アリーの街が、眼下に迫る。
『ふむ――中々良好だ。もう少し楽しみたい所だが、そうもいくまい』
その謎の飛行物体を操縦するAIは相変わらずお気楽な事を言う。
眼下では、ザウート隊がこちらを狙って射撃を開始している。
しかし、そんなものがそうそう有効打になる訳では無い。
その飛行物体はアリーの街に到着後、上昇して――目標を確認する。
眼下では、ザウート隊がこちらを狙って射撃を開始している。
しかし、そんなものがそうそう有効打になる訳では無い。
その飛行物体はアリーの街に到着後、上昇して――目標を確認する。
『ランディングポイント確認――何かに掴まっていろよ、シン』
そう、眼下の目標に対して呟いた後――自らを覆っていた繭をバージして、自分は街に急降下する。
正午の鐘が鳴り響き、ザウートの砲火が轟く中、人型のMSが降り立つ。
太陽をバックにザウートの射撃を惑わせながら、ダストはシンの待つポイントに着地した。
正午の鐘が鳴り響き、ザウートの砲火が轟く中、人型のMSが降り立つ。
太陽をバックにザウートの射撃を惑わせながら、ダストはシンの待つポイントに着地した。
――それより少し前。
ローゼンクロイツの野営地で、サイは一人大忙しだった。
ローゼンクロイツの野営地で、サイは一人大忙しだった。
「ダスト設置は!?ちゃんと固定したのか!?」
「――急ごしらえだから『どうなるか』なんて、やって見なきゃ判らないだろう!?」
「そんなの言い訳だ!自信が持てないならやり直せ!」
「――急ごしらえだから『どうなるか』なんて、やって見なきゃ判らないだろう!?」
「そんなの言い訳だ!自信が持てないならやり直せ!」
……ローゼンクロイツの古株メカニック相手に一歩も引かない。
短時間の内に、サイ=アーガイルはメカニック連中の好奇を一身に集めていた。
そんな状況を余所に、シゲトはダストのコクピットに目をやる。
そこには、奇妙な物が設えてあった。
シートの上に銀色の箱――それはコクピットと色取り取りのコードで繋がれ、シートから落ちないようしっかりと固定されていた。
――それは、ダストに内蔵されたAIレイがダストを動かせるようにサイが開発した物である。
短時間の内に、サイ=アーガイルはメカニック連中の好奇を一身に集めていた。
そんな状況を余所に、シゲトはダストのコクピットに目をやる。
そこには、奇妙な物が設えてあった。
シートの上に銀色の箱――それはコクピットと色取り取りのコードで繋がれ、シートから落ちないようしっかりと固定されていた。
――それは、ダストに内蔵されたAIレイがダストを動かせるようにサイが開発した物である。
「レイ、どう?……動かせる?」
『基本的な事だけならいけそうだ。……とても戦闘は出来そうもないがな』
『基本的な事だけならいけそうだ。……とても戦闘は出来そうもないがな』
今、ダストは筒状の奇妙な形の飛行機――の様なものに包まれていた。
形状は限りなくミサイルに近い。
MSがすっぽり入る大きさなのでミサイル、とは言えそうも無いが。
ユウナの『奇策』――それはアリーの街にいきなりダストを出現させるというものだ。
大尉達が敵を引きつけている間に、アリーの街に残ったザウート隊等を始末する。
戦争に於いて、いきなり後背を突かれるのは気持ちの良い物では無い。
まして理解出来ない様な方法であれば、尚更。
そしてこれが――リヴァイヴの反撃の狼煙となる。
形状は限りなくミサイルに近い。
MSがすっぽり入る大きさなのでミサイル、とは言えそうも無いが。
ユウナの『奇策』――それはアリーの街にいきなりダストを出現させるというものだ。
大尉達が敵を引きつけている間に、アリーの街に残ったザウート隊等を始末する。
戦争に於いて、いきなり後背を突かれるのは気持ちの良い物では無い。
まして理解出来ない様な方法であれば、尚更。
そしてこれが――リヴァイヴの反撃の狼煙となる。
――双眸に光が点り、聞き覚えのある心肺音が辺りに響く。
シンにとっては既に慣れた、ダストの機動手順。それまでの気怠さが嘘のように晴れていく。
……自分の居場所はここなのだと、パイロットは実感出来るものだ。
シンにとっては既に慣れた、ダストの機動手順。それまでの気怠さが嘘のように晴れていく。
……自分の居場所はここなのだと、パイロットは実感出来るものだ。
『シン――敵MSはザウート三機だ。ルタンドは来るまでにまだ時間が掛かる。……今の内にザウートを仕留めろ』
メインモニタにザウートが映る。
――敵の動きは未だ鈍い。
まさかこんな風に敵MSが来るとは思えなかったのだろう。
動揺が見て取れる。
――敵の動きは未だ鈍い。
まさかこんな風に敵MSが来るとは思えなかったのだろう。
動揺が見て取れる。
「言われなくても……」
ダストが屈伸し――動く!
「……解ってる!」
シンは、ダストを一気に跳躍させた。
今回のダストはミサイルで運搬するため、軽量装備――フライトユニットを展開させ、中空に躍り出る。
そして、ようやくザウートが攻撃態勢を整えた――その時!
今回のダストはミサイルで運搬するため、軽量装備――フライトユニットを展開させ、中空に躍り出る。
そして、ようやくザウートが攻撃態勢を整えた――その時!
「……食らえっ!」
ダストが右腕に装備していたバズーカが火を噴く!
普段、ダストはビームライフルを装備している。
何故市街地戦が予想されるのにバズーカなどという装備なのか?
――その理由はザウートに着弾した時に明らかとなった。
バズーカの弾頭が鈍重なザウートに突き進み――ザウートのパイロットが避けきれないと諦めた瞬間、弾頭が――ぱかっと割れる。
普段、ダストはビームライフルを装備している。
何故市街地戦が予想されるのにバズーカなどという装備なのか?
