そこはコンクリートに覆われた冷たい部屋だった。
日の光の入らない、電灯だけが照らす薄暗い室内。
衛生状態も悪く、鼻を刺すような異臭が漂う。
葉月 りんかが11歳から14歳の間、犯罪組織によって監禁されていた場所だ。
事の発端は刑事であるりんかの父が追っていた児童失踪事件。
それがある犯罪組織に関わりのある案件とも知らず
組織の闇を暴く決定的な証拠を手に入れてしまったばかりに
葉月一家は犯罪組織によって拉致され、証拠ごと闇に消された。
アジトに連れ込まれると父と母は娘達の目の前で無残に殺され、夥しい血と両親の絶叫が彼女の幼き心を切り裂いた。
りんかとその姉、『葉月楓花(はづきふうか)』は容姿を気に入られたおかげですぐさま処刑は避けられたが
それは彼女達の地獄の責め苦の始まりでもあった。
16歳の姉――優しく、美しく、りんかの憧れのお姉ちゃんである楓花は
組織の男達の魔の手から当時11歳だった妹のりんかを守るために
自らが積極的に犯されるように男達に懇願し、その身を差し出した。
集団から玩具のように嬲られ、痛めつけられ、弄ばれる日々。
楓花のうめき声が響き渡る密室でりんかは鎖に繋がれたまま「お姉ちゃん!お姉ちゃん!」と叫ぶだけで何もできなかった。
ひたすら慰み物に使われる楓花の悲痛な声が耳にこびりつき、りんかの心を抉る。
だが男達の欲望はそんなことでは満足するはずがなかった。
妹を守ろうとする楓花の献身的な姿を見て組織の人間はこう命令した。
『そのナイフで妹を刺し殺せばお前をここから開放してやる』と
この世界では弱者は何も守ることは出来ない。
その身を犠牲にしてまで妹を庇う、楓花の気高い意志さえも。
組織の連中は楓花の肉体だけでは飽き足らず、妹を愛する心までも蹂躙しようとした。
「楓花お姉ちゃん……」
ナイフを渡された楓花に視線を向けるりんか
我が身を犠牲にする姉の姿をこれ以上見ていられなかった。
「私を、殺して」
「だ、だめ……そんなの」
りんかは三年前に起きた災害でも自分だけが生き延びた。
その時に瓦礫の中から救い出されただけでも自分は十分な幸福を得られた。
この命で大好きなお姉ちゃんを救えるなら喜んで捧げられる。
「楓花お姉ちゃん……私はもういいの」
りんかは災害で自分一人が生き残った事で罪悪感を抱いていた。
炎に包まれた街で死んでいく人間をただ見ていることしか出来なかった。
「私はお姉ちゃんに生きてほしい」
その贖罪を今ここで果たそう。
それが私のできる唯一の償いなんだ。
「ありがとう……りんか」
楓花は妹を思って涙する。
りんかと楓花の間に血の繋がりは無くても、実の姉妹以上に深い愛情で結ばれていた。
楓花は涙を流しながら握りしめたナイフを振り下ろした。
「……ごめんね」
振り下ろされたナイフは自らの心臓を突き刺した。
血を零しながらりんかに謝罪の言葉を呟く楓花。
「お姉ちゃんっ!?お姉ちゃぁぁんっ!!」
倒れ伏す姉の手を取り、必死に呼びかけ続けるりんか。
「聞いて……りんか……」
「おねえ、ちゃん」
「りんか……どんなに辛くても、貴女は生き続けて……決して希望を捨てないで……いき、て」
遺言を伝え終える前に息を引き取る楓花。
その後は何度、呼びかけても二度と目を開ける事はなかった。
「どうしてっ!?なんでお姉ちゃんが死ななきゃいけないのっ!?
