野球を始めたのは何歳からだったかなんて正直覚えていない。
でも始めたきっかけは今でも鮮明に覚えてる。
・・・後悔しているのはただひとつ。
でも始めたきっかけは今でも鮮明に覚えてる。
・・・後悔しているのはただひとつ。
――なぜ野球を教えてくれた彼の名を聞かなかったのだろう。
――そしてどうして私は名乗らなかったのだろう。
――そしてどうして私は名乗らなかったのだろう。
それから私は野球を続け、アイツのことが好きになり、そして中学を卒業した。
アイツは好きだけど、彼のことを忘れることは出来なくて。
あれから全く逢わなくなってしまったけれど、彼は今どうしているのだろう。
アイツは好きだけど、彼のことを忘れることは出来なくて。
あれから全く逢わなくなってしまったけれど、彼は今どうしているのだろう。
『めぐりあう二人・前編』
聖タチバナ学園野球部、ここは全国的にもかなり珍しい女性選手が二人も在籍する野球部である。
数年前までは無名中の無名だったがここ何年かで頭角を現し、甲子園出場も果たした。
その立役者となったのが橘みずき、六道聖の女性バッテリーとキャプテンの白瀬優である。
数年前までは無名中の無名だったがここ何年かで頭角を現し、甲子園出場も果たした。
その立役者となったのが橘みずき、六道聖の女性バッテリーとキャプテンの白瀬優である。
「ねぇところでさ、優くんも聖もなんで野球を始めたの?」
部活終了後、俺は我が野球部の誇る女性選手二人にパワ堂の甘味巡りにつき合わされていた。
その帰り道のことである。みずきちゃんがふとこんなことを言い出したのだ。
「俺は家族が野球好きだからもう物心ついたころには野球が日常に当たり前に組み込まれてたよ」
ありのままの事実を述べる。特に父親とはいまだに試合観戦に行くほどだ。
みずきちゃんはへぇーとやや大げさなリアクションをとると次は君と言わんばかりに聖ちゃんの方を見た。
俺も女性選手でしかも捕手である聖ちゃんの野球を始めたきっかけは気にはなったが・・・
残念、ここで分かれ道だ。女の子二人に夜道で立ち話させるわけにはいかないので
明るいうちにここはさっさと帰ることにしよう。
部活終了後、俺は我が野球部の誇る女性選手二人にパワ堂の甘味巡りにつき合わされていた。
その帰り道のことである。みずきちゃんがふとこんなことを言い出したのだ。
「俺は家族が野球好きだからもう物心ついたころには野球が日常に当たり前に組み込まれてたよ」
ありのままの事実を述べる。特に父親とはいまだに試合観戦に行くほどだ。
みずきちゃんはへぇーとやや大げさなリアクションをとると次は君と言わんばかりに聖ちゃんの方を見た。
俺も女性選手でしかも捕手である聖ちゃんの野球を始めたきっかけは気にはなったが・・・
残念、ここで分かれ道だ。女の子二人に夜道で立ち話させるわけにはいかないので
明るいうちにここはさっさと帰ることにしよう。
「あっと・・・俺はこっちだ。じゃあな二人とも、また明日」
「うんバイバイ!」
「先輩、さようならだ」
みずきちゃんは大きく、聖ちゃんは少し控えめに手を振ってくれた。
「うんバイバイ!」
「先輩、さようならだ」
みずきちゃんは大きく、聖ちゃんは少し控えめに手を振ってくれた。
「で、聖が野球を始めたきっかけは?」
みずきが私のほうへと向き直り、改めて問いかける。
「そうだな、いくつのときだったかはもう覚えていないんだが・・・」
私がここで言いよどむがみずきは構わずそれで? と促してくる。
みずきが私のほうへと向き直り、改めて問いかける。
「そうだな、いくつのときだったかはもう覚えていないんだが・・・」
私がここで言いよどむがみずきは構わずそれで? と促してくる。
「私がまだ小さかったころにな、家の庭に野球のボールが転がってきたんだ。私はそれを手にとって、
