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『めぐりあう二人・後編』

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匿名ユーザー

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この前と違い、先輩と二人きりでの下校。
手をつなぐという行為に憧れはあったが先輩の立場上それは叶わない。
でもいい、今はこれでも私は十分満たされている。
誰かに目撃される可能性もあるが私と先輩は同じ野球部、いくらでも言い訳は可能だ。
「ついたついた、すぐ終わるから適当に中見ててくれる?」
今私たちの目の前にあるのは野球道具を専門的に扱うスポーツショップ。
かなりの品揃えを誇り、私も野球を始めたころから世話になっている店だ。
都合がいい、これなら誰かに目撃されたときの口実になる。
先輩は予約していたものを取りに来ていたらしく、引換券を財布から取り出すと店の中へと消えた。
私もそれのあとを追うように店の中へ入った。


『めぐりあう二人・後編』


適当に見ててくれとは言っても今の私の財布の中身はお世辞にも温かいとは言い難い。
この前の甘味めぐりで結構浪費してしまったからな・・・
まぁバットはまだまだ使えるしスパイクは比較的最近新調したばかりだ、手入れ用の道具も間に合っている。
しいて言うならミットが古くなってきたか、だが贅沢は言えない。
あまりお父さんに迷惑をかけるわけにはいかない。
「っと、ごめんね。終わったよ、まだ何か見たいのある?」
店の袋をひっさげて先輩が奥のレジのほうから戻ってきた。
「いや、特にはないぞ」
と私は返した。するとなぜか先輩はここで
「そう? 聖ちゃんのミット、結構もう古くなってきてたよね?」
と言ってきた。まぁ確かにそうなんだがまだ使えるし、経済的にもあまり余裕がないからな。
「そっか、じゃあ行こうか」
先輩はなぜかどこか満足げに頷くと私を外に出るよう促した。
そしてその足で私の家まで送ってくれることになった。


真実を知った今、先輩と来る自分の家はなかなかに感慨深いものがある。
「先輩、今日はありが「聖ちゃん!」
私のわがままを聞いてくれた先輩に礼を述べようとしたのにそれを遮られた。
「どうしたんだ先輩?」
私はすこしだけむっとして先輩のほうを見る。
「ちょっとさ、聖ちゃんの家の庭でキャッチボールしない?」
この問いに私は一瞬固まるも迷うことなく首を縦に振った。
「じゃあ聖ちゃんに、少し遅れたけど誕生日プレゼント!」
そう言って先輩は先ほどスポーツショップで購入したものが入った袋を差し出してきた。
私は袋を受け取り、中の箱を取り出して中身を見た。
「・・・これは・・・ミット?」
「そう、あの日俺があげたミットを改良したモデルだよ」
ふふんと得意げに笑う先輩。
「ありがとう先輩、大事に使わせてもらう」
「ん」
私が礼を言うと少しくすぐったそうに先輩は笑った。

場所は変わって私の家の庭、あの日の光景がまた繰り返されようとしている。
「新品のミットは硬いから最初は優しく投げるよ、そりゃっ!」
なんとなく聞き覚えのある台詞、確かに硬いけどしっくりくるいいミットだ、
私は先輩が投げた球を危なげなく捕球する。
・・・ここは昔とは違うな。自然と顔に笑みが浮かぶ。
「どうしたの? 一人で笑って」
「昔を思い出してた、先輩の言葉があの時と少し似てたからな」
「そっか」
私たちは会話をしながらしばらくキャッチボールを続けた。



時間も遅くなってきた、明日は日曜日で部活も休みとはいえ、これ以上は先輩にも迷惑だろう。
今日はお父さんが帰ってこないから私はゆっくりと一人で家事をこなせばいいが・・・
そう、一人で・・・・・・違う! 私はもう一人じゃない、明日の昼にはお父さんも帰ってくる。
月曜には先輩やみんなに会える。だから私は一人じゃなくて―――
「お、時間も時間だね、そろそろ帰るとするかな・・・聖ちゃん?」
気づけば心配そうに私の顔を覗き込む先輩の顔が目の前に。
「わわっ! な、なんでもないっ!」
「そう? じゃあ俺は帰るね」
先輩はかばんをかつぐと外へと歩き出した。
その瞬間私の脳裏にあの時の先輩との別れの瞬間が浮かんだ。
違う、あの時と違ってまた先輩とはすぐに再会できる、なのに・・・
先輩が帰ったら家で一人だ、慣れた。もう慣れたはずなのに今はそれがたまらなく怖い。
待って、先輩・・・! 行かないでくれ―――

