「機動戦士GUNDAM SEED―Revival―」@Wiki

偽りの『正義の剣』

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地熱プラントを巡る、ローゼンクロイツ率いるレジスタント連合軍と統一連合・東ユーラシア連合討伐軍の武力衝突は、当初の予想を裏切り、双方互角の状況で開始された。

統一連合の物量は圧倒的で、まともにカチ会わせたレジスタンス部隊はあっさり全滅の浮き目を見たが、統一連合はそのまま押し込む事は出来なかった。

東ユーラシアからの地形データの提供が無かった為である。

正しくは、「小出しに提供された為に必要な時に必要なデータを得られなかった」のだ。
統一連合内の二大派閥の対立構造をそのままこの討伐軍に持ちこんでしまった所へ、東ユーラシアのオブザーバーが(主に個人的なコネクション作りのために)双方の派閥へ情報を被らないように提供した為である。
更に、ユーラシアの精兵とし合流した第五師団が、統一連合の想定していた錬度を大幅に下回る能力しかないのが判り、政治問題化した為、事実上統一連合軍のみで継戦せねばならない状況に陥った。

いわば統一連合は、助っ人にドタキャンされた上で、片目片耳を塞がれた仇敵同士が二人三脚しているのと何らかわりなかったのである。

地形データを衛星からのフォロー以外殆ど持ち得なかった統一連合に対し、地の利を得ているレジスタンス連合は徹底したゲリラ戦術で各個撃破を繰り返した。
確かに大部隊ではあるが、移動する際に一々斥候を立てる必要が有る為、規模が大きくて元々小回りが効かないのが更に悪化した。
部隊を小分けにして先行させればレジスタンスの奇襲を受け、残りの部隊が隊列を整えてようやく到着する頃にはレジスタンスは既に退却、場合によっては殿が他のレジスタンスの一撃離脱戦法で被害を受ける、と言う体たらく。
そして、司令部ではその被害の責任を誰に取らせるか、で、その度に紛糾し、有効な対処法など討議にすら上がらなかったのである。

そして、リヴァイヴの役割は、このゲリラ戦術で尤も危険な「MS部隊専門の遊撃部隊」であった。
恐らくは、統一連合内でもっともモラルの高いMS部隊を優先して、
「第三特務隊を単機で撃破した」MSが友軍とともに襲い、敵の出鼻を挫くと同時に、統一連合軍のMS部隊の耳目をりヴァイヴに向けさせる。
そしてソレは、ユウナの提示した「リヴァイヴを囮に統一連合軍のMS部隊を完全に敵本陣から引き剥がし、その隙に残存兵力を集中させて落とす」と言う奇策への布石で有った。

「シン、引くぞ!」
大尉の声が通信機からダストのコクピットに響く。
『シン、大尉の言う通りだ。もうこれ以上は戦術的な意味はない』
更にレイにも促されるが、ダストの、シンの殺意は収まらなかった。
中尉の狙撃で膝を撃ち抜かれ擱坐したルタンドを蹴り倒すと、そのままコクピットにアーマーシュナイダーを突き立てる。
ルタンドは必死にダストから逃れようとするが、シンは構わずコクピットに食い込ませた。
「…シン。どういう積もりだ?」
大尉の声には怒りの色が強い。
「俺は、『第三特務隊を一人で殺したバケ物』って触込みだからな。コレくらいが丁度良い」
「シン!」
「もういいだろ。移動しようぜ」
そう言うとシンは一方的に通信を切る。

「…どう思う?」
大尉に問われて中尉と少尉が答える。
「こないだ、ソラちゃんと再会してからあんなんッスよ」
「メンタル的には我々の所へ来た時より酷い状態だと思います。…あのままだと、早晩潰れますよ」
「原因が判らんとな。センセイかリーダーに頼むか…」

