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K-パックス

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K-パックス ◆BOMB.pP2l.



交わりとすれ違い。邂逅と別離の舞台となる孤島の中央。
大きく広がる湖の東端にホテルがあり、明るみ始めた薄紫の空にその一際目立つ威容を浮かべていた。

そして、その内側。
広いエントランスホールの端に、テーブルを囲んでそれぞれの情報を交換し合う三人の姿があった。



「――じゃあ、柊も俺のことは知らないってわけなのか」

一人は前原圭一。阿部の持つ凶器より逃れてこのホテルまでたどり着いた少年だ。
ホールの中で知った顔を発見し、また話しかけてみたものの今回も自分と同じ世界にいた人間ではなかったと知る。

「そっちの世界で助けてもらったってことは、なんとなく感謝するけど……」

ツインテールの少女である柊かがみは溜息を漏らす。
新しく会った少年は自分を知るというが、先の例と同じく自分は相手のことを全く知らなかった。
そして、その新しく知る世界の”柊かがみ”も殺し合いの中にいたという。

「前原君の話で、私たちがパラレルワールドから集められたっていうのは真実味を帯びてきたね」

まだ疲労の色が濃い顔で高町なのはは神妙に頷いた。
最初に出合ったかがみとのこと。そして先程出合った銀髪の男と自分の中にある記憶の齟齬。
これらに加えて新しくもたらされた圭一よりの情報。
どれもが矛盾していて、それらを一挙に解決するとしたらやはり平行世界の概念しか彼女には思いつかなかった。

「しかし柊が高三とはなー。おまえって全然成長しないのな」
「何言ってんのよ。中二の時の私と今の私じゃあ全然違うわよ。おかしいのはそっちの”私”」
「私は向こうのかがみからクラスメートだって言われた。こっちの齟齬は1年だけど……何か引っかかるね」

平行世界から集められたのだとして、それぞれに年齢や立場が異なるのに容姿に関しては一切齟齬が発生していない。
1年しか変わらない自分はともかくとして、4年も隔たりがあってもそうならないのは奇妙だとなのはは考えていた。
この掛け違いが、何かとても恐ろしいことに繋がるのではないかという漠然とした不安を抱えて。

「前原君の名前が名簿に二つあるけど、何か心当たりはないかな?」
「うーん……。最初は誤植だと思ったけど、そうじゃないとしたら別世界の俺なんじゃないか?」
「ずいぶんとあっさり認めるわね……」

幾多の平行世界があり、そこにそれぞれの別の同一人物がいるのだとしたらそれは不自然なことではない。
目の前の圭一だけでなく他にも同じ様に複数の名前が並んでいる参加者もいる。
しかし、そこで気にかかるのは――……

「あの最初の場所で殺された愛媛って呼ばれていた子。かがみの妹さんとそっくりだったんだよね?」
「……う、うん。でも、つかさはその時私の隣にいた」
「つまり、別世界の柊つかさってことか」

そして、その愛媛と呼ばれたつかさは魔法に類するであろう不思議な力を使っていた。
それは今は取り立てない。それぞれの世界で技術や常識に対して差があるのはすでに判明していることだ。
愛媛の世界では魔法のようなものが存在したと、そう片付けてもいいだろう。それよりも気にかかるのは――……

「あの子が仮にあそこで殺されなかったとして、名簿の中に”愛媛”って記されていたとしたら……どう思う?」
「んー? 変なあだ名って思うかもな。俺の隣のクラスに”大阪”ってヤツがいたから”愛媛”もありだとは思うけど」
「馬鹿。なのははそういいうこと言ってるんじゃないわよ」

つまりは、名前だけでは判別のつかない同一人物が他にも存在するのではないかということだった。
名簿を見る限り本名とは思えないような名前がいくつか並んでいる。そこに別世界の自分や知り合いがいるかもしれない。
なのはがその推測を披露すると、目の前の二人はひどく驚いた顔をした。

「そういつは盲点だったぜ。もし、俺が3人4人っていればこの殺し合いも早々に打倒することができるな」
「……私は、私が何人もいるのって想像したりしたくないな」
「まぁ、これはあくまで可能性だけどね。ほら、”かえる”なんてどう見てもあだ名でしょう? だったら――」