私が自分の意識を自覚したとき、私は先輩の手をつかんで引き止めていた。
先輩が不思議そうな表情をしてこちらを見ている。自分の手が震えているのが分かる。
「せ、先輩・・・その・・・」
言いよどんでしまう。うまく声が出ない。でもこのまま先輩が行ってしまうのはどうしようもなく怖くて。
「あー・・・じゃあお茶いただけるかな? なんだかのど渇いちゃったよ」
先輩が私の手を取り、微笑む。それだけで強い安心感が私を満たした。
「わ、分かった。居間で待っててくれ! すぐに持ってくる」



「すまない、先輩・・・」
開口一番、お茶を俺に差し出した聖ちゃんは謝ってきた。
「どうして、謝るの?」
「帰ろうとしてたのに、無理矢理呼び止めてしまったから・・・」
あぁ、そんなこと気にすんなよ。誰だって急に寂しい気持ちになることはあるよ。
「ありがとう先輩。そうだ、よかったら夕飯を食べていかないか?・・・いや食べてってほしいんだ」
大丈夫だよ聖ちゃん、そんな不安げな顔の女の子をスルー出来るほど薄情な男じゃない。
ありがたくいただきます。
「ん・・・じゃあちょっと待ってて欲しい。すぐに準備するから」
普段あまり笑わない聖ちゃんの貴重な笑顔。少し赤くなった顔が可愛らしい。

だけど俺だって男だ、あんまり遅くなると理性が吹っ飛ぶ可能性も否定できない。
俺を信頼してくれている聖ちゃんを裏切るような真似は絶対に自重しなければならない。
やはり夕飯をいただいたら帰宅するのが無難かな。

少しして台所からトントンとリズミカルな音が聞こえてくる。
なんとなく、様子を見に行ってみた。そこには制服のうえにエプロンを羽織った聖ちゃんが。
・・・正直に言おう。萌えた。
「あ、先輩は嫌いな野菜とかあるか?」
「特にはないよ、っていうか聖ちゃんが作るものならなんでもよろこんでいただきます」
「そ、そうか」
包丁のリズムが乱れる、怪我はしないでな。


メニューはどうやら野菜炒めと焼き魚らしい。
黙々と料理をつくるエプロン姿の聖ちゃんとテーブルで料理の完成を待つブレザーを着た俺。
料理に集中している聖ちゃんはまるで新婚の若妻のようだと思う俺の妄想力はおかしいだろうか。
「なんか夫婦みたいだね」
冗談で、何気なく言ったこの一言に聖ちゃんはとんでもない言葉を返してきた。
「私はもう結婚出来る年齢だけど先輩がまだダメだからな。残念だ」
開いた口がふさがらない、とはよく言ったものだ。俺は呆けることしか出来なかった。
「ふふ、冗談だ。・・・まだ、な」
意味深な台詞を言う聖ちゃんの表情を見てめまいを覚えつつ、俺は聖ちゃんの手料理にありついた。

「「いただきます」」
二人で手を合わせ、料理を食べ始める。
男には好きな女の子の手料理ならどんなものでも美味しくいただける素敵な機能が搭載されているが
これはお世辞抜きに美味い。魚の焼き加減も絶妙だ。
というかこれを不味いなどとほざく野郎がいたら俺はそいつらを片っ端から殴り倒してやる。
「うん、美味い」
白くきらめく白米を魚と一緒に口に運ぶ。うん、いい米使ってますな。
「そ、そうか。よかったぞ」
向かいの席には嬉しそうに微笑む聖ちゃん。

