+ 夏影 弾一
(イラスト:灘)
<基本データ>
PC名: 夏影 弾一(なつかげ たいち)
PL名: クロエ(黒絵本)
コード名: レーサム・ジャーミティー(ジェームズ・モリアーティ)
スタイルクラス: サポーター
レイヤークラス: センチネル
ワークス:ストレンジ・ラボ

<ライフパス>
出自: 富裕層
経験: 英才教育
動機: 復讐
邂逅: トラウマ ランドルフ・ホフキンス
コードフォルダの形態: メモリ(USB)
コードへの感情:否定

<自由記述欄>
 ストレンジラボで毒物の研究をひっそりとしている。
+ 生い立ち
 かつて母親を何者かによって殺されてしまっているため、復讐するために特殊な毒物を作り出そうとしている。しかし、周囲の人間には研究した毒物の一部が人体に有用であったりしたため、新たな薬品を作っている人だと思われている。なので、彼の目的を知っている人は数少ない。
ストレンジラボで働くようになったのはわずか10歳の頃である。

+ 資産家と裏仕事
 様々な機関から法外な値段で毒物の提供などの依頼を受けているため、研究で得た富と合わせて金銭的には生活に困るようなことはなくむしろ生活の質はクレイドル内では良いと言えるが、ストレンジラボに対して莫大な献金という名の運営資金を投資しているため、金の力で物事を解決することは緊急時以外はできない。一説によると、彼の資金投資によってストレンジラボの経営が成り立っていると言われているらしいが真相はわからないのである。また、父親がそれなりの資産家であるため母親が殺されてからは、家からの支援も増えてより快適なラボ運営がされているようである。
 なお、富裕層に対しては数億という金額を提示する反面、自身と似たような境遇の子供に対しては、二束三文いや無報酬で依頼を請け負うなど人の良さが垣間見られることもある。
 当人曰く、「だって、これほどまで壊れた世界で恨みも晴らせないなんて、かわいそうでしょ?止めたって聞かないんだろうし、それなら僕も一緒に背負ってあげなきゃ。まぁ、復讐なんてしないほうがいいと思うけどね。」と言っていたらしい。
 ただし、回復薬などをあげるさいに相手に見合った対価を要求してくるため、マインドリーバーを最も貰いたくない相手であるかもしれないが、自分で使う以上の薬を持っているのもまた事実である。もちろん対価にはお金以外のものも含まれている。
 見知った相手には部屋の掃除を頼み、知らない相手にはおすすめの食事処で奢ってもらうということが多い。
+ コードについて
 コードがモリアーティーとなっているが、これは仕事の幅を広げるためにレイヤードになろうとして実家に何かないか探した際に見つかった母親の形見でUSBメモリを発見し、よく確認もせずに持ち帰った。生前、母親は「シャーロキアン」といえるほどのファンであったため、シャーロック・ホームズかワトソンのコードでも入っているのだろうと思っていたが、中身を確認してみるとそこには入っていたのはジェームス・モリアーティーのコードであった。「人の信用を得るなら、シャーロック・ホームズほどの適任者はいないだろうと思って作ったんだけどね、真逆の奴が来ちゃったよね。」と彼は落胆していたようである。このような、なんとも言えない感情をモリアーティーに対して抱いているが、名前については偽名でも使えば、悪役であるモリアーティーの名前を出すことによって心象が悪くなることは防げるだろうと考え、「Reasam Jormity(レーサム ジャーミティ)」という名称を使うようになった。また時折、USB内にいるモリアーティーが悪さをするため、データを書き換えるがその度に直しているので、幸運の値は20ではなく2となっている。
 ランドルフにとあることで研究対象にされた際に、決死の交渉の末に研究室内でのみ活動できるUSB差し込み口付きモリアーティー型のアンドロイドを用意してもらっている。しかし研究結果をまとめてもらうかチェスの相手をしてもらうくらいで、有用には使えてないようである。また、センチネルとしてバイクの形態を使っているが、媒体となるUSBを刺さなければ使うことができないのである。なお、バイクに繋がれていても話すことはできるようで、胡散臭い口調で話しかけられてはめんどくさそうにしている。
+ 戦闘について
 戦闘は基本的に人任せなので自ら手を汚すことはないと言える。なお、毒物の研究をしておきながら戦闘中にそれが生かされることは今のところない。普段の仕事用に毒物を作るので手一杯でそこまで用意できないからである。また、戦闘中に一度でもダメージを受けると、モリアーティーが少し不機嫌になるので、気づくとバイクが見た目だけ馬車になっていたりする。
 このような、訳の分からない経歴を持っている弱冠15歳の天才がストレンジラボにはいるようである。
+ Waterfall 0話
ーfew years agoー
もうすぐ嫌な季節がやってくる、というのも予算決めの会議が今月末にあるのであった。彼は忙しい日々が更に増えることを想像して、辟易としていた。自分の親のかわりに出ているとはいえ、数日の間ずっと大人達に囲まれて、ああでもないこうでもないと話し合う様を見るのはどうにも疲れることであった。
「考えてもしょうがないか、少し休憩でもしてこよう。」と研究室を出て自室へと移動するとそこには紅茶を優雅に飲んでいる老紳士がいた。
「あぁ、jormityも休憩中か。」と近くにあった缶コーヒーを手に取り、彼の対面にあった椅子に腰掛けた。
「そろそろ今日の夕ご飯前の一勝負でもしておきますか、mr.jormity 今日も僕が勝つとは思いますが。」15歳とは決して思えない黒い笑顔を向けていた。最近、この2人は夕方になると飽きもせずにチェスをし始め、夏影が勝てばバイクの形態になったjormityに夕食で食べたいものを買いにいかせて、jormityが勝てば出前、研究所の食堂、もしくは嫌がらせついでに夏影に買いに行ってもらうなど側からみれば阿呆らしい勝負をしていた。今日もそれは変わらないようで、静かに闘いが始まっていた。いつもどおり接戦に持ち込まれたように見えたが、今日はjormityの方が一枚上手だったようで、惜しくも彼は負けてしまった。
「チェックメイト 珍しい!今日は私の勝ちですね、坊ちゃん。」と彼は愉快そうにしている。
「それで、何が食べたいんだ?」と負けた方の決まり文句を言って立ち上がり、机の上に無造作に置かれている財布を手に取ってjormity の方を向いた。
「そうですねぇ。今日は食堂で、と言いたいところですが、私が勝つのも久しぶりですからね。ここは、おでんで手を打つことにしましょう。もちろん、屋台のおでんでお願いしますね。遠いようでしたら、移動手段くらいにはなって差し上げましょう。」
「jormityがそういうのなら、負けた僕には拒否権はないよ。たまには2人で遠出も悪くはないからな。」と先ほどまで話していた老紳士からUSBを引き抜きバイクに繋げると、青く光ったバイクを彼は手押しで引いて外へと向かった。
この後彼の部屋に思わぬ訪問者が来るとは知らずに…

