こうすればどうなるか
この先、何があるのか
容易に想像できるのに、どうして何もしないのか
良い事があるわけがない
この先、何があるのか
容易に想像できるのに、どうして何もしないのか
良い事があるわけがない
「…」
「…」
「…」
先生の後を、雪華綺晶と並んで歩く
着いて行けば何をされるのか、君だって解っているんだろう?
もう今更、逃げ出せないけれど…
着いて行けば何をされるのか、君だって解っているんだろう?
もう今更、逃げ出せないけれど…
「…」
三人の足音が旅館独特の廊下に響く
会話でもあれば、そんな音を気にする必要もないのかな
会話でもあれば、そんな音を気にする必要もないのかな
「ここよぉ」
とある一室の前で足を止める
カードキーを差し込み、ロックを解除した
カードキーを差し込み、ロックを解除した
「カード…キー…?」
「旅館なのにホテルみたいよねぇ…まぁ客の要望で変えたみたいだけど」
「いえ、僕らの部屋は普通の鍵でしたよ」
「そうなのぉ?…やっぱり高いだけあるわぁ」
「旅館なのにホテルみたいよねぇ…まぁ客の要望で変えたみたいだけど」
「いえ、僕らの部屋は普通の鍵でしたよ」
「そうなのぉ?…やっぱり高いだけあるわぁ」
…先生は特別というわけですか
ちゃっかりしてるなぁ…
ちゃっかりしてるなぁ…
「入りなさい」
中も勿論豪華だが、和風の上品さを損なわない程度に抑えられている
そして寝室には、既に布団が敷かれてあった
そして寝室には、既に布団が敷かれてあった
「私はシャワーを浴びてくるけど…先に始めていてもいいわよぉ」
始めるって…何を…?
その言葉は喉を通らず、浴室へ向かう先生を無言で見送った
その言葉は喉を通らず、浴室へ向かう先生を無言で見送った
第九話『友情の亀裂』中編
「…」
「…」
「…」
食堂から場所を移しただけで、一触即発の関係は変わらない
僕に殴り合いをする気はないけど、今の雪華綺晶は何がスイッチになって爆発するか解らない状態だ
沈黙は苦しいけど、話し掛ける事も出来ない
僕に殴り合いをする気はないけど、今の雪華綺晶は何がスイッチになって爆発するか解らない状態だ
沈黙は苦しいけど、話し掛ける事も出来ない
「先生の部屋…」
「え…?」
「え…?」
暫く無言で立ち尽くしていると、雪華綺晶が独り言のように呟いた
「こんな旅館での先生の部屋じゃなく…貴女は本物の先生の部屋を知っているのですね」
「う…」
「う…」
僕を見ないで問い掛けてくる
視線は、どこか遠くに飛ばされていた
視線は、どこか遠くに飛ばされていた
「それよりさ…先に始めといていいって…何の事だろうね」
その言葉で、ゆっくりと僕の方を向く
「…本気で言っているのですか…?」
睨むという表現がピッタリの鋭い眼差し
「…いや…その…」
「ある程度の察しは付いているでしょう?」
「ある程度の察しは付いているでしょう?」
何通りか考えてはいるけど、逃げ出したいくらい嫌な想像しか出て来ない
初日からこんな気分になるぐらいなら、本当に不参加にすべきだったよ
初日からこんな気分になるぐらいなら、本当に不参加にすべきだったよ
「私は考えてました…先生の命令なら何でもする、でも貴女の事は憎い、大嫌い」
ハッキリと言われたけど、わかりきっていた事実でそれほどショックはない
「それで、どうすればいいか考えてました…でも答えは簡単だった」
「…何?」
「先生の目的が、本当に私達の和解だと思いますか?」
「思わないよ。だったらワザワザ君を煽る必要はないからね」
「そう、だからこうすれば良かったんですよ」
「えっ!?ちょっ…」
「…何?」
「先生の目的が、本当に私達の和解だと思いますか?」
「思わないよ。だったらワザワザ君を煽る必要はないからね」
「そう、だからこうすれば良かったんですよ」
「えっ!?ちょっ…」
急に腕を引っ張られ、バランスを崩して畳に叩き付けられた
即座に上に乗られ、両手を押さえつけてくる
即座に上に乗られ、両手を押さえつけてくる
