深夜の廃倉庫、所有者の居なくなったビルの前に車が停まり、複数の人間を吐き出した。
彼等は、この倉庫を格安で買った裏社会に属する組織の構成員である。
拘束され、頭に袋を被せられ、周囲を囲まれて、小突き回されているのは、彼等と異なる組織の構成員の男だった。
此処一帯は滅多に人が来ない為に、泣こうが喚こうが叫ぼうが誰かの耳に届くことはまず無い。
この立地条件を活かして、彼等はこの倉庫を、敵対組織の人間の拷問や、裏モノのAVの撮影に使用していた。
今夜、此処に連れ込まれたのは、最近姿が絶えて久しかった『男』であった。
『男』の所属していた組織は、数日前にトップ─────といっても誰の記憶にも無いが─────が怪死し、その後に起きた後目争いで、順当に行けば後を継ぐ筈だったNo.2が殺害され、組織はNo.3の男が継いだ。
この事は当然絶対の部外秘とされたが、何処にだって外部と通じている輩は存在する。
そんな輩の一人から、長年の敵対組織に起こった異変を知ったある組織が行動を開始。
今日、殺されたNO.2の側近を襲撃し、護衛を皆殺しにして捕まえ、事情を喋らせる為に此処へ連れて来たのだった。
NO.2の側近なら、消えても組織は即座には反撃に出ることは無いだろうと踏んでの強襲だった。
「テメェ等に話すことなんてねぇよ!!」
尋問の為に。袋を取られた男が威勢良く叫ぶのを黙らせるために、リーダー格の男が股間を蹴り上げる。
獣じみた声を上げて蹲った処へ、顔面に蹴りを入れて地面に転がすと、五人いる部下のうち2人に、隣室から道具を取ってくる様に命じる。
「最近はスナッフはやってないからなあ」
脅しつける意味合いを込めて呟くと、連れ込まれた男が猛然と吼えた。
「テメェ等!!カタギを手に掛けたのか!?仁義はどうしたんだよ!!仁義は!?」
「そんなもんが銭になるのかよ!!」
今度は男の腹を蹴って黙らせ、助走をつけた蹴りで頭を蹴り抜いて気絶させた時、隣室から悲鳴と共に、部下が転がり出て来た。一人だけ。
「何があった!!」
一目で部下が恐慌状態にあると見抜き、大喝して気を取り戻させると同時、残りの部下に得物を構えさせる辺り、リーダーは中々に場数を踏んでいるらしかった。
「ガ…ガキが……、カズが近づいたら…いきなり……もう一人……」
支離滅裂で要領を全く得ないが、隣室に『ガキ』が居て、其奴がもう一人が戻ってこない原因らしいと、リーダーは当たりをつけた。
「チッ…」
小さく舌打ちするリーダー。一応施錠してあったというのに、何処から入って来たのか?第一この倉庫の扉は一つで明かり取りの窓は大分高く、窓から入るのは無理だ。
浮浪者や、肝試しにやって来る連中対策に、入口の鉄扉には頑丈な鍵を付け、南京錠が掛けてある。
二つとも此処に来る際にリーダー自身の手で外している。侵入者が外した鍵を掛け直すにしても、外付けの南京錠をどうやって内側から掛けたのか?
