【名前】
陸奥九十九
【名ゼリフ】
「さあ、殺し合おうか」
「電影弾はやらないのか?」
【本ロワの動向】
厨二ロワにて、
セフィロスとの壮絶な戦いの果てに、勝利と引き換えに命を燃やし尽くした修羅。今回はその死亡後・厨二ロワ最終決戦前からの参戦となった。
ロワのオープニングからずっと、死んだはずの自分が生きていることに疑問を持っていた。だが、ロワが始まるとすぐに、生き延びたのなら命ある限り戦い続け、修羅の本分を全うしようと決めて気持ちを切り替える。
そしてすぐに自らを『変態という名の紳士』と主張するクマっぽい何かと遭遇したが、『
ガンダム』という言葉が奥から聞こえ、クマ吉を無視してそちらへと向かった。
そこにいたのは、ゴッドガンダムと非常によく似たロボットっぽい生き物と、厨二ロワで一時は行動を共にしていた少女だった。2人の会話を聞いた九十九は、感慨深げに声を掛けた。
九十九「お前が……ガンダムか」
ガンダム「そ、そんなに繁々と見つめられると照れちゃうな」
ガンダムとの出会いに、九十九は死に別れてしまった仲間のことを思い出した。ついでに一緒にいた早苗とも再会を(彼女の方が一方的に)喜んだのも束の間、九十九は自分が死んだ後のことを早苗に尋ねた。
七夜は九十九の死亡直後に辛うじて生き長らえていたセフィロスからの逆襲によって命を落としたものの、その意志と命を因縁深い
遠野志貴に託し、最後には彼と共に信念を貫き通した。そしてブシドーは最終決戦まで戦い抜き、武士道の極みを示し、見事に主催者を倒す一翼を担った。
そこまで聞いて、九十九はそれ以上の詳細を聞かなかった。自分の詰めの甘さが原因で七夜が死んでしまったこと、ブシドーが勝利を掴み取って生きて帰ったこと、それだけが分かれば十分だった。そもそも、「満足の向こう側」とか言われても理解できるはずが無かった。
ガンダムも交えて更に情報交換をして、自分達が3人揃ってここに来る前に死んだ自覚があること、バトルロワイアルに巻き込まれて死亡したという重大な共通項を見つけたが、九十九はそれ以上の興味を持たなかった。
修羅の本分とは、いかなる場所であっても戦い続けて勝ち続けること。それは平和な日本だろうと、異常な殺し合いの場であろうと変わらない。たとえ一度は、自分が死んでいたとしてもだ。
そんな修羅の血を嗅ぎ取ったのか、修羅と戦うに相応しい猛者が現れた。
己が肉体こそを至上の武器とし、魔法使いでありながら魔法で戦うことを良しとせぬ覇王、田中ぷにえ。
早苗とガンダムはぷにえの外見に完全に騙されていたが、九十九はぷにえが目の前に現れた瞬間からその本性を漠然と嗅ぎ取っていた。そして、握手を求めて来たぷにえの誘いに真っ先に応じて、九十九はその手を握り、即座に手首の関節を取りに来た技を即座に返し、その返しまでも抜けられたことで2人は一度間合いを開ける。
早苗とガンダムが状況を理解するよりも早く、九十九は挨拶代わりに蹴りを一発放つ。すると、ぷにえは小柄な体を活かして蹴りを掻い潜り九十九に組み付いてきた。九十九は敢えてそれを受けて自分から倒れることでぷにえの想定以上の勢いを付けることで、ぷにえの狙っていた足関節技を振り払う。
九十九「関節技が得意みたいだな」
ぷにえ「当然です。打撃系など花拳繍腿。関節技こそ王者の技よ!」
九十九「へぇ」
ぷにえの関節技に対する絶対の自信と信念を聞くや、九十九は、今度は自分から手を差し出した。これをぷにえは舐めているのかと怒声を上げたが、九十九は笑みを浮かべてこう答えた。
あんたが一番強い場でこそ戦いたい、と。
ここに至って九十九の本性をぷにえも理解し、サブミッション・マスターとして挑戦者を迎え撃つべく、王者の笑みを浮かべて九十九の手を取った。
そこから始まる濃密な関節技の応酬は、早苗とガンダムが一切リアクションを挟めないほどのガチの名勝負となった。
