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ベッドインヘヴン??2

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匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集

 

 突然で悪いが、六道聖は男性経験がまったく無い。その上天然である。
 いや、『何いきなりデフォな事言ってんだYO!』とかの突っ込みは勘弁願いたい。
何せこのお話の聖たん、みずきに吹き込まれた間違った性知識のせいで、時々凄いこと
をしでかすことがあるので。

 

 そのうちのひとつが、今現在の状況……ベッドの中で男と全力抱擁、という普通の女
の子ならまず抵抗するシュチュエーションに、黙ってしたがっていることなのだ。
 聖はここを訪問するに当たり、自分の誠意をどう相手に伝えるべきか、チームメイト
に相談しまくったのだが……その時みずきから、かなりいらん事を吹き込まれていたり
するのである。

 耳に息吹きかけーの抱きつきーの、少し暑いからって胸元はだけーの……もし実際
に実行していたら、襲われても文句言えない行動が盛りだくさん。言っておくが、みず
きに悪気は無く、聖の質問の仕方が悪かっただけだ。
 『みずきならどう詫びる?』と聞いただけなのだから、小悪魔な彼女としてはこう答
えるしかない。まさか、聖がそれを馬鹿正直に実行するとは思ってもいないだろう。

 何より性質が悪いのは、聖自身がその行動の危険性をまったく自覚していない事である。
本当に、波和風呂男に対する詫びのつもりで今この状況に自ら留まっているのだ。
 無論のこと、いくら天然な聖でも、男と半裸で抱き合う事がどういう事かは知っている。
いわゆる、恋人同士のスキンシップというやつだ。
 知っているが、全く抵抗しようとはしなかった。

 先述した天然のせいで、あまり危機感を覚えていないのもある。加えて、自分はあく
まで、『許してもらう』立場であって、風呂男と対等の位置にはいない。これで許される
のなら……という意識が、脱出への意欲を押し殺していた。

 健気である。健気過ぎて萌え~である。
 さて。そんな健気な聖タソを抱きしめている風呂男はといえば。

(昨日、近所のバッティングセンター行ったんです。略してBC。
そしたらなんか人がめちゃくちゃいっぱいで入れないんです。
で、よく見たらなんか垂れ幕下がってて、150円引き、とか書いてあるんです。
もうね、アホかと。馬鹿かと。
お前らな、150円引き如きで普段来てないBCに来てんじゃねーよ、ボケが。
150円だよ、150円。
なんか親子連れとかもいるし。一家4人でBCか。おめでてーな。
よーしパパHR打っちゃうぞー、とか言ってるの。もう見てらんない。
お前らな、150円やるからその席空けろと。
HR打つ時ってのはな、もっと殺伐としてるべきなんだよ。
ピッチャーやピッチングマシンをいつ乱闘が始まってもおかしくないくらいに睨み付けて、
刺すか刺されるか、そんな雰囲気がいいんじゃねーか。女子供は、すっこんでろ。
で、やっと入れたかと思ったら、隣の奴が、狙い打ちするぞ~、とか言ってるんです。
そこでまたぶち切れですよ。
あのな、狙い撃ちがどんなに大変かしらねーだろ。ボケが。
得意げな顔して何が、狙い打ち、だ。
お前は本当に狙い撃ちがしたいのかと問いたい。問い詰めたい。小1時間問い詰めたい。
お前、狙い打ちって言いたいだけちゃうんかと。
BC通の俺から言わせてもらえば今、BC通の間での最新流行はやっぱり、
連続ツーベース、これだね。
ボール球だろうがなんだろうが内野の頭を越してツーベース。これが通の打ち方。
パワーが無くても打てて、足がなくても進塁できる。これ。
で、その上1000球連続。これ最強。
しかしこれをやると次から店員にマークされるという危険も伴う、諸刃の剣。
素人にはお薦め出来ない。
まあお前らド素人は、ヒットでも打ってなさいってこった)

 なにやら、何処かで聞いたようなテンプレを乱舞させていた。
 冷静なように見えるが、立派に混乱しているのである。
 波和風呂男というこの男、童貞ではないとはいえ、こんな苦境に立たされるのは初め
てだった。というか、何度もこんな追い詰まったシチュエーションに立たされるのは
嫌だ。

 しかも……聖の息が、なんか荒い。
 一度でも布団を頭からかぶってみればわかるだろうが、布団の中というのは必然的に
温度が高まるためやたらと息苦しい。特に今の聖は、抱きしめられて顔を胸板に押し付
けられているのだ。
 息を荒くしなければ窒息してしまう……それはわかっている。わかっているのだが。
このシチュでそんな呼吸されると、色々とクるものがある。