お姉ちゃんは何も悪いことなんてしてないのにっ!ただ、私を守ってくれただけなのに!」
こんなの……こんなのあんまりだよぉっ!!」
りんかは泣きじゃくりながら風沙の亡骸に縋りつき、喉が枯れるまで叫び続けた。
「楓花お姉ちゃん……いやぁぁぁっ!!」
最愛の姉が目の前で殺された。
その事実を受け入れられず、姉の側を離れようとしないりんか。
そんな彼女の様子をニヤつきながら眺めて見ていた男達。
姉妹の絆を断ち切れなかったにせよ。
楓花の死に嘆き悲しむりんかの惨めな姿は男達を楽しませるための余興にはなった。
彼らにとっては彼女達の命など娯楽として消費される程度の価値でしかない。
その後、りんかを一頻り嘲笑った所で男達はりんかを標的とした。
男達は楓花の遺体へと近づく。
「嫌っ!来ないでっ!お姉ちゃんに触らないでぇっ!」
男達は泣き叫ぶりんかから楓花の遺体を引き離して、そのままどこかへと運んでいった。
そして「お前にはこれから自分の立場を分からせてやる」と言い放ち
冷酷に笑いながらりんかの手足を切断した。
振り下ろされた斧の鋭い刃が肉を裂き、骨を砕く音が耳にこびりつく。
奴隷を延命させるために用意された回復能力者によって傷口は塞がれ。
達磨のような体型に変えられて彼女は生かされた。
りんかは日夜、休むことを許されず、男達の欲望の捌け口として毎日利用された。
彼女のうめき声と、肉を打ち付ける音が、狭い部屋に響き渡る。
ひたすら穢され、体力精神ともにすり減らされる日々。
犯罪組織によって誘拐された少女はりんか以外にも沢山いた。
主に鉄砲玉にも使えない戦闘に不向きな超力者、それでいて見た目は悪くない少女達が集められた。
使い捨ての子供達などいくらでもいた。
容姿で気に入られなければ、人体実験用として売買されるか。
臓器のみ取り出され、不要なパーツは生ゴミに捨てられるか。
命が尽きるまでひたすら玩具として利用される。
そこには救いも希望も存在しない。
地獄としか言いようが無い世界だった。
男達のちょっとした気まぐれで少女たちの命はいとも容易く奪われた。
力加減を間違えたり、不愉快に思われただけで殺された少女も多い。
そんな世界でりんかが今、生きていられたのは
姉の想いを無下にして自らが死を望むまで苦しませてやろうとする男達の下衆な欲求によるものと
もう一つは、りんかの超力『希望は永遠に不滅(エターナル・ホープ)』による彼女の生命力の増幅である。
希望を捨てずに生き続けてほしい楓花の想いがエターナル・ホープの出力を上げていた。
その結果、決して生きるのを諦めない強い意志がこの絶望の世界から彼女を生き永らえさせていた。
三年間による監禁生活はりんかの肉体を著しく破壊し、歪め続けられた。
眼孔姦によって右目を抉り取られ、赤い瞳の一つが永遠に失われた。
人体改造を施され、身長146cmの小柄な少女には不釣り合いな98cmのバストに膨乳され
まるで乳牛を扱うように搾乳され続けた。
孕む度にひたすら腹部を痛めつけられて流産させられた。
子宮は壊れ、もう二度と子を宿せない体にされた。
どんなに穢されても、どんなに傷つけられても、彼女は決して希望を捨てなかった。
助けたい。救いたい。
誰かのために生きると決めた。
そんなりんかの強き意志が超力を成長させた。
『希望を照らす聖なる光(シャイニング・ホープ・スタイル)』
悪夢の日々を耐え続けた影響が、りんかの肉体に変化を与えた。
超力による光がりんかの肉体を包んで、体を作り変える。
光が収まった頃にはまるで楓花お姉ちゃんの意志が宿ったかの如く
りんかの肉体は姉そっくりの姿に変化していた。
黒いレオタードスーツに、茶色のバトルジャケットとバトルスカートを重ね
黒いブーツとハイソックスを纏った変身ヒロインのような姿となった戦士の装い。
両腕にはシルバーの篭手が輝き、光のエネルギーを武器に戦う。
それがりんかが得た新たなる力だった。
りんかを強化するような超力を楓花が持っていたのか。
それともりんかを想う楓花の願いがエターナルホープと作用したのか。
(どうしてこの姿に変身出来たのかは分からない、でもきっと楓花おねえちゃんが私に力を貸してくれたからだと思う)
りんかはその力を行使して自身を束縛していた鎖を断ち切ると
アジトから脱出するべく行動を開始した。
脱走に気づいた男達を一人、また一人と迎撃していくりんか。
光のエネルギーを込めた拳は強力なパワーが込められ、大人達すら寄せ付けなかった。
アジトから抜け出した後は誘拐されてきた子供達を救うべく、この惨状を報告し
警察達に協力を求めようと考えていた。、
だが現実はヒーロー番組のように甘くはなかった。
少女が一人、新た超力を覚醒した所で現状を覆すことは出来なかった。
圧倒的な力を持つ組織の用心棒が現れると
一方的な戦況となり、また衰弱状態であったためりんかの体力はすぐ底を付き
変身が解除されて敢えなく敗れ、再び捕らえられた。
その後、りんかが得た力は彼女の望まぬ方向で悪用された。
戦闘に役立つと分かると、りんかは組織の鉄砲玉として扱われた。
洗脳によって彼女の意志を捻じ曲げ、兵士として教育し銃火器を装備させた。
敵対する組織の殲滅だけでなく、罪も無い民間人の虐殺も行わせた。