『シン、はっきり言う。アレはやり過ぎだ』
「聞きたくない」
『大尉達が心配しているのは…』
「聞きたくないって言った!」
レイの言葉を遮るシン。
『…彼女に再会してからだな。いったい何があった?』
ビクッ、っとシンの肩が震える。
『俺にも言えない事か?それとも、俺だから言えない事か?』
「そうじゃない…」
『なら、なんだ?』
「アイツに…会った。アスランに」
『ふむ。俺を置いていったのはそのせいか』
「アイツがルナを殺したんだ!なのに…ソラは…アイツだって色々有ったってのはジェスから言われたさ。だけど、だからって『許してやれ』って言われて納得なんか出来るかよ!」
『ここのところずっと情緒不安定だったのはソレが原因か』
「アイツはなんだって…オーブで普通に暮らしてりゃ良いのに…なんで俺の事なんか…」

「大尉。熱紋センターに感あり」
移動しようとしていた大尉達だったが、中尉の索敵センサーに反応があった。
「MSか?」
「熱紋解析、これは…ストライクブレード?!しかも単機?」
「自殺行為もいいところじゃねぇか。中尉、狙撃できます?」
「やってみよう。少尉、観測手を頼む。大尉はシンと組んで突破してきた場合のフォローをお願いします」
「了解した」

大尉がシンの元に向かうと、中尉と少尉も狙撃と観測に適したポイントへそれぞれ移り、ターゲットをポイントする。
カメラににに捕らえた目標のストライク・ブレードは、ダストに似たローラーダッシュ機構を備えているのが見て取れた。
「陸戦用?」
「ローラーダッシュがメインの移動手段みたいッスね…流石にアッチのが完成度は高そうだ」
「サイに悪いぞ少尉。…コクピットを撃ちぬけば、サイへのいい土産になるかな」
そのままコクピットに照準を合わせ、引金を引いた瞬間。
まるでコチラの意図を見抜いたかのごとくストライク・ブレードは突然横滑りして回避した。
「外した?」
「もう一度!」
再び中尉は照準をコクピットに合わせ、引金を絞り込むが、コレも回避された。
「少尉!狙撃ポイントを替えて再度狙う!」
「了解!」
が、次の瞬間、ストライク・ブレードは格納されていたランチャーを構え、一瞬の間を置いて発砲。
光の渦が中尉と少尉目掛けて襲いかか…らなかった。
「なんだ?」
「明後日に撃ってやがる…」
敵の意図が判らずに困惑し、ほんの僅かの間だけ反応が送れた。
其処へ、脅威的な速度でストライク・ブレードが襲いかかる。
「!」
障害物の散乱する大地を己で穿ち、疾風がごとき速さで駆け抜けたのだ。
「今の射撃は自分で障害物を吹き飛ばして道を作る為か?!」
そうだとしても。余りに異常な破壊力。
「こんなモンがまともに当ったら…」
少尉の背を冷や汗が流れる。
恐らく、防御行動の意味すら無く蒸発するだろう。
いや、直撃せずとも掠めただけで致命傷になるのは明らかだった。
それでも、手を拱いている場合ではない。少尉は咄嗟に格闘戦をしかけた。
密着すれば長物は発砲できない。そして、中尉の射撃の技量なら援護どころか隙を突いて敵機の撃破すら期待できる。

だが、その目論みは瓦解した。

ストライク・ブレードは両手に対艦刀を抜き放ち、少尉のシグナスの両腕をすれ違いざまに斬り落とした。
「なんだ!?」
もはや人間業とは思えない反応速度と、技量。
が、ストライク・ブレードは少尉に止めを差す事なく中尉へと向かってくる。
「キラ・ヤマトにでもなったつもりか!」
ライフルを構え、ありったけのミサイルで飽和攻撃をしかける。
ミサイルで撃破されれば良し。
よしんば撃破されなくとも、無傷で突破は不可能。損傷で動きが鈍くなったところをライフルで仕留める。
最悪、無傷で突破されたとしても、相手の機動を絞り込め、狙撃は容易。
一瞬で其処まで読んだ中尉の攻撃だったが、ストライク・ブレードは異常な機動でソレを潜りぬけた。
地面に機体を擦りつけるような低い姿勢を取ると、両腕のワイヤーアンカーを中尉の足元に打ち込み、勢い良くワイヤーを巻き上げる。
そのまま機体を仰向けに倒し、地面に背中がつく寸前で各部のローラーを起動。
ローラーとワイヤーの巻上げだけを推進力に、大地に横たわった姿勢のまま中尉の眼前に迫り、まるでバネ仕掛けのようにそのままの姿勢で立ちあがった。
「な…ん…」
一瞬、呆然とした中尉のライフルを叩き折ると、対艦刀の柄頭をシグナスのメインカメラに打ち込み、視界を奪った。

