ダイジェティック・チュートリアル (Diegetic Tutorial)
ダイエジェティック・チュートリアル (Diegetic Tutorial) は、ゲームの操作説明やルール解説を「システムからの指示」としてではなく、「物語内の出来事」として描写する手法です。
ちなみに、用語としては「ダイエジェティック(Diegetic)」と呼ぶのが一般的です。これは映画用語の「劇中音(登場人物にも聞こえている音)」などに由来しており、プレイヤーが見ている情報が「ゲーム内のキャラクターも認識している情報」であることを意味します。
概要
1. ダイエジェティック・チュートリアルの主な手法
物語の一環として教育を行うため、プレイヤーは「マニュアルを読まされている」という感覚を持たずに自然とスキルを習得できます。
- ① 設定としての訓練(In-Universe Training)
- 物語の導入部を「訓練」や「練習」の設定にすることで、自然に操作を教えます。
- 例: FPSでの新兵訓練施設、アクションゲームでの師匠との組み手、スポーツゲームでの入団テスト
- ② キャラクターによる指示(Character Guidance)
- 随伴するパートナーや通信相手が、世界観に沿った言葉でアドバイスを送ります。
- 例: 無線越しに「しゃがんでダクトを通れ」と指示される、相棒が「あそこのレバーを引いてくれ」と叫ぶ
- ③ 劇中の文書・アイテム(In-Game Artifacts)
- ゲームの世界に存在する手紙、看板、マニュアルなどを通じて情報を伝えます。
- 例: 父親からの手紙に「困ったらこのボタンを押せ」と書かれている、廃墟に残されたメモに「光に弱い」という敵の弱点が記されている
- ④ インターフェースの統合(UI Integration)
- キャラクターが実際に操作しているデバイスとしてUIを表示します。
- 例: 宇宙服のヘルメットのバイザーに目的地が表示される(『Dead Space』)、作中のスマートデバイスを操作して設定を変更する。
2. 他の形式との比較
| 形式 |
プレイヤーの感覚 |
世界観の整合性 |
代表的な例 |
| ダイエジェティック |
「体験・物語」 |
非常に高い |
師匠との稽古、無線連絡 |
ノン・ダイエジェティック (→明示的チュートリアル) |
「説明・システム」 |
低い |
ポップアップ、メニュー画面 |
3. メリットとデメリット
- メリット
- 没入感(イマージョン)の維持: 第四の壁(ゲームと現実の境界)を壊さずに情報を伝えられます
- 感情移入: 説明を通じてキャラクターの性格や関係性を描写できます
- 記憶の定着: 文脈(ストーリー)と共に学ぶため、単なる操作方法よりも記憶に残りやすくなります
- デメリット
- テンポの低下: 演出を挟むため、スキップしにくい場合があります。
- メタ的な説明の難しさ: 「R1ボタンを押せ」といった具体的なコントローラー操作を、世界観を壊さずに言うのは工夫が必要です(「右手のトリガーを引け」などと言い換える等)
4. 活用のためのデザイン・ヒント
この手法を成功させるには、「なぜ今これを教わる必要があるのか」という動機付けが重要です。
- 必然性を作る
- 崩落する建物から逃げるために「ジャンプ」を教える、といった緊急事態は、プレイヤーを能動的にさせます。
- ハードウェアとの親和性
- 例えば、Playdateのような特殊なデバイスであれば、「クランクを回す」という行為を「発電機を回す」や「潜望鏡を伸ばす」といった劇中のアクションと結びつけることで、強力なダイエジェティック体験になります
- ホラー演出との相性
- サバイバルホラーにおいて、血文字で書かれた「走れ」という指示や、ノイズ混じりの無線での警告は、教育であると同時に恐怖演出としても機能します。
最高のダイエジェティック・チュートリアルは、プレイヤーが後から振り返った時に「あれはチュートリアルだったのか!」と驚くような、物語とシステムが完全に溶け合った体験を指します。
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最終更新:2026年05月05日 01:20