シャイニング・ホープ・スタイルによる強化された身体能力に
犯罪組織が用意した凄まじい火力を誇る特注の銃火器を装備されて多数の人間を射殺した。
襲撃した街で幼き子供を庇う母親ごと消し炭に変えた瞬間は今でも脳裏に焼き付いている。
いくら謝罪しようが永久に赦されない罪。
ある日、アヴェンジャーズの一人がりんかと遭遇し、激戦の末にりんかを行動不能に追い込んだ。
おかげで私は捕らえられ、洗脳も解除され、凶行を止められた。
アヴェンジャーズには感謝しても足りない。
私もアヴェンジャーズの皆さんのように人助けをしたい。
それが私の出来る唯一の贖罪だから
裁判では情状酌量の余地ありとして、死刑は免れた。
りんかの境遇を知り、同情した財団によって義手義足義眼がプレゼントされた。
義手義足は宇宙ロケットの素材にも使われている丈夫ながらも軽く
激しい運動にも耐えられるように作られたオーダーメイド製で
右目に取り付けられた義眼は振動や赤外線などを感知する機能が備わっており
義眼からでも周囲を認識する事が可能となった。
アヴェンジャーズによって私は一人でも多くの生命を救い、償うチャンスをくれた。
この刑務でも私は人を救いたい。
アビスに入れられた人達の中にも事情があって捕まっている人がいるはずだから。
――そう。大人達の欲望の被害者であり、加害者になるしか身を守る術がなかった交尾 紗奈ちゃんのように――
◆
「楓花お姉ちゃん……」
ぽつりと寝言で姉の名を囁くりんか。
紗奈に膝枕されていたりんかはいつの間にか眠っていた。
意識を手放した事でりんかの変身が解除され、本来の小さな姿に戻っていた。
姉を思い出す彼女の瞳からは涙が溢れ、頬を濡らす。
「りんか、私のヒーロー」
紗奈に膝枕されている少女、葉月りんか。
起きている間はヒーローのように私を守ってくれてるけれど
どこか必死に無理しているような歪さも伝わってくる。
小柄な体型で童顔な顔付きなのもあって
姉の名を呼んで涙を流すりんかの姿はとても小さく、儚くも見えた。
このままだと、いつか壊れてしまうんじゃないか。
ヒーローになろうとする責務に耐えきれずに、押し潰されてしまうんじゃないか。
「りんか……」
眠っているりんかを愛おしそうに抱きしめる紗奈。
死なないでほしい。
生き続けてほしい。
それがこの世界でどんなに難しいことなのかは知っている。
それでも紗奈は願わずにはいられなかった。
鉄の牢獄で一人きりで良いと思っていた。
誰にも襲われず、誰にも傷つけられず、牢の中で一生孤独に生きるのが一番の幸せだと思っていた。
でもりんかと出会って私は変われた。
りんかと触れ合ったことで私は温もりを知った。
私を照らし、孤独から晴らしてくれた希望の光。
絶対に失いたくない。
その小さな体にのしかかる重圧を私も背負いたい。
二人で一緒に生きて行きたい。
紗奈はそう願いながらりんかを抱きしめ続けた。
「ん、紗奈?」
ゆっくりと目を開けるりんか。
目の前には優しく微笑みかける紗奈の笑顔が映った。
「おはよ。りんか」
「うん、おはよう。紗奈」
寝起きで少し眠たそうに挨拶を返すりんか。
紗奈の膝上で横になりながら、どこか安心したように微笑む。
そんなりんかの頭を優しく撫でる紗奈。
「ねぇ、りんか」
「ん?なに?紗奈」
「私ね。夢が出来たんだ。もし、ここから出られたら叶えたい夢がさ」
嬉しそうに語る紗奈の笑顔にりんかも嬉しくなる。
アビスから出られた事を考えるほどに紗奈は希望を持つことが出来たのだから。
りんかにとっても紗奈の変化はとても喜ばしい出来事だった。
「そうなんだ。どんな夢なの?」
「それはね。りんかと一緒にね」
その時だった。
突如として異常な寒さの冷気が二人の間を通り抜けた。
それは一時の平和の終わりを意味していた。
◆
「ああ……ジャンヌよ、貴女は一体、何処に……」
ざくっ、ざくっとふらついた足取りで歩く者がいた。
虚ろな瞳でひたすらジャンヌの名を呟く男。
その名はジルドレイ・モントランシー。
厳密には男だったと言うべきが正しいだろう。
彼はジャンヌの姿を一人でも多くの人間に認識させるために己が姿を捨てた。
肉体を別の姿に変化させる施術を扱う超力者を雇いジャンヌと同じ姿となった。
端麗で意志の強い整った顔立ちも、張りのある豊満な胸も、細く引き締まった腰も
男の特徴である陰茎も切除し、性器も女性と同じに作り替え、声帯も本人そっくりの声色になるよう弄った。
筋肉の付き具合も、骨格の形も、完全な女性の体型へと人体改造を施された。
ただ一つ、髪の色だけは変えられなかった。
それだけは髪染めで色を付けて再現するしかなかった。
今では自分の素顔すら思い出すことは出来ないだろう。
ジルドレイは既に元の姿への未練は完全に消えている。
ジャンヌ、彼女の存在だけがジルドレイの生きる糧だ。
(会わなければ……ジャンヌをその目で、その心で焼き付けねばぁ……)
ジルドレイはひたすらジャンヌを求め続ける。
我が身の虚無をジャンヌで満たすために、どこにいるかアテも無いまま彷徨う。
すると耳元から少女達の話し声が聞こえてきた。
(やはり必要になりますか。ジャンヌに捧げる贄が……)
未だ仕留めた受刑者は最初に出会った銀髪の女のみ
ジャンヌに再会するには積んだ屍の数がまだ足りない、とジルドレイは解釈した。
