勇気VS意地(後編) ◆wKs3a28q6Q
☆ ★ ☆ ★ ☆
「ハッ! しまった、待ち合わせ場所を決めてなかったから、このままじゃヘルガさんと会えないぜ!」
そんなヘルガの想いとは裏腹に、越後は馬鹿なだけだった。
越後に死ぬ気など更々ない。本心から何とかなると思っている。
越後竜太郎は馬鹿野郎なのだ。こんな状況でも絶望しない程度に馬鹿野郎なのだ。
「自分には野球しかなかったのに、その野球すらも人並みでしかない」と思い悩んだ時に比べれば、こんな状況絶望の内に入らないのだ。
「逃~がさないぞお~」
走ってピエロと距離を取りながら、程よい大きさの石を探す。
馬鹿馬鹿言われる越後にでさえ、状況を打破するための作戦があるのだ。そして、全ては予定通りに進んでいる。
石も大分集まり、ピエロも自分を追って狙い通りの場所まで来た。
「やれやれだぜ……選手生命に関わる怪我にはならないだろうし、怪我が治ったら一緒に野球をやろうぜ」
バットを構え、空中に放り投げた石をかっ飛ばす。
ピエロは、足を止めて石を見つめる。
ピエロにも意地があるのだ。ピエロとしての意地が、ジャグリング中の物を弾かれても今度は落とさずに受け止めてやると、そう言うのだ。
しかし、越後のスイングにより吹っ飛ばされた石は、ピエロにも宙を舞う支給品にも当たることなく後方へと消えていった。
「なあ~んだ、たいしたことないなあ~」
にやりとピエロが笑みを浮かべる。勝ち誇りながら嬉しそうにジャグリングのスピードを速め、言った。
「素直に負けを認めるんだね~。球の扱いじゃボ~クに絶対勝てないってさあ~」
ピエロの戯言を聞きながら、越後は石を打ち続ける。その石は、ひとつもピエロに当たらない。
何度も何度も石を打つが、いずれもピエロの頭上遥か上を飛んで行った。
「……やれやれだぜ。そう言ったら、命を助けてもらえるのか?」
越後は石を握りしめる。これが最後の石だ。
一応側面だけ見たら球形なのでコンパスも出してあるが、ボールや石のように上手く打てるかは分からない。
「だが断るぜ」
それでも、越後の目は死んでいない。越後には狙いがある。
ピエロがアクションものの小説でも読んでいたなら気付かれていたかもしれないが、越後は石を外してなんかいなかったのだ。
越後の狙いはピエロの背後にある一本の木。
先の爆撃でへし折れ、背後の木にもたれかかっている木をピエロへと倒す作戦なのだ。
とはいえ、普通にこちらから衝撃を与えていたのでは意味がない。
そんなことをすれば向こう側に倒れることぐらい、越後にだって分かるのだ。
衝撃は木の向こう側から与えないといけない。そんなこと、普通なら出来ない。
だが、普通なら出来ないからこそ意表を突く事になるのだ! そして越後は、あちら側から衝撃を与える術を持っている!
「零式……ドロップヒットオッ!」
全力を込めて放たれた必殺の一撃。
ピエロを、そして目標の木をも飛び越して、ボールは地面へと落下する。
だが、ここからが零式ドロップヒットの本領発揮である。
落下した石は、高速でこちら側に戻ってくる。そして、何度も何度も同じ個所に衝撃を受けた木は、ついに倒れた!