「今日のおみやは洗濯洗剤でヤンス~。ギコにはマグロ缶買って来たでヤンスよ~」
「っつーか、また太りそうな量ッスね(汗)」

 背後では相変わらず矢部と猛田が静かに騒いでいる(言葉が変だが、これが一番妥
当な表現だ)。
 前門の美少女後門の友人。
 八方塞がりもいいところだった。

 このまま二人が帰るのを待つのも愚策である。この二人は泊り込む気満々であるし、
その間ずっとベッドから出ないというのも不自然だ。何とか理由をつけて追い出さね
ばなるまい。
 何か不自然に思われないような撃退案は無いものか……

 親友と後輩をゴキブリかなんかのように扱う風呂男であった……そんな彼に、天罰が
下った。

「って、あれ? ギコはどこでヤンスか?」
「そういやいねえッスね」

 きょろきょろと辺りを見回す二人。波和家のデブ猫は泊り込む奴らの間ではアイドル
的存在であり、泊まる際の手土産もギコに対するものが圧倒的に多い。初対面の聖にな
ついたことからもわかるように、ギコは極端に人懐っこく、お客が来れば飛んでいくく
らいなのだが……

「おーい。ギコ~」

 特に猛田に激しくなついており、こんな風に呼ぶと脊椎反射で、

 ごにゃぁっ

 という声が……

『……………………………………………………………………………………』

 一同の間に乾いた沈黙が幕を下す。
 只今山彦のごとく返ってきたギコの泣き声、発生源は……布団の中。

 風呂男が泡食って視線を布団の中に向けると、自分と聖の間に挟まれて苦しそうな
ギコ猫の姿があった。

 ごにゃっ

 追い討ちにもう一鳴き。
 どうやら、布団に入るときに聖が引きずり込んだらしいが……いくら混乱してたか
らって、気付けよ風呂男。
 その合図に再起動を果たした風呂男は、力の限り聖をにらみつけた。

(うおぉぉぉぉぉいっ!!!!
 お前さん何やってんのぉぉぉぉぉぉっ!!!!??)
(……かわいかったからつい)
(つい、じゃない!!)
(大きいから抱き枕にぴったり)
(うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉいっ!!!!!!!)

 ごにゃっ

 いきなり大ピンチ。
 小声で言い争っている間にも、ギコは苦しそうにうめき声を上げ続けている。聖が
一向に手放そうとしないので、仕方なく無理やり引き剥がし、ギコ猫に自由を与えた。
 拘束から解き放たれたギコ猫は風呂男の顔の上をぼてぼて(でかいからとてとてじ
ゃきかない)と歩いていき、猛田の元へと直行する。

 このまま無言なのも怪しまれるので、目を細めて肩越しに振り返り、しっかりフォロー。
『ベッドにもぐりこんでたのに気付かなかった』で押し通す。

「……どぉーりで寝にくいと思ったら……」
「波和君、ギコを抱き枕にしちゃ駄目でヤンス(汗)」
「気付きましょうよ(汗)」

 ごまかしは成功したらしく、二人は頬に汗しつつも不信感は抱かなかったらしい。
 先行きは長いというのに、しょっぱなからこんな事では先が思いやられる。一応こ
の後のために布石も打っておく。

 ごにゃごにゃ

「ギコは猛田君によくなついてるでヤンスねえ。オイラは全然でヤンス」
「そりゃ、矢部さんが悪いッス」
「何ででヤンスか」
「俺、子供のころから野良猫とかよく世話してたもんで、猫の扱い方には自信ある
んスよ」
「へー、コツがあるんでヤンスか?」
「ええ。まず、猫の目を見ない事と……」

 なにやら猫談義で盛り上がる二人をよそに、風呂男は嘆息して聖を抱き寄せた。
 下心は一切無し、少しでもふくらみを小さくしようとする努力なのだが……その努
力が、思わぬ形で風呂男を苦しめることになった。

 デブ猫一匹分の体積は思ったより大きく、めい一杯抱き寄せたと思っていた聖の体
が、思った以上に引き寄せられて……

 ふにっ

 『何か』が体に触れた。

(……ふに?)
(!!!!!!!!!(////////////////////////////////////))

 不意打ち気味に訪れた感触に、風呂男は首をかしげ、聖は耳まで真っ赤に燃える
太陽になった。なんだろう? とばかりに再び視線を腹筋に落とせば……
 スポーツブラに包まれた、ささやかながら自己主張をする胸が……胸板に押し付け
られていた。

 ふにふに。
 聖が離れようと体をよじるたびにそれは押し付けられ、なんともいえない感触をも
たらす。

(……んっ)