――その理由はザウートに着弾した時に明らかとなった。
バズーカの弾頭が鈍重なザウートに突き進み――ザウートのパイロットが避けきれないと諦めた瞬間、弾頭が――ぱかっと割れる。
「――?」
来るべき衝撃が来ない――そうザウートのパイロットが思った瞬間。
バチッバチッ!!
電撃――雷に匹敵する凄まじいクラスのそれに、機体は激しくスパークする。
瞬間的にザウートのコクピットマシンは破壊され、搭乗者も黒焦げとなった。
――プラズマリーダー弾。
瞬間的にザウートのコクピットマシンは破壊され、搭乗者も黒焦げとなった。
――プラズマリーダー弾。
原理はダストに装備されているスレイヤーウィップと同じ、電撃ショックで攻撃を加えるタイプのものだ。
だが、スレイヤーウィップと違う所は過電流の逆流を気にせず、破壊的な出力を出せる所にある。
無論、通常のMSならばここまで悲惨な事にはならない。
しかし、砲戦仕様のザウート――しかも旧式MSでは対抗する手段も無い。
今回この武装が採用されたのは戦闘予想地帯が市街地である事、尚かつ仮想敵がザウートである事を加味し決定された。……早い話が最も有効かつ、市街に被害を出さない武器として選定されたのである。
一瞬で僚機を無力化され――雄叫びの如く中空のダストへ撃ちまくるが、まるで羽毛が風になびく様にすいすいとダストは避け、そして――狙い澄ましたバズーカがまたもザウートを襲う!
だが、スレイヤーウィップと違う所は過電流の逆流を気にせず、破壊的な出力を出せる所にある。
無論、通常のMSならばここまで悲惨な事にはならない。
しかし、砲戦仕様のザウート――しかも旧式MSでは対抗する手段も無い。
今回この武装が採用されたのは戦闘予想地帯が市街地である事、尚かつ仮想敵がザウートである事を加味し決定された。……早い話が最も有効かつ、市街に被害を出さない武器として選定されたのである。
一瞬で僚機を無力化され――雄叫びの如く中空のダストへ撃ちまくるが、まるで羽毛が風になびく様にすいすいとダストは避け、そして――狙い澄ましたバズーカがまたもザウートを襲う!
コニールのアリーの街での仕事は『アリー市民の避難誘導』である。
「さあ皆、今の内に安全な所に避難して!……流れ弾が飛んできても大丈夫な所まで一時避難するだけよ!」
市街での戦闘は極力行わない様、ローゼンクロイツもリヴァイヴも配慮していたが――どうにもならない事態という物は起こり得る。
それ故、市民を一時避難させるのは有意義な事だ。
コニールはローゼンクロイツの部隊と協力して市民を誘導する。
それ故、市民を一時避難させるのは有意義な事だ。
コニールはローゼンクロイツの部隊と協力して市民を誘導する。
「ど、何処に逃げるの!?」
「政府軍に立てついたって、どうにもならないじゃないか!?」
「政府軍に立てついたって、どうにもならないじゃないか!?」
人々が口々に言う。その度、コニールは誠心誠意の説得を余儀なくされた。
「この状況だって政府軍が作り出したんでしょう!……いい加減理解して!政府軍は私達の事なんて考えてくれはしない!今は自分の身は自分で守らなきゃいけないんです!ここに弾が飛んでこないうちに早く!!」
普段のコニールとは全く違う物言い――コニール自身も欺瞞だと思う。だが、そういう事が必要な場合もある。……そういう風にコニールも成長していた。
人々は納得こそしなかったが、現状で避難する事に異論があるはずもない。
ダストとザウート隊が直ぐそこで闘っているのだから、それに勝る説得力は無い。
人々は納得こそしなかったが、現状で避難する事に異論があるはずもない。
ダストとザウート隊が直ぐそこで闘っているのだから、それに勝る説得力は無い。
ドォンッ!
――また爆発音。
ダストのものか、ザウートのものか。
一抹の不安がコニールの胸中を過ぎるが……しかし、直ぐにコニールは持ち直す。
ダストのものか、ザウートのものか。
一抹の不安がコニールの胸中を過ぎるが……しかし、直ぐにコニールは持ち直す。
(……アイツが、シンがこんな所で負ける訳が無い!あたしは、あたしの仕事をするんだ――アイツと対等で居るためにも!)