今日の夜ご飯となる、おでんを買って帰ってきた2人が部屋に戻ると強盗にでも押し入られたのかと思うほどに部屋が荒れていた。より正確に言えば、部屋に置かれている薬品関連の棚が全て開けられており、棚の中にあった大事なとあるものが消えていた。
机の上にはメモが残されていた。
「夏影さんへ 部屋の物をお借りします。申し訳ございません。冬星」とだけ書かれており、彼はjormity のことも忘れて、部屋の外に出て自身の共同研究室へと向かっていった。
数人が慌しそうに部屋の中の器具を運んでおり、部屋の奥に置かれたストレッチャーに誰かが寝ているのが僅かだが見えた。その周りには、治療分野の研究を専門にしている人達がいて、緊急事態であることを物語っていた。それと同時に、僕の部屋にあった特殊な回復薬を使うために数人が製剤化を大急ぎで行っており、作られた薬がまとめて置かれている。
「なるほど、このラボ内の怪我人というわけではなさそうですね。どこで見つけられたのかは分かりませんが、落ち着いたら僕にも事情を教えていただけると助かります。」と近場にいた研究員に伝えると奥で回復薬を作り続けている人たちにも「もう暫くしたらこの薬が必要になってくると考えられますが、製剤化が間に合わなくなったら、ガーゼなどに浸して直接患部に貼りつけてください。効果は少し落ちますが、それでも普通の回復薬よりマシでしょうから。全量使ったとしても、人体への負担はかなり少ない物になっているので、可能な限り多量投与してください。」と伝えて彼は自室へと戻っていった。
部屋に戻り落ち着いた様子で、バイクに刺さっていたUSBを抜き取りアンドロイドへと差し込み、少し冷めたおでんを手にとり、席について不機嫌そうなjormityを横目に食べ始めた。
「坊ちゃん、私のことを忘れるほどの用事だったのでは?私はご飯も食べられずに1人寂しくお腹を空かしてましたよ。」
「すまない、何しろ緊急事態だったみたいでね。僕としても無視できなくてさ、ごめん。というか、食事を取らなくてもお腹が空くことはないだろう、jormity?」
「そうですが、そこは1人にして悪かった、って謝って終わるところですよ坊ちゃん。それで、何が起こっていたのですか?」
「うーん、誰かが死にかけてたみたいだね。それ以上は僕にはわからない。今頃、死ぬか生きるかの瀬戸際なんじゃないか?」
「坊ちゃん、それは戻って治療を手伝った方が良かったんじゃないでしょうか。人手は多いに越したことはないかと思いますよ。」
「その必要はないだろう。というよりも僕がいる方が邪魔だと思うよ。僕には、人を殺すことも生かすこともできる薬は作れても、ちゃんとした使い方までは考えないからね。作れることと使えることには大きな違いがあるんだよ。適材適所ってやつなんだろうな。」
話が終わる頃には、器にいっぱい入っていたおでんの具材が空になっていた。
「片付けるか」と席を立とうとすると、扉がガタッと開いて、そこには冬星が立っていた。
「お待たせしてすみません。ようやく回復の目処が立ちまして、後は向こうにいる人でどうにかなりそうだったので、事情を話しに来ました。それと、回復薬を勝手に使ってしまってすみません。ようやく、実用化されるところだったのに。」
「そんなことはいいんです。それで助かる人がいるなら作った甲斐がありますよ。昔の人も、多くの人々を救うよりもまず目の前にいる人から助けなさい、なんて言っているくらいですから気に留めることじゃないですよ。それはそれとして、何があったのですか?」
「それが、素材狩りに行った研究員が倒れている少年を連れて帰ってきたみたいで、最初は普通の回復薬で治療していたんですが、どうにも負荷が大きすぎて症状が悪化してしまいまして、やむを得ずあの回復薬をお借りしたんです。」
「なるほど。でしたら、あの器具ごと置いたままにしておいてください。いつ必要になるかわからないですからね。使い終わったらそのうち回収しておきますよ。」
「いえ、もう山場も超えましたし勝手に借りてしまった手前、お返しした方がいいと思ったのですが」
「その必要はありませんよ。もとより、作成方法は既にまとめてありますから、お気になさらず。大体の事情もわかりましたし、はやく治療を手伝ってあげてください。冬星さんお呼び立てしてしまい、すみません。」
「いえ、こちらこそ説明が遅くなってしまって申し訳ないです。」
そういうと、彼女は部屋を後にした。

そこから何度か研究室へと顔を出していたが、髪の色素が薄い少年がボーッとしているだけであった。何度か話しかけてはいるものの、はっきりと返答が返ってくることはあまりなく静かな時間が続いたりした。どうにか名前だけは聞けたが、ルネという名前以外はよくわからなかった。治療も一週間が過ぎたあたりで区切りがついたようで、気づけば研究室の外にも出かけたりする様になっていた。
他の研究員との仲も良好なようで、科学的技術に明るければ今すぐにでも職員になるだろうと考えられた。

僕が気がかりなのは、「家に帰りたい」と言わないことだった。

普通の人間だったら、いくら居心地のいい場所を見つけたとしても、家に帰りたくなることはよくあることだ。まして、僕とほとんど変わらない子供だ。家族が恋しくならないはずがないだろう。でも彼は家の話をしなかった、誰もがそれを普通と思うほどに。

「明日は忙しくなりますね、坊ちゃん。」
「あぁ。」
返事はそっけない。
「おや珍しい考え事でもしてるんですか。」
「長考するのはいつものことだろう。」
「明日は会議の日なんですから、しっかりしてくださいよ。」
「そうだな。蛇足でしかないことを考えていても仕方がないな。」

彼は、手帳に「明日の会議 家 回復薬 観察」とだけ書いて、その辺にあるソファへと向かった。
次の日の会議で、今まで傍観者を貫いていた夏影がルネがストレンジ・ラボに気兼ねなく残れるようにするために何を言ったのかはもう誰の記憶にも残っていない。ただ、この会議の後にルネに研究員番号が割り振られたのは紛れもない事実であった。

その後、彼らが友人に近いような仲の良い関係になり、夏影のコードがジェームズ・モリアーティのアナグラムであることにルネが気付くのはまた別のお話。
+ Waterfall 1話
夏影日記
今日は久しぶりの外出だった。とはいっても普段から食事でそれなりに外には出ているんだけども。
この世に存在するかもしれない「神薬」についての実地調査をしたんだが、世の中には僕を超える悪人が簡単に見つかるものだと、感心した。
それと同時に、外の世界へ関心を向けるのが遅すぎたと少し後悔もした。ラボの外には様々なものがあるみたいだ。灰島さんは、どうやらそれなりに大きい戦いに出向いていたからしょうがないが、「散歩」をしていたルネよりも何も知らないというのは少しショックだった。
話が長くなるだろうから、結論だけ先に述べておこう。僕が得られた「神薬」についての情報はほとんどないと言ってもいいだろう。現場からは、それを管理している敵の情勢が少し分かった程度だった。その敵に対して冨士原さんが、どことなく他の人と顔つきが違ったような気もしたが、それは僕には「必要のない情報」だと思ったから、自分から聞こうとは思わなかった。
ひとまず、何もわからなかった、ということが分かっただけだった。
それで、これは僕なりの反省なんだけど、もう少し外を見ようと思った。とは言っても、すぐに何か行動したいわけでもないんだけどね。だから、珍しく僕よりも詳しそうだったルネを頼って、少しでも「神薬」に近づこうと思った。その結果として、「パラ・ライカ」というレギオン所属のレイヤードを紹介してもらったが、さてどうやって連絡を取るべきなのか検討もつかない。出会えなかったとしても、それもまたしょうがないだろう。
ひとまず、もう少し動いてもいいと思った。

