「機動戦士GUNDAM SEED―Revival―」@Wiki

広すぎる部屋

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ベッドに入ったものの、私は眠れなかった。
オーブに帰ってきてから、一週間がたっていた。

最初は嬉しかった。カガリ様に会えたこと、そして本気で私なんかに謝ってくれたこと。
そして、車で送られて、見慣れた町の風景を見たとき、涙がでそうになった。もっとも、学校で先生やみんなに囲まれたときに、大泣きしたけど。
みんな口々に「良かったね、良かったね」て言ってくれた。
オーブに帰ってきた。もう二度と戻れないと思ったのに。私の心は、喜びでいっぱいだった。

…でも、それはすぐに打ち砕かれた。
おかしい、と思ったのはしばらくしてからだった。
親友のチーちゃんと、ハーちゃんがいないのだ。
私が無事だと知ったら、真っ先に会いに来てくれると、思ったのに。風邪でも引いたのかな?仲良しだから、2人同時に引いたのかも。
みんなから、カガリ様のこととか質問されながら、暢気にそんなことを、考えていた。
「あなた達、いい加減になさい。ソラさんも疲れているんですから、今日は、ここまで」
先生の一言で、やっとのことで、皆から解放される。

私は、急いで、自分の部屋に向かった。寮は4人部屋で私はチーちゃんとハーちゃんと同室だった。
2人は熱で、うんうん唸ってるかも知れないけど、早く2人と話たかった。
なにより、2人に「ただいま」を言いたかった。

部屋の前まで来て、呼吸を整えてから、勢い良く、扉を開けた。
「チーちゃん、ハーちゃん、ただいまぁ!」
…応えが、ない。
「…あれ?」
誰もいない…。買い物にでも行ったのかな?でも、私が帰ってくるのは、みんな知ってたし、2人して、トイレに行ったのかな?
そんなことを考えながら、部屋に入って、そこで初めて気付いた。
…なんにもない。
机とベッド、寮に最初から、あった物はあるけど、それ以外はなにもない。私の荷物も、2人の荷物も。
―なんで
私は訳が分からず、その場に立ち尽くしました。
「―ソラさん」
いつの間にか、寮母さんが立っていました。
「あなたの荷物は警察が持って行ってしまって…」
「チーちゃんと、チーちゃんとハーちゃんは?」
私は寮母さんの言葉を遮って、言いました。
寮母さんは、一瞬苦しそうに顔を歪めました。
「ねぇ、2人は、2人はどこにいったの!?」
それでも、私は寮母さんに尋ねずにはいられませんでした。
「…2人は、2人はもう、ここにはいないの…」
目の前が真っ暗になりました。
なんとなく分かっていたけれど、認めたくなかった。
遠くで、電話の鳴る音がしていた。寮母さんは、ちょっと、躊躇してから、駆けていった。
―2人がいない。2人がいない。
その言葉が、私の頭の中でグルグルと廻っていました。
それを引き戻したのは、寮母さんのわたしを呼ぶ声でした。
「―ソラさん!電話よ、あなたに」
―電話?もしかしたら
私は走って、電話のところに行き、受話器を受け取った。
―ハーちゃんだった。
ハーちゃんは泣きながら話してくれた。チーちゃんのお父さんがテロリストとして捕まって、チーちゃんとチーちゃんのお母さんも連れて行かれたことを。
私は、ただ絶句するしかなかった。

次の日、私はハーちゃんに会いに行った。学校は、先生からしばらく休んでいいと言われたので、構わなかった。
ハーちゃんは遠く離れた、学校に転校していた。もっとも、編入手続きが済んでいないので、まだ、学校には行っていないらしい。
久しぶりに会った、ハーちゃんは少しやつれていた。
会った途端、2人は抱き合って泣いた。わんわん泣いた、周りの人が変な目で見てたけど、まったく気にしなかった。
暫くして、落ち着いてから、ハーちゃんの話を聞いた。

チーちゃんのお父さんは民間警備会社で働いていた。
戦勝記念式典では、多くの民間警備会社が政府から委託されて、警備員を出していた。チーちゃんのお父さんもその一人だったらしい。
そして事件が起こった。
すぐ、警備の人達は拘束されて、取り調べを受け、その中の何人かがテロリストだったらしい。その中に、チーちゃんのお父さんもいた。そして、チーちゃんは連れて行かれてしまった。
その頃、私も当局からテロリストとして、指名手配されていた。ハーちゃんは学校でみんなに言われたそうだ。
「…同室の子が2人もテロリストなんだから、あんたも、テロリストなんでしょ?」
毎日毎日言われ続け、我慢できなくなって、ハーちゃんは転校した。私がオーブに着く、二日前に。

全てを話した後、ハーちゃんはまた泣いた。私も泣いた。
私より、ハーちゃんの方が辛かったろう。私は確かに、オーブを離れたけれど、シンさんやコニールさん達に、気を使って貰ったり、優しくされたりしてた。でも、ハーちゃんは一人だった。
私はまた、ハーちゃんを抱きしめた。
結局、別れも涙で終わった。

次の日から、私は、図書館に行って色々しらべてみた。
私がいた、レジスタンスの周りの村は、多くの人が貧しい生活をしていた。
世界中の多くが似たような状態だと、仮面さんが言っていた。だから、各地で紛争が絶えないと。
でも、そんなことは新聞にも本にも、少しも載っていなかった。時々、愚かな国が、政府に反抗するので、仕方なく、ピースガーディアンが鎮圧した、とかがあった。
帰って、社会の教科書を見ても、貧困や紛争のことは載っていなかった。
でも、私は確かに、人々の貧しさやMS同士の戦闘を見た。
今回、テロリストとして、捕まった人達は、政府の温情で、刑務所などには入れず、遠くの国に、家族共々送られるそうだ。
私は、チーちゃんのお父さんをちょっとしか知らない。夏休みにハーちゃんとチーちゃんの家に遊びに行った時、会ったくらいだ。結構カッコ良くて、優しい人だった。
―あの人が、テロリスト?
私の頭の中はもう、パニックだった。

明日、ジェスさんに会う。教えて貰っていたホテルに電話して、会うようにして貰った。
私はベッドの中で寝返りを打った。静かな、私以外、誰もいない部屋。この部屋は一人には広すぎる。
―ワタシハ、ホントウニ、カエッテ、キタノ?

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