リーダーは背すじに嫌な汗が流れるのを感じたが、此処はリーダーの所属する組織にとって存在を知られてはならない場所だった。
何しろ今まで何人もの男を惨殺し、その何倍もの女を凌辱し、解体してきた現場であり、その一部始終を録画して、裏モノのビデオとして販売し、結構な利益を上げてきた。
当然警察もこのビデオの製作者を逮捕するべく動いている。
この場所が外部に漏れ、警察に知られれば、即座に所有者を特定され、組織がもはや組織としての態を為さなくなるまで追及されるだろう。
気味が悪いだの、嫌な予感がするだので放っておけるものでもなかった。
リーダーは自分達の装備を確認した。
一人はレミントンM870、もう1人と床の奴はベレッタM92F、床にへたり込んで震えている男からベレッタM92Fを取り上げるとベルトに差し、
ベレッタのうちの一人に捕虜を見張らせ、そのまま自分はホルスターからコルトパイソンを抜いて構える。
威力は有るが装弾数の少ないパイソンを選んだのは、弾詰まり(ジャム)が起きず、弾が不発だったとしても、そのまま引き金を引けば撃てるリヴォルヴァーの信頼性を選んだからだ。
「其処に居る奴!さっさと出て来い!!」
レミントンが一番前、ベレッタとリーダーがレミントンの左右の斜め後ろで構えるフォーメーションを取る。
出てきた処に一発弾(スラグ)を食らわせて仕留める。外した時は9mmパラと357マグナム弾の出番だ。
一発弾(スラグ)は、アメリカでは立てこもり事件に際し、警察が頑丈なスチールドアを破壊するのに使う程だ。生き物に使うならば大型動物用。人間には過剰過ぎる代物だ。
隣室との区切の安っぽいスチールドアがゆっくりと開き、銀髪の少女が姿を現した。
「はぁ?」
レミントンが思わず漏らす。それもその筈、現れた少女は痩身矮躯、大の男をどうにか出来る様には見えなかったからだ。
「殺っちまえ!!」
微妙に弛緩した空気を、リーダーの怒声が引き締める。少女が何であれ、此処を知られたからには、此処で出来た死体の仲間入りをさせる。最初から生かしておく気はリーダーには無い。容赦の無い射撃が少女に浴びせられた。
レミントンが火を噴き、轟音と共に巨弾を放つ、胸部に命中した弾丸が背中から、大量の肉と血と共に飛び出し、赤い花を咲かせ─────はしなかった。
レミントンの首が宙を舞う。刃が風を斬る音と切断音が聞こえたのは、栓を抜かれたシャンパンの様に、レミントンの首の切断面から鮮血が噴き出したのと同時だった。
「な……ぬおおおおおおあああああああああああ!!!!」
リーダーと残りの男は逆上して引き金を引きまくった。乱れ飛ぶ9mmパラと357マグナム弾の嵐が、少女の体に無数の穴を開け、襤褸布へと変え─────はしなかった。
きっかり二秒後、リーダーとベレッタがレミントンと同じ運命を辿るのを、床にへたり込んだままの最後の男が見ていた。
「ひいいぃぃぃぃぃぃいいいい!!!」
失禁脱糞し発狂状態にある男を見下ろして、少女は手にした得物を振り上げる。
「し…に…が……み」
男が得物を認識した瞬間。男は頭頂から臍までを縦に分断され、即死した。
「…………」
たった今、NPCとはいえ、五人もの命を奪った事に何の感慨も見せない少女─────朽木ルキア─────バーサーカーのサーヴァントは緩慢な動作で辺りを見回す。
此処に来たのは、マスターであるステラを風雨や外気に晒されない場所で休ませる為であり、偶々やって来た五人を殺したのは、マスターであるステラの消耗を少しでも抑える為に、魂喰いを行う為だった。
周囲に生きている人間は、拘束されて気絶している男のみ。
ルキアはゆっくりと鎌を振り上げた。さっさとこいつも食って、奥の部屋で眠っているマスターの処に戻ろう。
狂化により濁った思考で、朧げに考えるとルキアは鎌を振り下ろそうとし─────振り向きざまに水平に薙いだ。
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譲れない願いを抱いて夜の街を彷徨う男がいた。名は◆◎☆▽─────聖杯により、“
カオスヒーロー”という名で当人以外の全員に認識されることになった男である。
