるで、そうだろ?と聞いてくるような厚みがあった。
「以前…ウチの下部組織と取引した日本人の女が一人…女が捕まった時、その下部組織との取引をバラしたとか…とんでもない野郎だ…」
「…」
征十郎は反応しない、もし反応したら、ルーサーは殺しにかかるだろう。
「もし…その女の…いないということは死んだか…まぁ、組んでいたら…」
鉄の音が響く、無機物が唸るように。
「…死んでもらうしか無いか…なぁ、サムライ」
「!」
だが、盟友の名誉のためなら。
この刀を振るってみせよう。
◆
「いい腕だ、切っちまうか、これを」
「…」
波のように襲った鉄の槍達は、不意打ちにも関わらず、征十郎に切り落とされた。
「鉄を操るか…だが、私の前には無意味だ」
「そうかい、なら、次は量だ」
鉄が生み出され、いくつもの小粒の銃弾となる。
しかし、征十郎の前に、それは無意味、数多の球が落とされる。
「キエエエエエエ!」
そして、一気にその間合いを詰める。
八柳の剣術、それが今、牧師の喉元にまで届く。
「簡単に取らせはしないさ」
だが、ルーサーは受け止める。
体を守るのは、鉄の鎧、刀をみごとに受け止める。
「下からどうだ?」
「!」
あの海賊にも見せた三日月の刃が、征十郎に迫る。
「見える」
「ほう」
刃を落とし、征十郎は下がる、互いにダメージはなし、貯まっていくのは疲労のみ。
「もう一度受け取ってくれ、槍の雨だ」
「実質2度打ち、悪手だ」
捌く、捌く、捌く。
刀の錆に、牧師の鉄はなっていく。
「…時にはこちらからの攻めはどうだ?」
「大胆だな」
鉄のガントレット、それが征十郎の振るう刀とぶつかる。
互いに鍔迫り合う、老いてなお、久々の戦闘でも、しっかりと振るわれる。
そして、互いに腕と刀が火花を散らして暴発した。
「ふぅ…サムライ、やはり、いい腕だな」
「…そうか」
征十郎にとって、ルーサーとの戦闘において優先するもの、それは"逃げ"
(最優先はペンタゴン…さてどうするか…)
ルーサーに隙は無く、正面から殺すというのには、下手すればこちらが負ける。
ならば、どうするか。
「…老人は…老人だ」
そして、踏み込み。
「さぁ、どうくる?」
征十郎の刀が、下袈裟で来…なかった。
「…刀式のバントか?」
「そうだな…カァァァァァァァァ!」
柄を、ルーサーに押し付け力を入れる。
八柳の技でもない、なんでもない即興技。
そして、隙をついて、腹を響かせる。
老いた体に直接それは、響いた。
「今だ」
征十郎は走る、目標ブラックペンタゴン。
後ろは振り向くな、不意打ちはいずれ来るかもしれないと警戒しながら走る。
辻斬りの刃は、盟友のために
【C-4/森/一日目・早朝】
【征十郎・H・クラーク】
[状態]:疲労(中)
[道具]:日本刀
[恩赦P]:90pt
[方針]
基本.強者との戦いの為この剣を振るう。
0.ギャルを討つ
1.フレゼアとルーサーは二度と会いたく無い
2.ブラックペンタゴンに行ってギャルを待ち受ける
◆
「…あいつがペンタゴンを優先するなら、こちらも港の方を優先させてもらおう」
ルーサーは立ち上がる、取引の集合地、港へと目指して。
「…さて、そろそろ、朝か」
牧師は、朝日の訪れに、感づいた。
沈みゆく月の流れにて。
「この借りは返すぞ、サムライ」
邪悪な意思は、消えず。
【C-4/森/1日目・早朝】
【ルーサー・キング】
[状態]:疲労(軽)、頬に傷、左腕に軽い負傷、腹に微小ながらダメージ、びしょ濡れ
[道具]:私物の葉巻×1
[恩赦P]:0pt
[方針]
基本.勝つのは、俺だ。
1.生き残る。手段は選ばない。
2.使える者は利用する。邪魔者もこの機に始末したい。
3.適当なタイミングで服も確保したい。
※彼の組織『キングス・デイ』はジャンヌが対立していた『欧州の巨大犯罪組織』の母体です。
多数の下部組織を擁することで欧州各地に根を張っています。
※ルメス=ヘインヴェラート、ネイ・ローマン、ジャンヌ・ストラスブール、恵波流都、エンダ・Y・カクレヤマは出来れば排除したいと考えています。
※他の受刑者にも相手次第で何かしらの取引を持ちかけるかもしれません。
※沙姫の事を下部組織から聞いていました
最終更新:2025年06月16日 21:31