なのはがテーブルの上に広げた名簿の一点を指すと、そこに圭一がすかさず割り込んできた。

「――俺のクラスメートには恐竜や熊がいるんだ。
 ここにいるのは恐竜のでっていうだけだが、その”かえる”ってやつが本当に蛙でも俺は全然驚かないぜ」

その発言に目を点にする二人をそのままに圭一は更に熱弁を振るう。
でっていうという恐竜はそれまでは仲良くしていたのに殺し合いが始まるとクラスメートを食べ始めたこと。
そしてその恐竜は非常に強大な敵で、泉こなた萌えだったクマーがその犠牲になったこと等々。

「動物が学校に通っているなんてあんたんところは随分とエキセントリックな世界なのね」
「何を言う! なのはさんところの魔法少女の世界の方がうらやま……じゃなく、変わってるじゃないか」
「……まぁ、私もユーノ君に会った時は随分驚いたんだけどね」

互いの世界の常識については話し出すときりがない。
ということで、話にも上がったことだしとなのははそれぞれが知っている名前を名簿を見て確認することにした。
元々交流が会った人。巻き込まれた殺し合いの場で知り合った人などと簡単に区分してそれを知らせあう。

「どうやら、前原君から見た場合が一番知り合いが多いみたいだね」
「そうみたいだな。ちなみに魅音はその日ゲリピーで休んだから殺し合いには参加してないぜ。あいつ悪運だけは強いからなぁ」
「ねぇ、あんたの言う”もってけセーラー服組”ってなによ?」

かがみよりの問いに圭一はふむと頷くとそれを説明する。
圭一達の学校では制服に指定がなく。私服でも全裸でもツナギでもオールOKだったこと。
その中で揃いのセーラー服を着ていた仲良しグループを周りは”もってけセーラー服組”と呼んでいたこと。
でもって、それがかがみの知り合いである、”こなた、つかさ、みゆき、ゆたか、みなみ”の組み合わせと変わらないことを。

「ちなみに、柊妹の趣味が酢の一気飲みだったりすることもこの圭一様は知っているぜ」
「つかさはそんなことしないわよ! ……してないと思いたいわ」
「……うーん。まぁ、違う世界だけどそこには共通点も無いわけじゃないみたいだね」

苦笑しながらも、なのはは頭の中で出揃ってきた情報を整理してゆく。
ここにいるのは同一世界の住人ではなく、パラレルワールドから集められた可能性が限りなく高いこと。
そして、世界が違えば常識も法則も異なりまた人の性格すらも変わっている場合がありえること。
今現在、同一世界の住人だと考えられるのは最初の場所でかがみの傍にいた友人達だけだということ。
圭一の出合った阿部は別世界の住人で、ヒナギクに至ってはここの誰とも面識がない。
そして、なのは達が出会った銀髪の男は言動から別の時間軸、もしくはよく似た別世界から来ている可能性が高い。

これは少し困ったことになった――と、なのはが思った時それを察した圭一の目がキラリと光った。


 ☆ ☆ ☆


「なのはさん。あなたが何を悩んでいるのかはわかるぜ」

だったらこれを使ってくれ! と、圭一は自分の鞄から一着のメイド服を取り出した。
それを目の前にしたなのはとかがみは訳がわからないといった表情である。

「それがあんたに配られたものなの?」
「いいや、最初にあったメイド服は今はヒナギクさんが着ているぜ。
 ここに取り出したのは、このホテルのカフェの制服さ。こんなこともあろうかと全部回収してきた」
「……え、えっと。それがどう私の悩みを解決してくれるのかな?」

度々常識のズレを感じるエキセントリックな少年の言動に困惑しつつなのははそれを尋ねる。
メイド服と自身の悩みにどういった関連性があるのか疑問だったが、しかしそれはこの後解消されることとなった。

「なのはさん。今あんたはこう考えている――”ぶっちゃけ、別世界の人間って赤の他人じゃね?”と」
「ちょ、おま! 言っていいことと悪いことがあるんじゃない?」
「……うん。前原君はするどいね」

驚いて振り返るかがみを気にせず、なのは圭一の言葉に首を縦に振る。
冷静に考えれば、他の世界ということは本来自分とは全く係わり合いのない世界のことだ。
もっとも、だから切り捨てるのかと言うとなのははそんなに非情な人間でもない。

「でも、私はここで私ができるだけのことをするつもりだよ」
「わかっているぜなのはさん。あんたが悩んでいるのは――”敵味方の区別がつかない”ってことだろ?」
「敵味方? ちょっと、私にもわかるように説明しなさいよ」