もう少しで食べ終わるといった頃に聖ちゃんが不意に口を開いた。
「先輩、私の今日最後のわがままを聞いてくれないか?」
ええ喜んで聞きますとも。こんな美味しい夕飯まで振舞ってもらっちゃったわけだし。
「き、今日は、その・・・えと・・・」
顔を真っ赤にしてそこで俯く聖ちゃん。
ここで勘のいいみずきちゃんあたりは彼女の考えを言い当てるんだろうけど、
残念ながら俺に乙女心が読めるような素敵なスキルは無い。
彼女が自分の口からその”わがまま”を言うまで俺は何も出来ない。



私の今日最後のわがまま、告げるのには勇気がいるけれど、でも・・・私は・・・
先輩は複雑な立場に置かれている人だ。今日みたいなチャンスは先輩の卒業までないかもしれない。
いや先輩がプロ入りしたらますますこんな機会はないかもしれない。
これが最後のチャンスなんだ。言うしかない・・!

「今日は・・・わ、私の家に泊まっていってくれないか?」

私はもう一度顔を上げて先輩のほうを見た。
が、
先輩が目を見開いて私を見た瞬間に私はどうしようもなく反射的に顔をうつむかせてしまった。
耳の辺りがぼーっとして熱い。
「そ、それはどういう・・・」
しどろもどろな口調で先輩が言う。明らかに動揺している。
「一人でいることは慣れている。でも一人が好きだというわけではない。
来週になればまた先輩やみんなに会える。それは分かってるけど、怖いんだ・・・一人は」
子供っぽいと笑うだろうか、先輩の答えを聞くのも怖いけど、孤独の闇は果てしなく私を包んで離さない。
「聖ちゃん・・・」
「だから、今日だけでいいんだ先輩。ずっと・・・私のそばにいてくれ」

少し間が空き、先輩が席を立つ音がした。その直後頭に優しい感触。
「確かに俺はこういう色恋沙汰を自重しなきゃいけない立場だけど、それでも俺は聖ちゃんと
付き合うって決めたんだ。聖ちゃんが望めば全力を持ってそれを叶えるために努力するよ。
まぁみずきちゃんが野球できなくなるのは絶対に駄目だからあまり無茶は出来ないけどさ」
先輩の手の位置が私の頭から肩へと移る。


「顔上げて、聖ちゃん」
正直、顔は上げたくなかった。顔は真っ赤だろうし、先輩の優しさに泣きそうだった。
でも今先輩の言うことに逆らう気はちっともおきなくて、半ば無意識に私は顔を上げていた。

「んっ!?」
刹那、視界いっぱいに先輩の顔が。
そして唇から伝わる熱い感触。何も考えられなくなる。
少ししてその感触が無くなる。強い喪失感が私に押し寄せる。
「大丈夫、今度は急にいなくなったりしない。誓うよ、だから聖ちゃん。大丈夫、君は一人じゃない
それにこんなに待たせちゃったんだ、もっと甘えてくれて構わないんだけどな」
目の前で先輩が微笑む。
「あま・・・える・・・?」
私には無縁の言葉だと思っていた。
あまりわがままを言ってはお父さんに迷惑をかけるし、女だからという甘えは野球を始めたときに捨てた。
私にそれは許されないものだと思っていた。

「甘えられる場所があるってのは安らげる場所があるってことだと思うんだ、
人のぬくもりってやつかな。俺でよければいくらでも甘えていい、もう一度言うけど
聖ちゃん、君は一人じゃない、大丈夫」
先輩は私よりも私のことを理解しているのかもしれない。
「・・・うぁ・・・うぅっ・・・うああぁあぁぁぁっ」
私は泣いた、それこそ赤ん坊のように先輩の胸に顔をうずめて泣いた。
全身に伝わる先輩の体温―――ぬくもりは永久にこのままでいたいほどに心地よかった。
ありがとう先輩。私は――幸せだ。