コニールは毅然と、人々に指示を出し続ける。
その甲斐あって市民の避難は順調に推移していた。
その甲斐あって市民の避難は順調に推移していた。
前線での志気は、確かに低下しつつある。
度重なる突拍子も無い事態、シグナス達の手練手管――それらは、前線に立つ兵士達には苛つくものだ。
とはいえ、『数の暴力』は戦場に於いて絶対の権力者に間違いは無い。
度重なる突拍子も無い事態、シグナス達の手練手管――それらは、前線に立つ兵士達には苛つくものだ。
とはいえ、『数の暴力』は戦場に於いて絶対の権力者に間違いは無い。
『最後のスモーク、撃つぜ!……なんかよぉ、“撤退戦”やってるっつーより、ただ単に“撤退”してるよーな気がするんだけどよォ!?』
『大変不本意ながら、貴方の意見に賛成です――対空溜弾、無くなりますよ!?』
「やかましい!ヘビが食えればこんな所でも天国だろうが!」
『……ええい、ここは地獄だぁぁぁ!』
『カレー粉も無い――ならば、相打ちにでも!』
「……お前等そんなに俺の飯が食いたいのか!?」
『大変不本意ながら、貴方の意見に賛成です――対空溜弾、無くなりますよ!?』
「やかましい!ヘビが食えればこんな所でも天国だろうが!」
『……ええい、ここは地獄だぁぁぁ!』
『カレー粉も無い――ならば、相打ちにでも!』
「……お前等そんなに俺の飯が食いたいのか!?」
……もう、何が何だか。こんな状況でもこんな調子なのは、余裕と言って良いものかどうか。
とはいえ、さすがの彼らも限界に近い。――そう判断した大尉は、一か八かの賭に出る。
「――全員、“林”へ逃げろ!」
とはいえ、さすがの彼らも限界に近い。――そう判断した大尉は、一か八かの賭に出る。
「――全員、“林”へ逃げろ!」
大尉の命令に――彼らは直ぐに反応した。
大尉が早かったのか、少尉と中尉が早かったのか――おそらくは同時だろう。
大尉が最後のグレネードを目眩ましに放り、彼らが動く。
……敵部隊は一瞬、虚を突かれただろう。
彼らは、なりふり構わず敵に背を向けて逃げ出したのである。
大尉が早かったのか、少尉と中尉が早かったのか――おそらくは同時だろう。
大尉が最後のグレネードを目眩ましに放り、彼らが動く。
……敵部隊は一瞬、虚を突かれただろう。
彼らは、なりふり構わず敵に背を向けて逃げ出したのである。
『ば――馬鹿かアイツ等!?』
何とか対空溜弾の雨を潜り抜けていたマサムネ二機のパイロット達は今までの見事なまでの撤退戦とは打って変わって、見苦しいまでの敗走ぶりに呆れかえった。
何とか対空溜弾の雨を潜り抜けていたマサムネ二機のパイロット達は今までの見事なまでの撤退戦とは打って変わって、見苦しいまでの敗走ぶりに呆れかえった。
『敵を馬鹿にしたり、褒めたりする時じゃ無いぞ!?――攻撃のチャンスだ!』
とはいえ、今まで彼らの見せていた撤退戦の手腕は軍学マニュアルに載せたいくらい見事なものであった。
……それが突然この有様。何処か引っかかるのも頷ける位の変わりようである。
補足すると、撤退戦とは『常に敵と相対出来る』訳でも無く、『常に敵に背を向けて逃げられる』訳でも無い。
攻めては引いて、引いては攻めて……最終的に引く、という極めて難しい用兵なのだ。
部隊のチームワークしかり、個人技しかり、敵部隊の動静を把握する戦術観しかり――それらが全て合わさって出来る戦術なのだ。
それが――突然素人の集団の如くな有様になれば、少しでも戦術を囓っていれば不審に思える。
だからこそゼクゥ隊も一瞬の躊躇が生まれたのだ。……まあ一瞬だけだが。
……それが突然この有様。何処か引っかかるのも頷ける位の変わりようである。
補足すると、撤退戦とは『常に敵と相対出来る』訳でも無く、『常に敵に背を向けて逃げられる』訳でも無い。
攻めては引いて、引いては攻めて……最終的に引く、という極めて難しい用兵なのだ。
部隊のチームワークしかり、個人技しかり、敵部隊の動静を把握する戦術観しかり――それらが全て合わさって出来る戦術なのだ。
それが――突然素人の集団の如くな有様になれば、少しでも戦術を囓っていれば不審に思える。
だからこそゼクゥ隊も一瞬の躊躇が生まれたのだ。……まあ一瞬だけだが。
全速で逃げるMSは、瞬間的には相当な回避力がある。
……とはいえMSは常に最高出力が出せる程優しくは無い。
如何に有効なバランサーがあったとしても、二脚である以上は不安定な部分がどうしても存在し、パイロットの微調整が必要となる。そのため、長期的な高速移動――道路などの舗装地帯ならともかく、様々な地形が存在する場所ではパイロットの注意が散漫になった瞬間速度が落ちてしまう。
対して、ゼクゥの四脚たる安定性は抜群で、高速移動との相性が非常に良い。
可変MSたるマサムネは飛行形態が存在するだけで移動力は言わずとも解るだろう。
要するに『ヤケになってもシグナスではどうやっても逃げられない』のだ。
……とはいえMSは常に最高出力が出せる程優しくは無い。
如何に有効なバランサーがあったとしても、二脚である以上は不安定な部分がどうしても存在し、パイロットの微調整が必要となる。そのため、長期的な高速移動――道路などの舗装地帯ならともかく、様々な地形が存在する場所ではパイロットの注意が散漫になった瞬間速度が落ちてしまう。
対して、ゼクゥの四脚たる安定性は抜群で、高速移動との相性が非常に良い。
可変MSたるマサムネは飛行形態が存在するだけで移動力は言わずとも解るだろう。
要するに『ヤケになってもシグナスではどうやっても逃げられない』のだ。
……そういう事がおそらくこの場の全員が察していたから、躊躇もするのである。
マサムネ隊に続き、ゼクゥ隊も追撃を開始する。