「う~わあ~!?」
……向こう側に。
そんなヘルガの想いとは裏腹に、越後は馬鹿なだけだった。
越後に死ぬ気など更々ない。本心から何とかなると思っている。
越後竜太郎は馬鹿野郎なのだ。こんな状況でも絶望しない程度に馬鹿野郎なのだ。
「自分には野球しかなかったのに、その野球すらも人並みでしかない」と思い悩んだ時に比べれば、こんな状況絶望の内に入らないのだ。
「逃~がさないぞお~」
走ってピエロと距離を取りながら、程よい大きさの石を探す。
馬鹿馬鹿言われる越後にでさえ、状況を打破するための作戦があるのだ。そして、全ては予定通りに進んでいる。
石も大分集まり、ピエロも自分を追って狙い通りの場所まで来た。
「やれやれだぜ……選手生命に関わる怪我にはならないだろうし、怪我が治ったら一緒に野球をやろうぜ」
バットを構え、空中に放り投げた石をかっ飛ばす。
ピエロは、足を止めて石を見つめる。
ピエロにも意地があるのだ。ピエロとしての意地が、ジャグリング中の物を弾かれても今度は落とさずに受け止めてやると、そう言うのだ。
しかし、越後のスイングにより吹っ飛ばされた石は、ピエロにも宙を舞う支給品にも当たることなく後方へと消えていった。
「なあ~んだ、たいしたことないなあ~」
にやりとピエロが笑みを浮かべる。勝ち誇りながら嬉しそうにジャグリングのスピードを速め、言った。
「素直に負けを認めるんだね~。球の扱いじゃボ~クに絶対勝てないってさあ~」
ピエロの戯言を聞きながら、越後は石を打ち続ける。その石は、ひとつもピエロに当たらない。
何度も何度も石を打つが、いずれもピエロの頭上遥か上を飛んで行った。
「……やれやれだぜ。そう言ったら、命を助けてもらえるのか?」
越後は石を握りしめる。これが最後の石だ。
一応側面だけ見たら球形なのでコンパスも出してあるが、ボールや石のように上手く打てるかは分からない。
「だが断るぜ」
それでも、越後の目は死んでいない。越後には狙いがある。
ピエロがアクションものの小説でも読んでいたなら気付かれていたかもしれないが、越後は石を外してなんかいなかったのだ。
越後の狙いはピエロの背後にある一本の木。
先の爆撃でへし折れ、背後の木にもたれかかっている木をピエロへと倒す作戦なのだ。
とはいえ、普通にこちらから衝撃を与えていたのでは意味がない。
そんなことをすれば向こう側に倒れることぐらい、越後にだって分かるのだ。
衝撃は木の向こう側から与えないといけない。そんなこと、普通なら出来ない。
だが、普通なら出来ないからこそ意表を突く事になるのだ! そして越後は、あちら側から衝撃を与える術を持っている!
「零式……ドロップヒットオッ!」
全力を込めて放たれた必殺の一撃。
ピエロを、そして目標の木をも飛び越して、ボールは地面へと落下する。
だが、ここからが零式ドロップヒットの本領発揮である。
落下した石は、高速でこちら側に戻ってくる。そして、何度も何度も同じ個所に衝撃を受けた木は、ついに倒れた!
「う~わあ~!?」
……向こう側に。
「あ、あれ?」
当然である。向こう側へと倒れかけた木の下方にばかり向こう側から衝撃を加えれば、支えにしている木から滑り落ちるように木は倒れる。
つまり、こちらにバタンと倒れることなどあり得ないのだ。
やりたいのなら、もっと上部をあちら側から叩かねばならなかったのだ。
結局、ずり落ちた木がピエロの背中を押して転ばせることには成功したが、倒すには至らなかった。
この隙に取り押さえればよかったものの、作戦の思わぬ失敗に体が固まってしまった。
要するに、越後はやはり馬鹿だったということだ。
「ゆ~るさないぞ~。球の扱いはボ~クが1番うまいんだ~」
そして、これは越後には分からぬ事なのだが、ピエロの中に越後に対する殺意はなかった。
最初に爆弾を投げつけたのも、敵対組織『ホワイトベア』のリーダー・ヘルガの姿があったからであり、越後を殺す理由はない。
ピエロが執拗に越後に迫ったのは、ピエロとしてどちらが上かを決めたかったから。勿論、自分が勝つつもりで。
だがしかし、越後の技術はピエロの予想の斜め上を行っていた。
遠くに飛ばしたはずの石で木を倒す。その十二分にイリュージョンな光景に、ピエロは越後を『倒すべき一流ピエロ』と判断したのだ。
だからピエロはジャグリングを止め、越後に爆弾を仕掛けようと爆弾を手に駆け寄っていく。
それは殺意故ではない。これは単なる嫉妬であり、そしてこれがピエロにとっての“いつもの行動”なのだ。
「く……そおッ!」
最後の抵抗と言わんばかりに越後がコンパスをバットで打つ。
死が傍に迫っている。その実感はあったが、越後は諦めなどしなかった。
ピエロは自分に言ったのだ。『球の扱いは自分の方が上だ』と。
確かにそうかもしれない。あれだけ球の扱いが上手ければいい守備をしてくれるかもしれない。
だけど、自分にも意地があるのだ。親切高校一の守備職人としての意地が。
意地があるから、越後は引かない。己の意地を勇気に変え、渾身の一振りでコンパスを打った。
ピエロの持つ爆弾に怯えて打ち損じることなど、ない!