周囲を見渡した。するとやや遠くから男の子が駆けてきたんだ」
いつになくみずきは私の話を真剣に聞いているようだった。
「そのときその男の子は私からボールを受け取るとお礼を言って去っていった。
けどその次の日またその子が来たんだ。私は一人だったから、気を利かせてくれたんだと思う。
それで、その子にキャッチボールしようと言われてキャッチャーミットを渡されたんだ。その子は投手だったみたいだから」
そこまで話すとみずきは驚いたように口を開いた。
「えっ!? じゃあ聖がキャッチャーなのって・・・」
「あぁ、このときもらったミットの影響だろうな。間違いなく」
そう私が答えるとさっき先輩が質問に答えたときよりも大きく息を吐き出して感嘆しているようだった。
周囲を見渡した。するとやや遠くから男の子が駆けてきたんだ」
いつになくみずきは私の話を真剣に聞いているようだった。
「そのときその男の子は私からボールを受け取るとお礼を言って去っていった。
けどその次の日またその子が来たんだ。私は一人だったから、気を利かせてくれたんだと思う。
それで、その子にキャッチボールしようと言われてキャッチャーミットを渡されたんだ。その子は投手だったみたいだから」
そこまで話すとみずきは驚いたように口を開いた。
「えっ!? じゃあ聖がキャッチャーなのって・・・」
「あぁ、このときもらったミットの影響だろうな。間違いなく」
そう私が答えるとさっき先輩が質問に答えたときよりも大きく息を吐き出して感嘆しているようだった。
そこまで話して私はみずきと分かれ、家である寺に帰宅した。
『お手玉は一人でしか出来ないけどさ! これなら二人で出来て楽しいだろ?』
『・・・これは、どうやって使うの?』
『あぁ、それはここから手を入れてはめるんだよ』
『なんかくさい・・・これ』
『しょうがないでしょ!』
『でも、このにおいキライじゃない・・・かな』
『じゃやろう! おれがボールを投げるから、それを使ってキャッチすればいいんだ!』
『わかった』
『さいしょはやさしく投げるよ! そりゃっ』
『わわっ! っとと!』
『お! ナイスキャッチだね~』
『・・・これは、どうやって使うの?』
『あぁ、それはここから手を入れてはめるんだよ』
『なんかくさい・・・これ』
『しょうがないでしょ!』
『でも、このにおいキライじゃない・・・かな』
『じゃやろう! おれがボールを投げるから、それを使ってキャッチすればいいんだ!』
『わかった』
『さいしょはやさしく投げるよ! そりゃっ』
『わわっ! っとと!』
『お! ナイスキャッチだね~』
会話は10年程度の歳月が流れた今でも鮮明に思い出せるのに・・・彼の面影が思い出せない。
しかし私にとって不可解なのはなぜ今になってこうもあの子のことを思い出しているのか・・・
高校に入学して野球部に入ったのを境にあの日々のことばかり思い出してる。
私が野球とめぐりあうきっかけをくれたあの子、
今になって気にかかるというのには何か意味があるのだろうか。
しかし私にとって不可解なのはなぜ今になってこうもあの子のことを思い出しているのか・・・
高校に入学して野球部に入ったのを境にあの日々のことばかり思い出してる。
私が野球とめぐりあうきっかけをくれたあの子、
今になって気にかかるというのには何か意味があるのだろうか。
結局この日、あの子との日々がぐるぐると頭の中をめぐってなかなか寝付けなかった。
『今日でおわかれなんだ、おれはひっこししなきゃいけないんだ』
『え!? ま、また! またあえるよね!』
『きっと! 野球をつづけてればきっと――』
『え!? ま、また! またあえるよね!』
『きっと! 野球をつづけてればきっと――』
急激に意識が覚醒する、時計を見る。始業時刻の15分前・・・
「しまった・・・!!」
