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ブラックペンタゴン内部。
温室から飛び出した黒い質量が、廊下を裂くように疾走してゆく。

――次の瞬間、黒が剥がれ落ちた。

ルーサー・キングは、纏っていた鋼鉄の装甲を音もなく解除した。
漆黒の巨体がほどけ、露わになったのは血と煤に汚れた男の姿。
巨躯はなお健在。だが着直したばかりのスーツは、温室戦で無惨に裂け、焦げ、裏地まで覗いている。

「……まったく。着替えが幾つあっても足りないねぇ」

愚痴は軽い。だが、床に落ちる足音は重い。
呼吸は荒々しく、歩幅にだけ――ほんの僅かな揺らぎが混じる。

左半分の顔は爆炎に焼かれ、皮膚は炭のように割れていた。
左腕は黒く焦げ、動かすたび神経が焼けるように痛む。
腹部に刻まれた斬撃が、息を吸うたび鈍い波紋となって広がる。
そして何より――眼窩に残る欠落が、脳へ重たく噛みついた。

だが、帝王は倒れない。
血が滴る。それでも姿勢は崩れない。
痛みが噴く。それでも目線は落ちない。

男は倒れるという選択肢を、最初から持ってなかった。
傷に引きずられながらも、帝王の歩幅だけは決して崩れない。

やがて、足がふと止まる。
温室での交戦が、記憶の奥から電撃のように蘇った。

――啖呵を切って散った暗殺者の死に際。
――髪が四肢を縛った瞬間の、あの不快な手応え。
――ギャルの爆炎が左顔面を焼いた灼熱。
――刀が装甲を裂いた、サムライの冷たく乾いた斬撃。
――そして、ディビット・マルティーニの最期。

牙を剥き続ける若造。
死の直前まで怯まなかった眼光。
命を焼き尽くしてでも届かせようとした執念。

キングは、舌に滲む血の味を確かめるように呟いた。

「……悪くなかったぜ、坊や」

評価ではない。哀悼でもない。
価値を示した者に対する、帝王の最低限の賛辞だった。

再び歩き出す。
だがその足取りは、口の軽さと裏腹に確かに重い。
傷口が悲鳴を上げ、全身が軋む。

被験体との再戦が控えている以上、立て直しが必要だった。
誰にも邪魔されず、呼吸を整えられる場所が要る。

だが、キングは訪れたばかりのブラックペンタゴンの内部構造を十分に把握していない。
勘と殺気の流れだけを頼りに、なるべく人目から遠ざかる方向へと廊下を進む。
鉄の床に、濃い足音と血の滴る音が規則的に刻まれてゆく。

やがて、薄暗い通路の奥に物置と見られる隔離スペースが現れた。
封じられた空気が、近づくほどに微かに張り詰めていく。

扉の前で、歩みが止まる。
手を伸ばした瞬間、指がわずかに静止した。

この扉の先に、確かに人の気配がある。
キングが鋭敏であったというより、恐怖で呼吸が荒れ、鼓動が漏れているような隠す様子のない素人の気配であった。
だが、それだけではない。

もう一つ。
良く探ってみれば、その奥で底の見えない気配が息を潜めている。
キングほどの熟練者が中に人がいる前提で探りを入れて、ようやく微弱に拾えるほどの静けさ。
只者ではないのは明らかだった。元より、この刑務作業にいる連中は一筋縄では行かない。
むしろ、気配を丸出しにしている素人の方が異様である。

荒れた呼吸が、すっと静まる。
殺気も焦りも怒りも、一度だけ深く飲み込み、男は『牧師』の仮面を被る。
丁寧さではない。礼節でもない。
そういう『顔』を作ることが、この男にとっての武装だった。

帝王は、ノックなどという礼節を最初から考えもせず――扉を、無造作に押し開いた。


夕暮れに差し掛かろうという刻限。
外界の光など届くはずもない物置部屋の薄闇は、それでもどこか夕刻のように沈んでいた。
ブラックペンタゴン全体の禁止エリア化まで、残り二時間を切っている。

事態を打開しようと能動的に決戦へ向かった者たちとは違い、ここに押し込められた非戦闘員たちは、ただ待つことしかできない。
狭く湿り気を帯びたこの部屋は、もはや死の待合室にも等しかった。

その片隅で、ヤミナが壁にもたれ、膝を抱え込んだまま小刻みに震えていた。

「……む、無理……絶対ムリ……。
 禁止エリア化って、どう考えても詰みじゃん……あ、あ、あと二時間でドカーンって……!」

泣き言が、かすれた笑いに変わる。
エリア情報などろくに頭に入っておらず、放送を聞いた直後もどこか他人事のように構えていたヤミナだったが、先刻ようやく『真実』を突き付けられた。
ディビットが一度は先送りにした『現実』が、改めて牙を剥いたのだ。