 しかも、変なあえぎ声付き。


 固まる風呂男。よくよく考えれば、ギコというバリケードを取っ払ったらより接触
部位が増えるのは当たり前であり、相手が半裸である以上この状況は予想してしかる
べき状況。

「ふぁ、ふぁー……ぶるぎこ、ふぁー……(゚∀゚)」
「な、波和さんが壊れた!?(´д`;)」
「……また夢でも見てるんでヤンスかねえ(´д`;)」

 あ、ファビョった。

 

(……どうしよう)

 

 六道聖は、息苦しさと恥ずかしさで体中の血液を顔面に集約し、思案していた。余剰
加熱された脳髄の中では、波和に対する罪悪感と、古風な家柄独特の貞操観念がせめぎ
あい、こう着状態に陥っている。
 ……今から出て行って、素直に話せばいいのでは? もつれ合った拍子に服が破れた
とレイプなどではないことを強調すれば、何とかなるのではないか?
 よくよく考えたら、なんでわざわざ隠れる必要があるのだろう?

 そんな考えが、貞操観念と絡み合って、現状の維持を否定した……今なら拘束が緩ん
でいるからなんとかなるだろう。彼を裏切るようで悪いが、レイプではない点だけは全
力で強調するから、問題ないだろう。
 そう考え、脱出しようとした矢先、
 会話が、聞こえてきた。

「う、うなされてるみたいでヤンスね」
「……よっぽどあの時の事がくやしかったんスかねぇ」
「当たり前でヤンス。あんな無様な三振じゃあ……」

 あの時の事……
 彼らが言っている単語と、風呂男がファビョっている事とをあわせると、間違いなく
自分達との試合のことだとわかり、動き出そうとした筋肉が全て硬直した。

「無様って……おいおい矢部さん。もうちょっと言葉ってもんがあるだろ?
 あの試合以降は全打席全安打じゃねえか」
「本人が言ってたことでヤンスよ。
 ……猛田は、まだ波和君の事をよくわかってないでヤンスねえ」

 呆れたとばかりに嘆息する矢部。入部当初から常にともに行動してきた風呂男の親友
は、猛田の目を覗き込んで、

「波和君の名前の由来は知らないでヤンスね?」
「え? ゲームソフトから来たんじゃあ……」
「……寝てなかったらぶっ飛ばされるでヤンスよ、その発言……
 まあ、フロ、の部分はニュアンス同じでヤンスけど」
「フロ……? まさか、一日中風呂に入ってろ、とか?? フロ好きだし」
「…………波和君が起きてたら殺されるでヤンスよ、その発言……(汗)
 ゲームのパワプロのプロは、プロフェッショナルのプロでヤンス。
 波和君の名前は、『自分の好きなことのプロフェッショナルになるように』って意味
でつけられたんでヤンスよ」
「プロ……」
「そう、プロでヤンス。波和君もこの名前を誇りにしてて、その名の通りの姿を体現
しようとしてるんでヤンス。
 それ故に、セルフイメージという奴がとてつもなく高いんでヤンス」

 大半が友沢からの受け売りの癖に、実にえらそうにのたまう矢部であった。猛田は
矢部の知識がどこから来たか大体の見当がついたが、聖は驚嘆しながらその言葉に
聞き入っていた。

「自分自身に課す目標って奴でヤンス。これが高いと、ちょっとやそっとの成功では
喜べない。
 友沢君なら常にプロを相手にしているつもりで投げ、プロをも三振に取れる投球を
目標に、波和君なら全打席全打球を狙った場所に打ち込むことを目標に……っていう
風に、普通の人から見たらとんでもなくハードルが高いんでヤンスよ」
「……それくらいなら、俺だってしてるぜ。全打席ホームランを……」
「甘いでヤンス。
 猛田はHRが打てなくてもヒットが打てれば満足して、無意識のうちにヒットが打
てれば十分だと思っているでヤンス。けど、あの二人は自分が設定した目標以外は
『敗北』なんでヤンスよ。
 波和君にとって、たとえヒットを打ってもそれが思った方向に飛ばなかったり、
二塁打のつもりが守備の連携で安打にされたりしたら、即『敗北』……ある意味、
ピッチャーじゃなくて自分と戦っているんでヤンスね。
 ちなみに波和君自身のセルフジャッジで今までの打率をはじき出すと……打率が
一割にも届かないでヤンス」