元いた世界に帰り、二人に恩を、一人に仇を返す。その為にカオスヒーローは戦う、否。戦わざるを得ない。
“カオスヒーロー”などというありえない名でしか他者に認識されない様にされた彼は、意思に関わらず聖杯戦争に乗る以外の途を選べなかった。
何しろ“カオスヒーロー”なんて名前の人間は存在しない。NPCは気にも留めないだろうが、他マスターに知られれば、即座に自分がマスターと知られる。
信用して良い相手かどうかを見極めているゆとりなど存在しない。そこでカオスヒーローの立てた方針は、襲って来る者、NPCを殺している者、話が通じない者は全て斃す。というものだった。
少なくとも皆殺しというのは考えてはいない。数も減った終盤に差しかかればともかく、こんな序盤から全方位に喧嘩を売る程、カオスヒーローは自惚れてもいないしバカでも無い。
手を組める相手が居れば同盟を組むのが賢明というものだろう。
カオスヒーローのサーヴァント、
ガッツもこの方針に賛成し、取り敢えず2人は今夜の寝床と他の主従を求めて、廃ビルや無人のアパートが立ち並ぶ裏通りを歩いていた。
【サーヴァントの気配が有る】
唐突にそんな事を言い出したセイバーのサーヴァント、ガッツにカオスヒーローは不審げな目を向ける。
悪魔とそれなりに関わって来たカオスヒーローは、超常存在の気配には敏感だ。その彼が気付けないサーヴァント気配に彼は気付いたらしい。
─────烙印が痛みやがる。この近くにいるのは真っ当な英霊じゃ無いな。
生前の経験から、そう結論づけると、ガッツはカオスヒーローを先導し、ある廃倉庫の前に辿り着いた。
【此処の中から気配がする。取り敢えず俺は霊体化して様子を探るから、アンタは後から入って来てくれ】
【分かった】
そうしてガッツが霊体化して倉庫の中に入るのを、カオスヒーローは見送ったのだった。
中に侵入したガッツは直ぐにサーヴァント─────ルキアを発見。死体に囲まれ、今まさにNPCを殺害しようとしているルキアを、撃破する対象と認識。
一応は話をしてみようと実体化したところを攻撃されたのだった。
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黒い剣士の胴を、上下に分かつはずの鎌が空を斬り、剣士が後ろに飛びながら投げて来たナイフを鎌の柄で払い落として、ルキアは敵サーヴァントと対峙する。
これまでに戦ったサーヴァントは無し。初戦ともなれば、通常ならば慎重に戦うだろうが、ルキアに与えられた役割(ロール)は狂戦士。思考などすることなく、己が本能に任せて斬りかかる。
ガッツはルキアを見て、話をする事をあっさり諦めた。彼が生前に飽きる程見て来た顔をしていたからだ。
人血が地を染め、屍と屍手前の者達が当たりを埋め尽くす戦場で、異形と化した骸が跋扈し、条理を越えた魔性が跳梁する荒野で。
理性を手放し、狂気に落ちた者の顔をした─────バーサーカーのクラスを与えられた─────少女を、ガッツは“敵”として認識した。
バーサーカーのマスターが居ればまだ話は別だろうが、姿が見えない以上、何処かに潜んで様子を見ているのだろう。
もし仮に、カオスヒーローの様にやむを得ない理由が有って、この行為に及んだのなら、バーサーカーのマスターが何らかの説明をしに現れても良さそうなのだが、其れも無い以上、バーサーカーのマスターは“乗っている”と見るべきだろう。
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先に動いたのはルキアだが、先に攻撃したのはガッツだった。
実体化させた宝具、全長も幅も、大柄なガッツを遥かに超える、鉄塊と見紛う巨剣を水平に薙ぐ。
嘗ての友、現の仇敵に捧げる巨剣、鍛冶屋ゴドーが鍛え上げ、ガッツと共に無数の夜を越えて宝具へと昇華された剣。
人には振るえぬ重量と大きの鉄塊が、ルキアの小さな身体を撃砕すべく、猛然と唸りを上げる。
振り抜かれた鉄塊が室内の空気を激しく乱し、ルキアの身体の在った位置を通過した時、ルキアの姿は何処にもなかった。
屠竜の剣に人の形をしたものが耐えられず、四散したのか?
否。そうで無い事を剣を振るったガッツは確信している。
─────!?