――しかしそこはマサムネ、対空溜弾さえ無ければ安心して速攻が出来る。
ターゲットをロックオンし、精密な射撃を加える。
強襲機マサムネの面目躍如たる攻撃だ。
しかしまたまたこの場の全員の度肝を抜く事態が起きる。
突然のミサイル警報。
慌ててマサムネのパイロットは確認し……惚けた。
マサムネ隊に続き、ゼクゥ隊も追撃を開始する。
――しかしそこはマサムネ、対空溜弾さえ無ければ安心して速攻が出来る。
ターゲットをロックオンし、精密な射撃を加える。
強襲機マサムネの面目躍如たる攻撃だ。
しかしまたまたこの場の全員の度肝を抜く事態が起きる。
突然のミサイル警報。
慌ててマサムネのパイロットは確認し……惚けた。
『……真下?』
そんな訳は無い。
敵はシグナスしか居ないはずだ――そう考えられたのは一瞬だけだったろうか。
先行したマサムネを地面から射出されたミサイルが襲う。
それは、大尉達が夜陰に乗じてこの辺りに仕掛けまくった対空地雷から発射されたものだ。
大尉の言った“林”とは何か?――それは、この対空地雷の作り出す“林”の事であった。
対空地雷とは、本来地雷という用途からは絶対に派生しないタイプの兵器だ。地面に埋めておいて、その上空を敵飛行機が通過した瞬間に射出されるミサイル。
普通の考えであれば、“意味の無い兵器”に間違い無い。
ところが有視界戦闘が強要されてしまうこのCE世界に於いては低空攻撃をするマサムネに対しては有効な兵器となる。
……とはいえ致命的な問題として『埋めた後、そこまでマサムネを誘導しなければならない』という有用性という項目から考えると、やはり問題有る兵器には間違い無い。
しかし、だからこそ――誰もがそんな代物の存在を忘れていたからこそマサムネは致命傷を負った。
先行したマサムネが爆散し、慌てて残りのマサムネは変形して回避した。
……が、マサムネのパイロットの動揺は収まらない。
――伏せられていたMS、フライル隊が目視圏内に出現したのだ。
敵はシグナスしか居ないはずだ――そう考えられたのは一瞬だけだったろうか。
先行したマサムネを地面から射出されたミサイルが襲う。
それは、大尉達が夜陰に乗じてこの辺りに仕掛けまくった対空地雷から発射されたものだ。
大尉の言った“林”とは何か?――それは、この対空地雷の作り出す“林”の事であった。
対空地雷とは、本来地雷という用途からは絶対に派生しないタイプの兵器だ。地面に埋めておいて、その上空を敵飛行機が通過した瞬間に射出されるミサイル。
普通の考えであれば、“意味の無い兵器”に間違い無い。
ところが有視界戦闘が強要されてしまうこのCE世界に於いては低空攻撃をするマサムネに対しては有効な兵器となる。
……とはいえ致命的な問題として『埋めた後、そこまでマサムネを誘導しなければならない』という有用性という項目から考えると、やはり問題有る兵器には間違い無い。
しかし、だからこそ――誰もがそんな代物の存在を忘れていたからこそマサムネは致命傷を負った。
先行したマサムネが爆散し、慌てて残りのマサムネは変形して回避した。
……が、マサムネのパイロットの動揺は収まらない。
――伏せられていたMS、フライル隊が目視圏内に出現したのだ。
対空地雷の作動は二つの意味を持つ。
マサムネに対する攻勢と、もう一つ――戦闘機を天敵とするフライル隊への合図だ。
マサムネに対する攻勢と、もう一つ――戦闘機を天敵とするフライル隊への合図だ。
『狼煙が上がった――行くぜ、野郎共!』
砂塵の中で息を殺していた三機のフライルが次々に起動する。
砂塵が関節部から中に入らないように装備していたガードネットが擦れて、軋みを上げる。
大尉がローゼンクロイツのフライル隊に依頼していたものは二つ。
一つめは『この場所に伏せて、合図を待て』、もう一つは『おそらく追撃として来ている筈のゼクゥ隊の撃滅』だ。
既にフライル隊が伏せている事についてのメリットには述べたが、フライルをゼクゥにぶつけるメリットは何か?
――これは、フライルというMSのコンセプトを考える必要がある。
砂塵が関節部から中に入らないように装備していたガードネットが擦れて、軋みを上げる。
大尉がローゼンクロイツのフライル隊に依頼していたものは二つ。
一つめは『この場所に伏せて、合図を待て』、もう一つは『おそらく追撃として来ている筈のゼクゥ隊の撃滅』だ。
既にフライル隊が伏せている事についてのメリットには述べたが、フライルをゼクゥにぶつけるメリットは何か?
――これは、フライルというMSのコンセプトを考える必要がある。
フライルというMSは、レジスタンスという『非公認に軍備を持たなければならない』特性上から様々な制限を持って開発された。
『安価』かつ『メンテナンスが楽』かつ『役に立つ』という三本柱――はっきり言えば無理難題に他ならない。
それだけはなく『部品調達』が楽など、様々な注文もついた。
が、“必要は発明の母”という至言はこのことか。
レジスタンスの技術者は”共有できる基本ユニット”、”部品・装備は現地部隊が自在にアレンジ”という二点に絞込み、ついに開発したのだった。
すなわちフライルとは機体の基本ユニットとなる基礎フレームとエンジン、コックピットだけで構成された、いわば骨格だけの簡易MSなのだ。
高い性能は望めど手に入るわけもなく、むしろその性能は雑魚の範疇に入るだろう。
それでも様々な部品を繋げただけで運用できるこの機体は、その応用性の広さと調達価格の安さゆえに、各レジスタンスで使われるようになった。
とはいうものの基本フレームユニットを除けば外観、性能はバラバラで部品の選択は現地の部隊それぞれだ。
『安価』かつ『メンテナンスが楽』かつ『役に立つ』という三本柱――はっきり言えば無理難題に他ならない。