天命を悟ったジルドレイは声の聞こえる方角へとゆっくり歩を進めた。
◆
「ジャンヌ、さん?」
りんかと紗奈の二人を見て微笑む女性が姿を現した。
髪の色を除いては見た目がジャンヌ・ストラスブールそっくりの女性。
アヴェンジャーズの一員であるジャンヌはりんかにとっても憧れの人物である。
だけど様子がどこかおかしかった。
「りんか、あの人」
「うん、分かってる紗奈」
紗奈がりんかの手を握りながら警戒を示す。
目の前の人間は正気じゃない。
表情こそ優しく微笑んでいるが彼女から発している気配が危険人物そのものだと伝わってくる。
「フフ、貴女もジャンヌを知っているのですね」
「は、はい。私の憧れのヒーローです」
「私も彼女の事をよく知っています。美しく気高く、遥か高みで輝き続ける光。
貴女のようにジャンヌを好いてくれる子供がいることは私にとってもすごく喜ばしいことです」
うっとりとしながらジャンヌを語るジルドレイ。
ジャンヌに憧れを抱く少女の存在に心を踊らせた。
一人でも多くの人間にジャンヌを記憶させるのがジルドレイの目的の一つでもあるのだから。
楽しそうにジャンヌを語るジルドレイの姿にりんかも警戒が解け始める。
世間では大罪人として扱われたジャンヌであるが、りんかは彼女を信じていた。
極悪人である流都にすら手を差し伸べようとするりんかの心は人の善性を信じようとする意志が強い。
目の前にいるジャンヌそっくりの女性に対しても無意識に信じようとしていた。
「私もそんな子供達を愛していました。ジャンヌのようにこうやって」
ジルドレイは愛情に満ちた顔でりんかの頭をそっと右手で優しく撫でる。
何度か撫でると、次はりんかの頬、首、鎖骨とゆっくりとなぞるように触れていく。
「あの……いやっ!」
「りんか!」
りんかの顔ほどにもある乳房をがっしりと鷲掴みにされた。
嫌悪感で悲鳴の声が出るりんか。
嫌がる彼女を他所にジルドレイは恍惚な笑みを浮かべる。
「りんかから離れてっ!!」
「知っていますか?ジャンヌも自らを慕う子供達と愛を育んでいたことを……」
「い、痛い……やめてください」
乱暴に胸を掴まれ、痛みで顔が引きつるりんか、
そんなりんかを見て頬が紅潮し、息を荒げるジルドレイ。
ジルドレイはジャンヌの全てを模倣し続けた。
メディアが報じたあらゆるでっち上げの冤罪行為も全て。
◆
いつだって戦禍で苦しむのは力を持たない弱者、特に子供達だ。
ジャンヌは子供達へ手を差し伸べて救い続けた。
ならば私もジャンヌのように子供を救おう。
幸いにして金だけは有り余っていた。
財力を惜しみなく投資して立派な孤児院を建てた。
身寄りの無い子供達は誰も飢えることなく、安定した暮らしが出来るようになった。
定期的に孤児院へ訪れては子供達に手を伸ばし、元気付けるように言葉をかけていた。
ジャンヌに真似て手を差し伸べる。それが正しい行いなんだ。
ジャンヌが逮捕された。
子供達を助けては、自らを慕う少年少女達とまぐわい、惨殺していたと報じられた。
ならば私もジャンヌのように子供達を犯し、殺害しよう。
ジャンヌが逮捕されたその日からジルドレイはおぞましい所業を繰り返した。
元は報道屋が広めたジャンヌの悪評をジルドレイは尽く実行した。
孤児院で暮らす少年が一人、ジルドレイの屋敷で小姓として召し抱えられることになった。
憧れの人物であるジルドレイに眼を掛けられた少年は期待し、つかの間の夢を抱いた。
これから貴族の下で教育を受け、教養を積んだ大人になれる。
他の子供達が羨むような人生を歩めると胸が高鳴った。
しかし、少年に待っていたものは身の毛のよだつ恐ろしい運命だった。
城に到着すると、暖かく迎えられた。
まず風呂に入れられ、体を洗い浄められるのである。
その後、美しい服を着せられ、整髪されたりして、少年は見違えるほど美しくなる。
やがて夜になると、少年はジルドレイの寝室に連れていかれた。
寝室で待っていたのは布切れのように薄く透けたネグリジェで身を纏うジルドレイの姿だった。
ジャンヌそのままの姿で、芸術品のように美しいジルドレイの肉体を間近で見た少年は欲情が止まらなかった。
何度も孤児院に来てくれた憧れの女性の裸体を目にしたのだから無理もない。
興奮冷め上がらずに俯く少年を前にジルドレイは優しく抱擁し
「ほら、前を見て笑って。そうです。君はとてもかわいい。もっと私を見て、その愛らしい顔を見せておくれ」
そう呟いて少年を安心させてから、唇を重ね合わせた。
その後、少年の全身を愛無しながらネグリジェを脱いだジルドレイは少年をベッドに寝かせて重なり合った。
初めて味わう感覚に少年は夢中で快楽を味わった。
下腹部から来る未知の感覚が今、まさに達しようとしたその瞬間、少年の喉元が熱くなった。
驚いた少年が目にした物は氷で造られた短剣を手に持つジルドレイの姿。
そして、首元から噴き出す少年の鮮血だった。
恐怖した少年はかん高い叫び声を上げた。
ジルドレイは返り血を浴びながら高らかに笑い、少年の腹部を何度も短剣で突き刺した。
少年の息の根が完全に切れたタイミングで、ジルドレイは刺突を辞めて立ち上がる。
「これが……これがジャンヌの愛なんですね!ああ、なんて瑞々しく、情熱的な愛なのでしょう!