+ Waterfall 1.5話
夏影日記
ルネの現状を聞いて「なるほどな、そうだな僕から話したいことは2つになるな。
1つ目は、ラボもそこまで脆弱じゃないっていうことだよ。
たとえ巻き込まれようとも、腐ってもストレンジラボの研究員達だ。僕含め彼らが黙ってみているわけがない。ルネが心配せずとも、自分たちの居場所くらい守れるよ。
それから2つ目だけど、1つ目の話をした上でルネが『家出』をすべきであると思っているなら、僕には止める権利はないよ。
たしかに、僕はルネの後見人と言えるが、それなら僕がルネに伝えたいとすれば、自分の意思で考えてほしい、の一点になるだろう。自分で選んだ選択肢なら、胸を張っていてほしい。もちろん、その上で僕は僕なりにルネを応援するし、力になろうとするだろう。灰島さんのいう通り、近くにいる方がいいのかもしれないし、そうではないかもしれない。でも、そんなことは僕にだって正解がわかる話じゃないのははっきりしているだろう?」

+ Waterfall 2話
夏影日記
そういえば、先日レディオヘッドに言葉のあやを肯定と捉えられて、ひどい目にあったわけだが、僕にとってなんともいえない出来事ばかりであった。

ルネから、現状の話を大方きいてしまったせいでもはや「神薬」について調べる必要がなくなってしまった。あれほど、調べるべきだったものの実態が分かってしまえば、こんなものでしかなかった。それでも、ルネに少しでも情報を伝えられることは、今の僕にとってはメリットだったから、今回の話を無視するのも違うかと思って出向いたが、まぁレギオンにはろくな奴らがいないんだろうな。人の話を聞かなそうな人間、やけにふわふわしてるリーダー、気弱そうな人間に、物と無口な人間。何度考えても吐き気がしそうだ。

他からすれば僕も大概碌なやつではないが、それ以上に彼らはひどかったよ。とはいっても、仕事となれば協力ができないわけではないからそこは、さすがといったところだけどな。
情報収集で呼び寄せておいて、戦闘を強要されるとも思ってなかったしな。いつもは、もう少しやることもなく後ろから見ているだけだったが、前線に出されるとは思っても見なかった。アレほど全力でバイクを使ってはメンテナンスに時間がかかるから嫌だったんだがな。もちろん、情報面では仕事の大半はこなせていたから、そこについてはもう及第点でいいだろう。

まぁ、手のかかる人間というのは見ていて面白いモノだからね。僕としても、ラボ以外の人間に会えることそのものは楽しかったとも。彼ら、ラボの人間を相手にすると、少しばかり僕は甘くなるらしいからね。

今回は、僕の意図通り質問もできて満足だったよ。結月君、には悪いことをしたね。ここで、一応謝っておくことにしよう。彼が、何も持っていないことくらい、話ぶりから分かってはいたが、これは通過儀礼のようなモノだからな、もしかすると次に会うときがあれば、今度は答えを聞くことができるかもしれない。楽しみだ。

むしろ、今回はリーダーである仙石さんから答えが聞けたのは面白かった。彼のためとはいえ、「刀」か、なかなかききなれないモノだが確かに、彼女が価値を見出すものとしては充分だったのだろう。あの場で即座に答えるあたり、「刀」に何かしらの執着をしているのだろう。僕はもらえるものそのものには価値がなくとも、受けとるつもりでいるからね。そう、あの答えに価値があると思っているよ。

毎回、失敗作のエンフォーサーにしか会えないモノだと思っていたが、彼は、失敗作なりに0なんかじゃなかったんだろうな。でなければ、あのような死人を悼むような部屋は作らないだろう。腹立たしいが、あれが彼たる所以なのだろう。

そういえば、ラムリス、だったか?彼女に戦闘後に報酬をねだられるかと思っていたんだが、彼女は気づけば居なくなっていたんだ。不思議なことがあるもんだ。いや、少しは察しがつくがそこは触れないでおこう。

総評として、僕としても今回の任務は楽しいものだったよ。もう2度と行きたくないとは思っているけどね。
はぁ、バイクの整備をジャーミティーにやってもらわなきゃなぁ。


+ Waterfall 2.5話
夏影日記
ルネが『家出』して、幾ばくかたった。おそらく最後の戦いをするのだろう。僕が関われる部分はもうない。結局パラ・ライカにも会うことはできず仕舞いだったが、冨士原さんに渡すべきものは渡せた、ルネに伝えられる限りの言葉は述べた。もう思い残すことはない。彼らが戦って勝ってきてくれることを、ルネが帰ってきてくれることを願おう。いや、その必要もないか。彼らは必ず勝って帰ってくる、それは僕にもわかっている。
あぁ、ストレンジラボの所員として僕もここで頑張らなければいけないな。そういえばあれは、どこにあったかな。ルネが帰る前に探しておかなければ。



どうやら、もう少し続くようだ。

ルネが帰ってきた。初めて会ったあの日よりもボロボロになって帰ってきた。ただ、ルネはあの時とは違って良い表情をしていた。僕が見たどの顔よりも良かった、グシャグシャではあったが良い笑顔だった。
彼らは、そうこの世界を救ったのだ。
僕は、用意していた職員用の名札をルネの首にかけた。
「おかえり、ルネ。」
その名札にはルネの名前と所員番号、と見慣れた事が書かれていた。しかし、疲れたルネが気付けるかはわからないが、そこには金色の桔梗の花の印が付いている。おかえり、ルネ。今日からまた僕ら、ストラボの研究所の研究員としてよろしくな。
この世界を救ってくれてありがとう。
そして、ちゃんと帰ってきてくれてありがとう。

<参加回>
+ 夏草 金魚 imageプラグインエラー : 画像を取得できませんでした。しばらく時間を置いてから再度お試しください。
(Picrewの「なんとかメーカー(仮)」より)
<基本データ>
PC名:夏草 金魚(なつくさ こがね)
PL名:あーちゃ
コード名:チャールズ・ダーウィン
スタイルクラス:サポーター
レイヤークラス:シャドウ
ワークス:ストレンジ・ラボ