「さ~せないよ~」
ピエロが地面を蹴り上げる。飛びあがるというよりも、宙を舞うと呼ぶにふさわしい跳躍。
ムーンサルト殺法と呼んでも過言ではないその動作により、コンパスの一撃を自分には当たらないようにする。
越後の抵抗を読んでいたピエロの考えた作戦だ。単純だが効果は大きい。アクロバットに避けられるなど、普通の人間は考えないのだから。
そして、ピエロにはそのアクロバティックな動きが出来る。意表を突くことができる。
ピエロには身軽さも必要なのだ。ジャグリングさえやっていなければ、飛来物をよけるくらい比較的造作もない。
ましてや、コンパスは自分に向かって飛んでくると分かっていて、バットを振りかぶるという形で「今から飛ばすよー」との合図が送られてくるのだ。
それで黙って食らってやるほど、ピエロはお人好しではない。
「だ、駄目だぁーっ!! ピエロが止まらねーっ!!」
越後がギュッと目を瞑る。
勝利を確信し、ピエロは爆弾を越後に叩きつけ――
「まあ、止める気なんてなかったんだけどな」
ようとして、自身の頬にめり込んだコンパスにより墜落した。
当然である。向こう側へと倒れかけた木の下方にばかり向こう側から衝撃を加えれば、支えにしている木から滑り落ちるように木は倒れる。
つまり、こちらにバタンと倒れることなどあり得ないのだ。
やりたいのなら、もっと上部をあちら側から叩かねばならなかったのだ。
結局、ずり落ちた木がピエロの背中を押して転ばせることには成功したが、倒すには至らなかった。
この隙に取り押さえればよかったものの、作戦の思わぬ失敗に体が固まってしまった。
要するに、越後はやはり馬鹿だったということだ。
「ゆ~るさないぞ~。球の扱いはボ~クが1番うまいんだ~」
そして、これは越後には分からぬ事なのだが、ピエロの中に越後に対する殺意はなかった。
最初に爆弾を投げつけたのも、敵対組織『ホワイトベア』のリーダー・ヘルガの姿があったからであり、越後を殺す理由はない。
ピエロが執拗に越後に迫ったのは、ピエロとしてどちらが上かを決めたかったから。勿論、自分が勝つつもりで。
だがしかし、越後の技術はピエロの予想の斜め上を行っていた。
遠くに飛ばしたはずの石で木を倒す。その十二分にイリュージョンな光景に、ピエロは越後を『倒すべき一流ピエロ』と判断したのだ。
だからピエロはジャグリングを止め、越後に爆弾を仕掛けようと爆弾を手に駆け寄っていく。
それは殺意故ではない。これは単なる嫉妬であり、そしてこれがピエロにとっての“いつもの行動”なのだ。
「く……そおッ!」
最後の抵抗と言わんばかりに越後がコンパスをバットで打つ。
死が傍に迫っている。その実感はあったが、越後は諦めなどしなかった。
ピエロは自分に言ったのだ。『球の扱いは自分の方が上だ』と。
確かにそうかもしれない。あれだけ球の扱いが上手ければいい守備をしてくれるかもしれない。
だけど、自分にも意地があるのだ。親切高校一の守備職人としての意地が。
意地があるから、越後は引かない。己の意地を勇気に変え、渾身の一振りでコンパスを打った。
ピエロの持つ爆弾に怯えて打ち損じることなど、ない!