ここにきて彼女は、ようやく一つの事実だけを理解してしまった。
――残り二時間。何もしなければ本当に死ぬ、ということを。

その隣で、夜上神一郎は座していた。
右足を失ってなお、背筋は微塵も曲がらない。
祈りの姿勢は崩さず、目だけが澄んでいる。

「『知恵が多ければ悩みも多く、知識を増す者は憂いを増す』
 真実を知ることが幸福であるとは限らないという事ですね」

夜上は、ヤミナの慟哭にすら引きずられず、旧約の一節を淡々と口にする。
声は穏やかで、場違いなほど揺らぎがない。
死を待つ密室には不釣り合いな静けさだった。

「神父さんはどーじでそんなに落ち着いていられるんですがぁっ……!
 怖くないんですか!? このままだと死ぬんですよ!?」

ヤミナは泣き叫ぶように身を乗り出す。
夜上は、彼女の取り乱しようを見ても眉一つ動かさない。

「騒いでも状況は変わりません。心を静め、己を見つめ、祈るのです。
 死は、ひたすら逃げる者には殊さらに厳しいものですよ」

慈悲の言葉の形をして、試練の刃を滑り込ませる。
それがこの神父の癖だ。救う者の顔で、裁く。

「厳しいの分かってるから騒いでるんですよ!!
 そりゃあ、あたしの人生ろくなもんじゃなかったですけど、無様に死ぬのは嫌なんですよ!!」

叫びながら、ほとんど地団駄を踏むような勢いで床を叩き、必死に恐怖を追い払おうとする。
その姿は痛ましいというより、あまりに露骨で滑稽ですらあった。

「何考えてるんですかあの看守長……!! 私たちを殺すつもりなんですかぁっ!?」
「それは、まあ。殺すつもりなのでしょう」
「そ、そんなぁ……!!」

項垂れる彼女へ、夜上は得々と続けた。

「無様かどうかは、結末ではなく生き方で決まるものです。
 あなたにとって重要なのは、己の内に在る神の声に従い、最後の瞬間まで選択を誤らぬことですよ」
「選択って何ですかぁ!? 逃げる? 叫ぶ? 土下座すればいいんですか!?
 もう全部やったんですけどぉぉおお!!」

ヒステリックに叫ぶヤミナを、夜上は少しだけ真顔になって眺めた。
珍しい動物でも観察するかのような、冷静な眼差しで。

「……ふむ。誰もが高潔である訳ではない。
 ある意味で、あなたは自分の神の声に素直に従っているのかもしれませんねぇ」
「そんな褒められ方、全っ然嬉しくないんですけど!!」

ヤミナは頭を抱え、ぎゃあぎゃあと場違いなほど騒ぎ立てる。
だがその声を背景に、夜上の気配がふと変わった。

柔和な神父の目から、透明な審判者の眼差しへ。
光の質が、すっと切り替わる。

視線は扉――物置の出入り口を射抜いていた。

「どうやら……来客があるようですね」
「へ!? え、なに? エンダちゃんたち、もう戻ってきたんですかね!?」

門番討伐に向かった連中が首尾よく凱旋してきたのだと――ヤミナは、わずかな希望に縋るような声を上げる。
だが夜上は、静かに首を振った。

「……いいえ。それとは違う、招かれざる客のようだ」

その答えを示すように、重い扉が押し開かれる。
鉄の蝶番が軋み、薄明かりの中へ黒い影が流れ込んだ。

一歩。空気が沈む。
二歩。室温が落ちる。
三歩。狭い空間が『支配』される。

ヤミナの顔色から、血の気がすうっと引く。
心臓が縛り上げられたように跳ね、膝から力が抜けた。

現れたのは、一人の男。

血に濡れ、焦げ付いたスーツ。
左顔面は焼け崩れ、空洞の眼窩から黒い血が筋を引く。
それでもなお、王として歩む姿勢を崩さない巨躯。

ルーサー・キング。

欧州最大の犯罪帝国『キングス・デイ』の首領。
そして――ヤミナからすれば海賊王ドン・エルグランドと互角に渡り合った怪物。

「ひ、ひ……ひぃ……っ……あ、あ……あぁ……ッ!!」

ヤミナの喉が、潰れた笛みたいな音を漏らす。
背中から崩れ落ち、その場にへたり込む。
身体が勝手に震え、指先が痙攣するように震動する。
小悪党の笑いは凍りつき、代わりに生存本能がむき出しになっていた。

だがキングは、そんなヤミナに一瞥すら向けない。
興味を向ける価値すら感じないのか、完全な侮ったように空気のような扱いをしていた。

視線はまっすぐ、夜上だけを捉える。
夜上は座したまま、僅かに頭を垂れた。

「これは……『牧師殿』。こんな物置へようこそ。歓迎の準備もできておらず、失礼を」

その声音の揺るぎなさに、キングの片目がわずかに細まる。
物置で出迎えた相手の正体を認識して愉悦と警戒が、同時に滲む。

「牧師殿、ねぇ……本物の『神父様』にそう呼ばれちゃ、こちらの立つ瀬がないねぇ」

軽口。だが、室内の空気は重いまま沈む。
帝王の威圧が、物置の壁をじわりと押し広げる。
ヤミナは涙目で身を縮め、ただ震えているだけだ。

夜上は微笑を崩さない。
慈愛の顔のまま、侵入者の様子を測るように隅々まで観察していた。

「随分と、お疲れのご様子ですね、牧師殿」

キングは肩を揺らし、笑うように息を吐いた。

「そちらこそ……その右足。派手にやられたようだ」

互いの傷が、互いの修羅場を語っていた。
帝王としての矜持が虚勢を保たせているが、満身創痍であることは神父の目には見抜かれていた。
お返しとばかりに右足の喪失を指摘され、夜上はさらりと肩を竦めた。