未だ我が肉体の滾りは収まりません。これほどの興奮を覚えたのは生まれて初めてです!」
全身が少年の血で真っ赤に染まり上がり、秘部からは少年が死の間際に放った精が滴り落ちる。
生まれてこの方、性欲らしい性欲を持つことが出来なかったジルドレイだったが
ジャンヌの模倣を繰り返す内に、彼は少年少女達を苦しめ、命を奪う行為に情欲を満たす性癖が構築されていった。
彼の凶行はその後も続いた。
ある時は生きたまま子供の皮膚を剥いで殺害したり、少女の秘部に氷で出来た陰茎押し込んで全身を串刺しに貫いたり。
自らの超力以外にも様々な拷問器具を持ち入り、惨殺を繰り返した。
希望を胸に抱いた子供達の顔が絶望に染まるその瞬間がジルドレイはたまらなく好きだった。
それがジャンヌの好む愛情だと疑うこと無く彼は逮捕されるまでその悪行を繰り返した。
逮捕後、モントランシー家を家宅捜索された際には子供達の遺骨が大量に発見された。
行方不明者とDNAが一致する遺骨だけでも30人を超えており
その残虐性極まりない事件は彼が死刑となるには十分過ぎる理由だった。
◆
「危ない!」
「っ!?」
紗奈の声を聞いて即座に下がるりんか。
それと同時にりんかのいた場所に振り下ろされる氷の短剣。
ジルドレイが初めて子供を殺害した際に用いた短剣だった。
「おやおや、外れてしまいましたか」
「何をするんですか!?」
「フフフッ……ジャンヌのために贄を捧げるのですよ。彼女を慕う子供ならジャンヌもお喜びになるでしょう!!」
「貴女は……」
アビスには凶悪な囚人達が集められている。
流都やルクレツィアのように混沌や殺戮を楽しむ囚人が他に何人も存在する。
目の前にいるジャンヌそっくりの囚人もその類だとりんかは理解した。
「気を付けてりんか!アイツは普通じゃない!」
「うん!」
りんかの体が眩く光り輝く。
超力の光が肉体を構築し、新たな姿へと変わる。
『シャイニング・ホープ・スタイル!!』
りんかを庇い、死んでいった姉、葉月楓花そっくりの美しい女性の姿に。
格好はまるで魔法少女アニメに登場する変身ヒロインのような可憐な衣装の戦士。
かつては空想の産物にしか過ぎなかった存在も今では現実として存在する力。
「ああ、ジャンヌよ!!これから二人の少女を贄に捧げます。どうか見守っていてください!!」
「下がって紗奈っ!」
紗奈はコクリと頷いて森の中へと入る。
自分が側にいてはりんかが集中して戦うことが出来ない。
足手まといになる訳にはいかない紗奈は急いで二人から離れた。
「安心してください。寂しくならないように二人仲良くすぐにあの世へ送ってあげましょう!!」
「やらせない!」
ジルドレイは仰々しい振る舞いと共に氷の槍を大量に構築していった。
合図と共に空中で静止していた氷の槍がりんかに向かって上空から降り注いでいく。
大地を蹴り上げ、低姿勢で走り抜けて、氷の槍の雨を掻い潜っていく。
「はぁぁっ!!」
シルバーのガントレットが光り輝き、渾身の右ストレートをジルドレイの顔面に叩き込んだ。
ガキンッ!と金属の衝突音が響き渡る。
りんかの拳はジルドレイには届いておらず
二人の間には分厚い氷の壁が立ち塞がっていた。
(まずいっ)
ジルドレイの右手に氷の槍が握られているのに気づく。
りんかは即座に距離を取ろうと動いたが
その瞬間に突き出た氷の槍が、壁をすり抜けてりんかを貫いた。
「うぐっ」
「りんかァ!!」
「大丈夫!まだ、やられてない!」
紗奈の悲痛な声が聞こえる。
幸いにも、槍が刺さる寸前に体を捻り、僅かに肩を貫かれるだけに留まった。
「ちょこまかと動き回られると面倒ですね」
パキパキと空気が凍りつく音が響き渡る。
急激な温度低下が周囲へと広がっていき、氷のフィールドが形成されていく。
ジルドレイから発せられる冷気の影響だった。
冷気が霧状となり、りんかの体温を容赦無く奪っていく。
じっとしていては肉体が完全に凍りついてしまう。
ジルドレイの冷気から距離を取ろうと、りんかは動く。
だが氷の世界は彼女の機動力を著しく奪っていった。
逆にジルドレイは凍りついた道を何の弊害も無く突き進む。
霧がジルドレイを包み込んでいき、やがてその姿が見えなくなった。
「くっ!」
りんかは辺りを見渡した。
しかし、霧で視界が悪いせいで何も見えない。
気配も感じられず、どこから攻めてくるかも分からなかった。
(さぁ、その一突きで貴女の心臓を貫いて差し上げましょう。苦痛に藻掻き苦しむその姿を私に見せてください!)