「さ~せないよ~」
ピエロが地面を蹴り上げる。飛びあがるというよりも、宙を舞うと呼ぶにふさわしい跳躍。
ムーンサルト殺法と呼んでも過言ではないその動作により、コンパスの一撃を自分には当たらないようにする。
越後の抵抗を読んでいたピエロの考えた作戦だ。単純だが効果は大きい。アクロバットに避けられるなど、普通の人間は考えないのだから。
そして、ピエロにはそのアクロバティックな動きが出来る。意表を突くことができる。
ピエロには身軽さも必要なのだ。ジャグリングさえやっていなければ、飛来物をよけるくらい比較的造作もない。
ましてや、コンパスは自分に向かって飛んでくると分かっていて、バットを振りかぶるという形で「今から飛ばすよー」との合図が送られてくるのだ。
それで黙って食らってやるほど、ピエロはお人好しではない。
「だ、駄目だぁーっ!! ピエロが止まらねーっ!!」
越後がギュッと目を瞑る。
勝利を確信し、ピエロは爆弾を越後に叩きつけ――
「まあ、止める気なんてなかったんだけどな」
ようとして、自身の頬にめり込んだコンパスにより墜落した。
「FOOLドライブ。やれやれだぜ」
接近戦になると分かり、最後の一撃として放っておいたFOOLドライブ。
以前のFOOLドライブは腕を駆け上り自身の顔面に直撃していたのだが、改良に改良を重ねて顔面をも駆け上り射出できるようになったのだ!
呻き声をあげるピエロに圧し掛かり、自身のデイパックを引っ繰り返す。
確かガムテープが入っていたから、一旦それで拘束してから説得を――
「う~…………ハッ!」
早くも意識を取り戻したらしく、越後の下で暴れ出すピエロ。
これではガムテープでの拘束も一苦労だなと考えて、拘束は止めさっさと説得に移ることにした。
「やれやれだぜ。殺したりなんかしないから安心しろよ。それより、一緒に野球をやらないか? 戦いなんてやめてさ」
笑顔で越後はピエロを誘う。
自分を襲ってきた相手だが、そんなことは気にしなかった。
酷い目に遭うのは一年の頃に慣れてしまった。今更些細な事でチームメイトを拒絶することはない。
……正確にはまだチームメイトにはなっていないのだが、越後の中ではもはやすっかりチームメイトだった。
「だ~まされないぞ~。そうやってピエロの座を奪うつもりだろ~」
キッと睨みを利かせるピエロ。
ピエロの中で、今や越後はライバルとも呼べる超一流のピエロにまでなっている。
「やれやれだぜ。俺はピエロじゃないって何度言えば……」
「じゃ~あこのナイフは何だよ~。お前、ナイフ投げだろ~」
越後の支給品は、よくとぶバットにガムテープ、そしてナイフが3本だった。
実際に越後の肩とコントロールがあればナイフ投げくらいお手の物と思われる。
「やれやれだぜ。それは配られただけだ。危ないからこっち向けないでくれ」
ナイフをぶんぶん上下に振り、駄々っ子のようにするピエロ。
ピエロに越後を刺す気はなく、故にナイフと越後の間には一定以上の距離がある。
だから越後も慌てて逃げることもなく、比較的冷静に話をすることが出来ているのだ。
接近戦になると分かり、最後の一撃として放っておいたFOOLドライブ。
以前のFOOLドライブは腕を駆け上り自身の顔面に直撃していたのだが、改良に改良を重ねて顔面をも駆け上り射出できるようになったのだ!
