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第七話『──行きの切符』前編

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rozen-yuri

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だれでも歓迎! 編集

普通の人から見ればガラクタでも、一部の人にとっては宝に成り得る物がある
それこそが価値観の相違
昨日の会話を思い出し、軽い溜め息を吐いた
雪華綺晶と先生が両想いだったら、そこに何の歪みも生まれなかったのだろう
だけど先生は僕を好いているようで、複雑な三角関係が出来上がった
好意を抱かれるのは決して悪い事ではないが、一方的な愛情は苦痛に変わる
結果、先生からは辱めを受け友達からは恨みを買った
…全ての物事に良し悪しがあるのなら、これは確実に悪い方向だと手に取るようにわかる
しかし、坂道を転がるボールは止まれない
先に何があるのか、わかっていても単独では止まれない
そうやってまた流されて、僕はここに立っている
9時──待ち合わせの時間だ

「はぁい蒼星石ぃ♪早かったのねぇ」

奥から響く聞き慣れた声
職場では着れそうにない艶やかな私服に身を包み、笑顔で僕に切符を手渡した


第七話『──行きの切符』前編


〔先生の家の場所なんて知りません〕

そう返信すると、僕の最寄りの駅で待ち合わせする事になった
知り合いに会わないか不安だったけど、中学生の主な移動手段は自転車だから駅で会う事はまず有り得ない
さらに土曜でこの時間帯となると一般の利用客も少なく、
乗り込んだ車両には数人しかいなかった
先生に手を引かれ、適当な座席に腰を降ろす

「家族には何て?」
「…友達と図書館まで勉強しに行く…と」
「ふふっ…悪い子ねぇ」

“友達の家で勉強する”だけなら自転車を使わないのは不自然だし、
“一人で図書館”なら翠星石が着いて行きたいと言うかも知れない
…嘘を吐くのに慣れてしまった自分に、心底呆れる

「…先生の家で何をするんですか?」

何か喋らないと、潰されてしまいそうな自己嫌悪
答えなどわかっている…また僕は慰み者にされるのだろう

「何をすると思う?」
「…わかりません」

あくまでシラを切ってみる
すると先生は意地悪そうな笑みを浮かべ、口を開いた

「数学の勉強よぉ。内申はあげる約束だけど、本番のテストはあなた次第でしょう?」
「えっ!?」

意外な答えに、思わず変な声を出してしまう
それを聞いて先生はさらに妖しく微笑んだ

「あらぁ?何か違う事を期待していたのかしらぁ?」

期待じゃない…覚悟だ
あの日やられた事より酷い事をされると覚悟していた
しかし完全に一本取られ、紅潮してしまう
そんな僕の肩に手を回して来た

「…先生?」

抱き寄せられて、お互い密着する
それはまるで恋人のように…

「なぁんてねぇ…勉強するだけで家まで呼ぶハズがないでしょう?」

そしてその手が徐々に下がり、僕の胸を鷲掴みした

「やっ…先生!」
「たっぷり可愛がってあげる…」
「やだっ…先生!」
「…ブラを外しなさい」

冷静に、耳元でそう言い放つ

「ここで…ですか?嫌です!」
「どうせ誰も見てないわぁ」

確かにこの車両には数人しかいない
その乗客からも先生が壁になって、僕の姿は見えないだろう

「ですが…」
「次の駅で人がいっぱい乗ってくるかも知れないわねぇ」
「うっ…」

それに拍車を掛けるように、アナウンスが次の駅名を告げる

「わかり…ました」

急いでTシャツを脱ぎ、ブラのホックを外す
肩紐から腕を抜いて、すぐシャツを元通りに着直した
10秒足らずの着替えだが、後から恥ずかしさが込み上げて来る

「これで…いいですか?」
「えぇ、上出来よぉ」

蒸し暑いこの季節
アンダーシャツを着てこなかった事を、こんな形で後悔するとは思っていなかった
そして駅に着くと同時に、再び手を引っ張られる

「せ…先生?」
「降りるわよ」
「えっ…あっ!」

この駅で降りるなら、ブラを外す要求はなんだったんだろう
胸が直接シャツに触れる気持ち悪さ…寝巻きなら平気なのに、私服で野外だからかな…
ここは割と大きな駅で、多くの人とすれ違う度に見られてるような錯覚にまで陥る
改札を通った所で、漸く解放された

「まさか本当に脱ぐなんてねぇ…ビックリしたわぁ」
「先生が脱げって言ったんじゃないですか…」
「…なら私の命令には何でも従うのぉ?」

ここで頷いてしまえば、よからぬ事をされるに決まっている
しかし、逆らえないのは事実なわけで、返答にも困る

「それは…その…」
「ふふふ…ちょっとイジメ過ぎちゃったわねぇ」

そう言い、再び僕の手を掴み歩き出した
ここは地元から乗り換えなしで5駅程度行った辺り…
でもまったく知らない街並みで、少し不安になる

「痛っ」

不意に立ち止まり、先生にぶつかった

「どうしたんですか?」
「ここよぉ」
「…え?先生の家…ですか?」

そこに有ったのは、一軒家でもマンションでもなく、高級ホテルのような外観をした高層ビル

「先生…一人暮らしですよね?」
「そうだけど…それがどうかした?」

とても一人の若い女性公務員が住めるレベルじゃない気がする…
そんな事を考えながら、先生に連れられて中へと入り、エレベーターで最上階まで上がった
ドアが開けば、そこはもう別世界
街を一望できる景色に、見とれてしまう

「突っ立ってないで早く来なさい」

呼ばれ向かった先は角部屋
…もしかしてお嬢様?

「いらっしゃい──ここが私の家よぉ」

家に入ると、シックな雰囲気漂う如何にもセレブな内装が飛び込んできた
普段の先生は無駄に着飾らないため、お金持ちというイメージはない
しかしこれが現実…どこまで完璧な女性なんだろう

「驚いたぁ?でもこの部屋も家具も親が買ってくれたモノだから、私自身がお金持ちってわけじゃないのよぉ」
「そう…ですか」
「それにねぇ蒼星石ぃ」
「…?」

ドアに鍵とチェーンを掛けながら、先生は呟いた

「どんなにお金があっても、手に入らないモノもある」
「…それって」
「もうこれで…アナタはここから逃がさないわぁ」


  つづく

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