なのはは圭一の言葉に頷くと、かがみよりの問いを彼に代わって答える。
まず前提としてここに集められた人間はほとんどが違う世界の住人であると想像できること。
そして、つかさのそっくりさんや圭一の知らない阿部さんの例から、温厚なはずの人が危険人物となっていたり、
銀髪の男の例から謂れのない誤解で敵視されてしまうかもしれないということを。

「想像したくないけど、フェイトちゃんやシグナムが私に刃を向けるという可能性もゼロじゃないの……」
「つかさが哂いながら人を殺してる世界もありえるってことなの?」
「ああ。認めたくないが、俺は実際にいい男だったはずの阿部さんから命を狙われたんだ。
 この島にいる知り合いが本当の知り合いでなく、モーストデンジャラスな殺人鬼や変態である可能性は捨てきれないぜ」

勿論、危険人物でない可能性もある。故にそこが悩ましい点であった。
かがみと一緒にいた泉こなたや柊つかさは安心できる相手だとしても、彼女達のそっくりさんがいる可能性もまたある。
仲間の為に動くと意気込んでも、出会ってみるまではそれが仲間かどうかすらも確かめられないのだ。

「それで、前原君はメイド服を出したんだね」
「さすが隊長! 話が早くて助かるぜ」
「ちょ、ちょっと……私には意味が通じてないわよ?」

今度は得意満面な笑みを浮かべた圭一が論を展開する。彼はまず自分を指してかがみにこう問いかけた。

「柊よ。俺は……いや、俺達は今、”何を”着ている?」
「何って服を着ているんじゃないの?」
「脳みその九割を泉のことに費やす柊にはこの質問は難しすぎたか……」
「ちょ、なっ! 失礼っていうか、なんでそこでこなたが出てくるのよ。」

顔を赤くするかがみにやれやれと肩をすくめると圭一は答えをズバリ明らかにした。”制服”であると。

「じゃあ、もう一回クイズだぜ。制服ってのは何のために存在している?」
「えーと……、学校とか学年とか区別するため――って、そうか!」
「そう。所属を明らかにするためのものだね」

最後になのはの言葉が付け加えられ、かがみは納得がいったと大きく頷いた。
そう。敵味方の区別がつかないのならばこれからつけていけばいいのである。
出合った人物が正義の味方ならばメイド服を着せ、悪人だったり凶暴であれば服は与えない。
それを繰り返せば、いつかは敵味方の区別がはっきりつくとそういう算段だ。

「でも……それだったら、別にメイド服じゃなくても手首に紐を巻くとかでもいいんじゃない?」
「シャラ――ップ! それだと、どこにも萌えが……じゃなく! 誰にでも簡単に真似されるし遠くからだと判らないだろう」

それにだ! と言うと圭一は再び鞄の口を開けてそこからメイド服を次々と取り出してゆく。
ほどなくしてメイド服の山が築かれ、その数は殺し合いを強要される参加者の数よりも多いのではという程であった。

「すでに、このホテルのカフェのメイド服はこの前原圭一が独占させてもらっている!
 この意味が解るか? つまりは、このメイド服を使う限り誰にも俺達の真似っこはできようがないんだ。
 なので、例え悪人が俺達の作戦を知ったとしても、そいつはハンカチを噛み締めて悔しがるしかないって寸法なのさ」

ビシリと決める圭一に、なのはが微笑みながら小さな拍手を送る。
かがみはとりあえずは納得しつつも、しかし生来のツッコミ属性から心の中では「納得できねー」と叫んでいた。


そして、前原圭一にとって歓喜の時が訪れる。


 ☆ ☆ ☆


「(た、たまらないぜ……!
 これで3メイド(※)達成。この調子でいけば、この殺し合いの中で10メイドは固いな。ワクワクが止まらねぇぜ)」


 ※)「メイド:単位」
    圭一独自の単位。一人の萌えキャラにメイド服を着せれば1メイドとなる。
    あくまで萌えキャラを対象とするので、そうでない人物に着せてもメイドは増えない。
    ちなみに類語としてメイドポインツ(MP)があり、今の場合なのはは8MP。かがみは1MPと評価される。


かがみとなのはが着替えにより離れ、そして再び戻ってきたロビー。
そこには文章で表現することの限界をひしと思い知らされるほどの素晴らしいメイドキャラが”3人”いた。