呻き声をあげるピエロに圧し掛かり、自身のデイパックを引っ繰り返す。
確かガムテープが入っていたから、一旦それで拘束してから説得を――
「う~…………ハッ!」
早くも意識を取り戻したらしく、越後の下で暴れ出すピエロ。
これではガムテープでの拘束も一苦労だなと考えて、拘束は止めさっさと説得に移ることにした。
「やれやれだぜ。殺したりなんかしないから安心しろよ。それより、一緒に野球をやらないか? 戦いなんてやめてさ」
笑顔で越後はピエロを誘う。
自分を襲ってきた相手だが、そんなことは気にしなかった。
酷い目に遭うのは一年の頃に慣れてしまった。今更些細な事でチームメイトを拒絶することはない。
……正確にはまだチームメイトにはなっていないのだが、越後の中ではもはやすっかりチームメイトだった。
「だ~まされないぞ~。そうやってピエロの座を奪うつもりだろ~」
キッと睨みを利かせるピエロ。
ピエロの中で、今や越後はライバルとも呼べる超一流のピエロにまでなっている。
「やれやれだぜ。俺はピエロじゃないって何度言えば……」
「じゃ~あこのナイフは何だよ~。お前、ナイフ投げだろ~」
越後の支給品は、よくとぶバットにガムテープ、そしてナイフが3本だった。
実際に越後の肩とコントロールがあればナイフ投げくらいお手の物と思われる。
「やれやれだぜ。それは配られただけだ。危ないからこっち向けないでくれ」
ナイフをぶんぶん上下に振り、駄々っ子のようにするピエロ。
ピエロに越後を刺す気はなく、故にナイフと越後の間には一定以上の距離がある。
だから越後も慌てて逃げることもなく、比較的冷静に話をすることが出来ているのだ。
ズガン!
「…………え?」
そして、それが仇となった。完全に油断していたのだ。
越後には、いや、ピエロにさえも、何が起きたのか分からなかった。
突然ナイフの刃が飛び出し、越後の喉元に突き刺さった。射出のためのレバーをピエロが押してしまったことなど、二人とも気付かない。
ゆっくりと倒れる越後。自分で攻撃したという自覚のないピエロは頭に疑問符を浮かべ、そして――
「ボ~ク、ピエロだよ~」
何を気にするでもなく、その場を立ち去ることにした。
越後の荷物と自分の荷物を拾い上げ、ジャグリングをしながらその場を去る。
越後の共通支給品とガムテープ、そして二本のスペツナズ・ナイフと使用した一本分の柄がジャグリングの輪へと加わる。
よくとぶバットは、越後の手に傍に残されていた。
それは自身が認めた“自分に次ぐ実力のピエロ・越後竜太郎”に対する、ピエロなりの供養なのかもしれない。
そして、それが仇となった。完全に油断していたのだ。
越後には、いや、ピエロにさえも、何が起きたのか分からなかった。
突然ナイフの刃が飛び出し、越後の喉元に突き刺さった。射出のためのレバーをピエロが押してしまったことなど、二人とも気付かない。
ゆっくりと倒れる越後。自分で攻撃したという自覚のないピエロは頭に疑問符を浮かべ、そして――
「ボ~ク、ピエロだよ~」
何を気にするでもなく、その場を立ち去ることにした。
越後の荷物と自分の荷物を拾い上げ、ジャグリングをしながらその場を去る。
越後の共通支給品とガムテープ、そして二本のスペツナズ・ナイフと使用した一本分の柄がジャグリングの輪へと加わる。
よくとぶバットは、越後の手に傍に残されていた。
それは自身が認めた“自分に次ぐ実力のピエロ・越後竜太郎”に対する、ピエロなりの供養なのかもしれない。
【F-04/水中/一日目/深夜】
【ヘルガ@パワプロクンポケット6裏サクセス】
[状態]:水中を流されているため息苦しい
[装備]:モデルガン
[道具]:ラッキョウ一瓶、支給品一式
[思考・状況]
1:自分がこの殺し合いの場でどう動こうか考える
2:越後のせいで『死の運命を大人しく受け入れる』という選択肢を取りづらくなった(取れないわけではない)
3:とりあえず適当な所で水から上がろう