それだけはなく『部品調達』が楽など、様々な注文もついた。
が、“必要は発明の母”という至言はこのことか。
レジスタンスの技術者は”共有できる基本ユニット”、”部品・装備は現地部隊が自在にアレンジ”という二点に絞込み、ついに開発したのだった。
すなわちフライルとは機体の基本ユニットとなる基礎フレームとエンジン、コックピットだけで構成された、いわば骨格だけの簡易MSなのだ。
高い性能は望めど手に入るわけもなく、むしろその性能は雑魚の範疇に入るだろう。
それでも様々な部品を繋げただけで運用できるこの機体は、その応用性の広さと調達価格の安さゆえに、各レジスタンスで使われるようになった。
とはいうものの基本フレームユニットを除けば外観、性能はバラバラで部品の選択は現地の部隊それぞれだ。
ローゼンクロイツで使われているこのフライルは、戦闘機の部品を流用して作られた一バリエーションであり、結論から言えば“対バクゥ系のMA用”として開発されたMSなのだ。
素人から見れば「気持ち悪い」とまで酷評される戦闘機に手足を付けただけのスタイルは、砂漠地帯におけるMS戦闘のアドバンテージを得るべくして成り立ったものである。
素人から見れば「気持ち悪い」とまで酷評される戦闘機に手足を付けただけのスタイルは、砂漠地帯におけるMS戦闘のアドバンテージを得るべくして成り立ったものである。
砂漠地帯に於いて、バクゥ系MAのアドバンテージは素晴らしいものがある。
二足歩行に対して四足歩行は砂漠地帯で安定性に優れ、その分高速移動能力に優れる。
武器の威力が十分ならば、高速機動戦闘が出来るバクゥ系は単純に有利なのだ。
……ではバクゥ系の弱点は無いのか?と言われると、実は明瞭な弱点が存在する。
それは航空機だ。
その形状から、上方向への攻撃が難しいバクゥ系は航空機等に接近攻撃された際の対策が数える程しかない。
しかし、レジスタンスは十分な航空戦力を有す事は出来ない。
飛行場などの大規模施設は到底望めないし、母艦――機動戦艦など以ての外だ。
ならば、航空機の様に運用出来るMAがあれば――その様なコンセプトの元に開発されたのがフライル、という訳だ。
二足歩行に対して四足歩行は砂漠地帯で安定性に優れ、その分高速移動能力に優れる。
武器の威力が十分ならば、高速機動戦闘が出来るバクゥ系は単純に有利なのだ。
……ではバクゥ系の弱点は無いのか?と言われると、実は明瞭な弱点が存在する。
それは航空機だ。
その形状から、上方向への攻撃が難しいバクゥ系は航空機等に接近攻撃された際の対策が数える程しかない。
しかし、レジスタンスは十分な航空戦力を有す事は出来ない。
飛行場などの大規模施設は到底望めないし、母艦――機動戦艦など以ての外だ。
ならば、航空機の様に運用出来るMAがあれば――その様なコンセプトの元に開発されたのがフライル、という訳だ。
とはいえ、このフライルはコンセプトからしてバクゥ系に対して圧倒的な戦闘力を持つが、それ以外に対して、特に戦闘機に対しては雑魚でしかない。
それ故、大尉はフライルの天敵となりかねないマサムネ対策として対空地雷を用意したのだ。
マサムネ側は『まだ対空地雷が有るのかも知れない』という恐怖を持ってしまうため、おいそれとは手出しは出来ない。
実際に『もうそんなものは無い』と知るのは、レジスタンス側だけだ。
それ故、大尉はフライルの天敵となりかねないマサムネ対策として対空地雷を用意したのだ。
マサムネ側は『まだ対空地雷が有るのかも知れない』という恐怖を持ってしまうため、おいそれとは手出しは出来ない。
実際に『もうそんなものは無い』と知るのは、レジスタンス側だけだ。
今、現状はフライルにとって理想的な環境――ゼクゥを屠るのにこれ以上無い環境。
そして、そこまでの経緯はフライル隊のパイロット全員が知っている。
どれだけシグナス隊が無理をしてくれたのか、リヴァイヴが命懸けでここまで戦ってくれたのか。
……ここまでされて、己の命を惜しめる様な弱輩者は“ローゼンクロイツ”には居ない。
そして、そこまでの経緯はフライル隊のパイロット全員が知っている。
どれだけシグナス隊が無理をしてくれたのか、リヴァイヴが命懸けでここまで戦ってくれたのか。
……ここまでされて、己の命を惜しめる様な弱輩者は“ローゼンクロイツ”には居ない。
『一人一殺!……死んでも落とせ!』
この言葉がその心を余すことなく伝えている。
……命を惜しみ、逃げ帰る事は許されない。
というより、自らが許せない。
言葉通り、フライル隊は特攻を開始する。
防御をかなぐり捨てた、命懸けの攻撃。
――時間が経てば立つ程、シグナス隊の負担となる。
ならば、一合で片をつける!
……命を惜しみ、逃げ帰る事は許されない。
というより、自らが許せない。
言葉通り、フライル隊は特攻を開始する。
防御をかなぐり捨てた、命懸けの攻撃。
――時間が経てば立つ程、シグナス隊の負担となる。
ならば、一合で片をつける!
フライルが宙に高々とジャンプする。
四足MSの最大の弱点――、上空からのトップアタックだ。
簡易的な機体でのトップアタックの実現。
これこそがローゼンクロイツの手によるフライルの最大の武器なのだ。
だがその反面、軽量ゆえに装甲は薄く、一撃必殺にかけるしかない。
四足MSの最大の弱点――、上空からのトップアタックだ。
簡易的な機体でのトップアタックの実現。
これこそがローゼンクロイツの手によるフライルの最大の武器なのだ。
だがその反面、軽量ゆえに装甲は薄く、一撃必殺にかけるしかない。
ゼクゥも応戦。
一機のフライルが被弾する。
……が、誰も怯まない!
装備されたビームガンが乱射される。
一機のフライルが被弾する。
……が、誰も怯まない!
