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ローゼンメイデン百合スレまとめ@ウィキ

貴女に捧ぐ子守唄

最終更新:

rozen-yuri

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だれでも歓迎! 編集
「IdoL」の続きみたいな物です。



 ある休日の朝、めぐは鼻歌を歌いながら着替えをしていた。
 その顔は見るからに上機嫌で、嬉々とした様子で服を選んでいく。
「嬉しそうねぇ、めぐ」
 水銀燈がその様子を見て声を掛けた。
 それでめぐはその方を向き、嬉しさを隠すことの無い笑顔で口を開く。
「ええ。だって今日はのりとデートだもの」
 上機嫌の理由はこれだった。
 面倒だったテストも終わり、お預けだったのりとのデートも解禁されて久々のデートだ。
 今日行く予定の水族館のことも、色々と昨日下調べしてあるし準備は万端。
 後は着替え終えて待ち合わせの場所に行くだけだ。

 それから程無くして着替え終わり、鏡台の前で身だしなみのチェックをしていると、不意にベッド上の携帯が鳴った。
 この着信音はのりからのものだ。それに気付きめぐがその方を向くと、水銀燈がそれを取って渡してきた。
「はい、愛しののりからよぉ」
「ん、ありがと」
 軽く礼を言ってから電話に出た。
「もしもし、のり?」
『けほっ、めぐちゃん…?』
 まず返ってきたのは咳混じりののりの声で、めぐは何か異変を感じ取った。
「どうしたの?」
『その…言いにくいんだけどちょっと風邪ひいちゃったみたいで…』
「えっ、本当? 大丈夫なの?」
『大丈夫…って言いたいけど…寒気がするし、咳も止まらなくて…今日の水族館はちょっと無理みたい…』
 電話越しでも声だけで大分参っているのが分かり、めぐの表情が心配そうなそれに変わる。
「…分かった。私の事は気にしなくていいから、ゆっくり休んでね」
『ほんとにごめんねぇ…久々のデートだったのに…」
「良いから。また良くなったら、一緒に行きましょう。…それじゃあ、おやすみ」
『うん…おやすみ…』

 めぐは電話を切ると、鏡台からベッドに移ってそのままつまらなそうにベッド上へ倒れた。
 それから溜息を吐いて寝返りをうつ。その様子の変わりように水銀燈も少し首を傾げた。
「何があったのぉ?」
「のりが風邪引いたから今日のデートは中止よ」
「そぉ。残念ねぇ」
「…なんで半笑いなのよ」
 悪戯っぽく笑う水銀燈をジト目で睨む。しかしこれで今日の予定が無くなってしまった。
 久々のデートで気合が入っていた分、こんな事になって一気に何もする気が無くなってしまった。

 やることが無く適当に雑誌を読んだりCDを聴いたりしていたが、のりの事が気になってろくに手が付かない。
 大丈夫だろうか、心細くないだろうか、そんな事ばかりが頭に浮かぶ。
「…のり…」
 溜息混じりに名前を呟いてみたが、それは虚しく響いただけで終わった。
 水銀燈はもう私用でどっかへ飛んでいって、部屋にはめぐ一人だ。
 窓から見える雲一つ無い快晴の空が余計に恨めしく見えた。
 絶好のデート日和、そんな空が気に入らない。
「…そうだ」
 一人くすぶっていためぐはある事を思いつき、笑顔でベッドから立ち上がった。

―※―※―※―※―

「お見舞い行って驚かせちゃおう。弟のジュン君はあまり役に立ちそうに無いしね」
 さり気無く酷い独り言を呟きながら、ハンドバッグと差し入れの袋を持ってのりの家へ向かう。
 さっきまでクサクサしていたのが嘘のような笑顔だ。
 驚くだろうか、そして喜んでくれるだろうか、そんな事ばかり考えているうちにのりの家のすぐ近くまで来ていた。

 程無くしてのりの家に着き、玄関の呼び鈴を鳴らす。
 それから少ししてから中から足音が聞こえてきて玄関が開き、中からジュンが出てきた。
「こんにちは、ジュン君」
「あれ、柿崎さんこんにちは」
「お見舞いに来たんだけど、どう? のりの様子は」
「今は翠星石たちが看てて、自分の部屋で大人しくしてるよ。上がってって」
 ジュンに促されて家に上がり、そのままのりの部屋まで案内される。
 のりの部屋に入ると、確かに翠星石達がのりのベッドの前にいた。
「あれ、水銀燈のミーディアムじゃないですか」
 翠星石達がめぐに気付き、のりもめぐに気が付いて体を起こし、辛そうな表情から少し驚いたそれに変わった。
「…めぐちゃん…来てくれたの…」
「うん。心配になったから」
「…ありがとう、それとゴメンね…今日デートの約束だったのに…」
 申し訳無さそうに頭を下げると、咳が出て翠星石がのりをベッドに寝かしつけた。
 めぐも翠星石達の隣に来て、のりの顔を覗きこんだ。
 赤くなった頬、潤んだ瞳、少し乱れた呼吸…どう見ても確かに完全な風邪だ。
 額に貼られた冷却シートが一層哀愁感を漂わせている。
「もうそれは良いから。ゆっくりしてて」
「うん…」
 優しい笑顔を浮かべて布団を掛け直してあげると、それでようやくのりの顔にも笑顔が浮かんだ。