「・・・落ち着いた?」
「ありがとう先輩、みっともないところを見せてしまったな」
いざ落ち着いてみるとやっぱり少し恥ずかしいようで聖ちゃんは少し顔を赤くしている。
「いいじゃん、みっともなくても。やっぱり人間そういうとこもなきゃ疲れちゃうよ」
これを聞いて聖ちゃんの表情が緩む。
「っと、親に泊まることを連絡しなきゃ、ちょっと失礼するよ」
そういって俺はいったん聖ちゃんを離し、ポケットから携帯を取り出して居間を出た。
体を離したときに聖ちゃんが少し残念そうな表情をしたのを見てもう一度抱きしめそうだった。
危ない危ない・・・

「あっもしもし母さん? 今日は友達の家に泊まってくね」
半分嘘で半分本当の言葉を携帯越しの母に述べる。
『・・・分かったわ。あまりご迷惑にならないようにね』
「うん。ありがと、じゃあ何かあったら連絡するから」
母が深く追求してこなかったために誤魔化しは成功したようにみえた、がしかし・・・
『あ、それと・・・避けるものはちゃんと避けなさいよ。あんた無事に高校卒業したいでしょ?』
「いっ!? それは一体どういう―――っはぁ~もう切れてるし」
やはり母には一生敵いそうにないと痛感させられた瞬間だった。
しっかし避けるってお母様。いくらなんでも踏み込みすぎじゃあ・・・

「何が踏み込みすぎなんだ?」
「のわぁっ!? ひ、聖ちゃんか・・・なんでもない」
不意の声に間抜けな声が出てしまった。
「まぁいい、お風呂を沸かすから少し待っていてくれ」
聖ちゃんは俺を見て少し複雑な表情を見せたがすぐに風呂場のほうへとむかったようだ。



「ふはぁ~っ 疲れが癒されるわぁ~」
間抜けなうえにえらくじじくさい俺の声が浴室に響き渡る。
『先輩、湯加減はどうだ?』
浴室の扉の向こうから聖ちゃんの声が若干くぐもって聞こえる。
「ちょうどいいよ~」
『そうか、タオルと着替えを置いとくからな』
「了解~ありがとう」

泊まることになるとは思わなかったので着替えの類は練習後のための下着しか持っていなかった俺だが
聖ちゃんのお父さんの服を貸してくれるという。やっぱり浴衣か何かですかね。
それにしても・・・改めて見るとやっぱり聖ちゃんは可愛い。
俺にしか見せてくれない素の表情、素の感情、その全てがいとおしい。
俺も男だし年頃の男女が一つ屋根の下でするあれに対して興味はある。
というか状況によっては理性崩壊の恐れもある。
だけど・・・聖ちゃんはどう思っているのだろうか、もしかしたらこういう方面には疎いかもしれない。

「うっ・・・」
考え事をしていたらのぼせてきたようだ。体もあったまったしそろそろ出るとしよう。



「ふぅ・・・」
お風呂というものを生み出した人を心の底から尊敬する。
一日の疲れが溶けるような感覚はいつ味わってもいいものだ。
それにしても・・・今日は先輩の残り湯か・・・・・・さっきまで先輩がここに・・・
って何を考えているんだ私!

先輩は私に甘えてもいいと言ってくれた。先ほど先輩に抱きしめられていたときも、
永久にこの状態が続けばいいのにと思うくらいだったが現実、時の流れは無情だ。
ならこの限られた時間の間目一杯先輩の存在を感じていたい。・・・甘えたい。
10年来の縁で再会したからといって付き合いだして初日に家に招待、あげくの果てには宿泊など
一般的にはおかしいと思われるかもしれない。でもそんなことはどうでもいいことだ。
事実を知る前から先輩の人格は信頼できるものだと思っていたしな。
そして私にうずまく孤独の闇を温かい光で照らしてくれたのだ。
先輩のぬくもりを感じていられるなら他のことなんて今はどうでもいい。
先輩、先輩、優・・・先輩。