「ええ。たまたま居座ったエントランスホールで『事故』に遭いましてね。
 右足だけで済んだのは、神の思し召しでしょう」
「なるほど。あの怪物とかち合って生き残っているだけ、大したものだ」

キングの声には、同じ地獄を味わった者にしか出せない重みがあった。
被験体:Oの暴威は、彼自身が身をもって知っている。
何の用意のもなくあの怪物とかち合って、右足一本で済んだなら安いものだろう。

「それで――牧師殿。わざわざこの末世の檻に足を運ばれるとは……どのようなご用件で?」

夜上の口調には、招かれざる客への皮肉を柔らかく包んだ声音が含まれていた。
キングは片肩をすくめ、口角をわずかに上げる。

「そう邪険にしなさんなよ、神父様。迷い子を導くのが神父の役目だろう?」
「おや、迷い子とは。闇の帝王ともあろうお方が、それはまた面白い冗談を。
 今さら私の『試練』を望むようなお年でもないでしょうに」

迷い子に試練を与える神父。
夜上にとってキングは、試練を与えるべき対象ではない。
己の内に揺らぎを持たぬ『完成された怪物』は、試すまでもなく枠の外にいる。
そこにあるのは、純粋な脅威への観察と警戒のみだ。

キングは軽く鼻を鳴らした。

「あんたの与える『試練』は俺には不要だ。
 だが、困っているのは本当でね……聞きたいことがある」
「ほう」

夜上の目がわずかに細められる。

「少しトラブルがあってね――放送を聞き逃してしまったのさ」

キングはわざとらしく頭を掻いてみせ、自身の失態をさらりと口にした。
その芝居がかった仕草の裏に、致命的な情報欠落への苛立ちと警戒が滲んでいたのを神父は見逃さなかった。

「……なるほど。そういうことでしたか」

夜上は静かに得心する。
キングがブラックペンタゴンに足を踏み入れた理由。
それは告知された罠を知らなかったからと言う、ごくごく単純な理由だった。

「ま、ここにきて出会い頭に『アレ』だ。おおよその察しは付いているが……確証が欲しい。
 ――――放送内容を聞かせて貰えるかい?」

ブラックペンタゴンを訪れたキングを待ち構えていた、異様な被験体:O。
あの怪物との交戦で、彼は既にある程度の推察を立てている。

だが、帝王は推察だけでは動かない。
必要なのは揺るぎない確かな情報である。
それがこの場へ乗り込んだ理由だった。

「ええ。お教えしましょう。
 知らぬものに知識を施すのもまた、私に与えられた役目でしょうから」

夜上はその要求を拒まない。
拒む理由が、彼の中には存在しなかった。
夜上は淡々とした口調で、第二放送の内容を語り始める。

――被験体:Oのエントランスホール投入。
――分配可能な400ptの黒い首輪。
――南門以外の出入り口封鎖。
――ブラックペンタゴンの全域を満たす禁止エリア。
――そして、通常とは異なる六時間後の遅延発動。

「……以上が、第二放送の内容です」

夜上の説明が終わると室内に沈黙が落ちた。

キングは即座に反応しない。
片目を細め、情報を一つひとつ噛み砕き、配置し、整理する。
帝王の脳内で、盤面が組み上がっていく。

黒い首輪についてはさすがのキングも予測のしようがなかった。
だが、それ以外は概ね予測の範囲内。
被験体:Oと遭遇した時点で、すでに半分以上は理解していたのだろう。
彼の表情は、ほとんど揺らがない。

低く息を吐く。
苛立ちではない。確認が取れたことへの、冷えた納得だ。

奇しくも、ギャル・ギュネス・ギョローレンによる爆破が、出入り口封鎖の実態を一層分かりにくくするミスリードとなった形だ。
こちらに反旗を翻した件といい――やはり、あの爆弾魔は筋金入りのじゃじゃ馬である。

ひとまず、これだけの情報があれば、ブラックペンタゴン内部でその後に起きたであろう展開は容易に見当がつく。

「つまり……内部勢力は一時休戦。生存を最優先に動いた。
 被験体に対抗するため、利害が一致した者同士で手を組んだ……違うか?」

キングは、温室で対峙したディビットたちの顔を思い返す。
あの三人もまた、被験体へ向かう覚悟を見せていた。
あれは突発的な勇気ではない。作戦行動だったと考えるのが自然だ。

「君たちのいるこの場所は……さしずめ、非戦闘員の待合室、というわけか」

キングの片目が、震えたまま口を閉ざしているヤミナへと一瞬だけ向く。
だが、やはり取るに足らない小悪党という認識以上には扱われない。

「ブラックペンタゴンに足を踏み入れた以上、今の俺も同じ盤の上だ。
 お互い、生き延びるために手を取り合うことも出来るだろう」

声音は穏やかだが、その言葉の裏にあるのは、対等な連携ではない。
『協力』と呼ぶにはいささか一方的な、帝王による掌握の申し出だった。

「だから教えてくれないか。今動いている連中――メンバーは何人で、誰がいる?
 作戦はどうなってどう動いている?
 差し支えない範囲で構わない、教えてもらえるかな」