私は怒涛の勢いで支度を済ませると家を出た。
くっ・・・どうして私は鈍足に生まれてきたのだろう・・・
「しまった・・・!!」
私は怒涛の勢いで支度を済ませると家を出た。
くっ・・・どうして私は鈍足に生まれてきたのだろう・・・
「あははっ! ずいぶんと懐かしいねぇ」
みずきちゃんと聖ちゃんと帰った次の日の昼休み。俺は友人と他愛もない話で談笑していた。
話題は俺たちが小学生くらいのころに流行ったもの。
俺は小さなころに一回この地域から離れており、高校入学と同時に戻ってきた。
「そういえばさ、寺の座敷わらしが噂になったよな~」
友人の一人が新たな話題を提供する。他の友人もいたね~などと言って同意している。
違う地域にいた俺はなにげなく聞いてみた。
「いったいどんなのさ? 都市伝説みたいな?」
「いや、実際にはそうじゃないんだけどね近くの寺に座敷わらしみたいな女の子がいたんだよ」
おおげさな身振り手振りでのたまう友人にそれで? と促す。
「縁側でいつも正座してて着物を着ててお手玉で遊んでるんだけどひとつ変なところがあったんだ」
「へぇ・・・んでその変なところって?」
「何故か彼女の正座している座布団の横には古びた野球のミットが置いてあったんだ」
この友人の言葉に俺は一瞬言葉を失った。頭を何かで殴られたかのような衝撃が走る。
「お、おいどうした?」
「その寺の名前はなんだ!?」
思わず大声になってしまったことに気づき、友人に謝る。そして聞きなおした。
「あ~・・・なんだっけ? さ、さ・・・西・・・だめだ思い出せん。悪いな」
「そっか、ありがとう。いきなり大声出してごめんな」
友人の言いかけた言葉だけでどこの寺を言っているのかは一発で理解できた。
だって・・・今年の8月のある日に行ったばかりだから。
みずきちゃんと聖ちゃんと帰った次の日の昼休み。俺は友人と他愛もない話で談笑していた。
話題は俺たちが小学生くらいのころに流行ったもの。
俺は小さなころに一回この地域から離れており、高校入学と同時に戻ってきた。
「そういえばさ、寺の座敷わらしが噂になったよな~」
友人の一人が新たな話題を提供する。他の友人もいたね~などと言って同意している。
違う地域にいた俺はなにげなく聞いてみた。
「いったいどんなのさ? 都市伝説みたいな?」
「いや、実際にはそうじゃないんだけどね近くの寺に座敷わらしみたいな女の子がいたんだよ」
おおげさな身振り手振りでのたまう友人にそれで? と促す。
「縁側でいつも正座してて着物を着ててお手玉で遊んでるんだけどひとつ変なところがあったんだ」
「へぇ・・・んでその変なところって?」
「何故か彼女の正座している座布団の横には古びた野球のミットが置いてあったんだ」
この友人の言葉に俺は一瞬言葉を失った。頭を何かで殴られたかのような衝撃が走る。
「お、おいどうした?」
「その寺の名前はなんだ!?」
思わず大声になってしまったことに気づき、友人に謝る。そして聞きなおした。
「あ~・・・なんだっけ? さ、さ・・・西・・・だめだ思い出せん。悪いな」
「そっか、ありがとう。いきなり大声出してごめんな」
友人の言いかけた言葉だけでどこの寺を言っているのかは一発で理解できた。
だって・・・今年の8月のある日に行ったばかりだから。
『なぁ、どうしてひとりなんだ? おかあさんは?』
『おかあさんは・・・いないの』
『!! ご、ごめん!』
『ううん平気、いまはひとりじゃないから』
『そ、そうだよ野球をやればともだちもたくさんできるよ!』
『でも、わたしは女の子だから・・・チームに入れてもらえないよ』
『そんなことない! 野球がすきならだいじょうぶ!』
『野球が・・・すきなら?』
『うん!!』
『おかあさんは・・・いないの』
『!! ご、ごめん!』
『ううん平気、いまはひとりじゃないから』