「っ・・・」
風呂場で先輩のことを考えるのはやめよう。あやうく意識が飛ぶところだった。



俺も聖ちゃんも風呂からあがり、場所は聖ちゃんの自室。
女の子らしい部屋とはいいがたい片付いたシンプルな部屋だがそこが聖ちゃんらしい。
家に来たときから気になっていたけど家に漂う線香(かな?)のにおいが、
リラックスするような、逆に気が引き締まるような奇妙な気持ちにさせる。
「なぁ先輩?」
俺の隣にぴったりくっついた聖ちゃんが口を開く。
彼女はさっきのが最後のわがままだと言っていたけどこの際今日はなんでもどんとこいって感じだ。
「なに?」
そういってなにげなく聖ちゃんのほうを向いたその瞬間。

柔らかいものが俺の唇に触れた。不意のことで反応が遅れたがすぐに理解する。
聖ちゃんの、唇・・・さっきはほとんど反射的というか無意識的にしたのでよくわからなかったが、
ただ唇と唇を合わせているだけなのに体の芯が熱くなってくる。
結構長い間そのままで時間が経過し、
それでも物足りないようで聖ちゃんは名残惜しそうに俺の唇から自分の唇を離した。

「さっき、先輩がしてくれたけど急だったからよく分からなかったんだ、
だからもう一度してみたかったんだ・・・だめだったか?」
当然身長や座高は俺のほうが聖ちゃんよりも高い、
故に聖ちゃんは俺のほうを見て話す際に自然と上を向くことになるのだ。
何が言いたいかってつまりそれで生じる反則的に可愛い上目遣いを0距離で浴びせられるわけで。
射殺されちゃいそうなくらいだ。不安そうに俺を見る聖ちゃんに対して
俺は全力で首を横に振るかわりに聖ちゃんの唇にもう一度口付けした。

そして唇を離したときに聖ちゃんが見せた微笑みは一生忘れられないだろうと思う。

そんな感じで俺と聖ちゃんは二人きりでずっと肩を寄り添って談笑していたわけだけど・・・
大分夜も更けてきた。いくら明日が休みだといっても健康によくない生活はスポーツマンとしてよろしくない。
そんなときである。
「先輩、前言を撤回する真似はしたくないんだが本当にこれで最後だ、私のわがままを聞いてくれ」
よっしゃどんとこい。
ここで聖ちゃん、大きく深呼吸。
「私と、一緒に・・・・・・・・・寝て、くれ」
俺が漫画のキャラみたいにぶっ! と噴出してしまったのも仕方がないことだと思う。
「そ、それ意味が分かってて言ってる?」
思わずこんな言葉を口にしてしまう。
「分かってる。わ、私だってそれくらいは知っている! でも・・・」
顔を真っ赤にして聖ちゃんはここで一回言葉を切った。
「今日みたいな日はもう先輩の卒業までこないかもしれない・・・
だから、今日。わ、私のはじめてをもらってほしい」

ここまで言わせてやらなかったら男じゃない。でも最後に一度だけ聞く。
「本当に、俺が最初でいいの?」
「馬鹿を言うな、先輩じゃなければ・・・誰だと言うのだ」

俺はその瞬間聖ちゃんの唇を再び奪った。


「んっ! ふむぅっ・・・!」
正真正銘最後のわがままは私にとってとても告げるのが恥ずかしいものだったけれど、
そんなものなど吹き飛んでしまうほどの幸福感が私という人間を満たしていく。
やがて先輩の舌が私の口の中へと入ってくる。
聞いたことはあったけど実際にやられるともう何をしていいのか分からない。
頭がぼーっとして全身が溶けてしまいそうなくらい甘美な感覚。
先輩の舌が私の口腔を蹂躙していく。とにかく私も必死で先輩の舌を舌で捕らえ、絡める。
甘い・・・でもきんつばなどとはベクトルの違う甘さだ。幸せ、幸せ。

空いていた両の手で先輩を強く抱きしめる。
先輩は、私のものだ。誰であろうと渡さない。絶対にだ。
呼吸のために一度唇を離し、舌を先輩が抜く。私はそのときほとんど無意識的に、つぶやいた。
「先輩・・・私の、優先輩」
先輩は一瞬驚いたような表情になり、直後少し顔を赤くして微笑みもう一度私の口腔へと舌を侵入させてきた。
私の五感が、全神経が先輩の存在を感じることにのみ向けられ、研ぎ澄まされる。