夜上は静かに目を細めた。
放送内容のように、全員に共有されて然るべき情報を伝えるのとは訳が違う。
この危険な男に作戦の内情を漏らすことは、そのまま仲間を売る行為に等しい。

返答を逡巡する神父の様子を見ながら、キングは話を続けた。

「夜上神父。あんたには敬意を払いたい。出来ることなら、乱暴な真似はしたくない。
 だからこそ――素直に答えてくれると助かるんだがね」

柔らかく聞こえる言い回しだが、その実、従わなければ暴力に訴えるという率直な通告だった。
その圧にヤミナは息を呑み、肩を大きく震わせ、息を呑んで夜上を見る。
だが――夜上神一郎は、微動だにしなかった。

恫喝や脅迫に屈するような男ではなかった。
だからと言って、彼が回答を躊躇うのは仲間意識からではない。
彼の判断基準は、常にただ一つ。己が信じる『神』に沿うかどうかだけだ。
微笑を湛えた表情を崩さぬまま、神父は静かに問い返す。

「その前に。こちらからも一つ、うかがってもよろしいですか?」
「ああ。こちらからばかり尋ねるのも礼を欠く。構わないよ」

夜上は小さく頷き、では、と短く前置きしてから、静かに言葉を放った。

「――その傷。誰から負わされたものです?」

神父からの問いに、牧師は即答できず、短く沈黙する。

この傷はディビットたちとの交戦で刻まれたものだ。
つまり、彼自身が彼らの作戦行動を阻害し、葬り去ったという証でもある。
その口で『協力』を持ちかける道理は、たちまち失われる。

被験体:Oと答えることも出来たかもしれない。
だが、こうした情報交換の場でわざわざ虚言を弄するほど、彼は耄碌してはいない。

「お互い、探られたくない腹はあるでしょう。詳細までは問いません。ですが――」

夜上は淡々と告げる。

「こうして身動きもおぼつかず、戦場の後塵を拝する立場ではありますが、私は彼らに協力を誓った身です。
 彼らが不利になるようなことを、お話しする訳にはいきませんね」

闇の皇帝に対し、正面から『NO』を突きつける。
その回答にキングの圧が、一段階だけ濃くなる。
だが、そこに怒りは見せない。
何故なら、理屈として筋が通っているのは、神父の側だ。

「どうなさいます? 神(わたし)の口――割れるかどうか、試してみますか?」

まるで刀を抜くかどうか、その決断を相手に委ねるかのように、夜上は静かに問う。
筋が通っていようが、それを覆す暴力という切り札を持っているのはキングの方だ。
ここで、温室でディビットらを葬った事実を明かし、その力を背景に脅しつけることも出来たはずである。

「…………止めておこう。無駄手間は嫌いでね」

だが――帝王は、そのカードを切らなかった。

暴力で折れる相手なら、迷いなく振るっていただろう。
こちらが出来ないと嘗めていたのなら、それはそれで殺していた。
しかし、この神父はどちらとも違う。

己が信念を、己の命よりも上位に置く類の狂人。
殺しても、拷問しても、決して望む答えは返ってこない。
それを、ルーサー・キングは正しく理解していた。

「なら――」

キングの片目がゆっくりと横へ滑る。
床にへたり込んだまま震える小悪党――ヤミナ・ハイドへ。

「――お次は、そちらの娘に尋ねようか」
「ひ、ひぃぃいい!? お構いなくぅぅうう!!」

視線を感じた瞬間、ヤミナは悲鳴とも嗚咽ともつかない音を漏らした。
小悪党の鑑のような反応だった。

「おや――今度は彼女から情報を得るおつもりで?」

穏やかな響きだが、言葉の棘は鋭い。
『私から聞き出せなかった情報を、小娘に頼るのですか』
と暗に突きつけるような含意があった。
キングは小さく鼻を鳴らす。

「違うさ。そんな恥知らずな真似はしねぇよ。
 こいつに聞きたいのは、作戦の話じゃない――別の件についてだ」
「別件、ですか」

夜上の目が興味深げに細まる。
もっとも、ヤミナは作戦会議のほとんどを気絶していたため、何か重要な情報を持っているはずもないのだが。
キングは肩を揺らし、皮肉めいた笑みを浮かべた。

「それでも、止める権利があんたにあるのかい?」
「権利はありませんが……留守の間、彼女の身柄を預かっている立場でして。
 できれば、お手柔らかに願いたいところですね」
「安心しな。危害を加えるつもりはねぇよ」