『そ、そうだよ野球をやればともだちもたくさんできるよ!』
『でも、わたしは女の子だから・・・チームに入れてもらえないよ』
『そんなことない! 野球がすきならだいじょうぶ!』
『野球が・・・すきなら?』
『うん!!』
確かに、今日の昼休み友人から聞いた話が本当だとすれば”あの子”の正体は・・・
「優く~ん!」
思考が中断させられる。今日のみずきちゃんの機嫌は上々らしい。
「どうしたのみずきちゃん?」
この学園内でのみずきちゃんとの関係が偽りであることを知っているのはほとんどいない。
「最近人の昔話聞くのにはまっててさぁ、これがなかなか面白いのよね」
そういえば昨日も俺や聖ちゃんの野球のきっかけを聞いていたな。
「本日はどのようなご用件で?」
少しキザに白々しく笑ってみる。
「今日はじゃあ優くんの初恋の話について聞かせて」
初恋・・・か。
「初恋とか恋愛とかとは違うかもしれないけど、
昔不思議な出会いがあって今でもその人のこと、ちょっと気がかり」
「優く~ん!」
思考が中断させられる。今日のみずきちゃんの機嫌は上々らしい。
「どうしたのみずきちゃん?」
この学園内でのみずきちゃんとの関係が偽りであることを知っているのはほとんどいない。
「最近人の昔話聞くのにはまっててさぁ、これがなかなか面白いのよね」
そういえば昨日も俺や聖ちゃんの野球のきっかけを聞いていたな。
「本日はどのようなご用件で?」
少しキザに白々しく笑ってみる。
「今日はじゃあ優くんの初恋の話について聞かせて」
初恋・・・か。
「初恋とか恋愛とかとは違うかもしれないけど、
昔不思議な出会いがあって今でもその人のこと、ちょっと気がかり」
「何それ面白そう! 聞かせて!」
私は彼の切り出した話に速攻で食いついた。
「俺が小さかったころにな、偶然出会った女の子の話なんだけど・・・いいのかなこんな話で?」
彼が言う。私はいいからいいからと彼を促した。
「俺は小さなころから野球してたんだけどキャッチボールをしてた相手が暴投しちゃってさ、
ボールを取りにいったんだ、そしたらボールが迷い込んだ家の縁側に女の子がいたんだ。
それでその子がボールを拾ってくれて、俺はその日お礼だけ言って戻ったんだけど、
なんとなく気になって次の日も行ってみたんだ。そしたらその日も一人でお手玉をしてて、
キャッチボールに誘ったんだ」
・・・? あれ? この話なんか最近聞いた覚えがあるわね。
「ねぇもしかしてその子とキャッチボールするときにキャッチャーミットを渡さなかった?」
「へ? なんで分かったの? ・・・ってみずきちゃん!?」
私は彼の肯定だけ聞くと一目散に走り出した。
私は彼の切り出した話に速攻で食いついた。
「俺が小さかったころにな、偶然出会った女の子の話なんだけど・・・いいのかなこんな話で?」
彼が言う。私はいいからいいからと彼を促した。
「俺は小さなころから野球してたんだけどキャッチボールをしてた相手が暴投しちゃってさ、
ボールを取りにいったんだ、そしたらボールが迷い込んだ家の縁側に女の子がいたんだ。
それでその子がボールを拾ってくれて、俺はその日お礼だけ言って戻ったんだけど、
なんとなく気になって次の日も行ってみたんだ。そしたらその日も一人でお手玉をしてて、
キャッチボールに誘ったんだ」
・・・? あれ? この話なんか最近聞いた覚えがあるわね。
「ねぇもしかしてその子とキャッチボールするときにキャッチャーミットを渡さなかった?」
「へ? なんで分かったの? ・・・ってみずきちゃん!?」
私は彼の肯定だけ聞くと一目散に走り出した。
10年来の再会! これが聖と優くんのことならすごい素敵なエピソードじゃない!
聖からもっと詳しく話を聞かなくちゃ!
聖からもっと詳しく話を聞かなくちゃ!
このとき私の胸がチクリと少し痛んだ・・・なぜ?