―先輩の顔
―先輩の息遣い
―先輩のにおい
―先輩の唾液の甘さ
―先輩の・・・ぬくもり

その全てが、私を甘美な幸福と快楽の海へといざなう。
私の理性を狂わせていく。
全身の力が抜け切っているのが自覚できた。
視界もぼんやりしてるけど目の前の先輩の姿だけは鮮明に映し出されている。
そのまま先輩にそばの布団へと押し倒される。
「じゃあ・・・服、脱がすよ?」
先輩の言葉に黙って首肯する。
羞恥心が欠片も残っていないわけではないけど、やっぱり先輩の言うことに抵抗する気にはなれなくて。
服を脱がされ、私は生まれたときと同じ姿になった。だけど私はひとつ気がかりなことがあった。
私と同じことを懸念する女性は世に少なからずいると信じたいところだ。


「すまない・・・先輩」
私が謝ると先輩は呆けた表情でこちらを見つめてきた。何も言葉は発してはいないけど、
目で何が? と言っているのが分かる。
「その・・・私、胸とか大きくないから・・・」
これを聞いて先輩はぷっと噴出して笑い出した。何が可笑しいんだ、結構気にしてるのに・・・
私の非難の視線を察してか先輩はごめんごめんと謝りつつ言葉を紡いだ。
「かわいいなぁ聖ちゃんは。そんなのどうでもいいだよ
って言ったら失礼かもしれないけど、聖ちゃんだから俺はいいんだ」
先輩が私の頭を撫でる。これもまた私に先ほどの接吻とは違った幸福感、安心感をもたらす。

「ふあっ!?」
突然電流が走ったような痺れが全身にめぐる。先輩が私の首筋に舌を這わせている。
くすぐったいだけじゃない、内側から何かが湧き上がってくるような不思議な感覚に私は体を震わせる。
「ふっ・・! んぅっ!」
意識とは無関係に反射的に声が出そうになる。それを手で必死に抑える。
やがて舌の位置が舌へと移動していき、私の悩みである胸の付近にまでやってきた。
「!!!」
先ほどよりも強い痺れが走る。先輩が・・・私の胸を・・・舐めて・・・
それを考えただけでどうしようもない気恥ずかしさとなんともいえない喜びがこみ上げてくる。
胸の先がじんじんして奇妙な感覚だが決して不快ではない。

「少し舐めただけなのにこんなになってる。聖ちゃんえっちだなぁ」
「うあぁっ!!?」
不意に胸の先を指でつままれる。先輩の言葉とその刺激で頭が痺れる。
体が熱い・・・全て溶けてしまいそうなくらい。
それでも私は必死に先輩に言葉を返す。
「っ! ちがっ・・・先輩だかっら・・・~~~っ!!」
途切れ途切れになってしまったがいいたいことは伝わったと思う。
そう・・・先輩だから、私は・・・



「ふぅ・・・はぁ・・・ぁ・・・」
胸への刺激が途絶え、なんとか私は息を整えようとする。
「キスと首と胸だけでもうすごいことになってるね・・・まだまだこれからだよ?」
先輩がそういいつつ私のおなかのあたりをゆるゆると撫でる。
「やっ! そ、そこはっ・・だめだ・・・っ!」
優しい刺激が逆に今の私には強烈だ。体をびくびくさせて少しのけぞってしまう。
おなかの周辺が私の弱点だ、前にみずきに冗談でくすぐられたときにばれてしまった。
それ以降隙あらば狙ってくるみずきを何度もかわしてきた私だが今回はかわしようがない。
「へぇ、このへん弱いんだ~かわいいなぁ」