そう言ってから、キングはゆっくりとヤミナへ向き直った。
ヤミナの肩がびくりと跳ねる。
嫌な予感しかしない。

「やあ、久しぶり……と言うほどでもないか。半日ぶりだねぇ、お嬢さん」
「よ、よく……覚えておいでで……」

半日前。
この孤島で、陸と海の支配者が相まみえた。

海賊王――ドン・エルグランド。
その背後に付き従っていた下っ端こそ、ヤミナ・ハイドである。

もちろん当時のキングの関心はドンにのみ向けられており、ヤミナは背景の一部にすぎなかった。
しかし今、その背景が問題の核心を握っている。

キングはドンと交戦した際、ヤミナへの注意を見落とす場面があった。
その事実から、彼女の超力が『認識阻害系』であると察しを付けていた。
そこまで察しを付けたキングほどの怪物でさえ、注意してもなお認識を曇らせる恐るべき能力だった。
キングは片目を光らせ、問う。

「ドン・エルグランドに付き従っていた君に聞きたい。
 ――あいつを殺したのは、誰だ?」

ヤミナの肩が跳ね上がり、唇がぱくぱくと震える。
だが――ほんの一瞬、変な悟りを得たような顔になる。
引くついた笑みを浮かべ、次いで口が勝手に動いた。

「ふっ……この私が、仲間を売るとでも?」

夜上の真似をしたような気取った声音。
状況と噛み合っていない、雑すぎる虚勢だった。

「なるほど。大した覚悟があるようだ」

キングは薄く笑う。
片目が鋭く射抜いた――その瞬間。

「ドンを倒したのはエンダちゃんと只野くんです!!」

ヤミナは音速で白状した。
この女の虚勢が数秒と持つはずがない。
分かりきったオチである。
夜上が小さく溜息を吐く。

そして、その回答にキングの眉がわずかに顰められ、困惑が滲む。

「……エンダ、だと?」
「はい! エンダ・Y・カクレヤマさんです!!」

エンダ・Y・カクレヤマ。
世界最大のヤマオリ・カルトの巫女。
その狂気的影響力ゆえ、キングが優先排除対象としていた危険人物の一人。

だが、キングが警戒していたのは、あくまでカルトの巫女としての支配力である。
ドン・エルグランドと互角に渡り合える武力を持っているとは、微塵も考えていなかった。
そして、引っかかったのはもう一つの名前もそうだ。

「……只野ってのは?」
「只野仁成くんです!」

キングも知らない受刑者だ。
キングの情報網にも引っかからなかった存在。
すなわち『秘匿受刑者』の一人であるという事だろう。

「……ドンを殺したのは二人の『秘匿受刑者』だった、ってわけか」

キングは短く息を呑み、低く呟いた。
片目の奥に、明らかな警戒の色が走る。
だが、秘匿されているからと言って強いだなんてことはありえない。

このルーサー・キングや、あの大金卸 樹魂が秘匿に指定されていない以上、強さは無関係であることは明らかだ。
秘匿とは何なのか。何を秘匿しているのか。その秘匿がドンを倒すほどの何を持っているのか。
キングの興味が、静かに、しかし確実に研ぎ澄まされていく。
そして、次の問い。

「その二人は今、どこにいる?」

低く抑えた声音が、物置の空気を重くする。
問われ、ヤミナはきょろきょろと周囲を見回す。

「え、あれ、そう言えばどこでしょう。さっきまでいた気がするんですけど……」

その回答に夜上がやれやれと首を振った。
エンダたちがブラックペンタゴン内で行動していたと白状したようなものである。
明確な失言だった。

キングの脳裏で、戦術分析が静かに形を成す。
ブラックペンタゴン脱出の協力チームにエンダたちも参加している。
という事は、ディビットたち以外にも独自に動く戦力がいる、ということだ。

別働していたのなら、挟撃の布陣を取っていた可能性は高い。
そうなると――今頃、彼らはすでに被験体に挑んでいる最中。
キングがディビットたちを壊滅させたことによりさぞ迷惑を被っているだろう。

情報収集を終え、現状を整理したキングは、ようやく次の方針を定めた。
満身創痍の体を引きずりながらも、帝王の歩幅は崩さぬまま物置の出口へ向かう。

その背に、夜上の声が落ちた。

「意外ですね」
「……何がだい」

キングは一歩も動かず、肩だけをわずかに返す。

「ドン・エルグランドの死因に、そこまで拘られるとは。
 聞く限り、昔馴染みという訳でもないのでしょう?」

キングは片眉をぴくりと上げた。

「確かに、あの海賊王と顔を合わせたのは今日が初めてだ。
 だが奴は、規格外の怪物だった。それを殺せる相手がいるなら――俺にとっても脅威になる。
 自分に降りかかるかもしれない脅威を気にかけるのは当然だろう?」

カリブ海に名を轟かせた海賊王。
互いに名の売れた存在、その存在は認知していたが、実際に拳を交えたのは初めてだった。
ほんの様子見程度の交戦だったが、その一瞬で互いを同格の怪物と認め合うには十分だった。

夜上はわずかに微笑を深める。

「欧州を収め、今や世界に手をかけんとするお方が、ずいぶんと慎ましやかなことだ」
「違うな、神父。ここまで上り詰めたのは、臆病だからではなく――慎重であり続けたからだよ」