 正確に言うなら、その打率をはじき出したのは矢部である。風呂男は、セルフイメ
ージ専用のスコアブックを所有しており、帝王実業に入学してから今日に至るまで、
全ての打席のセルフジャッジスコアが記されていた。
 その内容たるや……公式記録とは正反対の惨憺たる有様。誰が見ても文句なしの綺
麗なクリーンヒットが三振扱いでマークされていたのを見た時、矢部は冗談抜きでめ
まいを覚えた。
 息を呑む聖。確かに、狙い打ちは彼女の得意技であるが、矢部がいうほどの精度と
厳しさは彼女が考えたこともないものである。

「そんな彼が、あんな方法で三振……うなされて当たり前でヤンス」
「はぁ……俺はああいう駆け引きもありだと思いますけどねえ」
「その程度で集中力を欠くなんて、って事でヤンスか?」
「そうそう。けどなんか、波和さんってばやたらと聖タチバナのバッテリー毛嫌い
してるじゃないッスか。それもやっぱり、そのセルフイメージとかが……」
「それは別でヤンス」

 語る内容は九割がた他人から聞いた話しだが、こればかりはきっぱりと自分の考え
をあらわした。伊達に波和の親友はやっていない。

「ありゃ単に猛田とは考え方が違うだけでヤンス」
「卑怯な手段って事ッスか」
「決め付けるのもどうかと思うんでヤンスけどねえ……まあ、半端に相手に実力があ
るだけに、裏切られたって言う気持ちが強いんだと思うでヤンス」

(え?)
(ナデナデシテー……ってうおおおおおおおいっ!!!!?)

 思わぬ場所からの思わぬ褒め言葉に、聖は驚き、風呂男は硬直する。

「そう言えば……試合の前、波和さんってばタチバナのバッテリーべた褒めしてたッスね」
「『ちょっとやそっとじゃあの二段シンカーは打てないし、リードも捕球もうまい』
ってアレでヤンスね。
 まあ、そこまで評価してたのに、あんな手段に出られちゃあ……特に聖ちゃんな
んか、波和君の好みにど真ん中ストライクでヤンスし」
「スレンダーで線が細くて……あー、言われてみれば、普段からあの人が言ってるこ
とにあってるような。可愛さあまって憎さ百倍ッスか」

 かわいいから許してやれって言ってるんでヤンスけどねえ、と矢部がぼやき、それ
関係ないでしょ、確かに可愛いけど、と猛田が突っ込む。
 そこからさらにささやきの内容からシモネタにシフトしていく流れを、聖と風呂男
は聞いていない。それどころじゃ、ない。
 室内には確かに矢部と猛田がいるが、布団の中では二人きり。そんな中であんな話
題を聞かされては、ただでさえ居辛い空間が、針の筵の如き事に。

(ごめん、なさい)

 思わず聖の口から漏れた謝罪の言葉に、風呂男は苦いものを口にしたような顔で、

(謝るくらいなら最初からやるな……)

 今更のように、風呂男は自分が抱いている女を嫌悪していたことを思い出すも、
矢部に言われた台詞のせいで、胸中の嫌悪感は不完全燃焼気味だ。

 矢部が言うとおり、風呂男の女の好みは年上より年下である。それも、出来る限り
スレンダーで、細い子が好みだ。正直、年上の魅力にハァハァしている連中の気が知
れない。そのことに関しては矢部と一晩中激論を交わしたが決着はつかなかった。ち
なみに、ラストブローはクロス・カウンターである。

 言われてみれば、今自分の布団で羞恥に震えるこの少女はもろに自分の好みだった。
 顔を赤くして、潤んだ目で自分を見上げてくる姿に、なんとも保護欲がそそられる
ではないか……そう考えると、今まで嫌悪感で押さえ込んできた性欲が、むくむくと
鎌首をもたげてくるのがわかった。

 聖は聖で、自分達がそこまで評価されていたことに驚くとともに、その期待を裏切
ってしまったという意識が罪悪感を肥大させ、思考内のこう着状態はあっさり崩れた。
 が、崩れた結果導き出された聖なりの対応策は、まったくと良いほどに的外れで逆
効果であった。
 本人は、布団のふくらみを小さくするためにとったつもりなのだ。細い腕を風呂男
の背中に回し、

 きゅっ

 と抱きしめた……というより、限界まで体を寄せた。

(もるすぁっ!?)