『きっと! 野球をつづけていればきっと――』
『ま、まって! これあげる!』
『ありがとう、じゃあおれもそのミットあげるから、だいじにしてくれよな』
『うん! かならず! またね――』
『ま、まって! これあげる!』
『ありがとう、じゃあおれもそのミットあげるから、だいじにしてくれよな』
『うん! かならず! またね――』
今日はみずきにあの日々のことを色々と詳しく話した。
なんで私の過去をこうも知りたいのかは理解できないが・・・
なんで私の過去をこうも知りたいのかは理解できないが・・・
『明日放課後! 誰もいなくなったころを見計らって優くんの教室に行って!』
いったいどういうことなんだろう?
『優くん! 明日その渡されたものを持って放課後教室で待機! いいわね!?』
まさか本当にあの子の正体は聖ちゃんだったなんてな。
しかも彼女はまだ俺がそうだってことを知らないらしい。
正直気づけなかった自分の馬鹿さ具合に腹が立つが仕方がない、
しかも会話ばかり覚えていて場所とかを全く覚えていなかったのだ、これはひどい。
でもそうか・・・野球を、しかも捕手で、続けていてくれたんだね・・・
まさか本当にあの子の正体は聖ちゃんだったなんてな。
しかも彼女はまだ俺がそうだってことを知らないらしい。
正直気づけなかった自分の馬鹿さ具合に腹が立つが仕方がない、
しかも会話ばかり覚えていて場所とかを全く覚えていなかったのだ、これはひどい。
でもそうか・・・野球を、しかも捕手で、続けていてくれたんだね・・・
次の日、放課後
といっても時間はそれなりに経過し、黄昏の光が教室に差し込んでいる。
「いい!? 聖以外は何があっても教室にいれちゃ駄目よ!?」
といっても時間はそれなりに経過し、黄昏の光が教室に差し込んでいる。
「いい!? 聖以外は何があっても教室にいれちゃ駄目よ!?」
元生徒会ズッコケ三人組に激を飛ばすみずきの声が階段まで聞こえてきた。
いったいなんだというのだ。しかもなんで先輩の教室なんだ?
まぁいい、全ては行けば分かることだ。
「あ! 来たわね聖、さ中に入って」
「わ、分かった」
なんとなく少し緊張してしまう。
私は扉の取っ手に手をかけた――
いったいなんだというのだ。しかもなんで先輩の教室なんだ?
まぁいい、全ては行けば分かることだ。
「あ! 来たわね聖、さ中に入って」
「わ、分かった」
なんとなく少し緊張してしまう。
私は扉の取っ手に手をかけた――
「そろそろ・・・かな」
あの日、あの子からもらったもの。一つだけのお手玉を手の上でぽんぽんと遊んでみる。
うあ、どうしよう緊張してきた。ってどうして?
この事実を知る前から聖ちゃんとはそれなりに仲良く付き合ってきたつもりだ。
ではなぜ?
そうこう思考をめぐらせているうちに教室の扉が開く音がした。
あの日、あの子からもらったもの。一つだけのお手玉を手の上でぽんぽんと遊んでみる。
うあ、どうしよう緊張してきた。ってどうして?
この事実を知る前から聖ちゃんとはそれなりに仲良く付き合ってきたつもりだ。
ではなぜ?