りんかの背中目掛けて氷の槍が差し迫る。
その時だった。
りんかは胸元で両腕の拳を合わせ、ガントレットを密着させた。
「ホーリー……フラァァァァッシュ!!!!」
りんかを中心に強烈な閃光が走った。
放たれた線熱が氷の世界を突き抜けていく。
霧が一瞬で拡散され、光に目が眩んだジルドレイの体がよろめいた。
「おのれ、小癪な真似をっ!」
目眩ましとも思える閃光を直視してしまったせいで、ジルドレイは目を強く手で押さえてうずくまった。
その隙を逃すまいとりんかは跳躍する。
「どこに、どこにいるのです!?」
ジルドレイは周囲を見回すが、りんかの姿はどこにもない。
りんかは飛び上がっていた。
氷のフィールドの範囲外に逃れ、そこから一気にジルドレイの頭上まで跳躍していた。
背中には流都との戦いの最中に会得した新たなる力、光の翼を生やして。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」
落下の速度を上乗せして放たれるりんかの必殺技。
「シャイニングゥゥキィィィィィック!!!!」
「ぬぅぅっ!?」
頭上から迫りくる光の奔流に気づいたジルドレイは即座に氷壁を展開。
彼の超力によって構築された氷壁は鋼鉄に勝るとも劣らない。
しかし、りんかの弾丸の如き速度による一撃は、氷壁の強度を高めるよりも早く衝突を起こした。
シャイニングキックが氷壁を粉々に砕き、ジルドレイの肉体をも貫いた。
「はぁ……はぁ……」
大技を放った影響でスタミナを消耗し、息を切らすりんか。
僅かに睡眠を取っただけでは万全とは言えず
長期戦だと勝ち目は無いと悟っての短期決戦だった。
りんかが振り向くと、そこには胸元に大きな風穴が空いたジルドレイが立っていた。
ピキピキと音を鳴らしながら砕け散り、粉々に砕けた氷像へと変化した。
「えっ」
それが偽物だと気付いた時には、りんかの背後から放たれた氷の矢が背中にいくつも突き刺さった。
◆
辺りが冷たい霧に包まれたと思ったら、太陽の様に眩しい光が放たれた。
その後、激しい爆心音が鳴り響いたと思ったら倒れ伏すりんかの姿が見えた。
「りんかァァ!!」
叫ぶ紗奈の姿を見てニヤつくジルドレイ。
まるで紗奈の苦しむ様を楽しむかのようにゆっくりとりんかへ近づく。
「駄目!そんなの!」
せっかく大切な人が出来たのに。
大好きな人が出来たのに。
また奪われちゃうの?私から全て奪ってしまうの?
【しょせん、お前は死神だ】
悪意に満ちた大人達の声が聞こえる。
流都のように侮蔑して、否定して、嘲笑う醜い大人達の声が。
【この人殺しめ】【生まれてきたのが間違いだったんだよ】【周囲に災いを振りまく忌み子がよ】
【死刑にしていればこんな事にならなかった】【またお前のせいで犠牲者が増えた】
違う!違う!違う!
【お前は永遠に呪われた死神だ!】
違う!!私は死神じゃない!!
もう死神にはならない!!
死神の力を使うとりんかはとても悲しい顔をしていた。
この力は他人だけでなく自分も、大事なりんかも傷つけてしまうんだ。
こんな呪われた力なんて使わない!もういらないんだ!!
「うわぁぁぁぁ!!」
紗奈は雄叫びと共に駆け出した。
りんかを救うためにジルドレイに果敢に挑んだ。
感情が昂っているからか、物凄く身体が熱かった。
「りんかに手を出すなぁぁ!!」
「ぬぅっ」
紗奈の拳を受けてぐらつくジルドレイ。
幼き子供の力では無い。
明らかに超力による身体強化が加わっていた。
「何なのですか?その光は?」
「…………?」
紗奈自身も気付いていなかった。
彼女の胸元から眩い光を発しているのを。
身体が熱いのもその光が原因だとようやく気付く。
「まぁいいでしょう。邪魔をするなら貴女から贄に捧げるだけです」
身体が焼けるように熱い。
だけど私には分かる。
この光は敵じゃない。
私の力となる味方なんだ。
(お願い、力を貸して……りんかを守れる力を私に!!)