ガッツが剣を振り抜いた勢いに任せて左に転がるのと、ガッツの首が在った空間を、刃が奔り抜けたのは同時。
瞬間移動でガッツの背後に出現したルキアが鎌を振るい、ガッツの首を狙ったのだ。
攻撃の最中という絶対の隙に、背後という絶対の死角からの攻撃を回避出来たのは、人外の魔にその名を知られる程に魔性の者共を屠り、戦場で無数の敵を薙ぎ払い、夜には烙印に引かれて来る無数の亡者に鉄塊を振るい続けた、生前の闘争の経験の賜物だ。
床に身を投げたガッツはドラゴン殺しを手放してナイフを投擲、次いで義手に連射式のボウガンを装着して、宙に浮かぶルキアの身体を狙い撃つ。
対してルキアは旋風の様に鎌を回転させて、飛来する凶器の悉くを弾き飛ばし後方へと退く、刹那の間も置かず、ルキアの居た空間を暴風の如き勢いでドラゴン殺しが奔りぬけた。
「シィッ!」
ルキアを追い、ガッツが巨剣を連続して振るう。止まることなく繰り出される暴威はさながら竜巻。
巻き込まれれば、否、触れただけで五体を砕く暴撃を立て続けに繰り出すガッツは、見るものが居れば破壊という概念が人の形を取ったかの様に様に見えただろう。
装甲で受ければ装甲ごと、武器で受ければ武器ごと両断する斬撃の嵐─────
よしんば装甲が耐えても中の肉体が、武器が耐えても支える腕が砕ける。
理性も思考も濁り切った頭でも認識できる程の脅威。ルキアは決して巨剣を受けようとはせず、唯々躱し続ける。
巨剣に薙ぎ払われた空気が荒れ狂って暴風と化し、連続して響く刃鳴りか獣の唸り声にも似て耳を震わせる。
荒れ狂う剣風に壁際に追い込まれたルキア目掛け、ガッツは己の身体を砲弾の如き勢いで射出。コンクリートの床が砕ける勢いで左足を踏み込み、下半身を旋回、踏み込みの勢いと全体重を巨剣に乗せて、ルキアの脳天目掛けて振り下ろす。
遥かな高さから落下する大瀑布の如き斬撃。巨剣の重量とガッツの筋力と理に適った身体運用の併さった剣撃は、当たればルキアの身体を切断するのではなく、四散させる威力の一撃。
巨岩をすら粉砕する巨剣は何も存在しない空間を斬り、コンクリートの床に剣身の半ばまでを埋め、直径10m程のクレーターを生じさせた。
「オオォッ!!」
またしても瞬間移動による回避。それを読んでいたガッツは剣を振るいながらその場で一回転。全方位を薙ぎ払った巨剣は虚しく宙を薙いだ。
─────!?
額然とするガッツの回転運動が終わったその時、眼前に鎌を振り上げるルキアの姿。
巨剣の斬撃を回避した時、ガッツが二の手を用意している事を読んだのか、再度瞬間移動を行い、元の場所に戻っていたのだ。
「チィッ!?」
ガッツは咄嗟に巨剣を床に突き立て、その影に身を隠す。それを待っていたかの様に振り下ろされる刃。明らかに機を逃した攻撃は巨剣に阻まれ虚しく弾き返される─────事は無かった。
ガッツの隻眼が驚愕に開かれる。凡そ斬るという用途を到底果たせるとは思えない分厚い剣身を、水面を掻き分けるかの様に透過してくる刃を。
咄嗟に巨剣を放して横に転がらなければ此処で勝敗は着いていだろう。
だがガッツは致命の窮地を回避し、ルキア目掛けて取り出した炸裂弾を投擲した。咄嗟に弾いた鎌の刃部分が爆発。閃光と衝撃にルキアの動きが止まった隙を逃さず床に転がった巨剣を拾い、ルキア目掛けてナイフを投げる。
身を横にしてナイフを躱したルキアが振り下ろす鎌をもう一度転がって避け、巨剣をしっかりと握り締めた。