その反応に、夜上の口端がゆるやかに吊り上がった。
それは、獲物を値踏みしていた肉食獣が予想外の極上を見つけたときの笑みに近い。

「そこまで死が恐ろしいのですか?
 それとも……恐れているのは、もっと別の『何か』でしょうか?」

その問いに、空気が一瞬で張り詰めた。
キングの圧が重く沈み、狭い室内の空気が圧搾されるような錯覚すら生まれる。
ヤミナは反射的に息を呑み、背筋を伸ばしたまま固まった。

「……そこから先は、言葉を選べよ、神父」

低い声。
脅しではなく、警告に近い。
だが夜上は、怯むどころか、むしろ声に愉悦すら滲ませて続ける。

「闇の皇帝ともあろうお方が、一体何を恐れるのか。
 己の内にある『神』と向き合うことが、そんなに恐ろしいのですか?」

夜上の声が、慈悲から裁定へ変わる。
キングの片目が鋭く細まった。

「先ほどの情報交換では、そちらに理があったから多少の無礼は黙認してやった。
 だが言ったはずだ――あんたの『試練』は必要ないとな。俺は試されるのは嫌いでね」

その声は低く静かだが、内側に明確な殺気を宿していた。

「これ以上、無礼を踏み越えるなら……侮辱として『死』をもって返す。それが裏社会の礼儀だ」

夜上は、恭しく首を振った。
ヤミナもよく分からないが、怖くて震えていた。

「侮辱など、とんでもない」

涼やかな声音のまま、しかし語り始める調子だけが、どこか楽しげなものへと変わっていく。

「あなたの歩んだ道程には、尊敬すべき点が多い。
 人種差別の根深い厳しい時代を生き抜いてこられた生き字引だ。そこには多くの不合理と暴力が満ちていたでしょう。
 差別と暴力で作られた世界の論理。その理不尽に誰よりも晒され、誰よりもそれを理解していたのがあなただ」

キングの表情は読めない。
だが室内の空気だけは、さらに重く沈んでいく。

「あなたはそんな世界の構造を読み解き、その『仕組み』そのものを利用して裏社会の頂点に立った。
 この状況でスーツを着込む礼儀やマナーはただの飾りではない。戦うために身に着けた『武装』なのでしょう。
 所作に滲む礼節や矜持からも、あなたの信念は感じ取れます」

一つひとつの言葉は、むしろ称賛に近い。
しかし、その先に続くものがあると、誰の耳にも分かる調子だった。
夜上の声音は、いつしか祈りのそれではなく――試練を課す裁定者の声へと変わっていた。

「ですが、あなたは白人社会が定めた差別と暴力で出来た世界の『仕組み』を憎みながら、否定し尽くすでもなく、破壊するでもなく。
 ただ、その枠組みの中で最も強く、最も賢く在ることを選んだ」

夜上の声は穏やかだ。
祈りのようでありながら、刃のように鋭い。

それは怒りか、殺意か――あるいは痛みか。
キングの指が、わずかに震えた。

生まれながらの怪物であるドン・エルグランドや、大金卸 樹魂は何事にも迎合しない。
世界の構造そのものを無視し、呑まれぬまま『異物』として在り続ける。
だが――キングは違う。

白人が用いる礼儀作法を徹底的に学び。
かつて黒人に向けられた理不尽と同じ手段を、今度は自らの側から振るう。

それは服従ではない。復讐でもない。
『仕組みは覆せない』と見切りをつけ、その枠の中で最適解を選んだ。

世界の仕組みに敵わないと妥協しただけの小物。
かつてジェイ・ハリックが投げかけた言葉が、左目の傷跡を疼かせる。

「世界の不条理を理解したうえで、それを壊すのではなく不条理の上に君臨する側へと回った。
 かつて喰い殺される側にいた少年が、今や喰い殺す側の秩序を定める者となったのです。
 世界の天辺――そこから見下ろす景色は、さぞ心地よかったでしょう」

一呼吸置き、夜上は静かに問いを落とす。

「――ですが、それは本当に、己が『神』の声に従った道でしたか?」

その一言が、確実にキングの急所を突いた。
空気が圧縮されたように重くなり、ヤミナはぺたりと尻もちをついて震える。

「あなたが恐れているのは、死そのものではありません。
 あなたが死ねば――あなたが組み上げた『仕組み』そのものが崩壊する。
 己が支配する秩序が、自分の知らない何かに壊されることこそが、何よりも恐ろしいのではないですか?」

ヤミナには、意味の半分も分からない。
夜上の言葉はとっくにデッドラインを突き抜けていることだけは、本能で理解していた。
だが、夜上は怯むどころか、なおも追撃を加える。

「ドンの死に拘った理由も同じです。
 あなたの定めた『枠組み(ルール)』では説明できない出来事が起きた。
 自分の計算に入っていない強者が、どこかにいる――それは、あなたにとって『未知』そのものだ」

夜上の眼差しは、完全に『試練』を突きつける者のそれとなっていた。

「先ほど『秘匿』という言葉に引っかかったのも同じでしょう。
 情報網に引っかからない受刑者、想定外の死に方をした海賊王。
 あなたの外側にある何かが、自分の築いた秩序を食い破るかもしれない」