そうこう思考をめぐらせているうちに教室の扉が開く音がした。
「せ、先輩・・・それは・・・」
私の視線が釘付けになる。だって先輩が持っていたそれは・・・
「今まで、気づけなくて本当にごめん! でも言わせて欲しい・・・久しぶり」
先輩が微笑む。私はかばんを放り出し、先輩のもとへと駆け寄った。
「そうか、先輩・・・だったんだな」
「本当に、野球を続けていてくれたんだな。ありがとう、うれしいよ」
先輩がお手玉を持った手で私の手を取ってきた。そして理解する。
私の視線が釘付けになる。だって先輩が持っていたそれは・・・
「今まで、気づけなくて本当にごめん! でも言わせて欲しい・・・久しぶり」
先輩が微笑む。私はかばんを放り出し、先輩のもとへと駆け寄った。
「そうか、先輩・・・だったんだな」
「本当に、野球を続けていてくれたんだな。ありがとう、うれしいよ」
先輩がお手玉を持った手で私の手を取ってきた。そして理解する。
そうか・・・先輩がアイツに似ていたんじゃない。
アイツが先輩に似ていたんだ・・・
アイツが先輩に似ていたんだ・・・
そして先輩を目の前にして浮かんできたこの気持ちは・・・
「先輩。私は先輩のことが好きだ、今なら分かる。10年、ずっと想い続けていたんだ」
告白というのは緊張するものなのだろうけど、すごく自然に言えたと思う。
「ありがとう。 こんな俺でよければ喜んで」
やった! うまくいったわ、聖も優くんもお互いのことを気にはなるけど前に進めないって感じだったから。
特に優くんには迷惑かけてるし、これくらいはね。でもなんでだろう、すごくうれしいはずなのに・・・
はしゃぐ気持ちにはなれない・・・いったいどうして?
特に優くんには迷惑かけてるし、これくらいはね。でもなんでだろう、すごくうれしいはずなのに・・・
はしゃぐ気持ちにはなれない・・・いったいどうして?
「!? みずきさん? どうしたんですか!?」
「・・・え?」
「なんで泣いているんですか?」
え・・・? 泣いてる・・・? 私が? どうして・・・?
あ・・・そっか、そうだったんだ・・・
あ・・・そっか、そうだったんだ・・・
「あっ! みずきさん!?」
今まで気づかなかっただけで私は・・・本当に優くんのことが好きになってたんだ。
でもいいの。どの道あの二人の絆に私が入る隙は微塵もないもの。
でも・・・でも今日だけは・・・
でもいいの。どの道あの二人の絆に私が入る隙は微塵もないもの。
でも・・・でも今日だけは・・・
その日私はそのまま家に帰り、一人部屋で泣き明かした・・・
「なぁ先輩? 先輩はみずきとの関係があるから迂闊な行動は出来ない。でもお願いがあるんだ」
私が先輩の手を強く握り返す。
「今日だけでいい、わ、私と二人で帰らないか?」
告白の言葉はすっと言えたのにこの提案をするのは恐ろしく緊張した。
「もちろん。あ、でもちょっと帰りに寄りたい場所があるんだけどいい?」
先輩が柔らかい笑顔を向けて返事をする。
私は速攻で先輩の問いに首肯した。
私が先輩の手を強く握り返す。
「今日だけでいい、わ、私と二人で帰らないか?」
告白の言葉はすっと言えたのにこの提案をするのは恐ろしく緊張した。
「もちろん。あ、でもちょっと帰りに寄りたい場所があるんだけどいい?」
先輩が柔らかい笑顔を向けて返事をする。
私は速攻で先輩の問いに首肯した。
「・・・今から部活行っても着替えて準備運動したら終わっちゃうね、今日はもう帰ろうか」
先輩が自分の荷物をかつぐと教室の扉の取っ手に手をかけた。
外にいたはずのみずきたちはいつの間にかいなくなっていた。
「了解だ。・・・優先輩」
先輩の名前を呼ぶのは初めてで声が小さくなってしまったのが自覚できた。
顔を赤くしつつ、放り出したかばんを回収して先輩のもとに向かう。
先輩はまた優しく微笑むと私の頭を撫でてくれた。
少しくすぐったいけどそれはとても心地のよい安らぐものだった。
先輩が自分の荷物をかつぐと教室の扉の取っ手に手をかけた。
外にいたはずのみずきたちはいつの間にかいなくなっていた。
「了解だ。・・・優先輩」
先輩の名前を呼ぶのは初めてで声が小さくなってしまったのが自覚できた。
顔を赤くしつつ、放り出したかばんを回収して先輩のもとに向かう。
先輩はまた優しく微笑むと私の頭を撫でてくれた。
少しくすぐったいけどそれはとても心地のよい安らぐものだった。