床に身を投げ出したままのガッツが再度放った投げナイフを鎌の柄で払い、ルキアは床を蹴って跳躍する。
僅かな間も置かずルキアの足を掠めて、足首の在った辺りの空間を鉄塊が通過する。
床に転がったままとはいえ、ガッツの膂力で振るわれる巨剣は、当たればルキアの両足を骨まで砕いていただろう。
宙に浮かんだルキアの落下速度を計算し、立て直したガッツが腰を狙って巨剣を横薙ぎに叩きつける。
鋼の装甲を纏った屈強な巨漢や、大型動物を上回る巨躯の使徒を、薙ぎ倒し宙に舞わせて来た斬撃を、ルキアは受けるでも体捌きで回避するでもなく、上昇する事で回避。
空中で前進して距離を詰めると、鎌をガッツの脳天目掛けて振り下ろす。
これをガッツはしゃがみ込むことで回避。頭上を刃が過ぎるのと同時に、巨剣の切っ先をルキアの胸目掛けて突き出す。
鋼の激突する壮絶な音と同時、鎌の柄で受けたルキアの小さな身体が縦に回転しながら宙を舞った。
短く息を吐くルキアに、ガッツは巨剣を振るい呵責無い追撃。暴風を纏い剣がルキアに迫る。
剣が直撃する直前にルキアの姿が消え、ガッツの左に出現、ガッツの命を刈り取るべく鎌が振るわれる。
ガッツの首が胴から離れる寸前、突如としてルキアの身体が燃え上がった。
「手間を掛けさせたな。マスター」
礼を言うガッツに目もくれず、カオスヒーローはルキアを燃え上がらせた魔界魔法─────アギラオ─────を再度放ち、ルキアの身体をさらに激しく燃え上がらせた。
呼吸すれば肺が焼け、ごく僅かな時間で皮膚を炭化させる熱量に包まれたルキアの姿が不意に消える。
愕然としたのも束の間、歴戦の2人が側背を警戒したその時、2人の内カオスヒーローの眼前に現れたルキアが、大上段から鎌を振り下ろした。
「ぬぅお!?」
しかし、超常の存在である悪魔と戦い続けてきたカオスヒーローの身体に刻み込まれた経験は、この不意打ちにも咄嗟に反応し、後転することで回避。
更に後ろに飛びながら魔界魔法の一つ、“アギ”を放って牽制。着地と同時に今度は右へと飛んだ。
後ろに飛んだカオスヒーローを追撃しようとしたルキアの背中が、爆音と共に爆ぜた。魔法では無い、生前にガッツが使用していた炸裂弾。今では魔力を消費する事で幾らでも生成出来る其れを、無防備なルキアの背中目掛けて投擲したのだ。
次いで連射式ボウガンを義手に装着。これまた魔力を消費する事で幾らでも生成出来る矢を、炸裂弾が直撃して仰け反ったルキア目掛けて、惜しみなく射出する。
「アアアアアアアアアア!!!」
背中に十数本の矢を受けて絶叫したのも束の間。ルキアの姿が、2人の前から消滅した。
「そっちか!」
ルキアの気配を感じ取り、壁に駆け寄ったガッツが巨剣を叩き込み、鉄筋コンクリート製の壁を、薄い木の板のように呆気なく崩壊させ、壁の向こう側を露わにした。
崩れた壁の先には、無数の拷問器具と、頭頂から股間まで縦に両断された男の死体が有るだけで、人の気配など微塵も無かった。
「奴は何処へ消えた」
「あの瞬間移動を使われて逃げられたらどうにもならない。後一押しだったんだがな」
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ガッツとルキアの死闘を、倉庫の外から見ていた男が居た。
男の名は
大道克己。
ラウ・ル・クルーゼをマスターとするアサシンのサーヴァントだった。
克己もクルーゼも今の所闘うつもりは無い。ならば何故克己はマスターの元を離れて、この様な場所にいるのか?