だが、中尉の予想した次の一撃はなかった。

「シン!お客さんだ!」
「…お客さん?」
「ストライクブレードが単機でコッチに向かって来てる。少尉のサポートで中尉が狙撃するが切り抜けられた場合は俺とお前で…」
「大尉、シン、敵が来ます!」
大尉の言葉を遮るように中尉の絶叫がダストの通信機から聞こえた次の瞬間。
純白の機体が大尉とシンへ襲いかかった!

「ミスター・フェダーライン。Y-008が【S】とエンゲージしました」
「ここからが本番です。各員、気を引き締めてください」
高々度を飛ぶ偵察機から、その戦場を見つめる者達がいた。
機体には国籍その他を示すものが一切なく、更にはミラージュコロイドすら装備していた。
「Y-008が戦闘能力に関してはY検体と同等なのを検証する実験です。場合によってはEシステムも検証できるでしょう」

白いストライク・ブレードは、立て続けに大尉のシグナスに対艦刀を打ち込んで来る。
「こっ…のぉっ!」
大尉は必死に応じるが、手数が違いすぎ、十度目の打ち込みで右腕ごとビームサーベルを斬り飛ばされた。
「まだまだぁっ!」
左腕で予備のビームサーベルを引き抜くが、ビームを発進するより先に、ストライク・ブレードの対艦刀が肩関節に滑り込み、左腕を付根から落とされた。
「クソッタレが!」
だが、ストライク・ブレードはまたしても止めを差すことなく背を向ける。
「…何様の積もりだ、貴様!」
怒りに燃えたシンが対艦刀を振り下ろすが、あっさりとかわされる。
その機動を見た瞬間、シンの脳裏にあるパイロットの姿が想起された。
「アイツが?!」
そんな筈はなかった。
ガルナハンにいる筈もなく、ましてや、あの男の愛機は…
そんなシンの迷いを突くかのごとく、怒涛の攻めを見せるストライク・ブレードにシンは圧倒される。
咄嗟にスレイヤー・ウィップを離れた岩陰に打ち込むと、一旦距離を空けようとするが、間髪いれずにストライク・ブレードのアンカーがウィップに絡み付く。
「クッ!」
次の瞬間、巻き上げられたウィップとアンカーのテンションが釣り合い、ダストが空中で静止する。
そして、その無防備なダスト目掛けて対艦刀が振り下ろされる。
「こなくそっ!」
シンはスラスターを全開にしてウィップを引き抜こうとするが、予想以上に深く食い込んだウィップは抜け切れず、体勢を崩しまともに対艦刀にコクピットを晒してしまった。
しかし、シンが死を覚悟した瞬間、コクピットに当る寸前で対艦刀は止められた。
「なん…だと?」
一拍の間を置いてウィップのアンカーが引っこ抜け、ダストが体勢を持ち直すが、止まった対艦刀がそのまま神速で右腕に食い込む。
《シン、右腕の回路が断線した。予備回線に切替えるがそんなには持たんぞ》
「わかった!」
が、ストライク・ブレードの攻撃は全く衰える事なく、立続けにダストの装甲を対艦刀が削っていく。
《シン、このままではジリ貧だぞ!》
「判ってるよ!」
しかし、シン達は反撃の糸口が見出せず、背中に冷たいものが流れる。
(俺は、まだアイツに届かないのか!)