 抱擁などという可愛いものではなく、力の限り自分と風呂男の間の空間をなくそう
ともがいただけなのだが結果は……

 むにっ

 ささやかとはいえしっかり質感のある胸を、さらに押し付ける事に。
 さらに追加でやばい事が。
 大きい胸は感度が悪く、小さい胸は感度がいい……これは、よく耳にする俗説である。
統計を取ろうにも感度というのは人それぞれであるし、そんなばかげた統計に協力し
てくれる女性が居るとも思えない。確かめることなど不可能な俗説なのだが……
 少なくとも、小さい胸に関する俗説に関して、聖は完全に適合していたのだ。
 そう、敏感なのである。

(……んっ……はぁっ……)

 

 デ ィ ス イ ズ ア ・ 濡 れ 場 ・ ボ イ ス 。

 

 

「ファ――――――― (゚∀゚) ―――――――ッ!!!!
 ブルギコファ――――――― (゚∀゚) ―――――――ッ!!!!!」
「うわぁっ!? また壊れたぁっ!!(゚д゚;)」
「しかもなんか微妙に混ざってるでヤンス!!(゚д゚;)」

 

 至近距離で破壊力に満ちた攻撃を食らった波和に、奇声発生。
 これには室内の全員(布団内、動物ふくめ)がびっくりである。聖は思わず硬直し
(押し付けたまま)、ギコは尻尾を膨らませ硬直、二人組みに至っては目を見開いて風
呂男を凝視し、猛獣を前にした草食獣のように身構えて動かない。
 壊れた風呂男がファビョるのは今更の事だが、こんな風に寝言で奇声を発するのは
初めてのことだ。

(ハッ!?)

 自分の発した叫びのやばさに風呂男が気付いたのは、叫んだ直後だった。後の
祭りとはまさにこのことである。

「こ、このファビョり様は尋常じゃないでヤンス! はやく起こすでヤンス!」
「お、おう!」

(やべぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!)

 親友の名前を叫んでいるわけではない。
 あくまで風呂男を心配してこちらを起こそうとする二人に、風呂男は顔面から血液が
完全撤退した。ふくらみがごまかせるといっても、それはある程度距離があるからで、
揺らし興す距離まで接近されたら確実に気付かれてしまうだろう。
 どうにかしなければ――

「今……」

 まるで、さっきの奇声で目が覚めたといわんばかりの不機嫌な声が、風呂男の口から
絞り出される。
 抱きついて騒ぎのど真ん中に居るはずの聖は、凄い演技派だなぁと他人事のように
思った。現に、矢部と猛田はその不機嫌すぎる声にぴたりと動きを止め、次の言葉を
待っていた。

「……聖タチバナとの試合の夢を見た」
「え?」
「だが、展開が違った」

 風呂男があそこまでファビョる夢といえばそれしかなかろう。しかし、あれほどの
奇声をあげるほどではない……あっさり納得できない二人に、風呂男は痛みに耐える
ような極低音の声色でつぶやいた。

「奴は……俺の股間のバットを見た後……こう言ったんだ。

 

 

 『 や ら な い か 』 と。
 しかも、相手のユニフォームがいつの間にか ス ク ー ル 水 着 に変わってた」

 

 

 なんともいえない沈黙があたりを包み込む。えらいマニアックな話だ。

「…………思わず相手押し倒した所で目が覚めたよ」
「……溜まってるんでヤンスか?」
「……正直、夢精しなかっただけ儲け物」
「……えっと、確か、波和さんスク水関係のエロビデオ何本かもってたんじゃあ……」
「……ビデオがあぼーんしてるからな。全然抜いてない。金欠でエロ本も買えねえ」

 乾いた、乾ききった言葉の羅列が帝王実業野球部員の間で交わされる。

「しかも毎日この調子だからろくに寝てねえんだよ……頼む、寝させてくれ……」
「……ご愁傷様でヤンス(汗)」
「……な、なんか大変な時に上がり込んじゃったみたいッスね(汗)」
「ぶっちゃけ……差し入れは洗剤とか缶詰よりも、エロ本のほうがありがたかった……」
『…………(汗)』

 風呂男をいたわりつつも、いそいそと元の位置に戻っていく二人。その表情には、
なんともいえない感情がたゆたっていた。
 何か、男としてのいろんなものを失った気がしないでもないが、誤魔化せたのでよし
としよう。そうじゃないとやってられない。
 何とか、後門の虎の牙からは抜け出せたわけだが。

(…………んんっ)

 前門の狼、六道聖との問題はまったく解決していない。相変わらずぎゅっと風呂男
の体を抱きしめて、胸を押し付けている。こちらを傷つける意思がないだけに、狼の
牙などより余程性質が悪い。

(……あー、六道? そんなに押し付けなくて良いから)
(……けど、出来るだけ小さくしないと気付かれるぞ)
(いや、なんていうか、その……)

 あくまでも気付かれまいとする事を念頭に置く聖に、ぐうの音も出ない。その点に
関しては風呂男も同感だし、逆らうつもりはないのだが……
 男性諸君は言わずもがなの事であろうが、ホモサピエンスのオスは総じて逃れられ
ない生理的な反応を起こす期間がある。一般に、『俺のジョニー』『股間の機関銃』と
かよばれるアレである。
 さっきまでは、聖に対する嫌悪感やその他もろもろで押さえ込んできたが……
 相手が好みのタイプだと思い出してしまい、しかもここまで献身的に協力され、
このシュチュエーション……
 起たなければ、男じゃない。
 幸い、聖もそこに触れるのは恥ずかしいのか、意図的に隙間を空けてくれているが……

(こ、このままでは隙間が埋まる!)