<ライフパス>
出自:病弱
経験:サルベージ
動機:探究心
邂逅:沢渡シン
コードフォルダの形態:日傘(カギ)
コードへの感情:親しみ

<自由記述欄>
 22歳のアルビノの女の子。肌が出ないように、日常的に暗い色の服を着ており、度が強い遮光眼鏡をかけ、髪に朱色のリボンをつけている。外へ出るときは日傘が欠かせない。眼鏡をかけても視力はそこまで良くない。また、長時間野外で活動していると体調を崩してしまう。
コードフォルダは、ユニセックスデザインのシンプルな黒い日傘。職人手作りの強度には自信ありな逸品。ストレンジ・ラボの同僚に定期的にメンテナンスを頼んでいる。持ち手の部分が鍵となっており、持ち手を捻るとコードが起動でき、傘の内側から無数の黒い鳥の影が現れる。
 くたびれた革のショルダーバッグをいつも使っている。中には、コルク栓がついた試験管が何本か収納されている。中には、ハーブ、ドライフラワー、種子などが詰まっている。原材料はストレンジ・ラボ産。服の下に種子が一粒入った小瓶のネックレスを身につけている。
 ストレンジ・ラボでは、骨や種子からDNAを解析し、大侵攻前の動植物を復元するための研究をしている。しかしながら、機器や参考文献が足りておらず難航中。


 一般家庭に生まれた(両親はアルビノではない)。その特異な髪や目、肌の色はもちろん、日傘を常に持ち歩き、日焼け止めを高頻度を塗る姿から、幼い頃から好奇の眼差しを向けられることが多かった。外に出ることが禁止されていたわけではないが、あまり出ることはなく、図書館でよく本を読んでいた。周りから避けられることは多々あったが、それに負けないくらい両親から愛情を受けていた。いつも髪つけている朱色のリボンは、母親が毎日リボンを結んでくれた名残り。ただ将来の希望を持てず、ただ漠然とこのまま早死にするのだろうと思っていた。
 12歳のとき、ベクターによる侵攻を受け、町が壊滅的な被害を受ける。運良く金魚は被害を免れたが、両親が建物の下敷きになってしまった。なぜ好人物で健常な両親が死んで、不完全な自分が生き残ってしまったのだろうかと納得できなかった。
 その後、親戚に引き取られる形で、ムサシクレイドルにやってくる。親戚は良くしてくれたが、それでも普通ではない金魚に対して壁を感じ、よそよそしかった。
ある日金魚が図書館で一冊の本を見つける。それは「自然選択」についてだった。世の中の理不尽な生死への言及と分かりやすい理論にあっという間に心惹かれた。同時にその理論は彼女への希望となり、生きる意味を見つけた気がした。そこから、彼女は生態学、特に大侵攻前に興味を持ち始めるようになる。
 元々、普通の学校には馴染めなかったため、中等部卒業後共にストレンジ・ラボを訪ねる。しばらくしてストレンジ・ラボに馴染んだ後、自ら志願して、レイヤード適合試験を受け、「チャールズ・ダーウィン」のコードと適合した。

「自然選択とは、有用であれば、例え些細なことでも、保存されていくという原理である。」

<参加回>
+ ニィ
(Illustrator:灘)
+ picrew版
<基本データ>
PC名:ニィ
PL名:O-Ton
コード名:ボーパルバニー(ジェネレイト)
スタイルクラス:ブレイカー
レイヤークラス:リベレーター
ワークス:レギオン

<ライフパス>
出自:暗殺者
経験:カルチャーショック
動機:熱狂
邂逅:???
アイソレイトコアの位置:右手の甲
コードへの感情:自己肯定

<自由記述欄>
魔獣「ボーパルバニー」のコードを擬人化したリベレーター。
もともとバベルの意志に反する存在を暗殺するのが役割で、ただ淡々と任務をこなすだけのエンフォーサーだった。
それがあるとき人の文化、芸術、そしてそれを謳歌する自由に触れ、衝撃を受け……バベルの命令から解き放たれた。

「文化や芸術、そしてそれを生み出した人間を滅ぼすことは間違っている!」

この思想からレギオンに所属。もともと淡々と任務をこなすことには慣れていたため、レギオン内での評価もどんどん上がった。
今ではレギオンのエリートエージェントとして名が通っている。

ボーパルバニーとは、かわいい外見で人を安心させ、不意打ちで殺す魔獣である。
これをコードに持つゆえ、当然ながらニィ自身も人当たりがよく愛嬌がある。

特に人の文化に触れた後は、基本的にいつでもニコニコ。信用と寵愛を得るのがさらに得意となっている。

万人受けする愛嬌があるため、レギオン内でも渉外・広報担当のような仕事を割り振られることがままあり、その一環としてアイドルのようなパフォーマンス(ダンスや手品、バトルショーなど)を行う時もある。
そういった場合は外部の人員ともコラボをすることも多い。(特に 紫陽朱華 とは良くコラボしており、「はねはね」「ニィニィ」と呼び合う仲。)

「わたし?レギオンのエージェント、ニィよ。よろしくね!」(IDを見せる)
「手伝えることがあったら言ってね?」
「みんなで食べ歩きしよ! 腹がへっては戦は出来ぬって言うでしょ?」
「ふふ。わたし、顔が広いからね。なんとかできるかも」
「わたしは、人間と仲良くなるように作られたから」
「人間、そうでなくっちゃ」

「わたしをただのウサギと見くびらないでね!」
「私は人間じゃないけれど、人間を愛する気持ちは人一倍あるわ。……人間の心を、おもちゃにするな!」
「あなたの首を切り落としてやるから!」

「アイドルとダンスでもいかが? 壊れるまで終われない、ブレイクダンスだけどね!」
「これが、ボーパルバニーの、致命の一撃よ!」


外見年齢:10代後半
身長:約160cm
体重:約50kg
情報達成値4:90/60/85

+ 【他キャラとの因縁】
公私ともに仲が良い。
第3話にて一緒に「アポロン」に相対し、姉のことを聞く。力になりたいと深く思ったため、より一層力を入れて「アポロン」のことを調査していくことを誓う。
また、お互い、表の顔だけでなく、裏の顔を隠してるんだろうなぁと言うことを分かっているが、お互いあえて触れないようにしている。
第24話にて再び共闘する。
信頼し合っているニィと朱華は戦いの場でもお互い通じ合っていた。

「はねはねこそ、言いたくてたまらないって顔、してるよ?」
(何も言わずにウィンク一つ)

第3話にて共に戦う。瀕死の氷雨さんと共にレギオンに来るように誘う。一度は断られるが、帰りの車の中で事情を知り、さらにみんなと説得し、最終的に受け入れてもらう。
今回の件のコードのようなSCPという存在のことも教えてもらった。
今後は同僚としてももっと頼りにしていいよ、と伝えたつもり。
第20話にて再び共闘する。
インクの染みについて調べて伝えて、最後まで手伝うよって伝えた。
第24話にて再び共闘する。
愛する人だけでなく自分も含めた皆を救う姿勢に、好感を持つ。

「二人がファミリーだっていう位、絆があるのなら……。わたし、レギオンじゃない場所も、案内できるかもね」
「ふふふ。エリートエージェントのニィちゃんですから!」

第3話にて共に戦う。リベレーター仲間としていろいろと話をさせてもらった。
ユイットさんは人の感情やいろいろなものに疎い感じがしていたから、人の機微に敏感な先輩として、感情とか笑顔とか人らしさ的な物を伝えたつもり。
第20話にて再び共闘する。
色々とつっこみを入れたりちょっとフォローしたりした。
第24話にて再び共闘する。
一緒にカフェに行ったり交流を深める。