装備されたビームガンが乱射される。
『ウオオオオオッ!』
パイロットが吠える。
ゼクゥ隊も果敢に攻撃を加えるが――有効打が撃てない。
特性上、ゼクゥは距離を取らないとフライルへ有効打が撃てないのだ。
なんとか着地際を狙おうと必死だ。
ゼクゥ隊も果敢に攻撃を加えるが――有効打が撃てない。
特性上、ゼクゥは距離を取らないとフライルへ有効打が撃てないのだ。
なんとか着地際を狙おうと必死だ。
……だが、特攻するフライル隊もその事は熟知している。
それ故、被弾覚悟で直線で突撃する。
勝ち戦だと思っていて、即座に命を投げ出せる将兵は少ない。
反対に、負け戦だと実感していて命を投げ出せる将兵はそれなりに居る。
……それは、そんな勝負だった。
それ故、被弾覚悟で直線で突撃する。
勝ち戦だと思っていて、即座に命を投げ出せる将兵は少ない。
反対に、負け戦だと実感していて命を投げ出せる将兵はそれなりに居る。
……それは、そんな勝負だった。
一機、二機とゼクゥが被弾し、炎上する。
――最後の一機には真下からの一撃で被弾したフライルが、落下にまかせてそのまま体ごとぶつかっていった。
迎撃の一打を放ったゼクゥのボディに、落とされたフライルの機体が突き刺さる。
両機は誘爆し、砂塵に己の体を散らしていった。
櫛の歯が欠ける様に、一機、又一機と友軍が撃墜されていく。
戦争においてそれはしばしば『悪夢』と形容される。
しかし、マサムネのパイロットにとって『悪夢』とは正にこれから始まるものだった。
――最後の一機には真下からの一撃で被弾したフライルが、落下にまかせてそのまま体ごとぶつかっていった。
迎撃の一打を放ったゼクゥのボディに、落とされたフライルの機体が突き刺さる。
両機は誘爆し、砂塵に己の体を散らしていった。
櫛の歯が欠ける様に、一機、又一機と友軍が撃墜されていく。
戦争においてそれはしばしば『悪夢』と形容される。
しかし、マサムネのパイロットにとって『悪夢』とは正にこれから始まるものだった。
「ライトニング=フォーメーションAct.チャーリー!!」
大尉の号令で、最後の力を振り絞り中尉、少尉が動く。
――狙うは唯一健在なマサムネ!
だが、未だ高空の安全地帯に居るマサムネをどうするのか?……否。
安全だと相手が思っているからこそ、奇襲の意味合いがある。
次の瞬間――驚くべき事に少尉のシグナスがマサムネの高度まで――跳んだ。
先にも言ったが、MSの機動性では到底到達出来ない高度にマサムネが居たにも拘わらず。
――狙うは唯一健在なマサムネ!
だが、未だ高空の安全地帯に居るマサムネをどうするのか?……否。
安全だと相手が思っているからこそ、奇襲の意味合いがある。
次の瞬間――驚くべき事に少尉のシグナスがマサムネの高度まで――跳んだ。
先にも言ったが、MSの機動性では到底到達出来ない高度にマサムネが居たにも拘わらず。
『そ、そんな馬鹿な……!?』
マサムネのパイロットは対処出来ない――無理も無い。
こんな出鱈目な戦法、する方がどうかしてる。
彼ら、シグナス隊が何をしたのか――それは直ぐに解った。
目の前で、彼らが何をしたのか、見ていたからだ。
……見てても、一瞬呆気に取られたのだ。
彼らは、まるで騎馬戦の様に片腕のシグナスを抱えると、そのまま馬になった二機のシグナスのスラスターでジャンプ。
そして、最高度に到達した所で、片腕のシグナスが自身のスラスターで跳ぶ――マサムネの居た高度まで。
……考え方は多段ロケットと同じだ。
だが、理論と実践には雲泥の差がある。
――その差が、明暗を分けた。
こんな出鱈目な戦法、する方がどうかしてる。
彼ら、シグナス隊が何をしたのか――それは直ぐに解った。
目の前で、彼らが何をしたのか、見ていたからだ。
……見てても、一瞬呆気に取られたのだ。
彼らは、まるで騎馬戦の様に片腕のシグナスを抱えると、そのまま馬になった二機のシグナスのスラスターでジャンプ。
そして、最高度に到達した所で、片腕のシグナスが自身のスラスターで跳ぶ――マサムネの居た高度まで。
……考え方は多段ロケットと同じだ。
だが、理論と実践には雲泥の差がある。
――その差が、明暗を分けた。
『うおおおおおおっ!!』
『ひいいいいィィィ!?』
『ひいいいいィィィ!?』
少尉はスラスターをフルに使い、機体ごとマサムネにぶつける。
それを、マサムネは避ける事が出来なかった。
マサムネはコクピットがひしゃげ、コントロールを失い墜落する。
力を使い果たしたシグナスは、こちらも落下していくが――先程と同じように中尉機と大尉機が抱き止め、三機は仲良く地上に降り立った。
それを、マサムネは避ける事が出来なかった。
マサムネはコクピットがひしゃげ、コントロールを失い墜落する。
力を使い果たしたシグナスは、こちらも落下していくが――先程と同じように中尉機と大尉機が抱き止め、三機は仲良く地上に降り立った。
ムラマサに設えられた戦術指揮用のモニター。
それに映る情報をどう確認しても、アデルにはこの一言しか思いつかない。
それに映る情報をどう確認しても、アデルにはこの一言しか思いつかない。
(……してやられた、という事か!)
敵はこちらの予測を遙かに上回る方法でガンダムタイプを後方支援部隊に突貫させ、こちらの後方支援部隊を潰しに掛かった。
更に前線部隊は様々なゲリラ戦術で分断され、各個に迎撃されてしまった。
現存している部隊は、今やムラマサとルタンド隊だけだ。
部隊の半数以上が撃墜されたとあっては、戦術面でレジスタンスに敗北したのは理解せざるを得ない。
――だが、諦める訳にはいかない。
否、諦められない。
アデルには撤退出来る場所は無いのだ。
進むも死、退くも死――用意された運命はそれしかない。
ならば――
アデルは静かにモニタを操作する。最大望遠でアリーの街を――そこに居るMSを大映しにする。
更に前線部隊は様々なゲリラ戦術で分断され、各個に迎撃されてしまった。
現存している部隊は、今やムラマサとルタンド隊だけだ。
部隊の半数以上が撃墜されたとあっては、戦術面でレジスタンスに敗北したのは理解せざるを得ない。
――だが、諦める訳にはいかない。
否、諦められない。
アデルには撤退出来る場所は無いのだ。
進むも死、退くも死――用意された運命はそれしかない。
ならば――
アデルは静かにモニタを操作する。最大望遠でアリーの街を――そこに居るMSを大映しにする。
「そうだ……全ては貴様が居たからだ……」
アデルはぶつぶつと呟く。
そうだ――全てはこいつから始まった。度重なる敗北も、味わった事の無い屈辱も。
ガンダムタイプ――ダスト!
