アットウィキロゴ

オンボーディング (Onboarding)

ゲームデザインにおけるオンボーディング (Onboarding) とは、プレイヤーがゲームを開始してから、そのルール、操作方法、そして「何が面白いのか」を理解し、自立して遊べるようになるまでのプロセスの総称です。
単なる「チュートリアル」と混同されがちですが、オンボーディングはより広義で、「ユーザーを定着させるための体験設計」そのものを指します。


概要

1. チュートリアルとオンボーディングの違い
この2つは似ていますが、焦点が異なります。
要素 チュートリアル オンボーディング
目的 操作やルールの説明(やり方を教える) 心理的な定着と動機付け(面白さを伝える)
範囲 特定のセクション、説明的な会話シーン ゲーム開始から最初の成功体験まで
手法 テキスト、指示、練習用ステージ 物語、演出、徐々に解放される機能

2. オンボーディングの主要な設計原則
① Learning by Doing(実践による学習)
長いテキストを読ませるのではなく、実際に手を動かして学ばせる手法です。
「ボタンを押せ」と指示するのではなく、「ボタンを押さないと進めない状況」を設計します。
  • 例:『スーパーマリオブラザーズ』の1-1では、最初に迫ってくるクリボーが「ジャンプ」というメカニクスを強制的に学習させます
② Contextual Help(文脈に応じた支援)
必要な情報を、必要なタイミングでだけ提示します。序盤にすべてのルールを説明(フロントローディング)すると、プレイヤーは情報を処理できず離脱の原因になります。
  • 例:弾が切れた瞬間にだけ「リロードボタン」のガイドを表示する
③ Safe Environment / Safe Failure(安全な学習環境 / 安全な失敗
失敗しても致命的なペイントにならない場所で、新しいメカニクスを試させます。
  • 例:落下死があるゲームなら、最初は落ちてもすぐに復帰できる低い段差でジャンプを練習させる

3. FTUE(First-Time User Experience)の設計
オンボーディングにおいて最も重要なのが、最初の数分〜数十分の体験(FTUE)です。
ここでプレイヤーに「このゲームは自分に合っている」と思わせる必要があります。
1. フック(Hook)
印象的な導入(物語の謎、圧倒的な映像など)で注意を引く。
2. 小さな成功体験(Micro-Wins)
短時間で「敵を倒した」「アイテムを見つけた」という達成感を与える。
3. 目標の提示
「次はこれをすればいい」という明確な短期目標を持たせる。

4. オンボーディングにおける「見えない誘導」
優れたオンボーディングは、プレイヤーに「教わっている」と感じさせません。
レベルデザインによる誘導
明かりや色彩を使って、自然と進むべき方向へ視線を誘導する。
プログレッシブ・ディスクロージャー
最初は最小限の機能だけを使わせ、慣れるに従ってスキルツリーや複雑なメニューを少しずつ解放していく(情報過多の防止)。
設計のヒント
開発者はそのゲームの「プロ」であるため、無意識にプレイヤーの習熟度を高く見積もりがちです。
オンボーディングを設計する際は、「全く予備知識のないプレイヤーが、説明なしでどこまで直感的に動けるか」をプレイテストで観察することが不可欠です。

特に独自の入力デバイス(クランクや特殊なコントローラーなど)や、独特な制約(1-bitの視認性など)を持つゲームの場合、この「直感的な理解」をどう促すかが設計の腕の見せ所となります。

関連ページ

最終更新:2026年05月10日 17:03