一拍の間を置き、静かに断じる。

「確証を得るためだけに、これほど危険なブラックペンタゴンへ踏み込んだのも、結局はその不安ゆえ。
 あなたは不確かなものを赦せない。
 すべてを把握し、支配下に置いていなければ、心が安らがない」

夜上神一郎は、慈悲も嘲笑も浮かべず、ただ静かに、断じる。

「――それが、あなたの強さであり……『弱さ』なのです」

静寂が落ちた。
ただの沈黙ではない。
刃のように鋭く、鉛の様な重圧を伴った死の気配が室内を満たす。

気温が一気に下がり、物置の薄闇が揺らめく。
帝王の怒り――それは、生半可な者の心臓ならその場で停止しても不思議ではないほどの質量を持っていた。

異様な光景だった。
そんな殺気の中心に立ちながら、夜上だけは静かに呼吸を整えている。
ヤミナが一人呼吸を奪われ、喉がひゅ、と細い悲鳴を上げていた。

キングがゆっくりと口を開く。
その声音は氷より冷たく、雷鳴より重かった。

「――――よく言った。そこまで踏み込んだ代償を払う覚悟はできているんだろうな」

低い声。
感情は抑え込まれている。
それがかえって、恐ろしい。

それは、言外の余白すら許さない死の宣告だった。
室内の温度が一段落ち、ヤミナはその場で凍りつく。

ヤミナは息をすることすら忘れていた。
喉が鳴らない。肺が動かない。
小悪党として培ってきた生存本能が、ただ一つの結論を叩きつけてくる。

――あ、これ、マジで死ぬやつだ。

だが――夜上は微塵も揺れなかった。
むしろ、どこか清らかな微笑をたたえて応じる。
聖人の顔で、狂人の瞳を輝かせながら。

「ええ。帝王の綻びを目撃できた代償としては、むしろ安いものです」

夜上は無知から踏み込んだわけではない。
暴力の脅威を理解できぬ愚者でもなく、楽観して生き残れると思っている阿呆でもない。

すべてを理解したうえで、それでもなお先へ踏み込む男。
他者の命よりも、自らの命よりも、信念を遥かに上位へ置く、本物の狂人だ。

「なにより。神(わたし)は、あなたの中にある『鏡』を示したにすぎません」

火に油を注ぐような言葉。
だが声はあくまで柔らかく、静謐で、慈愛めいてすらいた。
今にも弾けそうな乾いた空気の中、夜上は平然と続ける。

「あなたは世界の理不尽を理解し、利用し、頂点へと上り詰めた。
 しかし――『利用する』ことと『超克する』ことの間には、深い断絶があります」

片手を胸に当てる所作は、祈りではなく魂の根源へ触れようとする聖者のそれだ。
傷を開いた聖職者は、その先の救いの道を説こうとしている。

「あなたほどの器ならば、仕組みそのものを覆し、喰う者と喰われる者――その二元論を超えた新たな世界を提示できたはず。
 あなたは、その可能性を持つ数少ない人物だった」