【ヘルガ@パワプロクンポケット6裏サクセス】
[状態]:水中を流されているため息苦しい
[装備]:モデルガン
[道具]:ラッキョウ一瓶、支給品一式
[思考・状況]
1:自分がこの殺し合いの場でどう動こうか考える
2:越後のせいで『死の運命を大人しく受け入れる』という選択肢を取りづらくなった(取れないわけではない)
3:とりあえず適当な所で水から上がろう
【F-04/森/一日目/深夜】
【ピエロ@パワプロクンポケット10裏サクセス】
[状態]:健康、ほっぺた痛い
[装備]:サイボーグ同盟お手製時限爆弾×2、サッカーボール、火炎ブースター、スペツナズ・ナイフ×2、スペツナズ・ナイフの柄(いずれもジャグリング中)
[道具]:支給品一式(中身は全て出され、ジャグリングに使われている)×2
[思考・状況]
1:みんな(主催含む)を手当たり次第笑わせる~
2:ピエロはボ~ク一人でいいんだ~
3:命令されたし、レッドドラゴン・ホワイトベアの人間は倒しとくよ~
[備考]
1:10裏で仲間になる無所属キャラと10裏主人公がどこの組織に所属している世界から来たかは次の書き手さんにお任せします
2:戦闘で使ってる愛用のナイフや爆弾は亀田に没収されました
【ピエロ@パワプロクンポケット10裏サクセス】
[状態]:健康、ほっぺた痛い
[装備]:サイボーグ同盟お手製時限爆弾×2、サッカーボール、火炎ブースター、スペツナズ・ナイフ×2、スペツナズ・ナイフの柄(いずれもジャグリング中)
[道具]:支給品一式(中身は全て出され、ジャグリングに使われている)×2
[思考・状況]
1:みんな(主催含む)を手当たり次第笑わせる~
2:ピエロはボ~ク一人でいいんだ~
3:命令されたし、レッドドラゴン・ホワイトベアの人間は倒しとくよ~
[備考]
1:10裏で仲間になる無所属キャラと10裏主人公がどこの組織に所属している世界から来たかは次の書き手さんにお任せします
2:戦闘で使ってる愛用のナイフや爆弾は亀田に没収されました
【モデルガン@現実】
その名の通りモデルガン。勿論弾は出ないし殺傷力は0に近い。
その名の通りモデルガン。勿論弾は出ないし殺傷力は0に近い。
【サイボーグ同盟お手製時限爆弾@パワポケ8】
至近距離で爆発されても命を落とさない、殺傷能力0の爆弾。が、大怪我を負わせることは十分に可能である。
殺傷力が0なため3つで1セット扱いで支給された。
至近距離で爆発されても命を落とさない、殺傷能力0の爆弾。が、大怪我を負わせることは十分に可能である。
殺傷力が0なため3つで1セット扱いで支給された。
【サッカーボール@パワポケ1】
極々普通のサッカーボール。
強いて普通と違うところを挙げるなら、盗難防止用に『極亜久高校サッカー部』と書かれていることか。
極々普通のサッカーボール。
強いて普通と違うところを挙げるなら、盗難防止用に『極亜久高校サッカー部』と書かれていることか。
【火炎ブースター@パワポケ10裏サクセス】
炎の武器の威力が上がるブースター。
時限爆弾に組み込めば、時限爆弾が殺傷力を帯びる可能性もある。
炎の武器の威力が上がるブースター。
時限爆弾に組み込めば、時限爆弾が殺傷力を帯びる可能性もある。
【スペツナズ・ナイフ@現実】
パロロワお馴染みのギミックアイテム。
鍔の位置に配置されたレバーを押すことで刀身を前方に10mほど飛ばすことができる便利なナイフ。
ただしスプリングが強力すぎるため再装填はほぼ不可能。
使い捨て遠距離攻撃アイテムとして3本セットで越後に支給された。
パロロワお馴染みのギミックアイテム。
鍔の位置に配置されたレバーを押すことで刀身を前方に10mほど飛ばすことができる便利なナイフ。
ただしスプリングが強力すぎるため再装填はほぼ不可能。
使い捨て遠距離攻撃アイテムとして3本セットで越後に支給された。
【ガムテープ@現実】
拘束にも使える、意外と便利な日用品。