 話はあさっての方向に吹っ飛ぶが、風呂男のナニは結構でかい。矢部が合宿所のフ
ロでそれを目撃した直後、『素でAV男優並でヤンス。アナコンダでヤンス』とのたま
う程だ。話を聞いた短小包茎H先輩が激しく落ち込んだのは、又別の話。
 まあ、アナコンダは行き過ぎにしても、下手な外人よりも大きいのは確かだ。以前
の恋人も初見の際には悲鳴を上げていたし、そんなものを処女(そう風呂男は思った
し、事実そうである)の聖に触れさせるのは、ためらわれた。

 触れるだけならまだ良い。もし、万が一触れた一物に対して聖がトンチンカンな対
応をしようものなら……先述したように二週間も溜まってる風呂男が、これ以上のス
キンシップに耐えれるとは思えなかった。
 今でさえ結構一杯一杯なのだから、そんな事になったら、最悪、暴発なんていう恥
ずかしい事態を引き起こしかねない。

 かなり追い詰められている風呂男に対し、聖のほうも結構いろんな意味で追い詰め
られていた。興奮しているだけではない切実な理由が。

(……臭い)

 風呂男という人間の体臭が特別キツイ、という意味ではない。いや、ある意味では
そうなのだが、今日の風呂男の体臭が格別というだけだ。
 夕方食べたラーメンにたっぷりおろしにんにくを入れており、しかも帰ってきてか
らすぐにこの状態になったため、風呂に入っていない。帝王実業野球部の部室にはシ
ャワーも完備されているが、風呂男は名前通りシャワー嫌いでお風呂派だ。
 遠征試合で他に選択肢がないならともかく、それ以外は多少気持ちが悪くとも、
は家に帰ってひとっ風呂浴びるのが習慣であった。
 死ぬほど練習した汗を流していない、ニンニク食った男子学生……こんな奴の体臭
がきつくないはずがない。そんな奴がいたとしたら、そいつは新陳代謝がどうかしている。
 状況はせまっくるしい布団の中、匂いが篭る篭る。緊張による汗が未だ増産中なのも
加わって、かなりきつい臭気が聖の鼻腔を攻撃していた。

(……あ……なんか、気が遠く……)

 聖タソ、何気に命の危機!?

 

 どの位そうしていたのだろうか?
 下手に動けば二人にばれるという強迫観念から、風呂男は振り向いて時間を確かめ
ることすら出来ずにいた。

 

「……あれ、もうこんな時間でヤンスか?」

 眠りたがりの風呂男を刺激しないよう、静かに週間パワプロを読んでいた矢部が、
時間の経過に気がつき本を閉じた。

「もう風呂に入って寝る時間でヤンスね……」
「ええ!? もうかよ!」
「波和君と違って、オイラ達はあした朝練があるでヤンスよ?
 これ以上はヤヴァイでやんす」
「けど、風呂どうするんスか……(汗)」
「確かに、あまり騒がしくすると風呂男君に迷惑でヤンスね」

 それを聞いた風呂男は思った……チャンスだと。
 ある意味、試合で狙い通りの打球を放ったときよりもうれしいタイミングであった。
風呂男は聖の肩をぽんと叩き、

(今すぐに、俺の足元に丸まれ。その後あいつらを連れ出すから、その隙に部屋から出ろ。
 服は、たんすの二段目にあるジャージ使って良いから)

 風呂男がいったジャージは帝王実業野球部において一軍昇格の際に渡されるもの
であり、なくせば二軍落ちするような重要なものなのだが四の五の言っていられない。
風呂男自身信じられないことだが、惜しくない気分だった。
 聖からの返事はなかったが、もぞもぞと動き出したところを見ると聞こえてはいる
ようだ。
 足を動かし、ふくらみが不自然にならないように工夫しつつ、彼女の体が、羽毛布
団の下半分に納まったのを確認し、風呂男は口を開いた。