「何っ!?」
「先生の望みなら、貴女を抱く事も致しましょう。でも普通に愛し合う行為はダメ、イヤ、出来ない」
「離してっ!」
「ですから犯して差し上げます。嫌いな相手だからこそ、出来る仕打ちも御座いましょう」
「犯───…はっ?」
「先生の望みなら、貴女を抱く事も致しましょう。でも普通に愛し合う行為はダメ、イヤ、出来ない」
「離してっ!」
「ですから犯して差し上げます。嫌いな相手だからこそ、出来る仕打ちも御座いましょう」
「犯───…はっ?」
確かに先生は、こういう事を望んでいるだろう
だけど雪華綺晶が僕を見る目は、弱った草食獣を狙う肉食獣そのもので
一瞬、本気で殺されるんじゃないかと戦慄すら走る
だけど雪華綺晶が僕を見る目は、弱った草食獣を狙う肉食獣そのもので
一瞬、本気で殺されるんじゃないかと戦慄すら走る
「自業自得ですよ」
「やめっ…」
「力が無いわけではないのですね。先生にされた時も、それぐらい抵抗したのですか?」
「!──」
「やめっ…」
「力が無いわけではないのですね。先生にされた時も、それぐらい抵抗したのですか?」
「!──」
彼女はまだ、それを根に持っているのだろう
僕だって数え切れないほど後悔したさ…
あの時の自分を殺したいとさえ思った
僕だって数え切れないほど後悔したさ…
あの時の自分を殺したいとさえ思った
「貴女は所詮…醜い雌豚。最低の人種」
「随分…好き放題に…言ってくれるね…」
「間違いではないでしょう…?」
「…あぁ…そうだね…だけどそんな醜い雌豚を、君は抱こうとしてるんだよ?」
「随分…好き放題に…言ってくれるね…」
「間違いではないでしょう…?」
「…あぁ…そうだね…だけどそんな醜い雌豚を、君は抱こうとしてるんだよ?」
命令とは言え、穢らわしい事に変わりはない
嫌だったら、嫌だと言えばいいのに
嫌だったら、嫌だと言えばいいのに
「だから…もうやめようよ…こんな」
「…黙れ…」
「えっ?…ぁぐっ…!」
「…黙れ…」
「えっ?…ぁぐっ…!」
僕を押さえつけていた両手を、首に移して締め上げて来た
「かっ…は…!」
「私は醜くても雌豚でも何でもいい!貴女のポジションになりたかった!」
「ぐっ…ぅ」
「そのためなら何でもして来たし、これからだって何でもする!」
「ぅ…ぁっ…!」
「水銀燈先生のためなら、穢れる事を苦とも思わない!それなのに!あぁ…貴女がいたから!貴女がいるから!」
「私は醜くても雌豚でも何でもいい!貴女のポジションになりたかった!」
「ぐっ…ぅ」
「そのためなら何でもして来たし、これからだって何でもする!」
「ぅ…ぁっ…!」
「水銀燈先生のためなら、穢れる事を苦とも思わない!それなのに!あぁ…貴女がいたから!貴女がいるから!」
それは甘えだろうと、言いたいけど声が出ない
そう考える時点で僕は、何かしら優位に立っていると心裏で感じてしまっているのかも知れない
仮に僕がいなかったとして、彼女達は上手く望む関係になれていたのか
十中八九、それはない
雪華綺晶に魅力が無いわけじゃない
単に必死になりすぎて、逆に遠ざける結果になっているんだ
それに気付けない限り、彼女が幸せになる事はないだろう
そう考える時点で僕は、何かしら優位に立っていると心裏で感じてしまっているのかも知れない
仮に僕がいなかったとして、彼女達は上手く望む関係になれていたのか
十中八九、それはない
雪華綺晶に魅力が無いわけじゃない
単に必死になりすぎて、逆に遠ざける結果になっているんだ
それに気付けない限り、彼女が幸せになる事はないだろう
「けはっ…!」
「いっそのこと…死んでみますか?」
「いっそのこと…死んでみますか?」
有りがちな、恋敵を潰すパターンか
どうして相手を憎むより、自分に非があると考えないんだ
どうして相手を憎むより、自分に非があると考えないんだ
「じ…自業…自得…は…お互い…様…」
「…はぁ…?」
「…はぁ…?」
これだけ頭が冴えてるのは、死ぬ直前だからかな?