「そう。共感できるところが多い方が、人間さんは好意を感じるのよ」
「ユイットさんはあいかわらずね」

第3話にて共に戦う。シンジュク樹海から出てきたばかりの無垢なあさひちゃんと頼りになるディルくん。
とても純粋なため保護欲が湧いてきてしまう。ラーメンの食べ歩きなども一緒に行く約束をする。
シンジュク樹海出身と聞き、とてもびっくりするが、逆にいろいろ納得した。
第24話にて再び共闘する。

「そんなにいいところなら、一回行ってみたいな」
「ディルクルムさんはやっぱり大人ね」

第13話にて共に偵察任務を行う。情報収集能力と圧倒的な推理力、他者を“疑える”能力、戦いの場での支援能力全てに感服している。
古瀬さんがアイソレイトコアに嫌悪感を示したのを見て、ニィが自分のコアに複雑な気持ちになった時にもすぐ察してくれて、気を使ってくれた。
優しさと強さを両立できる、すごい男の子と思っている。
なお、ニィは教授の存在については気が付いていない。
「ルゼ君、ありがと。君がいてくれてよかったわ」

第13話にて共に戦う。ころころと笑いながら余裕で場を動かしていく、色んなものを超越したお姉さんだと思う。
何を考えているのか読めない部分も感じているし、ビルダーベアに対する言動を見て、何かを切り捨てる時はまったく容赦しないとも気付いている。
だけど、最後に抱きしめられた時に、つい甘えてしまった。何でも受け止めてくれる人だと感じたから。さらにそこで「人間らしくなったって事やない?」と言われ、とても嬉しくなった。
第20話にて再び共闘する。
色々と楽しんでおいで、と言われて、一緒に楽しもうよ、だって、友達でしょ?って伝える。
すごく喜んでたみたいだったしいっぱいぎゅーっとされた。
第24話にて再び共闘する。
からころ笑う姿はいつも通りのように見えたが、何か少し違う様な……?

「また、牡丹さんにどこかで会えるといいな」
「こんなに早く会えるなんて思わなかったな」

第13話にて共に偵察任務を行う。レギオンの後輩で清涼剤で守護神だと感じている。
純粋なくもりの無い思考でいろいろと気遣ってくれるし、人を信頼できるし、ニィが素敵だなと思うものをたくさん持っている。
このままもずっとそのままでいて欲しい、守りたい存在。
「そにやちゃん、あなたの良さをずっと失ってほしくないわ」

第13話にて共に偵察任務を行う。四季財団の優秀な営業マンで、できる仕事人だと思う。
常に一歩引いて全体を見てくれるし、率先していろいろと動いてくれた。
とても優秀だと思ったからこそ、最後にニィは組織のボスのアル・カポネに「平八さん、面白いと思うわ」と推薦した。
表からも裏からも一緒にビジネスしたいなと思う位の人。
「平八さんとは、また一緒にお仕事がしたいわね」

第20話にて共闘する。
冷静に指示をしてみんなの要になってくれた。
ガーディアンのとても優秀な人だと思った。
第24話にて再び共闘する。
もっとお話をしたいと思う。

「町野さんがいなければ、みんな倒れていたと思うわ」
「あなたの銃、すごいのね。大活躍だったわ」

第20話にて共闘する。
少し自信がなさそうにしていたけれど、的確に人の事を見ている気がした。
牡丹さんに一緒に可愛がられた仲間。
第24話にて再び共闘する。
討伐戦後、ガーディアン本部でお洒落談議をするなど、普通の友達としても仲良くなる。

「強いんだから、もうちょっと自信持ってもいいのにな」
「今度外で会ったら、ハグしちゃうからね」

第20話にて共闘する。
マイペースにいろいろとすすめる浮世離れした人。
観察眼が鋭くて、沢山のところで助けてもらった。
第24話にて再び共闘する。
最初から最後まで力を貸してくれつつも、マイペースぶりは変わらなかった。

「あなたの言動で結構和ませてもらったわ」
「利益が一致している時だけでも、信頼したいと思うけど」

第20話にて共闘する。
HLCのハンターさん。歴戦の兵だと思った。
戦いの場でもニィとウマが合っていた気がして、好感を抱いている。
第24話にて再び共闘する。
討伐戦で最後に逃げるときに抱きかかえられ、軽口をたたき合った。

「何となくだけど、あなたとはあうんの呼吸で戦えそう」
「あなたのお姫様抱っこ、中々良かったわよ」

第20話にて共闘する。
四方木さんの相棒のレガリアさん。二人の間の絆が固いものだと見てとれた。
戦いの場でもコードの力で物凄く助けられた。
第24話にて再び共闘する。
今回も三成さんの力のおかげで生き残れたと思っている。

「隣にいるだけですごく力が湧いてくる存在ね」
「ふふ、一瞬でも乗る事ができて嬉しかったわ」

第24話にて共闘する。
考え方に共感するところも多い、真面目な人。
いろんなレイヤードに会って、さらに強くなりたいと思ってそう。

「これからも一緒にみんなを守っていきましょ。同志として!」

第24話にて共闘する。お調子者の新人君。
どうしてもからかいやすい、可愛い後輩くん。

「ま、頑張ってね。半人前英雄様(くすくす)」

第24話にて共闘する。アイドルプロデュース会社を副業でやってたりする。
討伐戦の間、最悪の状況まで想定していろいろ動いてくれた。

「アイドルとしての仕事もアドバイスもらえると嬉しいわ」

+ ジェネレイトコード:【ボーパルバニー】詳細
【ボーパルバニー】 魔獣
体3敏4感4知1意3幸3
生命21精神18行動8
回避1探知1

【うさちゃんと思った?】
最大3LV 常時
あなたは封鎖の影響を受けない。
あなたの命中判定と防御判定にダイスボーナス[LV]を得る。

ボーパルバニーは、可愛らしいその外見に反し、驚異の跳躍力と素早さ、そして発達した門歯で人間の首を掻っ斬る残酷なモンスターなのだ。
+ ※裏情報(PCには基本明かしません)
表向きの職業はレギオンのエリートエージェント(データ上でも【エージェントID】を取っています)。
だが実は、“スカーフェイス”アル・カポネのファミリーの一員でもある。

ニィは、その実力と愛嬌、人当たりの良さを見込まれて、ファミリーからレギオンに送られたスパイ。
そのため時間をかけてレギオン内部で地位を築き、アル・カポネの為にあらゆる情報を流している。

レギオンで人々を救うこと自体に反発がある訳ではないし、理念に共感もしている。
「文化や芸術、そしてそれを生み出した人間を滅ぼすことは間違っている!」という思想にも嘘はない。

そんなニィがどうしてアル・カポネのファミリーになっているかと言うと、リベレーターとして覚醒したのがアル・カポネのアジトだったから。
かつての暗殺者時代、アル・カポネを殺す仕事をしに来たが、そこで大量の文化、芸術、そして自由なファミリーの姿に衝撃を受け、魅せられた。
そしてアル・カポネに説得され、その姿勢に心酔し、ファミリーとして奉仕するようになった。
アル・カポネもそんなニィを気に入り、レギオンの中枢に侵入するという大仕事を振った。

その信頼に応えるべく、ニィは笑顔できっちりレギオンの仕事をこなしている。

パフォーマンスは当然アル・カポネの一員としても行う時がある。
前述のパフォーマンスもそうだが、カジノのディーラー等もする。

「はぁい、ファーザー。直接の連絡なんて久しぶりね?」
「久しぶりにクロベで歌って行くわ。そうでないと疑われちゃうもの」
「ふふ。それを見越して私を派遣してるんでしょ?」

邂逅:“スカーフェイス”アル・カポネ (関係:ファミリー 感情:忠誠)

【重要メモ】
第3話にてSCPのことを聞いた時、GMから「ニィちゃんはこの情報を深くほれると思います!」と言われた!!!
と、いうことは、つまり……???