ぷにえの強さに修羅の血が騒いだ九十九は、陸奥の関節技の本領を発揮し、飛燕十字蔓を仕掛ける。ぷにえはこれを飛び付き腕十字と誤認してしまい、腕を抜こうとした瞬間に打ち込まれた蹴りによってそのタイミングを逃してしまう。そして、九十九は極めると同時にぷにえの左腕を容赦なく折った。
ここに至って遂にガンダムが動き、2人の戦いを中断してしまう。九十九はガンダムの制止にすら耳も貸さずぷにえとの戦いを続けるつもりだった。だが、ぷにえは邪魔が入ったこと、なにより打撃をも織り交ぜた陸奥の関節技に思う所があったのか、その場は敢えて引き下がった。
九十九はぷにえに「できれば5年後ぐらいに、また会おう」と、ぷにえの幼さゆえの伸びしろを楽しみに思いながら、ぷにえを見送った。
戦いが終わって息を吐いた、その瞬間、九十九は遠方から鋭利な殺気を感じた。直後、九十九の腹に銃弾が撃ち込まれた。戦いの直後、獲物が気を緩める瞬間を待ち続けていたシモ・ヘイヘの放った銃弾だ。
しかし、九十九はさしたる傷を負っていなかった。陸奥圓明流・金剛――筋肉を瞬間的に凝縮させ、銃弾を絡め取り、ギリギリの所で内臓への貫通を防いでいたのだ。この時はヘイヘもヘッドショットによるワン・ショット・キルではなく、貫通力の悪い弾丸による胴体への盲弾銃創を狙っていたことも、金剛が間に合った一因である。
銃弾を腹に残したまま、九十九は狙撃の弾道を本能的に逆算し、狙撃手の下へと走る。相手は超一流の狙撃手だったが、今回はそれが九十九に幸いした。離れていても感じ取れるほどの鋭い気、そのほんの僅かな変化を感じ取って、九十九は銃声と同時に身をかわす。だが、相手はかのシモ・ヘイヘ。間合いの不利も歴然であり、九十九が近づけるか、ヘイヘが距離を保てるかの戦いになった。
だが、弾幕戦の実力者である早苗と、敵意や殺意を読み取ることに長けたガンダム、この2人の介入により、状況の悪化を察したヘイヘが撤退することで戦いは幕となった。九十九は初めての銃の達人との戦いが中途半端に終わってしまったことを悔やんだ。
この時に九十九は2人に別れを告げて単独行動を取ろうかと思ったのだが、九十九の傷を心配するガンダムと金剛の原理に興味津々の早苗の勢いに押し流されてしまい、結局、このまま2人と行動を共にすることになった。
それから暫くして、3人の前にある少女が現れる。その名はアサギ。主人公抹殺に執念を燃やす永遠の次回作主人公(笑)だ。
しかし、アサギの主人公云々の因縁を九十九だけ全く理解できず、とにかく敵だということしか理解していなかった。なので、長台詞途中のアサギの顔面に拳を叩きこんで様子を見ることにした。或いは、ぷにえのような外見と一致しない猛者ではないかと思ったからだ。
だがそんなことは全く無く、思いっきり顔面パンチを食らったアサギは鼻血を流して涙目に。そこへすかさず早苗が言葉責めを重ねて、アサギは大粒の涙を流しながら泣き始めた。
早苗が何故かドヤ顔で得意げにしている横で、九十九は困惑していた。主人公とか次回作とか自分のゲームとか、アサギが何を言っているのか、本当に何一つとして理解できなかったのだ。
すると、ガンダムがハンカチを取り出してアサギの鼻血と涙を拭って、そのままアサギにハンカチを上げると、主人公や次回作について語り始めた。相変わらず何の話か九十九にはさっぱりだったが、怒り狂っていたアサギが泣きやんで神妙にしているのを見て、いい話をしているということだけは何となく理解していた。
ガンダムの話の途中で、アサギは急に立ち上がって、ハンカチと交換だと言って懐中電灯のようなものを置いて去って行った。
早苗「大丈夫ですよ、きっとファンクラブ一万人突破ぐらいすぐですよ!」
ガンダム「九十九くんの反応できない話題禁止!」
去っていくアサギの背を見ながら、本当にこいつらは何の話をしていたんだろうと考えて、陸奥の生き方には関係ないと、すぐに忘れた。