光が紗奈の願いに呼応するように一層強く輝いた。
すると不思議な事が起きた。
光に包まれた紗奈の肉体が作り替えられていく。
小さな少女の肉体は167cmのサイズに伸び
身体のラインがくっきりと見える黒いボディスーツ。
純白のマントを身に纏い、胸元は白銀のプロテクターに覆われ
腰には白銀のスカート型の装甲がフィットし
脚部は白銀のグリーヴ、腕には白銀のガントレットが装着された。
サラサラとした美しく長い黒髪に、凛とした整った顔立ちの美女。
まるで白銀の騎士を思わせる戦士だった。
「これが……私の力……」
これは神が起こした気まぐれか。
それともりんかから与えられた『希望は永遠に不滅(エターナル・ホープ)』の力が
紗奈の『支配と性愛の代償(クィルズ・オブ・ヴィクティム)』と結びついて進化を引き起こしたのか。
ただ一つ分かるのは、これはもう呪われた死神の力では無い。
希望のための力だということだ。
「繋いで結ぶ希望の光ッ!!シャイニング・コネクト・スタイルッ!!!!」
希望と性愛という異なる二つが合わさって生まれた奇跡。
紗奈の新しい力、シャイニング・コネクト・スタイルがここに誕生した。
「紗奈……」
意識を取り戻したりんかは目の前の光景に呆然と見惚れていた。
あまりに美しき白銀の騎士の姿に目を奪われてしまったからだ。
「……く」
紗奈から感じる神聖な気配にジルドレイは思わず後退る。
「じゃ、ジャンヌ……」
思わず呟いてしまった。
彼女から発せられる希望の光を目にしてジャンヌを思い浮かべてしまった。
『言ったはずだ。人は誰もがジャンヌになれるとな』
失った右目の中から囁く神の姿が見えた。
未だ私の前から消えようとしない忌々しい男が。
「違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違うっっっ!!!!
お前はジャンヌではない!!!!捧げられるだけの贄でしかないガキの分際でぇぇえええぇぇええっっ!!!!
唯一無二にして絶対であるジャンヌに成り代わろうとするなぁぁぁぁぁぁああぁああああっっっ!!!!」
狂乱状態に陥ったジルドレイは氷の槍を無数に生成し、紗奈に目掛けて投げつける。
「はぁっ!!」
紗奈の手から光のリボンが構築される。
まるで新体操のようにリボンを振るい、氷の槍を次々と撃ち落とす。
「おのれぇ!」
怒りの形相を剥き出しにするジルドレイ。
紗奈に向かって次なる攻撃を繰り出そうとしたその瞬間、脇腹に突き刺さるような激痛が走る。
「紗奈ちゃんだけには戦わせません!!」
りんかの放った飛び蹴りがジルドレイの脇腹へと直撃したのだ。
完全に警戒の外だったためにまともに喰らい、ぐらりと怯む。
「これでぇぇ!!」
紗奈の放ったリボンが、ジルドレイの右腕に絡みつく。
するとジルドレイの右腕から発せられた冷気がピタリと止まった。
「ぐっ!?冷気が……」
「これ以上、その力でりんかを傷付けさせない!」
今まで自らを束縛して生きてきた。
でもこれからは違う。
これからは悪い大人達を縛り付けて、手を出させないようにしてやるんだ。
『希望を照らす聖なる光(シャイニング・ホープ・スタイル)』による光の力と
『支配と性愛の代償(クィルズ・オブ・ヴィクティム)』による加害性のある者に罰を与える力が
混ざり合い、光の拘束具として進化した。
今のジルドレイは右腕を封じられ、片腕状態になったも同然だった。
「たかが片腕を封じたぐらいで勝ったつもりですか!? 私の氷の力はまだまだ尽きません!!」
「もう、辞めませんか?」
未だ興奮冷め上がらないジルドレイにりんかは語りかける。
その瞳は悲しみに満ちていた。
ジャンヌに憧れる者同士で傷付け合うなんて悲しすぎる行為だった。
「ジャンヌさんが投獄されて辛いのは私も同じです。でもこんなことをしてもジャンヌさんは悲しむと思います。だから「黙れ」
りんかの説得を遮るジルドレイ。
その表情は怒りでも憎しみでもない。
ただただ感情の無い顔付きでりんかを見ていた。
「お前がジャンヌを語るな。虫唾が走る」
サクッと肉が切れる音が響いた。
左手から生み出した氷の短剣で、拘束された右腕を切断したのだ。
ぼとりと落ちる右腕。
傷口は冷気で瞬時に塞いで止血し、新たな右腕を作り出した。
ヒグマをも超えるサイズを誇る氷で出来た異形の右腕が構築される。
禍々しく鋭い爪を持つ魔手がりんかに向かって振り下ろされる
寸前の所で後方に下がって回避するりんか。
「させない!!」
紗奈はリボンを操り、ジルドレイの魔手を拘束しようとする。
「同じ手はくらわんよ」
魔手を自壊させ、リボンの拘束を回避する。