<参加回>
+ 猫目 笑一
<基本データ>
PC名:猫目 笑一
PL名:モナ
コード名:チェシャ猫
スタイルクラス:チェッカー
レイヤークラス:ヴェール
ワークス:天秤機関

<ライフパス>
出自:サバイバリスト/生存術
経験:犠牲者/裏社会
動機:ビジネス/大金を稼ぐ
邂逅:苦手な人/紗川ラウラ
コードフォルダの形態:インプリント(首のあたり)
コードへの感情:嫌悪→有為

<キャラクターシート>

<自由記述欄>
天秤機関に所属するレイヤード。
エセ関西弁で話す。
両親はおらず、物心ついた頃から非正規の小さなシェルターの中で、他の孤児たちと共にその日その日の暮らしをしていた。
非合法な実験に被検体として扱われた経緯がある。その際にチェシャ猫のコードと適合、レイヤードとなった。
彼を苦しめた研究組織はレギオンや天秤機関の介入により壊滅しているものの、当時彼と同じように被検体とされていた子どもたちは笑一以外全員死亡している。
天秤機関のレイヤードとして働く傍ら、親を亡くした、もしくは捨てられた孤児たちの保護活動をしている。
稼いだお金のほとんどは保護した孤児たちに寄付しており、自分用はほとんどない。

+ tale -笑えない猫-




―――――。―――――――――。



「ッ!」
とっさに飛び起きる……酷い汗だ。
外からは雨のささやき。
手元の端末には03:22と書いてある。
「……シャワー浴びよ」
ぽつりと呟いてベッドから出――ふと、部屋の一角を見やる。
その小さな仏壇には様々な小物が供えられている。

また、あの時の夢。

俺が『俺』である理由。




俺は非正規の小さなシェルターで生まれた。
物心ついたころから親なんてものはいなかった。
当然、名前なんてものもない。
……あの町は、助け合うなんて余裕はなかった。
だから誰も助けちゃくれなかった。
だからあの時の俺は盗みで生きていた。
盗みで生きてきたやつが今になって私立探偵みたいな仕事してんだな。笑っちゃうよな。
まあでも、そうでもしなきゃ生きていけなかった。
……そうやって俺はなんとか生きていた。

生きてりゃ誰にでも転機ってやつは来る。
俺もそうだった――でもそれにしては、ちょっと幼すぎる『転機』だったけど。

あの日、俺の前に現れたのは、歳は俺とほとんど変わらない――いや、ルルはもう少し幼かったか――4人の子どもだった。
開口一番「お前、俺たちと来いよ」なんでにっかり笑って言うもんだから正直うるさいし気持ち悪かったので一回逃げた。
でもまあ結局は観念した。こいつらの告げ口で盗みがバレるのも厄介だ。……4人のうちの2人に行き止りまで追い込まれたからって理由じゃない。
その少年は相変わらずにっかり笑っていた。
「俺はリュウジ。お前は?」
「……?」
「名前だよ、名前」
「ない」
「お前もかよ! しっかたねえなあ……」
少年――リュウジは初めて困ったような顔をして、額に人差し指をあてた。
「クリス、その辺にとか紙ない?」
クリス、とそう呼ばれた少女――さっきからずっとリュウジの後ろでそっと俺を見ていた――はハッとして周りを見渡し、一枚……新聞の切れ端を持ってきた。
「ご、ごめん……これしか」
「うーん、なんか書くとこはねえなあ」
「まあまあ見せてみい」
リュウジの後ろから小さな女の子を連れた少年が顔を覗かせた。
「ユキトにルルか! いやあ助かる」
ユキトと呼ばれた少年はその紙とオレの顔を何度も見比べた。
「ユキ兄、わかった?」
「ど、どうかな」
「どうだユキト?」
「……読めるけど名前、名前なあ」
この隙に逃げようと何度思った事か。

「しっかしこいつ、笑わへんな」
そうユキトは俺を見て言った。
「?」
「んー……確かになあ。ユキト、『笑う』って字、どれだ?」
「あ? んーっ…………これや」
「わ、難しい文字」
「……みるー」
「ルルはもうちょっと大人になってからな」
「ぶー」
「ルルちゃん怒らないで、ね?」
「……よし、これでいこう」

リュウジはニヤニヤしながら新聞片手に俺に近づいてきた。
「今日からお前の名前は『ショウイチ』だ」

そこには確かに(切り取られて顔はわからないが)人物の写真と『笑一(しょういち)』の丁寧なフリガナがあった。

日付は……2/22。
この日、俺――『猫目笑一』は生まれた。



ふうっと一息ついて、シャワー室を後にする。
ドライヤーで髪は乾いても、俺の心は晴れなかった。
思い出す。
思い出す。
……思い出してしまう。




あの日から、俺たちは5人で手を取り合って生活した。
リュウジたちといた方が安全だった……というのもあるが。
あそこは、単に居心地が良かったんだ。

ユキトがシェルターの大人と交渉し、俺とリュウジを加えて仕事をこなす。
大体が肉体労働だったのもあって、幼すぎるルルと彼女の世話役としてクリスも専ら留守番だった。
こうやって稼いで、みんなで仲良く暮らしていた。

休みの日、よくクリスと散歩にでかけた。
「この前の仕事、どうだったの?」
「あー……うん、まあ……うまく、できたよ」
「ぬかるみで転んだんだって? ユキトから聞いたよ!」
「えっ! あっの野郎……ってそんなに笑うなよぅ……」
「ショーイチ君って意外とそういうところあるよね」
「そういうところって……」
くすくす笑うクリスの笑顔が眩しくて、クリスとの会話が楽しくて、俺もちょっと見栄を張って話題を考えて、日が落ちるまでシェルターを歩き回って、そんな時間が永遠に感じられて…………。
今思えば、これが俺の自覚する唯一の『恋』。
ああ――好きだった。俺は、クリスが好き、だったんだ。

あの日。

今日みたいな雨の日。
俺たちは5人揃って仕事を頼まれた。
大人たちの方から直接、仕事の手伝いを頼まれるのは初めての事だった。
「板につくってのはこういうことなんやろな」
そうユキトは笑って言っていた。
皆がそうだと思っていた。
やっとここでもう少しまともに生きていけると。
……そう、思っていた。

そこで待ち構えていたのは、『仕事』なんて生ぬるいものじゃなかった。
俺たちは全員、白衣を着た人間に取り押さえられた。

売られた!