そして、アサギが残していった懐中電灯のような物――ビームサーベルによる騒動が始まる。
これは元々ガンダムの武器であり、よく分からないが剣の一種ということらしい。異様に興奮している早苗に急かされて、ガンダムはビームサーベルのスイッチを入れた……のだが、ビームは剣では無く魚の形や花の形で収束していた。
九十九「面白い剣を使うんだな」
ガンダム「あれれー!?」
早苗「次! 次、私に貸して下さい! ビームサーベル! ビームサーベル!」
ガンダム「ビームサーベルが五芒星描いてるー!?どうやってんのそれ!?」
九十九「ビームサーベルとやらの根本から完全に独立してるのにどうして光ってるんだ?」
早苗「これも奇跡のちょっとした応用というやつです」ドヤァ
こんな愉快なやり取りをしていたら、その騒ぎを聞きつけて人がやってくるのは当然だ。
しかし、そこへ現れたのは、かつては天に挑みし修羅道を歩み、今は真の魂の赴くままにあまねく世界の闇と戦い続ける武神――呂布だった。
早苗の描いた五芒星とガンダムの気配から終生の好敵手に似た波動を感じた呂布が突如として現れたのだが、当然、その場に龍帝剣を継ぐ者はいなかった。九十九の支給品に実物はあったが。
ガンダムや早苗との遣り取りを経た後、呂布が早苗の持っているある物に気付くよりも早く、九十九は呂布に手合わせを求めた。
対峙しただけで分かるほどの、圧倒的なまでの力。それを前にして、修羅が本性を抑えることなど出来るはずも無く。そして暴虐性こそ薄れたものの、強者との戦いこそを求める性の変わらない武神は喜んでそれに応じた。
ガンダムと早苗は最初、軽い手合わせ程度だと思っていたのだが、気付いた時には手遅れだった。
呂布の振るう暴風と雷の技の数々に、九十九は戦慄する。セフィロスの使っていたものとも違う、異世界の技。しかもその威力は桁外れだ。
それらをかわし、呂布の振るう方天画戟を受け止めて、陸奥は笑みを浮かべる。勝利の二文字など全く思いつかない、それでも敗北の二字など考えもしない、遥かなる高みへと挑み続ける戦い。
いつしか王者として、伝説の修羅として、挑まれる側になっていた陸奥に生まれて、初めて経験する、本当の意味での挑戦に、九十九の心と血潮は否が応にも昂った。
呂布「ふはははははは! 分かる、分かるぞぉ! 貴様こそ真の修羅! 天地の理全てに背く大馬鹿よ!!」
九十九「強いなぁ……本当に。あんた、強いなぁ……!」
旋風爆裂衝によって吹き飛ばされながらも、笑みを浮かべて立ち上がり続ける陸奥の姿に、修羅としての血の昂ぶり、その喜びのままに呂布もまた吼える。
暴風を操る呂布に対して敢えて放った奥義・龍波を真っ向から破られると、いよいよ九十九の恐怖と歓喜は極限に至り、四門を開けることを決意した――その時だった。
早苗が仕舞っていた支給品の一つ、グランドリームが1人でに外へ出て大声を発したのだ。呂布をマスターと呼ぶ彼らは、呂布を必死の思いで説得し始めた。人語を介す武器という奇想天外な物の登場に、さしもの九十九も呆気にとられ、戦いは中断となった。
グランドリームに何か言われて異様に落ち込んでいる早苗をガンダムに任せて、九十九は呂布にグランドリームについて尋ねた。すると、呂布はグランドリームこそが自分の本来の武器だと答えた。
つまり、今までの戦いは代用品で済まされていただけであり、呂布の真の力は更なる上がある、ということだ。
この事実に九十九は息を呑み、呂布の気勢も殺がれたこともあり、再戦を固く約束した上でこの場は引き下がった。
呂布も加えて4人となった一行は、情報交換も終えてそろそろ出発だという段階で、ふと、九十九はガンダムに対して常々抱いていた疑問をぶつけた。
九十九「電影弾はやらないのか?」
ガンダム「え、いや確かにあれもガンダムだけど俺にはできないからー!?」
九十九にとってガンダムとは即ち『流派