と、突然ストライク・ブレードの攻撃がやんだ。

「ミスター・フェダーライン」
「どうしました?」
「Y-008、情動に異常有り。ブロックワードにより緊急制御しました」
「早過ぎますね…再起動は?」
「リヴートを試みます…駄目です。信号拒絶」
「判りました。現時点でY-800を破棄。機体の制御権を剥奪し、Eシステムに移行」

《シン、どうして攻撃しない?》
「どうしてって言われてもな」

全く微動だにしない相手を前に、シンは躊躇していた。
隙だらけだが、もし乗っているのが「あの男」なら。
そう考えると迂闊に動けなかった。
(くそ!機動の癖が似てるからってアイツ自身とは限らないのに!)

何度目かの逡巡の後。
ストライク・ブレードの猛攻が再開した。
「くぅ!?」
しかし、何度か攻撃をかわすうちにある事に気付く。
(癖が…変わってる?)
先ほどまでの流れるような連続攻撃と変わって、一足の間合いを取ったままのヒット・アンド・ウェイ。
確かにどちらも「あの男」と機動の癖は同じだったが、攻撃時の選択は微妙に異なっている。
更に数度の攻撃を捌く内に、精度が僅かに落ち、その分速度が上がっている事がハッキリした。
「レイ、どう思う?」
《ありえない。途中でパイロットが替ったと言うのでもなければな》

「ミスター・フェダーライン、完全に【S】にEシステムは対応されています。どうしますか?」
「Eシステムのマン・ポイント設定を解除。Eシステムに自由に機動させてください」
「Y-008の破損率が高くなりますが?」
「構いません。必要なデータは取れました。どのみち再利用はできない状態でしょう」

フェダーラインの指示とほぼ同時に、ストライク・ブレードの速度が爆発的に跳ね上がった。
全身のローラーが唸りを上げ、シンの反射速度を上回る速度で一足の間合いから踏み込み、一撃を入れ、再び離れる。
もはやソレは人間の壁を超えた早さだった。
「なんだ!?」
《バカな?!パイロットが持つ速度じゃない!》
精度が低いのが救いだったが、もはやシンにすら捌けるシロモノではない。
一撃されるたびに装甲が爆ぜ、アクチュエーターが引き千切れ、センサーが潰されて行く。
「ち…く…しょう…」
低く呻き声をあげるが反撃の糸口どころか一撃で戦闘能力を失わないだけで精一杯だった。
(まだ届かないのか!おれは、まだ届かないって言うのか!)
「うわああああ!」
シンの頭の中でなにかが弾ける。
鋭敏化したシンの知覚は、ストライク・ブレードの攻撃タイミングを見切り、ビームサーベルを対艦刀にカウンターのタイミングで打ち込む。

ザン!

実に呆気なくダストの右腕が斬り飛ばされたが、全く構わずにシンはダストを突進させる。
ダストの右腕を斬り飛ばした対艦刀の軌跡にコクピットが掛かるように。
まるで誤作動でもしたかのようにぎこちなく対艦刀が跳ね上げ、大きく体勢を崩したストライク・ブレードにダストはタックルし、そのまま押し倒す。
シンは躊躇う事なくコクピットを開け放ち、組み付いたストライク・ブレードのコクピットハッチに取り突くと緊急解放レバーを探る。

「ミスター・フェダーライン!」
「いけませんね。証拠隠滅の準備を」

「ハッチの解放レバーは何処だ!?」
《シン、様子が変だ!》
突然、ストライク・ブレードのスピーカーからカウントダウンが始る。
『自爆シークエンスを開始します。カウントダウン30、29、28…』
「なんでわざわざカウントダウンなんか!」
シンは毒づくとダストのコクピットに戻り、ストライク・ブレードから離れる。

『4、3、2、1、ゼロ』

カウントダウンの終了と同時に、光と熱の奔流が溢れ出、後には何も残らなかった。

「シン、無事か?!」
大尉たちからダストに通信が入る。
「結局なんだったんだ、アリゃ?」
「…『軍神』を気取ったどっかの馬鹿だよ」
疲れ切った声でシンが答えた。

「ミスターフェダーライン、今回の実験はどうでした?」
「まあ、こんなものでしょうかね?【S】の生のデータも取れましたし。E計画もコレで進展するでしょう」
そう言うフェダーラインの顔には、昏い笑みが浮かんでいた。

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