確証を得るのに、そう時間はかからなかった。



連れていかれた施設で、俺たちは実験の材料にされた。
それは、非合法の適合試験。個人の適正云々を完全に無視した、もちろん許諾のない、私欲に満ちた外法。被検体が死んでもどうせ社会の底辺だから何の問題にもならない。むしゃくしゃする程、理にかなっていた。

一瞬間をおいて激痛。そして赤、朱、紅、赫。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ痛い痛い痛い痛い痛い死にたくない死にたくない死にたくない

目を開く。慌てて呼吸……できる。
手の感覚もある。

慌てて実験台から飛び起きた。

ユキトが苦しそうに呻いていた。
クリスが異様に弱ったルルのもとに駆けていくのが見えた。
俺もあわてて駆けていく。
「ショーイチ、ルルが、ルルが」
泣きながらクリスが俺を見る。
「……下がってて」
一目でわかってしまった――ルルはもう。

ほんのり温かいその小さな体を抱き、ルル、と優しく声をかける。
少女は力なく目を開き、俺を見て
――ショウ、にい
と小さく鳴いた。
もういい、もういいんだ。
――う
小さく笑い、俺の腕で眠るように目を瞑り………………二度と目覚める事はなかった。

怒号。悲鳴。
「ショウイチ!」
ユキトが駆け寄ってくる――傷だらけだ。
「手伝ってくれ、リュウジが……リュウジがおかしいんや」

ダメだ。
リュウジは完全に我を忘れていた。
「俺が止める……ユキトはクリスを」
「ルルは」
「――いいから!」
それだけ言って俺はリュウジを押さえにいった。

……会って最初のころ、リュウジとちょっとしたケンカをしたっけな。
あの時は俺が負けた。
なんで今こんなこと思い出してんだろ。
「目を……ッ、覚ませよ! リュウジ!」
力を――コードを開放する。
引っかかれ、殴られ、噛みつかれ、取っ組み合って、転がって、馬乗りになって抑え込む。

そこに白衣を着た男がやってきた。
「お、おい! たすけてく」
「うーん、こいつは失敗だなあ」
「――――――――は?」
「あ~君。抑えてくれてありがとうね、うんうん」
クソ。最初から救う気がないのかよ。
「う~んでも友情って大事にしといたほうが見栄えいっか」
「はいこれあげる」
そう言ってコイツは俺に――拳銃を手渡した。
呆気にとられる俺にコイツは……あろうことか笑った。笑いやがった。
「わかんない? 拳銃。拳銃だよ」
「引き金を引けばさ、お友達を助けられるよ」

「仲間である君に手を下された(助けてもらった)方が、彼も嬉しいんじゃないかい?」

「…………頼む」
リュウジの声。
「………………俺を、殺してくれ」
「――――――――――ッ!」
銃を構える。手が震える。引き金は……引けない。

「頼む」

「頼む!」

「ショウイチ――!」

「ッアアアアアアアアアアアアアアァァァ!!!!!!!!!」

乾いた一声。火薬と――赫。鉄。死の匂い。
アイツはもうどこかへ去っていた。
リュウジは力なく笑って、

ありがとう。お前は何も悪くない。

俺は親友だったものを抱き、ただただ泣いていた。
あれから、俺はあの匂いが嫌いになった。


3年前。
2人が去って、遺された俺たちは、脱走なんてことを考えるそんな気力もなく、ただただ漫然と鉄格子のなかで飼われていた。

あの日、朝から施設が騒がしかった。
白衣の男たちが慌てた様子で右往左往している。
捜査だとか、レギオンだとか、処分とか、そんな言葉が聞こえた。
多分、実験にかかわった俺たちは殺される。

――逃げよう。

全員が口をそろえた。

クリスがマッチを擦った。
混乱に乗じる形で、俺たちは鉄格子を抜け――外へ。

「お前らァ! な――」
呼び止めたそいつの顔面を殴って、進む。

脱走してすぐ、俺たちは白衣のヤツらに囲まれた。
「……俺がひきつけるわ」
ユキトが、俺たちの背中を押して、言った。
「――お幸せにな!」

クリスの手を引いて、ひたすらに走った。
光が見える……出口だ!
「あと少しだからな――」
クリス、と振り向いた瞬間に。

聴きたくなかった懐かしい乾いた音。そしてクリスが俺を押し倒した。
とっさに抱える――血。
クリスは動かない。血が……止まらない。
「クリス、クリス!」
やめてくれ。
死なないでくれ。
俺は。
俺は!
まだクリスに、言えてないことが!

「つっ、次はお前だ」
男が近寄ってくる――あの時のやつだ。
「っへへへ、悪いなガキ……すぐ仲間のもとに送ってやるよ……!」

3回目の乾いた音。
凶弾が俺の体を抉――

「……!?」

カラン、と弾――だったものが崩れて落ちる。
俺の後ろから――小さな穴に針をいれるように放たれた――細い何かが、拳銃諸共男の腕を貫き、その先の壁をも抉っていた。
振り返る……俺と同じくらいの背の少年が、弓を構えて立っていた。
へな、と股を漏らし大人げなく座り込む男に向かって、彼は激しい怒りの目を向けてまっすぐ歩いていき、すれ違いざまに、
「後は任せて」
と、それでもなお朗らかに笑い、俺の頭を優しく撫でていった。

「ショー、イチ、くん」
「なんで、俺を、庇って」
「……だって、」
「もういいんだ、もう――」
「好き、だから」
「――!」
「だい、すき、だから」
「…………俺も、俺も……ッ」
抱きしめる。視界がぼやける。
「好きだ、大好きだ。だから、死なないでくれ、……お願いだ」
「だから、ね」
「死なないでくれ」
「――――――――――生き、て」
「イヤだ!!!」

彼女は、最期まで笑っていた。

大人たちの会話から、ユキトの最期も知った。
結局生き残ったのは、俺だけだった。
俺だけが、生き残ってしまった。

俺はそのまま医療施設に保護されることとなった。
正直、全てがどうでもよかった。
もう息をするのさえ嫌だった。
何回死のうとしただろう。
でもその度に看護師に止められ怒られた。
死にたかった。
またあいつらに会えるなら。
また、クリスに会えるなら……。

そんなある日。
いつものように喉をかきむしろうとして――誰かに腕を掴まれた。
そのままむいっと両頬を抑えられ、顔を見る……あの時の弓を持った少年だった。

「何、してんだよ」
彼は真剣に、でも悲しそうな顔をしていた。
なんだっていいだろうが、と言おうとして口を抑えられる。
「思い出せよ。あの時君は彼女と何を話した? 何を伝えて何を伝えられた?」