攻撃の手を緩んだ所をりんかのハイキックがジルドレイの頭部を狙う。
氷壁が立ち塞がり、蹴りを阻害する。
「これ以上の戦いは不毛なようだ。ここは引かせてもらいましょう」
二対一での不利な状況、さらに超力の使用を封じる拘束技に危険性を抱いたジルドレイ。
ジャンヌに出会うまでに力尽きる訳には行かないジルドレイは冷気の霧を発生させて二人を包んだ。
「りんか!」
「大丈夫、もう行ったみたい」
霧が晴れた時にはジルドレイの姿は完全に消えていた。
脅威が去ると、紗奈はりんかの元へ駆け寄る。
ぎゅっとりんかを抱きしめた。
「心配したよ……りんか」
「ごめんね。でも紗奈ちゃんが変身できるなんて驚いちゃった。私よりも大きくなって」
「これで私もりんかを守れるよ……あのね、私の夢の話だけどね」
会話の途中で襲われたために言えなかった紗奈の夢。
それは……
「それはりんかと一緒にヒーローになることだよ」
「なれる。絶対になれるよ。紗奈ちゃんなら」
「えへへ、ありがとう!りんか」
夜が明け、朝日がヒーローを照らす中で二人は熱い抱擁を交わした。
(大好きだよ……りんか……)
【D-3/森の中/一日目 早朝】
【葉月 りんか】
[状態]:シャイニング・ホープ・スタイル、全身にダメージ(極大)、疲労(大)、腹部に打撲痕、背中に刺し傷、ダメージ回復中、ルクレツィアに対する怒りと嫌悪
[道具]:なし
[方針]
基本.可能な限り受刑者を救う。
0.今は少しだけ、休む。
1.紗奈のような子や、救いを必要とする者を探したい。
2.この刑務の真相も見極めたい。
3.ソフィアさん…
4.ジャンヌさんそっくりの人には警戒しなきゃ
※羽間美火と面識がありました。
※超力が進化し、新たな能力を得ました。
現状確認出来る力は『身体能力強化』、『回復能力』、『毒への完全耐性』です。その他にも力を得たかもしれません。
【交尾 紗奈】
[状態]:シャイニング・コネクト・スタイル、気疲れ(中)、目が腫れている、強い決意、りんかに対する信頼、ルクレツィアに対する恐怖と嫌悪
[道具]:手錠×2、手錠の鍵×2
[方針]
基本.りんかを支える。りんかを信じたい。
0.新たに得た力でりんかを守りたい
1.超力が効かない相手がいるなんて……。
2.バケモノ女(ルクレツィア)とは二度と会いたく無い
3.青髪の氷女(ジルドレイ)には注意する。
※手錠×2とその鍵を密かに持ち込んでいます。
※葉月りんかの超力、 『希望は永遠に不滅(エターナル・ホープ)』の効果で肉体面、精神面に大幅な強化を受けています。
※葉月りんかの過去を知りました。
※新たな超力『繋いで結ぶ希望の光(シャイニング・コネクト・スタイル)』を会得しました。
現在、紗奈の判明してる技は光のリボンを用いた拘束です。
紗奈へ向ける加害性が強いほど拘束力が増し、拘束された箇所は超力が封じられるデバフを受けます。
紗奈との距離が離れるほど拘束力は下がります。
変身時の肉体年齢は17歳で身長は167cmです。
※『支配と性愛の代償(クィルズ・オブ・ヴィクティム)』の超力は使用不能となりました。
◆
「忌々しい、忌々しい、忌々しいぃぃ!!」
りんかから向けられた慈悲の視線。
手を差し伸べようとする彼女の振る舞いからもジャンヌに近しい気配を感じられた。
なぜ?あの紛い物に続き、あのような贄にしか過ぎぬ子供達までもがジャンヌに近い輝きを放っているのだ?
『自分でもとうに気付いているはずだ』
また右目から声が響いてくる。
聞きたくないのに、見たくないのに。
あの男の声が、姿が私の脳裏から焼き付いて離れようとしない。
『ジャンヌは唯一無二にならず、誰もがジャンヌと同じ道を歩むことが出来るのだ』
「黙れぇェぇぇぇぇぇえええっっっ!!!!我がジャンヌをこれ以上侮辱するなぁぁぁぁぁっっっ!!!!」
ああ、気が狂いそうだ。
早くジャンヌと出会い、わが魂に彼女の存在を刻み込まねば。
「ジャンヌよ。どうか哀れな私に救済を……お導きを……」
【D-3/草原/一日目 早朝】
【ジルドレイ・モントランシー】
[状態]: 右目喪失、右腕欠損、怒りの感情、発狂、神の幻覚、全身に火傷、胸部に打撲
[道具]: 無し
[恩赦P]:0pt
[方針]
基本. ジャンヌを取り戻す。
1.ジャンヌに会いたい。
2.出逢った全てを惨たらしく殺す。
※ジルドレイの脳内には神様の幻覚がずっと映り込んでいます。
※夜上神一郎によって『怒りの感情』を知りました。
※自身のアイデンティティが崩壊しかけ、発狂したことで超力が大幅強化された可能性があります。
最終更新:2025年06月08日 13:41