東方不敗』という、極めて極端な認識が出来ていた。このロワでガンダムと出会ったことで解消されるかと思いきや、ガンダムから実際にそういう種類のガンダムもいること、そしてガンダムと近しい種族の呂布の知識の中にも電影弾が存在したことから、あまり認識は正されず、むしろガンダムにも多種多様な流派が存在するのだという方向に悪化してしまった。
この時にブシドーの話題も出たことで、九十九は唯一生還し、呂布のように再び殺し合いの場に呼ばれることも無かった友のことを想った。彼は今、どうしているのだろうかと。
(※武士道病に更なる磨きがかかっていました)
その後、一行は戦いを続けながら順調にロワを生き延びていったのだが、途中、最大の厄介事に巻き込まれてしまう。
船坂弘とデッドプール、不死身と名高い2人による銃火器の乱射合戦だ。
マシンガンや手榴弾に留まらず、ロケットランチャーや対戦車地雷まで使った異常な戦いの煽りを受けて、九十九は仲間たちとはぐれてしまう。とにかく、一刻も早くこの場を離れようと移動した先で、ある男と出会った。
自慢の拳一つであらゆる障害を殴って倒し、自分の意地と誇りを貫き通すネイティブアルター、シェルブリットのカズマ。
遭遇してしばらく、2人は互いの目を睨み合っていた。
やがて、
カズマの方から口を開く。
カズマ「てめぇを見ていると……なんだかよぉ、ウズウズするんだよ」
九十九「へぇ……」
カズマ「戦いたくて、戦いたくてしょうがねぇ……!」
九十九「そう思うんだ……あんたも」
バカだアホだと罵られても、拳一つで戦って自分の意地を押し通す。男として根本の部分が似通っていた2人は、惹かれ合うように拳を交えた。
カズマのアルター能力による右腕の変化に九十九は最初こそ驚いたが、やることは殴って壊すということから何も変わっていない事に笑みを浮かべ、自慢の拳の力押しを陸奥の練り上げた千年の業で迎え撃つ。
隙を見て傾葵や羽車などの流動的な関節技で右腕を壊そうと狙うが、シェルブリットの力で強引に振り払われる。あの右腕を破壊するにはカウンターしかないと悟った九十九は、その瞬間を見計らった。狙うは、背の羽を消費する渾身の一撃の、最後の一発。
撃滅のセカンドブリットをかわした九十九は、そのまま立ち止まり、カズマを誘った。今なら当てられるぞ、とばかりに。このあからさまな誘いをカズマは承知の上で、景気よく応えてくれた。
放たれた抹殺のラストブリットを、九十九は頬の肉を抉られながらもギリギリで直撃を避け、クロスカウンター風の一撃をカズマの顔面にでは無く、右腕に打ち込んだ。
陸奥圓明流・獅子吼。見た目こそクロスカウンターだが、その実態は打ち込んできた相手の拳を利用して、拳を打つように見せかけて腕の全部分を使って相手の腕を破壊する関節技だ。
九十九がカズマの右腕を破壊すると、カズマは笑い始めた。アルター使いと真っ向からやり合える人間が、あいつら以外にもいたんだな、と。
カズマ「だったらよぉ……お前にも見せてやる! 俺の! あいつらの! 輝きをなぁ!!」
九十九「ああ、見せてくれ……!」
カズマの右腕が一度消え、まったく異なる形となって再構築される。そして、周辺の物質を分解し、黄金に輝く粒子として吸収する。
桁外れどころか、文字通りに次元の違う力を目の当たりにし陸奥は笑みを浮かべるが、そこへ待ったをかける人物が現れた。
黄金の輝きを帯びる剣を手に持った、騎士のような出で立ちの少女。しかし纏う気風は、ぷにえすらも霞んでしまうほどの王者のそれ。カズマが頭の上がらない数少ない人物の1人、セイバーが仲裁に現れたのだ。
事情を聞き、ただ好戦的なだけで殺し合いに乗ってもいない危険人物でもない相手に向こう側の力まで使うとは何事かと、カズマはセイバーに説教されてすっかり委縮していた。これには九十九の気勢も殺がれ、またも戦いに水を差されて溜息を突いた。
そこへ