克己の宝具『古き記憶は永遠の眠りへ(仮面ライダーエターナル)』は目にした宝具の機能を停止させる反則的な能力を持つ。
この能力を活用する為には一つでも多くの宝具を見ておく必要がある。宝具を通常時の武器として使用する事の多いセイバーやランサーと違い、他のクラスは宝具を常に持ち歩いているわけでは無い。
そのセイバーやランサーにした処で、真の切り札を隠している事だって有り得るだろう。刹那の判断が生死を分け、勝敗を決する戦場で、即応して切り札を切る為に他のサーヴァントの宝具を知ることは不可欠だった。
そこで克己はアサシンのクラススキル“気配遮断”を用いて、他の主従の探索と観察を行っているのだった。
そしてもう一つ。クルーゼが密かに接触しているテロリスト、“鬼兵隊”の監視の為である。
このテロリスト集団について克己はクルーゼ程の鷹揚さを持たない。無秩序に破壊を繰り返す集団は、己の目的成就の思わぬ障害になりえるかも知れないからだ。
それでなくともマスターであるクルーゼに何らかの危害を加えかねないのだ。動向を把握しておいて損は無いだろう。巧く行けば、他の主従を排除するのに使えるかも知れない。
そうして克己は鬼兵隊の動きを探った後、サーヴァントが戦っている事を期待して、人気の無い此の近辺を探っている処へ、廃倉庫へと向かうカオスヒーローとガッツを目撃。後を尾けてルキアとの戦闘の一部始終を目にしたのだった。
克己は再び夜の街に潜む。あの場所での戦いは終わった。あの場所に留まっても意味は無い。他の場所に移動して新たな情報を獲得するのが常道だった。
そうして瞬く間にかなりの距離を移動して、住宅街に有る自然公園までやって来た。
「殺し合いをやるには向いている場所なんだがな。流石に今日は店じまいか」
一時間程前に鎧の剣士とフルーツマンの死闘を観戦し、クルーゼを通じてステータスを確認した場所に戻って来たが、この場所を戦場としている者達は居ない様だった。
折を見てこの場所に監視カメラでも設置しようか、等と考えていた克己の眼前に、先刻倉庫で巨剣の剣士と死闘を繰り広げていたバーサーカーが、金髪の少女を抱きかかえて突如として出現した。
─────しまった!?
周囲にサーヴァントの気配が無かった為、気配遮断を解いていたのが失敗だった。
ステラを連れて倉庫から逃走したルキアは、身を隠せる場所を探して移動を続け、この自然公園に転移して来たのだが、そんな事情を克己に知る由は無い。
ルキアはは克己と目が合うなり、抱き抱えたステラを地面に横たえ、長柄の鎌で斬りかかった。
克己は鎌を避けようとも、鎌から逃げようともせず、少女が鎌を振るうタイミングを見極め、絶妙な機を捉えて前に飛ぶ。
結果、克己は少女とすれ違い、互いの位置を変えた処で、追撃に薙ぎ払われた鎌も前転して躱し、距離を取ることに成功。
『エターナル』
間髪入れず、腰のロストドライバーに“エターナルメモリ”を差し込み。
「変身」
『エターナル』
吹きすさぶ暴風。
右腕を広げた克己の身体が、無数の白い金属片に覆われ。一瞬のうちに黒いマントをつけた白い鎧に身を包んだ戦士が現れる。
「変身するのはもっと先になる予定だったんだがな。まあ良い、踊るぞ、死神のパーティータイムだ」
此処に嘗て生者だった死神と、嘗て死神だった少女は争闘を開始した。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
巨岩をも砕くエターナルの拳が唸り、鋼柱を折る脚が空気を抉る。
元より五体そのものが凶器と言っていいNEVERの身体能力。其れが宝具を纏った時の脅威はどれ程のものか。今の克己に撫でられただけで、人体どころか羆さえ原型を留めぬ肉の塊となるだろう。
その暴威をルキアは尽く躱し、避け、空を切らせる。一見宙を自在に舞い、瞬間移動も駆使するルキアが克己を翻弄しているように見える。
実情は異なる。先のガッツとの戦闘で受けた傷によりルキアの動きは鈍く、更にはルキアの動きを事前に把握していた克己に先を読まれ、読みを外してもNEVERとしての直感を越えられない。
結果。ルキアはバーサーカーというクラスに相応しく無い、防戦一方の戦いを強いられていた。
『ヒート』
「灼熱地獄はどうだ!!」
不利を悟り、離脱するべくステラの側に転移したルキアに『ヒートメモリ』を装着した克己が火球放つ。爆炎が地面を巻き上げ、業火がステラの居た位置を中心とした30m範囲を焼き尽くす。
炎の中から火に包まれtて、ステラを抱えて飛び出してくるルキアを『ルナメモリ』の効果により伸ばされた腕が殴り飛ばした。
「さあ、地獄を楽しみな!!」
天高く跳躍した克己がマントを靡かせ2人目掛けて舞い降りる。右足に集められた破滅的なエネルギーは蒼く燃える焔と化し、∞を軌跡と描いて2人の少女の命を散らす。
その時、ルキアに抱えられたステラの虚ろな瞳が克己を見つめた。そして。
─────!?