拘束にも使える、意外と便利な日用品。
【よくとぶバット】
力の弱い者でもこのバットを扱うときだけは筋力が若干上昇するため振いやすいバット。
本人の意識する以上の力がこもるため、バットの割に殺傷能力が高いが、手加減が行いづらい一面もある。
現在は越後の死体が握っている。
力の弱い者でもこのバットを扱うときだけは筋力が若干上昇するため振いやすいバット。
本人の意識する以上の力がこもるため、バットの割に殺傷能力が高いが、手加減が行いづらい一面もある。
現在は越後の死体が握っている。
☆ ★ ☆ ★ ☆
痛い。ドクドクと血が流れている。
ヒリヒリと痛んでいたはずの喉に、今はもう何の痛みも感じない。
(やれたれだぜ……まさか刃の部分が飛ぶなんてな……)
自分は死ぬ。何となく、その事が理解できていた。
欠陥品だったのか、刃物の部分が飛び出したナイフで、自分はこの世からいなくなるのだ。
「キャ……テン……み…………な…………」
怖くないと言えば嘘になる。むしろ怖い。すっごく怖い。
それにまだ死にたくない。こんな所で惨めに死んでいきたくなどない。
自分には未来がある。自分には夢がある。
ようやく念願の天道打倒を果たして甲子園に行けたというのに。
甲子園で初めての勝利を掴んで、おかしな名前の学校との戦いに挑もうとしていたのに。
「甲、子園……が……ば……れ……」
悔しかった。自分が全国でどこまで通じるのか分からないまま死ぬというのは。
グラウンドの上でなく、どこか分からぬ場所で夢の舞台から降りるというのは。
みんなと一緒に夢を叶えられないのが。みんなが夢を叶える所を見ることすら叶わないのは。
それでも、殺し合いなんてものと無縁で練習しているであろうチームメイトは恨まなかった。
八つ当たりしようなどとは思わなかった。
心の底から、みんなの勝利を願っている。だって――
ヒリヒリと痛んでいたはずの喉に、今はもう何の痛みも感じない。
(やれたれだぜ……まさか刃の部分が飛ぶなんてな……)
自分は死ぬ。何となく、その事が理解できていた。
欠陥品だったのか、刃物の部分が飛び出したナイフで、自分はこの世からいなくなるのだ。
「キャ……テン……み…………な…………」
怖くないと言えば嘘になる。むしろ怖い。すっごく怖い。
それにまだ死にたくない。こんな所で惨めに死んでいきたくなどない。
自分には未来がある。自分には夢がある。
ようやく念願の天道打倒を果たして甲子園に行けたというのに。
甲子園で初めての勝利を掴んで、おかしな名前の学校との戦いに挑もうとしていたのに。
「甲、子園……が……ば……れ……」
悔しかった。自分が全国でどこまで通じるのか分からないまま死ぬというのは。
グラウンドの上でなく、どこか分からぬ場所で夢の舞台から降りるというのは。
みんなと一緒に夢を叶えられないのが。みんなが夢を叶える所を見ることすら叶わないのは。
それでも、殺し合いなんてものと無縁で練習しているであろうチームメイトは恨まなかった。
八つ当たりしようなどとは思わなかった。
心の底から、みんなの勝利を願っている。だって――
『何故、あの時ピエロを殴り殺さなかったんだろう』
ふと、今わの際にそんな事を考えた。
FOOLドライブで倒れた際に、追い討ちをかけるようにバットで殴り続けていれば、自分が死ぬことはなかったのに。
殺されそうになったのだから、攻撃してもそれほど悪いことじゃないというのに。
(……やれやれだぜ。そりゃあ、殴れないに決まってるだろ)
自分の頭に浮かんだ言葉を嘲るように目を細める。
我ながら馬鹿馬鹿しい事を考えたものだ。
“バットは、人を殴るための道具じゃない”
そんなこと、小学生でも分かる事だというのに。
そうだ、出来っこないんだ。バットに血を吸わせるなんてことは、絶対に。
こんな状況だろうと、野球の道具をそんな風に使うわけにはいかない。だって――
ふと、今わの際にそんな事を考えた。
