「オープニング」
「死を乗り越えた『超越者』である加賀美形而の名のもとに!
キミ達の魂にて、開け、『天国の扉』よ!」
その声で彼は目覚める。
「ここ…は?」
そう言いながら起き上った青年は白い理系の服を着ている大学生ぐらいの男性だった。
背は高く、無精髭の生えていて、どこかボケっとしているような風体であった。
「え、何だ…ここ!?」
彼は戸惑っていた。それも当然である。
彼は自分の所属しているサークルの部室のソファーに座って好物のドクターペッパーをペットボトル一本分飲み干し、部員の前で眠っていたからである。
彼が目覚めたここは、見知らぬビルの一室であった。コンクリートの床に無機物的に照らす白熱灯。部室にあったはずのソファもパソコンもペットボトルも無かった。
あったのは、首元に付けた覚えの無い金属製の首輪。そして彼以外にも老若男女の人物がいたことだ。
人数はかなり多くざっと数えても50人は超えている。部屋は広く、一辺は講堂のような台があった。その上には誰かが立っていた。
ホストのような白いスーツを着ていて、金髪でキザい風体をしている男であった。
「こ、ここは…?」
「フフフ…面白い事になった」
「なんだ…ここ?」
「む…?」
まだ眠っていた人たちも目覚め始めた。
金髪の女子、食堂にいそうな男性、よく分からない物を腕に付けた青年、仮面をつけた老人。
「おや、お目覚めかい? ぐっすり眠れたようでなによりだよ。オレの名前は鏡 形而」
講堂に立っていた男は大きく手を振り回し叫ぶ。倫太郎も部屋にいた人たちも皆彼を見ていた。
講堂に立っていた彼は続いて何か言おうとした途端、黒い影が見えた。
ブシュ。
「おやおや? 殺したはずなのに何故あなたが生きているのでしょうか?
もしやあなたも私と同じような身に?
それは中々興味深い。ですので試しに死んでください」
講堂に立っていた男の首から赤い液体が激しく飛び出ていた。それは血だった。その男の前の講堂台の上には男が立っていた。
カウボーイが被っているような帽子を被った黒いマントの男は懐から真っ赤な剣を取り出すと一瞬で金髪の男の首をはねたのだ。
金髪の男も無抵抗にやられたわけではなかった。
しかしこの二人の攻撃の応酬があまりにも速すぎて、倫太郎には一瞬にしか感じられなかったのだ。
叫び声、驚嘆の声。皆は混乱していた。倫太郎自身も戸惑いを隠せなかった。中には不動せず立っている者や、むしろ嗤っている人もいた。
「すまないが講堂台から降りてくれないか、
赤屍蔵人君?」
講堂台の後ろにあった幕から一人の人間が現れた。
背は高く、黒い鎧を着ていているので男か女は判らないが、間違いなく自分を此処に連れてきた人物であると一目で分かった。
「私は黒のカリスマ…」
その男はそう名乗った。後ろからかっこいいという声が聞こえたような気がした。
黒のカリスマと名乗るその人物は言う。
「これから、君達79名で─────
────────殺し合いをしてもらおう。」
「…は?」
俺の口から本音がとっさに漏れた。周りにいた人たちもざわめきの声を出していた。
「おいおい、冗談だろう?」
倫太郎の横にいた長い黒髪の高校生ぐらいの少女が言った。
「まったく、僕たちをこんな訳の分からない所に連れてきたと思えばまた訳の分からないことを…」
「君の言いたいことはわからないわけではないが…まあいい、これを見てもらおう」
黒のカリスマは大仰な動作で手を挙げると、講堂台の左右の天井に穴があき、紐で縛られた男女が吊るされたまま降りてきた。
眼鏡をかけたおかっぱの男と茶髪のショートヘアの女だった。二人とも気を失っていた。
「インセクター羽賀!?」
「香純!?」