「……別に良いぞ……」

 開くと同時に布団を跳ね上げた。
 そして、羽毛布団を『二つ折り』にしたのである。
 恐る恐る二つ折りにされた布団を見て、風呂男内心ガッツポーズ。二つ折りにされた
羽毛布団のふくらみは、不自然さを一切感じさせずにそこにあった。ラージサイズでな
ければ、こうはいかないだろう。
 聖のように細身な女性なら、二枚折にした羽毛布団の下でなら十分体積を誤魔化せる
と思ったのである。問題は、二つ折りにするまでの間に移動した聖のふくらみに、二人
が気付いたかどうかだが……

「……俺も寝れねえし、ついでだから銭湯行くか」
「銭湯、でヤンスか?」
「よく考えたら風呂に入らず寝ちまったからな……」
「いや、そうじゃなくて近所に銭湯なんて……」
「あるぜ、結構大きいのが。
 連れてってやるよ、気晴らしもかねて」

 どうやら、気付かれなかったらしい。
 すばやく布団から足を抜き出し、ベッドから出る風呂男。永遠に思えた拘束からの
開放は、全身の筋肉を拘束していた緊張を拭い去り、精神的な鬱屈もなくしているは
ずであった。

(まってな。もう少しで自由だからな)

 なのに……この喪失感は、いったい何なのだろう?
 なんだかんだで、自分は聖との抱擁を楽しんでいたらしい。

「やったでヤンスー! 波和君のおごりでヤンスー!」
「喜ぶのそっちッスか!」
「そして、銭湯といえば覗きでヤンスー!」

 矢部たちの会話と自分の意外な心情と。
 その双方がおかしくてたまらなくなった風呂男は、今度は演技ではなく本当の苦笑
を浮かべた。

 

「えぐっ……えぐっ……」

 

(やたら、長い一日だったな)

 矢部の子供っぽい泣き声をバックミュージックに帰宅した風呂男は、改めて今日
一日のことを思い返していた。ちなみに矢部君、銭湯出てからずっと泣きっぱなしである。

「いつまで泣いてんだよ」
「……だって……女湯楽しみにしてたのに……入ってたのがお年寄りや子供ばっかり……
あんまりでヤンス~……」
「それが普通だ」
「ってか、いつの間に覗いたんスか(汗)」

 突っ込みながら、玄関を閉めて、今度こそ施錠をしっかり確認する。
チェーンロックもかけてほっと一息ついた。

「ほれ、お前らも明日も早いんだろ。寝ろ寝ろ」
「……うぅ~……みずきちゃんや聖ちゃんとは言わないまでも、そこそこの美少女の
裸を拝む予定が~……」
「んな都合のいい話がある筈ないでしょうが」

 二人分の寝袋を箪笥からだし、二人に投げ渡す。疲れを取ることを考えたら布団を
渡したほうがいいのだろうが、あいにくこの家に布団を置くような余剰スペースはな
い。大会前は四人同時に泊まることが頻繁ゆえに、ある程度寝苦しくとも、寝袋を使う
しか選択肢がなかった。
 床がこの手のマンションには珍しい畳張りなのが唯一の救いだろうか。二人は寝袋
に自分の名前が縫い付けられているのを確認し、いそいそと体を入れ始めた。

「寝袋じゃなくてベッドがいいでヤンス……」
「ほほーう。じゃあ去年の夏みたく、男三人で狭いベッドに押し込まれたいのか?」
「激しく遠慮するでヤンス! オイラ寝袋が言いでヤンス!」
「うっわー、それは嫌ッスね……ってか、何でそんな事に?」
「実に簡単な話だ。当時は寝袋がなかった」
「それがきっかけで寝袋買ったんスか」
「ちょっと違うが、そんなとこだ」

 厳密に言えば、友沢の弟や妹が一緒に泊まることになったとき、兄弟達にベッドを使わ
せるため床で雑魚寝するハメになったのがきっかけなのだが、話し出すと長くなるの
で割愛した。
 寝袋を装着した二人に、体を冷やさないためのタオルケットをかけて、自分も布団に
入る。
 その際、風呂男は何のためらいもなくシャツとズボンを脱いでパンツ一丁になった。
そして、バスタオルを腰に巻く。
 彼は寝る時常にこのスタイルである。やたら分厚い羽毛布団からもわかるように、
彼は野手の癖に肩肘を以上に気遣い、夏場はクーラーを絶対につけないほどだ。
 そのため、服などを着て寝ると、汗が服に張り付いて気持ちが悪く、熟睡できない。
その点、パンツ一丁なら余程酷い汗をかかない限りおきないし、かいてもバスタオル
で拭けばいい。いくらなんでも、冬場はパジャマを着るが、それ以外の季節はみんな
こんな感じだ。

「布団から出てきた時、服着てたからびっくりしたでヤンス」
「俺もだ。寝れなくて当たり前だったな」
「……あ、明日の朝は俺ら勝手に出て行きますんで」
「じゃ、鍵はいつもんとこだから。郵便受けに入れといてくれ。
 んじゃま、おやすみ~」
「お休みでヤンス」

 電気を消して、先程まで緊張の坩堝だった羽毛布団の中に体を差し入れる。
 そう、つい三十分前まで、無粋な侵入者が居た場所に……

(ん?)