そうだ――全てはこいつから始まった。度重なる敗北も、味わった事の無い屈辱も。
ガンダムタイプ――ダスト!
「貴様さえ居なければ……!」
狂気が、アデルの中で渦巻く。
「良い子ぶってリヴァイヴだのと、正義を振りかざした所で――結果として貴様は単なる殺戮者に過ぎん。殺人に貴賤など無いのだ……!お前に与えられるのは賞賛でも感謝でもない。ただ、怨嗟と侮蔑のみが相応しい!……待っていろ。私が貴様に、貴様に相応しい墓場を用意してやる……」
アデルの口元から、笑いが溢れる。
それは恐怖と、嫌悪と――愉悦がブレンドされた嗜虐の笑い。
己の運命も、他人の運命も構わず投げ捨てる事が出来る――そんな人間の笑い。
今、アデルは確かに魔剣の所持者であった。
伝説の通り、親を殺し、妻を殺し、敵を殺し、そして――己をも殺した狂気の剣の。
それは恐怖と、嫌悪と――愉悦がブレンドされた嗜虐の笑い。
己の運命も、他人の運命も構わず投げ捨てる事が出来る――そんな人間の笑い。
今、アデルは確かに魔剣の所持者であった。
伝説の通り、親を殺し、妻を殺し、敵を殺し、そして――己をも殺した狂気の剣の。
黒い鳥が、空を切り裂いていく。
禍々しきフォルムは威圧性を期待したものか、黒で塗り固められた姿は正しく『凶鳥』といった所だ。
ムラマサ――かつて、所有者を常に死に追いやったという剣の伝説――その名を継いだMA。
……企画段階からして、単機での強襲を念頭に置かれ創り上げられた生粋の強襲機である。
何故、オーブという平和理念の元からこの様な超攻撃的なMAが作られるのだろうか?
禍々しきフォルムは威圧性を期待したものか、黒で塗り固められた姿は正しく『凶鳥』といった所だ。
ムラマサ――かつて、所有者を常に死に追いやったという剣の伝説――その名を継いだMA。
……企画段階からして、単機での強襲を念頭に置かれ創り上げられた生粋の強襲機である。
何故、オーブという平和理念の元からこの様な超攻撃的なMAが作られるのだろうか?
『最大多数の最大幸福』……それを叶えるためであった。
戦争が、戦乱が避けられるのなら――相手を倒さなければならない。
殺さなければならない。
ならば……効率良く、効率的な方が良い。それは極めつけのエゴイズムに端を発する、しかしある種の真理。
オーブの最新鋭MS『暁』がオーブの理念であり、守護神たり得るのならば、ムラマサは最もオーブの理念を守るために『なりふり構わない姿』と云える。
戦争が、戦乱が避けられるのなら――相手を倒さなければならない。
殺さなければならない。
ならば……効率良く、効率的な方が良い。それは極めつけのエゴイズムに端を発する、しかしある種の真理。
オーブの最新鋭MS『暁』がオーブの理念であり、守護神たり得るのならば、ムラマサは最もオーブの理念を守るために『なりふり構わない姿』と云える。
近づいてきているMA――ムラマサを、とうにシンは認識し、備えを怠らなかった。
だが……シンの認識は『真っ当な正規軍が相手』というものに他ならない。
既にして、相手が『ヤケになった正規軍』だと認識はしていなかった。
――それ故に、初動が遅れた。ムラマサが自分に対しミサイルを全段射出してきたのを見て、数瞬考えてしまった。
だが……シンの認識は『真っ当な正規軍が相手』というものに他ならない。
既にして、相手が『ヤケになった正規軍』だと認識はしていなかった。
――それ故に、初動が遅れた。ムラマサが自分に対しミサイルを全段射出してきたのを見て、数瞬考えてしまった。
(……ここにはまだ、市民が居るんだぞ!?)
そう。
確かにシンとコニールはザウート隊を蹴散らした。
その後、コニールは現地ローゼンクロイツと協力して市民の避難誘導を行う手筈になっていたはずだ。
そして、それは未だ完了していない――まだ街中に市民が居るのがダストからでも見て取れるのだ。
そもそも今回の奇策は、アリーの街という環境を十分に考慮したものだった。
『政府軍にとっても、レジスタンス側にとっても無傷で手中にしておきたい』というアリーの街の特性。
産業拠点としてのアリーの街はやはり有意義なものであるからだ。
それ故にレジスタンス側はこの街に砲撃を仕掛ける事は――戦術上で不利であったとしても――どうしても躊躇ってしまう。
大尉達が満身創痍になりながらも撤退戦術を敢行したのはそういった背景もあったのだ。
確かにシンとコニールはザウート隊を蹴散らした。
その後、コニールは現地ローゼンクロイツと協力して市民の避難誘導を行う手筈になっていたはずだ。
そして、それは未だ完了していない――まだ街中に市民が居るのがダストからでも見て取れるのだ。
そもそも今回の奇策は、アリーの街という環境を十分に考慮したものだった。
『政府軍にとっても、レジスタンス側にとっても無傷で手中にしておきたい』というアリーの街の特性。
産業拠点としてのアリーの街はやはり有意義なものであるからだ。
それ故にレジスタンス側はこの街に砲撃を仕掛ける事は――戦術上で不利であったとしても――どうしても躊躇ってしまう。
大尉達が満身創痍になりながらも撤退戦術を敢行したのはそういった背景もあったのだ。
だが――弧を描き、ダストに向かって飛来する六本の矢は、それ一つで街に大損害を与えうる対MS用のミサイルだ。
ダストに当たらずとも、レジスタンスは痛手を受ける――当然政府軍側も。
暗黙の了解であったお互いのルールが破られた瞬間である。
ダストに当たらずとも、レジスタンスは痛手を受ける――当然政府軍側も。