巴マミの片方が現れ、ガンダムが重傷を負って危険な状態だという報せが入った。それを聞いて九十九はカズマたちと共にそちらへ向かう。ガンダムの傍には早苗と呂布の他にもう片方のマミとユーサー、そしてカズマの連れのアテムがいた。
そこに一同が集まっていたのは、ガンダムがある物を見つけて、自分の痛みも忘れて涙を流したからだ。1度目の放送で呼ばれてしまった悪友の無残に破壊しつくされた残骸を見つけて。
しかし、このままではガンダムの命も危ない。そこでアテムが、なにやら絵札を取り出した。デュエルモンスターズの魔法カード『融合』だ。アテムはこれを使って、シャアの残骸とガンダムの身体を融合させて身体を直そうと言い出したのだ。
アテム「俺の勘では、きっと上手くいくぜ! 何故かはわからないが、君を見てそんな気がしたんだ」
九十九「そう、なのか?」
九十九は知る由も無いが、この状況は七夜がその存在を遠野志貴に託したその時と酷似していたのだ。
アテムの提案に誰かが異論を挟むよりも早くセイバーが真っ先に賛成し、呂布も試す価値はあると続いたことで融合が実行され――かくして、ガンダムは
シャア専用ズゴックの残骸とシャアの本体の亡骸と融合し、キャスバル専用ガンダムとなって一命を取り留めた。
オマケとしてシャアの意識も混ざって多重人格のような状態になるなどの愉快な効果が色々と盛り込まれたのだが、九十九は、ガンダムが助かった、とそれだけ。一切の疑問もツッコミも持たず、ユーサーの悟りを開いたような表情と声での提案に賛成し、色々なカードで実験されているガンダムを眺めながら腹ごしらえを始めた。
セイバーとは自然に大食い勝負となったが、それを通じて彼女とも意気投合し、気付けば九十九は最大級の対主催集団の一員となっていた。
その後、チームは一旦2手に別れた。ガンダムと融合したシャアによって、シャアの仇が何者かが判明したからだ。ガンダムは自分1人で決着を付けに行くと言ったが、何があってもガンダムと行動を共にしようとする早苗に押し切られ、呂布もガンダムの戦いに興味があるらしくそこへ加わる。そして九十九は、
ミスター・ブシドーが焦がれ続けたガンダムの力とその存在を確かめようと、同行することにした。
程なくしてシャアの仇であるデッドプールを発見し、すぐに戦闘が始まった。
ガンダムが頑なに1人で戦うことやシャアの仇打ちの為に戦っていることなど、デッドプールはガンダムの全ての行動を嘲り、挑発し、怒りを誘った。その口調や、前回はヒーローサイドだったから今回はヴィラン、などと意味不明の理屈で殺戮者として行動する姿は、正しく狂気の道化師。正気の沙汰からかけ離れている九十九だからこそ、デッドプールの狂気をすぐに見抜いていた。
デッドプールが言葉を発する度にガンダムは怒声と共に攻撃するが、どれだけ攻撃してもデッドプールは死ななかった。その不死身と見紛うタフネスにガンダムも次第に消耗し、このままでは殺されかねないと九十九が感じ始めた頃、デッドプールが決定的な言葉を発し、ガンダムがキレた。
怒涛の勢いで繰り出された通常の12倍の威力のビームサーベルに貫かれ、デッドプールは遂に倒れた。それでもガンダムはデッドプールを殺そうとはせず、彼を説得しようとした。だが、デッドプールは覆面に隠れていても分かるほどの狂気の表情を浮かべ、呪詛の言葉を残して自害した。
ガンダムは呆然自失状態となって、その場に崩れ落ちた。しかし、九十九からすれば先程の状況は「ガンダムはデッドプールに死なれた」だけのことであり、「ガンダムがデッドプールを殺した」という状況には程遠かった。
幼き日に内なる修羅の猛りを抑え切れず、最愛の兄を自らの手で殺してしまった九十九だからこそ、その想いは一入だった。だからこそ、ガンダムに激励の言葉を送り、彼が立ち直るのを待ち続けた。
暫くして早苗の介抱と内なるシャアの叱咤の甲斐あってガンダムはなんとか立ち直ったが、極端に戦いを恐れるようになっていた。本人は隠そうとしていたが、バレバレだった。