「・・・っ!! ふぅっ! ひゃっ・・・!」
くすぐりよりもむず痒くてそれでいて甘美な感覚に私はもだえることしか出来ない。
しかも先輩はここを弱点だと知ってなおゆるやかに撫でてくる。
ただでさえ神経が過敏になっている今の状況ではとても耐え切れそうにない。
しかも先輩はいたずらを思いついた幼い子供のような笑顔で私のおなかの周辺を撫で回してくる。
当分止めてくれそうな気配は感じられない。

「じゃあこんなのはどう?」
先輩はそう言うと再び私の胸に手を寄せ、私のおなかに顔を近づけて・・・
「!! んんぅっ!!」
先輩が私の胸とおなかを同時に攻めてきた。
今まで一番強烈な痺れが全身をほとばしった。体がやや大きく波打ち、一気に脱力する。
一瞬、頭が真っ白になった。なんだこの感覚は・・・
「っ・・・はぁ・・・はぁ・・・」



初めて味わう感覚に私は戸惑いを隠せないでいたがここであることを思い出す。
―こういった互いに同意の上での男女の交わりは一方だけが満たされてはならない―
当然といえば当然だ、やりかたも知らないわけじゃない。
私はいまだに上手く力の入らない体を無理やり起こすと先輩のズボンに手をかけた。
「ななっ!? ひ、聖ちゃん?」
先輩が驚愕の表情でこちらを見る。
「先輩ばかりずるいぞ、私にもやらせろ」
ぽかんとしている先輩をみて内心ほくそえみながら私はズボンを降ろした。

先輩のそれは大きく天へとそそり立っていた、はじめてまともに直視するそれに私は戸惑ったが
なんとなく、どうすればいいのか分かった。恐る恐るそれに舌を這わせる。
「うっ!」
先輩の体が震える。私も先輩のものの臭いで頭がクラクラ(決して悪い意味ではない)していた。
先ほどまであれほど大きく、頼もしく見えた先輩が情けなく見えてかわいいと思う。

しばらく続けていると先輩の息遣いが少しずつ荒くなってくる。
「ひ、聖ちゃん・・・手を使って、しごいて」
先輩に言われるまま手をそっと添え、ゆっくりとしごく。
先輩のものの先から何かぬるぬるしたものが出ているが別に不快ではない。
念のために断っておくが先輩のだからだぞ?
徐々にしごくスピードを上げていく。手を伝わって先輩の脈動が感じ取れる。
「くっ! 出るよっ!!・・・・・っ!!」
「!!?」

先輩の男の部分から白濁の液体が放たれ、私の顔や体にかかる。
これが・・・その、せ、精子というやつなんだな・・・
「すごい・・・におい、だな」
「ご、ごめっ! 大丈夫?!」
先輩がおろおろした様子で私を見てくる。・・・かわいいな。
「平気だ、先輩のだから・・・な」
私は顔にかかったそれを掬い取って舐めてみた。う・・・予想はしてたが美味しくはないな。
「・・・変な味だ」
「そりゃ・・・甘くてもそれはそれでいやな気がするけどな」
私の声にこもった感情を理解したのか先輩は苦笑を浮かべて言う。
先輩はやっぱり申し訳なさそうにティッシュを取り出すと私に差し出してくる。
「先輩が拭いてくれ、出したものは自分で処理すべきだぞ」
「う・・・了解です」

先輩がせっせと私の体を拭いていく。おおむね拭き終わり、先輩がティッシュを丸めてゴミ箱へ捨てた。
そして先輩がこちらに再び向き直った瞬間に私は先輩の首に手を回し、深い接吻をした。
今日がはじめてのことだが回数を重ねれば手馴れてくるものだ。だいぶぎこちなさは消えていた。
・・・先輩。まだ足りないのか? そこが元気になってるぞ。