「なんであんたまでメイド服着てるのよ……?」
「言ったろ? メイド服は正義の味方の証だって。そこに男女や人獣の区別はないのさ」
「でも、意外と似合ってるね。前原君」

圭一の言葉に嘘はない。しかし、彼がメイド服を着るのにはもう一つの理由があった。

「(木を隠すなら森の中。いい男を隠すにはメイドさんの中ってな。
 ヒナギクさんを迎えにいくにあたって、また阿部さんと出会っちゃ大ピンチだからな。この前原圭一にぬかりはないぜ)」

心の中だけでほくそ笑むと圭一は、かがみとなのはの二人と一緒に壁にかかった時計を見る。
もう間もなく、時計の長針が数周すれば定時放送がはじまるはずであった。
そこで知り合いの名前が発表される可能性はゼロではない。

「放送を聞いたら、まずは前原君と別れたヒナギクさんを迎えに行く。これでいいかな?」
「ああ。ずっと待たしていたら悪いしな」
「うん……とりあえずは、所在の知れてる人からよね」

3人は先程のテーブルに戻り、名簿と筆記用具を用意する。
緊張に身体が強張り、その時までの一秒一秒がとても長く、短く感じられていた。
ヒナギクは果たして無事だろうか? 銀髪の男は友達を手にかけていないだろうか? 仲間の名前が呼ばれないだろうか?


それぞれに何かを思い。そして、冷徹さと非情さを持ちその時は来た――……





 【D-5/ホテル・エントランス内/1日目-早朝】

 【柊かがみ@らき☆すた(原作)】
 [状態]:健康、自責の念
 [装備]:メイド服、モーゼルC96(9/10発)@現実
 [持物]:デイパック、支給品一式、モーゼルC96のマガジン×4@現実
 [方針/行動]
  基本方針:友達や知り合いを殺し合いから守る。
  0:放送を聞く。
  1:ヒナギクを迎えにいく。
  2:なのはや圭一と協力して、友達や知り合いが殺されないよう努力する。

 [備考]
  ※参戦時期は一年生組と面識がある時期です。


 【高町なのは(StS)@なのはロワ】
 [状態]:疲労(中)、左肩負傷(止血済) 、悲しみ
 [装備]:メイド服、マテバ 6 Unica(6/6発)@現実
 [持物]:デイパック、支給品一式、マテバ 6 Unicaの弾×30@現実、カートリッジ×3@なのはロワ、チョココロネ×8@らき☆すた
 [方針/行動]
  基本方針:悲劇の連鎖を止め、一人でも多くの人間を救う。
  0:放送を聞く。
  1:ヒナギクを迎えにいく。
  2:かがみや圭一と協力して、友達や知り合いが殺されないよう努力する。

 [備考]
  ※参戦時期はなのはロワ26話、『残る命、散った命』の直後です。
  ※何らかの原因により魔力が減衰しており、また能力に制限がかけられていると気付きました。
  ※八神はやてが、前の殺し合いで死亡したと知らされました。
    また、彼女を自分の知るはやて(StS)だと思っています。


 【前原圭一@やる夫ロワ】
 [状態]:健康、メイド萌え
 [装備]:メイド服
 [持物]:デイパック、基本支給品一式、大量のメイド服
 [方針/行動]
  基本方針:殺し合いからの脱出。女の子にメイド服を着せたい
  0:放送を聞く。
  1:ヒナギクを迎えにいく。
  2:可愛い女の子にメイド服を着せまくる。
  3;阿部さんや変態男(6/氏@カオスロワ)に対し警戒。

 [備考]
  ※死亡後から参戦。
  ※ヒナギクは生きていると思い込んでいます。



【大量のメイド服@現地調達】
前原圭一がホテル内のカフェから調達してきた、そこの制服であるメイド服。
一般的なクラシックスタイルのメイド服で、それを萌えキャラに着せることにより彼の心が満たされる。


054:衰弱と不満 投下順 056:狂人にも五分の理(ことわり)
054:衰弱と不満 時系列順 056:狂人にも五分の理(ことわり)
040:Advent:One-Winged Angel(後編) 柊かがみ 096:悲しみは絶望じゃなくて明日のマニフェスト
高町なのは
038:変態に縁のある女(後編) 前原圭一(やる夫)



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