FOOLドライブで倒れた際に、追い討ちをかけるようにバットで殴り続けていれば、自分が死ぬことはなかったのに。
殺されそうになったのだから、攻撃してもそれほど悪いことじゃないというのに。
(……やれやれだぜ。そりゃあ、殴れないに決まってるだろ)
自分の頭に浮かんだ言葉を嘲るように目を細める。
我ながら馬鹿馬鹿しい事を考えたものだ。
“バットは、人を殴るための道具じゃない”
そんなこと、小学生でも分かる事だというのに。
そうだ、出来っこないんだ。バットに血を吸わせるなんてことは、絶対に。
こんな状況だろうと、野球の道具をそんな風に使うわけにはいかない。だって――
「バカだなあ、越後」
キャプテンの顔が、瞼の裏に蘇る。何だかんだでチームを纏める才能と野球の才能を併せ持った良いライバルだった。
彼だけじゃない。よく一緒に練習をした田島、ムード-メーカーの荷田、流し打ちを得意とした官取、パワー自慢の岩田……
生意気だった疋田もあまり交流の無かった真薄も、みんなみんないい仲間だった。
そんな彼らが、こっちを見て笑っている。
ある者は呆れ果てたように。ある者は苦笑いといったように。そしてまたある者は冗談めかした嘲笑のように。
みんながみんな、口を揃えて言ってきた。
「ったく、本当にバカだなぁお前は」
ああ、そうだな。折角の大舞台の最中で抜けちまう俺は大バカ野郎だ。
でもさ、みんなだってきっと、殺し合いに巻き込まれたら俺と同じ事をしたと思うぜ。
バットなんて配られた日には、絶対に殺しなんかできないはずだ。
「やれやれだぜ」
だからこれは仕方のない事なのだ。殺し合いに巻き込まれた段階で、遅かれ早かれこうなっていたのだ。
バットで人を殴らなかったことを、俺は微塵も後悔してない。
ヘルガさんを逃がした事だって、後悔なんてしていないぜ。少ししか一緒にいなかったけど、ヘルガさんは俺の仲間だったからな。
ああ、そうさ。後悔なんて何もない。
野球が好きな仲間を守って、野球の道具で人を傷つけないまま死ぬ。素晴らしい事だと心から思うぜ。だって――
キャプテンの顔が、瞼の裏に蘇る。何だかんだでチームを纏める才能と野球の才能を併せ持った良いライバルだった。
彼だけじゃない。よく一緒に練習をした田島、ムード-メーカーの荷田、流し打ちを得意とした官取、パワー自慢の岩田……
生意気だった疋田もあまり交流の無かった真薄も、みんなみんないい仲間だった。
そんな彼らが、こっちを見て笑っている。
ある者は呆れ果てたように。ある者は苦笑いといったように。そしてまたある者は冗談めかした嘲笑のように。
みんながみんな、口を揃えて言ってきた。
「ったく、本当にバカだなぁお前は」
ああ、そうだな。折角の大舞台の最中で抜けちまう俺は大バカ野郎だ。
でもさ、みんなだってきっと、殺し合いに巻き込まれたら俺と同じ事をしたと思うぜ。
バットなんて配られた日には、絶対に殺しなんかできないはずだ。
「やれやれだぜ」
だからこれは仕方のない事なのだ。殺し合いに巻き込まれた段階で、遅かれ早かれこうなっていたのだ。
バットで人を殴らなかったことを、俺は微塵も後悔してない。
ヘルガさんを逃がした事だって、後悔なんてしていないぜ。少ししか一緒にいなかったけど、ヘルガさんは俺の仲間だったからな。
ああ、そうさ。後悔なんて何もない。
野球が好きな仲間を守って、野球の道具で人を傷つけないまま死ぬ。素晴らしい事だと心から思うぜ。だって――
――だって俺は、根っからの野球バカなんだからな。
【越後竜太郎@パワプロクンポケット10 死亡】
【残り 54人】
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勇気VS意地(前編) | 越後 竜太郎 | GAME OVER |
勇気VS意地(前編) | ピエロ | 042:もう戻れない世界 |
勇気VS意地(前編) | ヘルガ | 036:今の自分にできること |