キングの片目が、かすかに震える。
そこは、帝王の奥底――決して他者が触れられてはならない領域。
夜上は迷いも恐れもなく、さらに踏み込む。

「あなたの救いの道はただ一つ。
 己が内なる『神』と向き合い、選ばなかったもう一つの道を受け入れること。
 それこそが――」

その瞬間だった。

短槍が、雷光のように放たれた。

音は遅れ、結果だけが世界に先行する。
漆黒の槍が夜上の胸を貫き、その身体を後方へ吹き飛ばした。

轟、と鈍い衝突音。
夜上の身体が宙を舞い、壁へと叩きつけられる。
だが、鋼の制裁はただ壁へ叩きつけるだけでは終わらなかった。

次いで放たれた鉄杭が両掌を貫き、両腕が左右へ大きく広がる形で壁へ縫い止められた。
石膏が弾ける音とともに壁面に走ったひびが縦横へと伸びていく。

白い粉塵が舞い上がる。
薄闇の中に浮かび上がるその姿は、まるで十字架に磔にされた救世主の残像のようだった。

「ひ、ひ……ひぃぃぃ……!!」

ヤミナの声にならない悲鳴がら漏れる。

「言ったはずだよな? ――侮辱の代償は『死』だと」

キングの声が、底の見えぬ闇の底から響いた。

怒号ではない。激情でもない。
ただ帝王が侮辱を処理したという冷徹な事実だけが、そこにあった。

夜上の胸から黒い血が流れ落ちる。
それでも、彼は十字架に掛けられた聖者のように柔らかな微笑を浮かべた。

「救いの……道を求められるのなら……己が……『神』と向き合うのです……」

血が咽喉を焼き、声が途切れそうになりながらも、その響きだけは澄んでいた。
まるで、罪を赦す神父が最後の説教を与えるために磔にされているかのようだった。

「この俺に、救いなんざ上等なもんは必要ねぇのさ」

吐き捨てるような言葉。
それが真実であるかどうか。
虚偽を見抜く『神の目』をエネリットに預けた今となっては判別がつかない。
それが口惜しいといえば口惜しかった。

息絶える直前、夜上は天を仰ぐようにゆるく視線を上げ、祈りにも似た言葉を落とす。

「どうか……己が……『神』と……向き合われますよう……」

ルーサー・キングの手がわずかに動く。
視線は一瞬だけ、十字に磔られた神父の顔を見上げた。そこにあるのは哀れみでも敬意でもない、ただの判決の眼差し。

「――狂人め」

次の瞬間、鉄杭が放たれ――夜上の顔面を貫いた。

十字の姿勢のまま、夜上神一郎の命は、静かに、そして儀式のように断たれた。

磔にされた夜上の身体から、黒い血がぽたり、と床へ落ちる。
その音を合図にしたかのように――

「あわわわわ…………ひ、ひぃ、ひぃぃいいいっっっ!!??」

ヤミナが弾かれたように悲鳴を上げた。
腰を抜かしたまま後ずさりし、手足をばたつかせ、キングから逃げる様に物置の奥へ逃げ込む。

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさーーーい!! お助けぇぇぇぇぇぇぇええええええ!!

その先には、かつてネイ・ローマンが破壊した中庭に繋がる穴があった。
ヤミナは転がるように駆け出し、土埃を巻き上げながら中庭の方へ消えていく。

それを、キングは追わなかった。
一瞥すらしない。

あの女を追う価値はない。
恐怖で判断力を失った小悪党など、殺すにも労力が惜しい。
それが、彼女の超力によるものなのか、疲れを感じるキングの心労ゆえの判断なのか、本人も判断は付かなかった。

帝王のの視線は、ただ一つ。
十字に磔られた亡骸へ向けられている。

夜上 神一郎。
己の信念のために自分の命すら捧げられる。
何者にも飲まれず、己の信念のために死んだ男。
聖人にして、狂人。

キングはゆっくり近づき、その亡骸を一瞥し、冷たく言い放った。

「……神父。てめぇの見立てが全部外れてたとは、言わねぇでおいてやる」

微かに血潮の匂いが揺れる。
だがキングの声には怒りも憐憫もなく、ただ淡々とした帝王の結論だけがあった。

「だがな──俺の人生を『神』の試験に変えられるのは、もうごめんだ」

その言葉には、嘲りでも否定でもなく、支配されることへの絶対的拒絶だけが宿っていた。

神父が最後まで説こうとした救いの道。
己の人生を神の声に委ねるという論理。

キングはそれを根本から否定する。

「俺の人生は、俺が選ぶ。
 神の意志に試される筋合いなんざ――最初から一つもねぇ」

その瞬間、十字架に掛けられた亡骸の前で、帝王は静かに――神を否定した。

【夜上 神一郎 死亡】

【D-4/ブラックペンタゴン北西エリア・物置/一日目・夕方】
【ルーサー・キング】
[状態]:疲労(大)、肉体の各所に打撲(中)・裂傷(中)、腹部にダメージ(中)、左手と顔左半分に火傷(大)、左目失明
[道具]:漆黒のスーツ(破損)、私物の葉巻×1、タバコ(1箱)、応急処置キット(幾らか残量あり)
[恩赦P]:167pt(夜上 神一郎の首輪+80pt)
[方針]
基本.勝つのは、俺だ。
1.生き残る。手段は選ばない。
2.使える者は利用する。邪魔者もこの機に始末したい。
3.ドン・エルグランドを殺ったエンダと只野を調べる。
4.ルーサー・キングを軽んじた以上、りんか達もいずれ潰す。手段手法は問わない。
5.ジャンヌ・ストラスブールも、第二段階に到達しつつあるのか?

※彼の組織『キングス・デイ』はジャンヌが対立していた『欧州の巨大犯罪組織』の母体です。
多数の下部組織を擁することで欧州各地に根を張っています。
※ルメス=ヘインヴェラート、ネイ・ローマン、ジャンヌ・ストラスブール、エンダ・Y・カクレヤマは出来れば排除したいと考えています。
※他の受刑者にも相手次第で何かしらの取引を持ちかけるかもしれません。
※沙姫の事を下部組織から聞いていました

※超力の第二段階に至った『到達者(プレシード)』です。
全身に漆黒の鋼鉄を纏い、3m前後の体躯を持つ“黒鉄の魔人”と化す超力『Public Enemy』が使用可能です。
※アビス内でラバルダ・ドゥーハンと面会し、彼女からシエンシアについて聞き出していました。

【D-4/ブラックペンタゴン北西エリア・中庭/一日目・夕方】
【ヤミナ・ハイド】
[状態]:各所に腐食(小)
[道具]:警備員制服(SSOGの徽章付き)、デジタルウォッチ、H&K SFP9(12/20)、デイパック(食料1食分、エンダの囚人服、資料・書籍類)
[恩赦P]:32pt
[方針]
基本.強い者に従って、おこぼれをもらう
0.キングから逃げる
1.被験体:Oを誰かなんとかしてぇぇえぇえええ!!!


138.オーシャンアイズ・ラビットアイズ 投下順で読む 140.REMATCH
時系列順で読む
スカーフェイス ルーサー・キング ラストスタンド
開戦 ヤミナ・ハイド REMATCH
夜上 神一郎 懲罰執行

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最終更新:2026年01月01日 00:28