でも、いよいよ意識がボンヤリしてきた
その時に和らぐ、手の力
でも、いよいよ意識がボンヤリしてきた
その時に和らぐ、手の力
「はぁっ…はぁっ…!」
呼吸が出来る事を、ここまで感謝した事はない
どうしてやめたのか…彼女の視線を追って、僕を思っての事じゃないと瞬時に理解する
どうしてやめたのか…彼女の視線を追って、僕を思っての事じゃないと瞬時に理解する
「仲がいいのねぇ…アナタ達…」
「先…生…」
「先…生…」
浴衣に着替え、缶ビールを片手に佇んでいた
いつからいたのか解らないけど、この状況に僅かな焦りすら見せない
いつからいたのか解らないけど、この状況に僅かな焦りすら見せない
「きらきー」
「は、はいっ…」
「私のオモチャで遊ぶ権利は与えたけど、壊していいとは言ってないわよぉ?」
「すみま…せん…」
「は、はいっ…」
「私のオモチャで遊ぶ権利は与えたけど、壊していいとは言ってないわよぉ?」
「すみま…せん…」
先ほどまで纏っていた狂気が、今では全く感じられないぐらい萎縮している
僕への態度や学校での態度…そして先生の前での態度…
千変万化な雪華綺晶の豹変ぶりは、それだけで既に正気とは程遠いのだろうか
僕への態度や学校での態度…そして先生の前での態度…
千変万化な雪華綺晶の豹変ぶりは、それだけで既に正気とは程遠いのだろうか
「本当に反省してるぅ?」
「…はい…」
「そう…なら仲直りのキスをしなさい」
「えっ…」
「出来ないとは言わせないわよぉ」
「…はい…」
「そう…なら仲直りのキスをしなさい」
「えっ…」
「出来ないとは言わせないわよぉ」
雪華綺晶の顔が困惑に歪む
彼女の胸中を知る術はないけど、僕としては苦しくなければそれでいい
彼女の胸中を知る術はないけど、僕としては苦しくなければそれでいい
「舌を絡ませて、ねっとりとね」
「…でも…」
「アナタからするために、上になったのでしょう?」
「…」
「ほら、早く」
「くっ…」
「…んっ…ぅ…」
「…でも…」
「アナタからするために、上になったのでしょう?」
「…」
「ほら、早く」
「くっ…」
「…んっ…ぅ…」
憎しみの目はそのままに、唇だけが優しく重なる
舌の侵入を拒まず、されるがままに身を任せた
舌の侵入を拒まず、されるがままに身を任せた
「ぅ…んぅ…」
「…はっ…ん…」
「フフ…盛り上がって来たみたいねぇ…」
「…はっ…ん…」
「フフ…盛り上がって来たみたいねぇ…」
カバンから携帯を取り出し、こちらに向けて何やら操作をしている
シャッター音が聞こえない代わりに、録画を示す短い音が聞こえた
録られる度に思うけど、何に使うのだろうか…
とても良い趣味とは言えないな
シャッター音が聞こえない代わりに、録画を示す短い音が聞こえた
録られる度に思うけど、何に使うのだろうか…
とても良い趣味とは言えないな
「ん…!」
多量の唾液が、僕の口内を満たしていく
頬を伝って零れ落ちるけど、雪華綺晶はやめてくれない
このままじゃ苦しいから、とりあえず飲んでみる
うん…まぁ、美味しいモノじゃないな
つい最近まで普通の仲だった友達とこういう事をして、意外と冷静でいられる自分に驚くという矛盾
頬を伝って零れ落ちるけど、雪華綺晶はやめてくれない
このままじゃ苦しいから、とりあえず飲んでみる
うん…まぁ、美味しいモノじゃないな
つい最近まで普通の仲だった友達とこういう事をして、意外と冷静でいられる自分に驚くという矛盾
「んっ…ぅっ…!」
あぁそうか
僕もとっくに壊れてるんだって…堕落してるんだって…いま気付いたよ
自覚があるだけマシかな
これ以上は流石にマズいもんね
僕もとっくに壊れてるんだって…堕落してるんだって…いま気付いたよ
自覚があるだけマシかな
これ以上は流石にマズいもんね
「ぷはっ…ハァ…ハァ…」
長い長い口付けから、漸く解放される
されてる僕より、してる彼女の方が苦しそうなのは何故だろう…
されてる僕より、してる彼女の方が苦しそうなのは何故だろう…
「ちゃぁんと仲直り…できたぁ?」
「…ご覧の通り…です…」
「…ご覧の通り…です…」
媚びるような眼差しで先生を見詰める雪華綺晶
そこまで褒めて欲しいのか
そこまで褒めて欲しいのか
「…」
「はぁ…はぁ…」
「はぁ…はぁ…」
品定めをするように、イヤらしい目つきで僕と雪華綺晶を交互に見る
何度か向けられた視線だけど、慣れないな…
何度か向けられた視線だけど、慣れないな…
「…ダメねぇ」
徐に口を開き、不満そうなトーンで言葉を吐く
「何が…いけませんか…?」
気に入られたくて必死な雪華綺晶は、先生の顔色を伺いながら恐る恐る問いかけた
「蒼星石、許してくれてないみたいよぉ?」
「…えっ…!?」
「…えっ…!?」
急に振られて呆然とする
そんな僕を見て、先生は今日初めての楽しそうな顔を見せた
そんな僕を見て、先生は今日初めての楽しそうな顔を見せた
- oh... -- 名無しさん (2009-05-05 12:40:28)