ステラの唇が動き、何らかの言葉を紡いだその時、克己の軌道はルキアと己を結ぶ不可視の線からズレ、2人から外れた地面を轟音と共に深々と抉り、土砂を弾き散らした。
舌打ちして、振り向き様に火球を放つ。誰も居ない地面に着弾した火球は、再度の爆音と共に10mを優に超える火柱を立て、周囲の地面を硝子の結晶と変えた。
あの時ステラ─────克己には名を知る術など無いが─────は確かにこう言ったのだ。
「生きたい…」
青白い頬、血の気の失せた唇、焦点を結ばない目。確かに生者で有りながらも、既に死者の相をした残り短い命の少女はそう言ったのだ。
その言葉を聞いた時、克己の脳裏を刹那にも満たぬ間だが、失われた記憶が過ったのだ。
嘗て死を待つだけだった人々を救おうとした過去を、彼らに向かって「明日が欲しい」と叫んだ事を。ほんの僅かな間だけ。
「何なんだよ……一体」
刹那の間取り戻した記憶。もはや忘却の霧の彼方に沈んだ記憶の残滓が、克己の胸に苛立ちとして残っていた。
【E-3/自然公園/1日目 夜(21:50)】
【アサシン】(大道克己)@仮面ライダーW FOREVER AtoZ 運命のガイアメモリ
[状態] 健康・僅かな苛立ち
[装備] ロストドライバー、ナイフ、T2メモリ
[道具] 無し
[所持金] マスターに依存
[思考・状況]
基本行動方針:優勝狙い。他マスター達の『解放』
1. 偵察を続ける
2. 鬼兵隊の動向を警戒
3.自分からは当分は仕掛け無
[備考]
1.セイバー(ガッツ)、バーサーカー(朽木ルキア)を認識。ステータスを確認、戦うところを観察しました。
2.カオスヒーローが魔界魔法を使用したのを目撃しました。
3.二ノ宮飛鳥&ランサー(
駆紋戒斗)と
最上リョウマ&セイバー(モモン)を認識。ステータスを確認、戦うところを観察しました。
4.
ステラ・ルーシェを視認。死期が近いことを知りました
5.バーサーカー(
朽木ルキア)とランサー(駆紋戒斗)の宝具を認識しました。
6.僅かな苛立ち。
※(E-3)自然公園内に爆発で生じた穴と地面が焼けた跡が戦闘の痕跡として残っています。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
満身創痍のルキアは、ステラを抱えて夜闇の中を、宛も無く彷徨う。ルキアは現界にマスターを必要としない。それなのにステラを護るのは何故なのか。
嘗て共に過ごした姉弟との記憶か。
ルキアに融合した姉弟の意思か。
狂気に囚われたルキアの精神(こころ)が答えを出すことは有るのだろうか。
【E-3/自然公園周辺/1日目 夜(21:50)】
【ステラ・ルーシェ@機動戦士ガンダムSEED DESTINY 】
[状態] 数日経てば死ぬ状態
[装備]無し
[道具] 無し
[所持金] 無し
[思考・状況]
基本行動方針:生きたい。
【バーサーカー(朽木ルキア)@劇場版BLEACH Fade to Black 君の名を呼ぶ
[状態] ダメージ(大)
[装備] 鎌
[道具] 無し
[所持金] マスターに依存
[思考・状況]
基本行動方針:??????
1. マスターを休ませる
[備考]
1.セイバー(ガッツ)アサシン(大道克己)と交戦。カオスヒーローをセイバー(ガッツ)のマスターと認識しました。
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最終更新:2017年01月29日 05:28