「だって聖ちゃんがエロすぎて可愛すぎるんだから仕方が無い」
もはや開き直ったような笑顔で先輩は言う。
「・・・えっち」


「もう限界だ、聖ちゃん・・・いれるよ?」
私の肩をつかみ、先輩が言う。優しさと、猛々しさを秘めたような声質で。
「いいぞ・・・優先輩」
いつの間にか濡れていた私の秘所に先輩のそれがあてがわれる。
「んっ・・・ぐぅっ・・・!」
先輩が一気に私を貫く。痛みはあるが許容範囲内だ。
私の処女膜は野球をしてる最中に破れてしまったからそこまで強い痛みはない。
「・・・っはぁ・・・聖ちゃん、大丈夫?」
先輩が大きく息をつくと私に問う。
「野球をしてるときにはじめての証は破れてしまったんだけどな、まぎれもなく私の最初の相手は先輩だ」
「・・・」
先輩は黙って私の言葉に耳を傾けている。
「うれしい、私は幸せだ、だから先輩・・・もう動いて大丈夫だぞ」
そっと先輩の体に手を回し、目を閉じる。先輩が私を抱く強さを強めたのが感じられた。
「いくよ」
それだけ言って先輩が動き始める。
「んっ! あっ!」
痛みはだんだんと減衰していき、代わりに押し寄せる快楽。
変わらずに私を満たすのは人生一番の幸福感、そしてぬくもり。
再び目を開く。そして反射的に目の前の先輩と接吻をする。

「好きだ、大好きだ! 優先輩っ!」
息も絶え絶えに私は叫ぶ。少々声が大きかった気もしなくもないが今はそんな無粋な思考は捨てることにする。
「俺も大好きだ・・・聖っ」
「!」
初めて先輩に呼び捨てにされた。よく分からない甘い痺れが私を貫く。
「もう、一回・・・!」
「え?」
「もう一回、私の、名前を、呼び捨てで・・・んぅっ!」
先輩に突かれながらなので途切れ途切れだが私は言った。
「聖、愛してるよ聖」
「!!」

視界が真っ白になり、頭の中がスパークしたかのように機能が停止する。
それが今日二度目の絶頂だと知ったのは次の日だった。


「ん・・・」
目が覚める。いつもどおり私の部屋の天井を一番に視認する。
ふと起き上がり、周りを見る。私の部屋だ、布団はきれいに整えられ、私は衣服をちゃんとまとっていた。
急に不安になる。あの幸せな一夜は夢だったのだろうか?
だめだ、涙が出そうだ・・・
そんな想いを先輩は打ち砕いてくれた。湯飲みをふたつ持った先輩が私の部屋へと入ってきた。
「あ、おはよう聖ちゃん。勝手に台所借りちゃってごめんね」
優しい笑顔で先輩が湯飲みを私に差し出してくる。
私はそれを手に取り、先輩を隣に座るように促した。
「いや、気にしないでいい。ありがとう先輩」
二人で熱い緑茶を口にする。ほとんど同時にほっと息をつく。その様に先輩がふっと笑う。
「あ、そうだ。昨日あのあと聖ちゃんすぐ寝ちゃったから言わなきゃいけないことがあるんだけど・・・」
「? なんだ?」
「えと、その・・・あれだ」
いつも言いたいことははっきり言う先輩にしては珍しい歯切れの悪い口調だ。
「最後、ちゃんと・・・外に出したからっ・・・安心して」

数秒の間が空く、私はその言葉の意味を理解すると同時に顔が火を噴いたかのように赤くなっていくのが分かった。
先輩も顔が真っ赤だ。やっぱり情事から明けると気恥ずかしいものがある。
直後、唇に温かい感触がする。互いに照れを隠すように、唇を重ねるだけの接吻。

「さてと、これからはこんな機会、ほとんどない・・・というか自重しないと本当にまずいしな。
だけど、俺が好きなのは聖だけだから」
先輩が言う。
「私もだ」
簡潔な返事だけれど、想いの強さは負けない。

「あ、よければ朝ごはんは俺が作るよ、昨日のお礼ってことで・・・だめかな?」
お礼をし足りないのはこちらだというのに本当に優しい人だ。名前負けしない私のただ一人の人。
「じゃあ・・・お言葉に甘えることにする」
私の返事を聞くと先輩はまた笑顔を見せ、私の部屋から出て行った。

私に野球を教えてくれた彼と10年以上のときを経て再会し、私の光となってくれた。
もう大丈夫だ、私は幸せ。ありがとう。


おしまい

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