静かな寝息が聞こえる真っ暗な空間。
そんな空間に、輝く紅と翠…の瞳を持つ、翠星石が息を潜めていた。
「(イーッヒッヒッ……今日こそ蒼星石の初めては頂くですぅ…!)」
無防備に眠る彼女に、ゆっくりと魔の手は近付き……
バシッ
「!?」
「あら…何をしているのかしらぁ?翠星石ぃ…」
「くっ…水銀燈…!」
魔の手を止めたのは、空間に輝く二つの紅…の瞳を持つ、水銀燈だった。
「大方、蒼星石に夜這いでもかけようとしたんでしょぉ?…させないわぁ」
「お前だってどうせ、似たような理由で此処にいるんじゃねぇですか!?」
「ぐっ……否定はしないけど…」
「とにかく、お前なんぞに蒼星石は渡さないですよぉ!!」
「私だって譲る気は無いわぁ。…でも、あんまり大声あげたら起きちゃうわよぉ?」
「…!!」
慌てて、寝息をたてる蒼星石に目をやるが、相変わらず寝ている。
ある意味、すごい。
「我が妹ながら、すごいですぅ…」
「ただ鈍感なんじゃ無いのぉ?」サワサワ
「な!何さりげなく蒼星石に触ってるですか!?」
翠星石の言う通り、水銀燈は蒼星石の髪を触り始めていた。
「やっぱり髪サラサラねぇ……」
「……ん……?」
さすがに違和感を覚えたのか、翠星石と逆のオッドアイが、真っ暗な空間に浮かんだ。
「!、お、起きちゃったです…?」
「ふふ…別に構わないわぁ…。おはよぉ、蒼星石ぃ」
「……水、銀燈…?翠星石も…?」
オッドアイは開かれたものの、まだ眠そうに瞼を擦っていた。
「まだ寝惚けてるのぉ?仕方ないわねぇ…」チュッ
「ふぇ…!?」
「な…なななな…!?」
唇に、軽く触れるだけの口付けをした。
された本人、蒼星石は驚いており、翠星石はかなり怒っていた。
「何しやがるですか!?」
「おはようのチュー」
「す、翠星石の目の前でやるとはいい根性してるです!!蒼星石!」
「へっ?……ふぁ!?」
突然、翠星石は蒼星石の唇を奪った。
そして、深く求めた。
「くっ……見せ付けてくれるじゃないの…」
「……っは……蒼星石は、渡さないですよぉ!」
「あぅ……ど、どうなって…?」
「ふふ、負けないわよぉ……蒼星石ぃ」
「こ、こっちだって!」
「え…ちょ、ちょっと…二人とも……ひゃっ!?」
食に飢えた猛獣の様な二人に襲われ、蒼星石は成す術が無かった。
この後、翠星石vs水銀燈の戦いが激しくなり、いつしか蒼星石は産まれた姿の状態で、二人に押し倒されていた。
「ふ、二人とも…落ち着い…ひぁ…っ」
「此処が良いんですかぁ?」
「や…やぁ…」
「こっちの方が敏感よぉ?」
「やめ…んっ…!」
「「どっちが良かった!?」」
「も…壊れ…ちゃう、よぉ…」
結局、乱闘は陽が上がりきった朝まで続いた。
その日の翠星石と水銀燈の朝御飯は、無かったとか。
終わり
番外編
「ねぇ、蒼星石ぃ。機嫌直してぇ?ねぇ?」
「反省してるです…だから返事して欲しいですぅ…」
「…………」モグモグ
乱闘から数時間後。
机の上にある食事は一人分だけ。
乱闘の原因である翠星石と水銀燈は、朝御飯抜きを言い渡されていた。
それはそれで辛いのだが、蒼星石は先程から無言で食事をしていた。
蒼星石に無視される事は、二人にとってかなり辛い事であった。
「お願いだから、返事してよぉ…」
「お腹もペコペコですよぉ…」
「(……そろそろ許しても、良いかな?)」ズズー
反省している二人を見て、許そうとしたその時…。
「……もう我慢できないわぁ。こうなったら奥の手よぉ…」
「?…ん…っ!?」
突然水銀燈は、蒼星石の唇を奪った。
暫くすると、離して一言。
「ぷはー!やっぱり蒼星石の味噌汁は美味しいわねぇ」
「そ…そんな方法があったですか!天才ですぅ!」
前言撤回。
まったく反省していなかった。
「ふ…二人ともー!!」
「あら、素敵な鯉のぼりね(黒と緑って、珍しいわね…)」
「五月の中旬辺りまで飾っておくつもりなんだ」
終わり