デッドプールとの戦いを終えた後、九十九達は多くの仲間達を加えたユーサーの一行に合流し、間も無くラインハルトやシャドームーンとの決戦が始まった。
2人の人智を超越した存在との戦いに、九十九は敢えて自ら進んで戦列には加わろうとはしなかった。
鬼柳京介とカズマ――あの2人と強い因縁を持つ者たちを差し置いてまで、戦おうとは思わなかったのだ。2人が敗れたら自分が戦う気満々だったが。
結果、カズマと鬼柳はそれぞれに満足しながら死闘の果てに相討ちとなり、死んでいったのを見届けて、九十九はカズマとの再戦の機会が失われてしまったのを何よりも惜しんだ。
そして、その戦いが終わったのを見計らった主催者によってカオス・レムレースの軍団が戦場に投入される。この事態にカオス・レムレースの迎撃部隊と主催者本拠地への突入部隊にチームを分けることになり、巨大兵器の迎撃に向かう呂布とガンダムに「勝て」とだけ伝えて、対主催メンバーと共に九十九は本拠地へと突入した。
主催者の1人の謎の少女は概念だのなんだのと良く分からない話をしていたので、そういう話について行ける仲間に任せて、九十九は主催者軍団の
ジョーカーとして放たれたオメガと戦っていた。
オメガ「我はメシアなり! フッハッハッハッ!」
九十九「飯屋なら、間に合ってる」
早苗「はいはい、向かいは蕎麦屋」
九十九「……何言ってんだ、お前」
早苗「えっ」
※九十九はメシアという単語を知らなかったので、本気で『飯屋』と聞き間違えていた。
高度に発達した文明が滅びるほどの戦争を、絶対的な『破壊』によって終結へと導いた赤き救世主――オメガの強さは凄まじいものだった。超高速の連撃、結界のように放たれる光の奔流、大出力の飛び道具、それら全てを完璧に使いこなすオメガを相手に、九十九は陸奥圓明流の技の全てを費やして互角に戦い続けた。
九十九には世界大戦を終結させる力も、軍隊の1個師団を壊滅させるような力も、近代兵器を叩き壊すような力も、何も無い。
だが。人を、人に近しき存在を殺すのに、そんな大仰なものなど必要ない。
人が人を殺すのに必要なのは、確固たる殺すという意志、即ち殺意のみ。
後はどんな兵器も、武器も、道具も、必要ない。
ただ、この体一つで、陸奥は人を殺す。
対人戦闘に極限まで特化した陸奥の業で、オメガの桁外れの破壊力に食い下がる。外のカオス・レムレース軍団を撃破して来た面々が、九十九なら必ず勝てるなど色々と言って任せて行ったが、九十九はそんな物一つも聞いていなかった。
このバケモノを相手に必勝を見出せるほどの余裕などないし、そうでなければ、ここまでこわくも楽しくもない。
そして、遂に九十九の放った奥義・無空波がオメガを捉えた。オメガの体内の精密機械が、強烈な振動派によって幾つもショートし、破損する。それでもまだ戦い続けようとするオメガが繰り出した一撃をかわす。
一歩間合いを取ってから顔面目掛けて蹴りを放ち、それがかわされるや蹴りを戻して首筋に叩きこみ、直後に反対の足で側頭部へ回し蹴りを打ち込んでそのまま首を極め、全身を撓らせて投げを打ち、脳天から地面へ叩き落とす――陸奥圓明流・斗波。
これでもまだ立ち上がって来るオメガに、九十九もまた構えを取って応じようとして、目を瞠った。
邪魔だよ、あんた。
聞いた覚えのある声がオメガの背後から聞こえたかと思えば、さっくりと、オメガの首が斬り落とされた。
普通ならば、また水入りかと落胆する所だ。だが、今回だけは違った。
聞き覚えのある声の主は、見覚えのある少年だった。
少年はオメガの残骸を踏み越えて歩み寄って来ると、親しげに声を掛けて来た。
「よう、久し振り」
「……ああ、久し振り」
「ブシドーは……いないか」
「聞いた話じゃ、あの後勝って、帰ったらしい」
「そうか、そいつは重畳だ。……さて、他にも積もる話はあるわけだが」
「そういうのは一度、脇に退けて……」