二人の男がそれを見て叫んだ。あの男女はどうやら彼らの知り合いらしい。
「黒のカリスマ…!羽賀に何をするつもりだ!?」
「てめぇ、香澄からその汚い手をどけやがれ!」
二人の男は息を荒くして怒りを顕にする。
香澄という少女の知り合いに至っては今にも飛びかかりそうだったが、何故か寸前で押しとどまる。
黒のカリスマはその様子を見て笑っていた。
「藤井君はともかく武藤君にとって彼は敵ではないかな?」
「あいにく俺の相棒は人の良さが自慢でな!」
「へえ、カッコイイじゃない。……ごほん、ほう、カッコイイではないか」
「それよりてめえ、形成できねえのもてめえの仕業か!? 香澄だけじゃなくマリィもどうした!」
「ふむ、慌てるのはまだ早いとだけ答えておこう。さあ、これを見るがいい!」
黒のカリスマは懐からスイッチを取り出す。
「では、今宵のグランギニョルを始めよう!」
芝居がかった台詞を口にしながらスイッチを押す。
吊るされていた男女の首元からピピピと電子音音を出した。
その電子音はだんだんと大きくなり、電子音が止まったと思ったら、首元が光った。
次の瞬間、風が吹き、目の前に赤い液体と煙。そして、吊るされていた女性の首が飛んできた。
男女の首に付けられていた首輪が爆発したのだ。吊るされていた男女には首が無かった。
突然のことで、目の前の死体に岡部倫太郎は驚き、腰が抜けてしりもちをついた。部屋には悲鳴と泣き声が響き渡った。
「香澄いいいい! てめえ、よくも香澄を!」
「羽賀あああああ!」
「ふははははははは! 怒るのは結構だが私に襲いかかるのはよしたほうが身のためだぞ!
お前たちの首にもこれと同じ首輪がはめられているのだからな!
私は本気だ!逆らう者!逃げる者!そんな人はこのようになる!」
会場はどよめく。三分の二ほどの人々は顔が青くなっていた。
黒のカリスマは続けてゲームの説明を始めた。禁止エリアや一人に二つの支給武器や首輪の説明をした。
説明が終わると黒のカリスマは最後に質問があるか尋ねた。
倫太郎は突然のことに何をすればいいのかわからなかった。
そんな中、先ほどの長い黒髪の少女が手を挙げた。
「安心院君か…なんだ?」
安心院という少女は右手でピストルの形をつくり、自分のこめかみに抑えつけた。
「ばあん」
彼女はそう言うと、頭に穴が開き、頭から血があふれた。まるで、本物の銃で自害したような状況であった。
彼女はそのままふらつき、全身の力がぬけるように目を閉じた。
何が彼女にそうさせたのかは分からない。
しかし、彼女はそうして死に――
そしてその死を覆された。
「自殺とかつまんないから没」
「なん……だと……」
黒のカリスマの言葉に安心院は驚いていた。
安心院の頭に空いた穴も、床にこぼれおちた血も無くなっていた。
倫太郎は声にならない驚きをあげた。
今起こった見た事も無い出来事に、これまで倫太郎がやってきた活動もちっぽけなものになるような状況であった。
岡部倫太郎の理解を超える状況であり、これまでがどうでもよくなってしまった。
そして、目覚めた。
その名は鳳凰院凶真であった。
岡部倫太郎は笑った。笑い声を挙げた。笑うしかなかった。
「質問はないな?では始めるとしよう」
黒のカリスマはそう言うと指を鳴らした。
それと同時に岡部倫太郎の視界は揺らめいた。
「な、なんだこれは!?」
ぐるぐると、周りの視界が混ざり合いやがて黒くなっていった。
視界が真っ暗になる前、最後にこんな声が聞こえた。
「さあ、面白いゲームになることを祈っているよ!!」
長い、最悪のゲームが今始まる。
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最終更新:2012年12月27日 08:36