 聖の事を思い出した風呂男は、戸惑った。
 自分自身の心が、六道聖という少女に抱いた感情に関してだ。
 つい昨日まで憎しみや侮蔑で曇っていた六道聖像が、嫌に鮮明に写っている。そこ
にいたのは、自分と同じくらい野球が好きでたまらない可憐な少女の姿。

(馬鹿な)

 ろくに会話も交わしていないのに、なぜそんな事がわかるのか……答えが出たのは、
30分ほど考え込んでから。矢部と猛田のいびきのコントラストが、中々な騒音災害
になり始めた矢先であった。

(あ)

 好きでもない男にベッドに引きずり込まれ、女としてこの上なく恥ずかしい体勢を
強いられ。相手は自分の胸倉をつかんで勝手に危機的な状況を招いた自業自得な男。
 それでもなお、『ごめんなさい』と謝れるメンタリティ。底にあるのは罪悪感なのだ
ろうが、早川選手にあこがれたとか、有名になりたかったとか浅はかな理由で野球を
しているような女なら、それほどの罪悪感は感じないだろう。

 自分に黙って抱きしめられたこと、それこそが、聖の野球に対する愛情を物語って
いて。ある意味、彼女が抱きしめていたのは風呂男ではなく野球だったのだろう。
 随分と風呂男自身を馬鹿にした表現だが、風呂男は不思議と不快感を感じず、
ぴったりの表現だと苦笑した。
 むしろ……

(まさか、惚れたのか? 俺が)

 六道聖に。
 だとしたらこれほど滑稽な話もあるまい。たったアレだけの時間で憎んでいた
相手に惚れたとは、なんとも節操のない話だ。
 はとの鳴き声のような笑いを喉奥でかみ殺し、瞠目する。
 それもいいかなと思えてしまう自分が、意外すぎて驚きだった。

 心地よい眠りのために体を大の字に伸ばし―――

 むにっ

 やわらかい何かが、足に当たった。

(……ギコ、か?)

 思わぬ感触に一瞬、胸のうちにある感情の泉に驚愕が浮き上がってきた。が、
すぐにそれは泉の底に沈んでいった。風呂男の愛猫はこれがまたしょっちゅう寝て
いる飼い主の布団にもぐりこみ、夜中に苦しくなったと思ったらデブ猫が顔面
に乗っていた、などと言う事は日常茶飯事だ。猛田が居るのなら、そっちのほうに行
くはずなのだが。
 現に、蹴っ飛ばされた『それ』はもぞもぞと動いて、風呂男の体を這い上がって……

「ん????」

 思わず声に出してしまうほどの、違和感があった。
 その這い上がってくる『なにか』は、明らかにギコ以上の質量を持っており……
 なんというか、動くたびにやわらかいいい匂いが布団の中から漂ってきた。

 ぴょこっ

「ん~~……」

 そんな効果音でそんなうめき声を上げて、
 布団と自分の体の間に顔を出したのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 六道聖だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


(なんでぢゃーーーーーーーっ!!!!(゚д゚))

 

 

 

 

 

 

 ここに居るはずのない、居てはならない少女の出現に、心の中で夕日に叫ぶ風呂男。

(んー……)
(おい! なんで帰らなかったんだ!)

 聖は猫のように風呂男の体に正面からのっかかり、細目を開けて風呂男を見る。
 そして、小声で発せられた質問に対して、

(…………)

 しばらく沈黙した後、ポツリとつぶやかれた答えは……凄いものだった。

(……寝てた)

 正確には、臭さのあまり失神していたのだが。

 

 風呂男の人生において類を見ない苦しい戦いが……一晩続く性欲と理性の激闘の
火蓋が、切って落とされる。

 

「モルスァ―――――(゚∀゚)―( ゚∀)―(  ゚)―(  )―(  )―(゚  )―(∀゚ )―(゚∀゚) ―――――――ッ!!!!」
「ぬおわぁっ! なんだなんだぁっ!!?(゚д゚;)」
「よ、余程酷い夢を見てるんでヤンスねぇ~……怖いでヤンス(波和君が)(TдT)」

 ファンファーレは熟睡していた二人をたたき起こすほどの、近所迷惑顧みないファ
ビョった奇声であった。

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