「――愛する彼女に。信じた仲間たちに。君は何を託された?」


   ショウ、にい
   ありがとう。
   ――お幸せにな!
   ――――――――――生き、て


涙が止まらなくなった。

そうだ、俺は。
生きなきゃいけない。
ルルの分まで。
リュウジの分まで。
ユキトの分まで。
クリスの分まで。
俺は生きなきゃいけないんだ。
あいつらと……約束、したんだ。




そっと仏壇の前に座る。
リュウジ。ユキト。クリス。ルル。
あいつらを思い出し、目を瞑り、手を合わせる。
「俺、もっと頑張らなあかんな」




入院中に事情聴取に来た天秤機関の職員と知り合い、事件についてを聞かされた。
俺はチェシャ猫のコードに適合。経過観察は必要だったが、概ね問題はないらしい。
マッチ売りの少女と、魔法の鏡のコードフォルダが、孤児の遺体から回収された。
その他に、あの施設に保管されていたコードフォルダが2種類。アリス、そして名も無き怪獣――ジャバウォックだったという。それらも無事回収された。

ついでにその職員から、天秤機関という組織の事を聞かされた。
公正公平な組織であることに惹かれ推薦をもらい、そこに所属することを決めた。お金もそこそこ手に入るらしい。悪い大人によって危険な目に会う子どもが出てこないように、孤児たちを保護する……そのための補助金が必要だった。俺の金なんて――それこそ必要ない。

これ以上、俺たちと同じ思いをする人がいちゃいけないんだ。

こうして、俺は「笑一」改め「猫目 笑一」として、天秤機関と保護施設の資金援助者としての、新しい生活が始まった。

でも最初は笑顔がぎこちないって、同僚に笑われたっけな。
それで子どもたちにも怖がられてた。
もどかしかった。
こんなんじゃいけないって思って、鏡の前でずっと笑顔の練習してたっけな。

やっと仕事に慣れてきた頃、施設の子どもたちに挨拶した時だった。
1人の女の子が、もじもじしながら歩いてきて、俺にあるものをくれた。
小さな花束だった。
「おにーさん、その……いつも、ありがとう」
そしたら他の子どもたちも寄ってきて、あそぼ、と声をかけてくれた。

嬉しくて泣いちゃって、子どもたちに慰めてもらったっけ。
今では、すっかりみんなと打ち解けて、顔を出した時に遊ぶ仲になった。




いつまで、手を合わせていただろう。
雨はいつの間にか立ち去り、カーテンの隙間から光が漏れていた。
カーテンを開けて、朝食の準備。食パンと、卵を焼く。質素ないつもの朝食だ。
それをテーブルに置いて、手を合わせる。
「いただきます」

俺は、まだ生きるよ。
必ずみんなの分まで生きるよ。
俺たちみたいな子供がいなくなるまで、俺は戦うよ。
ワガママかもしれないけど、もう少しだけ、待っててほしい。
応援、しててくれよな。

「うし――いってきます」
返事はない。でも、俺には聞こえる。

   いってらっしゃい、ショウイチ。

「さて……今日もお仕事、頑張らんとな!」

そして、猫は青空に笑った。


+ After story:WWH 2-14 DAWN〜玄武之弐〜


その日の夜、夢を見た。

いや、夢なんて毎日見ているのだけれど。
あの日々のことを、実験施設での起きたことを、ずっと、夢に見ている。
だが、その日はいつも以上に鮮明だった。
あの日、レギオンと天秤機関のレイヤードたちが、あの忌々しい実験施設に乗り込んできた日の記憶だ。
混乱に乗じて逃げ出そうとした。途中で見つかってしまったけど、ユキトが囮になってくれた。
クリスの手を握って、出口までひたすら走った。

─あと少しだった。
──外の光が、目の前に広がってたんだ。
───もう少しで、自由になれる、はずだったんだ。

クリスの方に振り向いた時、数発、乾いた音が聞こえた。
それと同時に、彼女が俺に覆いかぶさろうとしているのが見えた。
その時の彼女の表情を、否が応でも思い出してしまう。

苦痛で歪んでいたけれど、どこか、満足そうな表情をして、笑っていた。


目の前の彼女に手を伸ばそうとして…目が覚めた。
息が荒い。身体も嫌な汗でぐっしょりと濡れている。外はまだ暗い。
二度寝しようにも、この状態じゃあろくに眠れもしないので、起き上がってシャワー室へと向かう。
頭から温かいシャワーを浴びて汗を流している間、見た夢のことを考えていた。
やけに鮮明に、あの日の出来事を夢に見たのには心当たりがあった。
今日、いや、昨日の任務。ブリゲイドがかつて使っていた拠点の潜入調査で、アポリオン─“夜明けの刻”と名乗った、エンフォーサーとの戦い。呼び起こされた超大型ベクターを倒しきって、あとは必要な情報を抜き出すために、“夜明けの刻”からの攻撃を耐え凌がねばならなかった。どうやらその情報が、今回のアサルトチームリーダーとなった彼、東条くんにとって必要なものだったらしい。
詳しいことはよく知らないけれど、彼の表情を見てどれだけ大事なものなのかはすぐに理解出来た。
だから、彼のお願いに乗った。断る気なんてはじめから無かったし、“生き残ること”に関して自分が秀でていると分かっていたから。
途中までは上手くいっていた。一緒に戦った朱華さんやシキの手を借りて、なんとか。“夜明けの刻”の攻撃を、躱し続けた。

けれど。
最後の最後で、俺は、上手くハンドルを握れなくなった。
疲れだったのかもしれない。生き残るために、いつも以上に力を出そうと気を張っていたからなのかもしれない。
それでも俺にはまだ、攻撃をくらっても立ち上がるだけの力は残っていたから…1度ぐらいはくらってもいいと、思っていた。
覚悟を決めて身構えた時…俺を、庇おうとするシキの姿が見えた。
彼女の性格を考えれば、やりかねない行動ではあった。あの戦場で最も求められていたのは、“夜明けの刻”の攻撃を耐えて生き残り続けるだけの力だ。
そうなれば必然と、彼女がとろうとする行動は予想できる。俺が少しでも長く生き残り続けられるように、身を呈して俺を庇おうとするだろう。
“夜明けの刻”の攻撃から俺を庇って地に倒れふすシキを、俺はただ呆然と見ていることしか出来なかった。
倒れるその間際、彼女は満足そうに笑ったんだ。
その顔に思わずあの日の彼女を、俺を庇って死んだクリスの顔を重ねてしまったんだ。


あんな思いを二度としないと誓ったはずなのに、
俺の力不足で、また……■■■人が目の前で倒れてしまった。
────俺のせいだ。


シャワーを止めて、鏡に映る自分の顔を見つめる。
そうして、自分自身に何度も何度も言い聞かせた。
「……次は、絶対にしくじったりしない」
「俺のヘマのせいで、誰かが俺を庇って倒れるなんてこと、絶対にさせない」
「もう……目の前で誰かが、俺を守るために倒れるところは、見たくない」
目から何かが零れ落ちたような気がしたけれど、それは顔を滴る温水と共に流れていった。

<参加回>

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2022年05月13日 19:48