まるで夢を見ているようだ。死に別れたはずのこの男と、お互いに死の淵から蘇って再会し――決着を付ける機会が訪れるとは。
近くではまた巨大な人型兵器が魔王にレイプされているが、既に2人の眼中にない。
九十九と、仮初の命を得て復活した七夜は、無邪気な子供のような笑みを浮かべて言葉をかわして――鬼か修羅かと見紛う凄絶な笑みを浮かべる。
「「さぁ、殺し合おうか」」
退魔の業と、人殺しの業。
似て非なる業を受け継ぐ者同士の戦い。
かたや一族の誇りの為に、かたやバカげた一族の夢を完結させる為に、そう胸に誓って戦い続けていた2人だが、この時ばかりは違った。
負い目も無く、勝利への執着も無く、死と敗北への恐怖すらも無く。
ただ純粋に、この戦いを楽しんでいた。
七夜の変幻自在の体術にも、九十九は決して遅れを取らない。しかし陸奥の打・極・投を一体化させた無骨ながらも高度な体術を、七夜は柔軟でしなやかな肉体を駆使してかわし抜け出す。
ほんの数度とはいえ、共に戦った仲。お互いに相手の呼吸も繰り出す技の癖も、凡その見当が付くぐらいには分かっていた。
だからこそ、この戦いに決着を付けられるのは――決着を付けるべきは最高の奥義以外にあり得ないと、自然に答えは導き出せた。
じゃれあうような攻撃の応酬を終えて、2人は同時に動きを止めた。七夜が、手にした短刀を天に掲げるような構えを取る。一族の名そのものを頂いた最終奥義。獲物に死の二択を強いる、文字通りの必殺技。
それに応えられるだけのものは、陸奥には1つしかない。
七夜が短刀を投げると同時に跳躍し、先んじて投擲したはずのナイフを追い越し、空中で反転して九十九の首を取りに迫る。
短刀で刺殺されるか、首を捻じ曲げられて死ぬか。完全同時に迫る、極限の死の二択。四大退魔・七夜の名を持つ奥義――極死・七夜。
九十九はそれを、完全にかわしていた。正確には、七夜が狙った九十九は既に残像だったのだ。周辺に現れる2つの残像に、しかし七夜は動じず、着地と同時に何とこちらも残像が残るほどの神速の蹴りを、首を取りに迫っていた九十九に向けて放った。
九十九の全身が総毛立つ。一度間近で見られていたとはいえ、四門に反応されたという現実にも恐怖は無く、あるのはただ歓喜のみ。
七夜の蹴りを防いで着地した九十九は、そのまま四神には移らず、七夜を誘う。そして、繰り出された七夜の拳を、体を沈めてかわし、体を手だけで支えて下から鳩尾に目掛けて蹴りを叩きこむ――陸奥圓明流・弧月。
四門を開放した状態で放たれた一撃は、通常の比では無く、七夜は血を吐いて倒れた。限界を超えて肉体を酷使した九十九も今にも倒れそうだったが、仰向けになったまま動かない七夜に歩み寄った。
死者に生者は止められなかったか、と七夜は苦笑混じりに呟いた。九十九は頷くでもなく、ただその言葉を聞いていた。そして、思いついた言葉をそのままに呟く。
九十九「楽しかったよ……七夜」
七夜「ああ、俺も……楽しかったよ、九十九」
仮初の命を失った七夜は消滅し、九十九はそれを見届けて意識を失った。
九十九が目を覚ますと、なんだかんだで戦いは終わっており、なんやかんやで元の世界に戻ることになった。
故郷の山奥で修行に耽りながら、九十九はあの殺し合い――バトルロワイアルの数日間を振り返った。
東方不敗、セフィロス、ぷにえ、名も知らぬ狙撃手、呂布、カズマ、オメガ。様々な者と戦い、特に人知を超えた存在や能力者との戦いは九十九を恐怖させ、歓喜させた。
だが、何よりも印象に残っているのは、それらの戦いの事や、一度死んで生き返ったという数奇な現実では無く。
短い間だったが、あの2人――七夜とブシドーと一緒に過ごした時間は、最高に楽しかった。特に、七夜との戦いは――……。
しかし、それでも修羅は立ち止まらず、命ある限り戦い続ける。
新たな門を潜り、次の戦場へと往く。
最終更新:2013年02月11日 11:21