暗黙の了解であったお互いのルールが破られた瞬間である。
『シン。ミサイルはアクティブ誘導方式だ。ダスト目掛けて飛来するぞ。何とか避けろ』
「避けたら――街に当たる!」
「避けたら――街に当たる!」
シンが叫ぶ。
それは紛れも無い――最悪の予想。
街に一発でも当たれば……コニールや、市民がどうなるか。
MS同士の武器が、たとえ一つでも流れてしまったらどうなるか。
シンの脳裏に、フラッシュバックする映像――そんなものが無くても、容易に想像が付く。
そして、シンにとってそれは決して見たくない、見てはならない類の映像に他ならない。
シンは、ダストのスラスターペダルを乱暴に蹴飛ばし、一気にダストを中空に押し出す。
それにつられて、ミサイル群がダストを視認したかのようにくくっと向きを変える。
それは紛れも無い――最悪の予想。
街に一発でも当たれば……コニールや、市民がどうなるか。
MS同士の武器が、たとえ一つでも流れてしまったらどうなるか。
シンの脳裏に、フラッシュバックする映像――そんなものが無くても、容易に想像が付く。
そして、シンにとってそれは決して見たくない、見てはならない類の映像に他ならない。
シンは、ダストのスラスターペダルを乱暴に蹴飛ばし、一気にダストを中空に押し出す。
それにつられて、ミサイル群がダストを視認したかのようにくくっと向きを変える。
『どうする気だ?今は増加装甲も無い。一溜まりもないぞ?』
「……全部、打ち落とせば良いんだっ!」
『確かに、最早それしかないな。……上手くやれよ』
「……全部、打ち落とせば良いんだっ!」
『確かに、最早それしかないな。……上手くやれよ』
ひどく冷静なレイの声が、熱くなりがちなシンに上手く水を差す。
シンはラダーを操作し、ダストをミサイル群から直角に移動させ、少しでも着弾までの時間を稼ぐ。
そして、手当たり次第に頭部バルカン”イーゲルシュテルン”を乱射して少しでもミサイルを打ち落とす!
シンはラダーを操作し、ダストをミサイル群から直角に移動させ、少しでも着弾までの時間を稼ぐ。
そして、手当たり次第に頭部バルカン”イーゲルシュテルン”を乱射して少しでもミサイルを打ち落とす!
「落ちろっ!」
ミサイル群はダストをまるで生き物のように追いつめる。
白く伸びる白煙が、蛇のようにダストを襲う!
そこにダストのイーゲルシュテルンが打ち込まれ、一つ、又一つと息の根を止めるが――数が多すぎる!
白く伸びる白煙が、蛇のようにダストを襲う!
そこにダストのイーゲルシュテルンが打ち込まれ、一つ、又一つと息の根を止めるが――数が多すぎる!
『直撃、来るぞ!――何をやっている!?』
……AIに叱咤されるパイロットなど、そうはいない。
「……ここからだ!」
シンは、ダストに携行させていたバズーカをぽいっと放り――それにイーゲルシュテルンを撃ち込ませた。
瞬間、辺りにスパークが走る!
瞬間、辺りにスパークが走る!
「くあっ!」
モニタが一瞬でホワイトアウトし、シンはダストを自由落下に任せる。
ミサイルの誘導を切るためと、計器の無い状態でのアクロバット飛行は危険だと瞬時に判断したのだ。
……この辺はパイロットの本能である。
果たして、ミサイル群はバズーカの誘爆に寄って生み出された局地的な電磁スパークで計器類を破壊され、あるものは爆散し、またあるものは砂漠に落ちる。
それを確認し、ほっと胸を撫で下ろすシン。
ミサイルの誘導を切るためと、計器の無い状態でのアクロバット飛行は危険だと瞬時に判断したのだ。
……この辺はパイロットの本能である。
果たして、ミサイル群はバズーカの誘爆に寄って生み出された局地的な電磁スパークで計器類を破壊され、あるものは爆散し、またあるものは砂漠に落ちる。
それを確認し、ほっと胸を撫で下ろすシン。
「……ふう」
(何とか、被害は防げたか……。)
しかし、シンに安息はそうそう訪れない。すぐさまレイの警鐘が飛ぶ。
『来るぞ!大物だ!』
――飛来してきたMAは今や変形し、巨大な人型へと化身する。
否、それはやはりMSではない。MSの様なコンセプトで作られた代物ではないのだ。
巨大な腕らしきものから発振された大型のビームサーベルが、驚くべきスピードでダストに飛来してくるのを見て、慌ててシンはダストに対艦刀”シュベルトゲベール”を構えさせる!
否、それはやはりMSではない。MSの様なコンセプトで作られた代物ではないのだ。
巨大な腕らしきものから発振された大型のビームサーベルが、驚くべきスピードでダストに飛来してくるのを見て、慌ててシンはダストに対艦刀”シュベルトゲベール”を構えさせる!
バチィッ!!!
「……なっ!?」
ダストが――ぶっ飛ばされた。
巨大な機動性から生み出された運動エネルギーが、巨大なビームサーベルごと叩き付けられ――シュベルトゲベールごとダストが弾き飛ばされる!
巨大な機動性から生み出された運動エネルギーが、巨大なビームサーベルごと叩き付けられ――シュベルトゲベールごとダストが弾き飛ばされる!
「うおおっ!?」
地表に叩き付けられる寸前、シンはダストのスラスターを全開にして何とか墜落だけは避ける。
再びアリーの街に降り立ったダストの前に、黒い巨体が降り立つ。
人型のシルエットは更なる禍々しさを連想させる。
再びアリーの街に降り立ったダストの前に、黒い巨体が降り立つ。
人型のシルエットは更なる禍々しさを連想させる。
――オーブ最新鋭MAムラマサのスタンディングモードであった。