「あ、そーだったですぅ、今日は蒼星石と出かける用事があったんですぅ」
 いきなり大声でそんな独り言を言われ、何事かと思って翠星石の方を見る。
 それから真紅と雛苺もワザとらしく手をポンと叩いた。
「そうそう。私も今日は午後からくんくん探偵スペシャルを見るつもりだったわ」
「ヒナもネコさんと遊ぶ約束してるのー」
 口々に自分の予定を言い出した翠星石達に、ジュンはエッとでも言いたげに見回す。
 めぐとのりもその様子を少し唖然とした様子で眺めていた。
「おいお前ら、朝言ってただろ、のりの看病するって…」
 そこまで言ったジュンの足を翠星石が思いっきり蹴りつけ、激痛で何も言えなくなりそこを押さえて蹲った。
「ちったあ空気読めですこのチビ人間!! …それじゃ、後は若い者同士お任せするですぅ~♪」
 ジュンを怒鳴りつけると、今度は笑顔で少し唖然としているめぐとのりの方を向いて笑顔を作って見せた。
 それから翠星石達三人は顔を見合わせると少し早足で扉へと向かう。
「…何するんだこの呪い人形どもー!!」
 それに気付いたジュンが立ち上がり、その後を追いかけて行った。
 開け放たれたままのドアの向こうからははしゃいでる声が聞こえてきて、のりとめぐは顔を見合わせると苦笑いを浮かべる。

「そう言えば体の調子はどう? ご飯とか食べれたの?」
「おかゆを三口ぐらい食べて…薬飲んで終わり…」
「それだけ? じゃあお腹空いてない?」
「…ちょっと空いてるかな…」
「分かった。リンゴ持ってきたけど食べれる?」
 持ってきた袋からリンゴを取り出して見せると、のりはかすかに頷いた。
 それを確認し、「お皿と果物ナイフ借りるね」と言って部屋を出て行った。
 程無くしてキッチンから小皿と果物ナイフを持って戻って来て、のりの勉強机のイスをベッド近くまで引いてそれに座った。
「皮剥いて上げるから、ちょっと待っててね」
 皿を太股の上に置き、リンゴの皮を剥き始める。…が。
「あれ…意外と難しい…」
 皮が全部繋がって剥けていく様を想像していたが、皮は何度も途切れ皿の上に落ちて、身も少しくっ付いている。
 何度も刃の向きを変えたり力加減を変えたりしてみたが、どうも上手く剥けない。
 のりが容易くやっているものだから簡単かと思っていたが、意外と難しい。
 しばらくしてようやくコツを掴んだ頃、めぐが懐かしそうな顔をして口を開いた。
「ねえ覚えてる? あなたが初めて私のお見舞いに来てくれた時も、こうやってリンゴ剥いてくれたよね」
「うん、そうだったね」
「あの時、どうして叩き出そうとしなかったんだろうって、時々不思議に思うわ。他の人だったら間違い無くそうしてたはずなのに」
 その時の事を思い出し、フッと少し笑う。 
「案外私も、のりに一目惚れしてたのかもね」
「ふふ…それは私もかも知れないわね」
 目を見合わせて二人とも笑い合い、ようやくめぐがリンゴを剥き終わった。
 あちこち歪んで、少し不恰好であるが。

「はは、のりみたいに上手く出来なかったね…」
「ううん、ありがとう」
 照れ臭そうに苦笑いを浮かべて、皿の上でリンゴを切り分ける。
 そこでのりがお皿を受け取る為に体を起こしたが、それを制してベッドに戻す。
「めぐちゃん?」
 少し不思議そうに見るのりの顔を見ると、めぐは切り分けたリンゴを一つ摘まむ。
「あーん」
 悪戯っぽい笑顔で摘まんだリンゴをのりの口元に持っていくと、のりは恥ずかしそうな表情を浮かべた。
「え、そんな、いいわよ事しなくても…」
「いいから、病人は寝てなくちゃダメよ。ほら、あーん」
 台詞だけ聞けば良い台詞なのだが、その顔は明らかに楽しんでいる。
 のりは最初恥ずかしそうにしていたものの、観念すると寝たまま口を開いた。
「それで良いのよ。はい、あーん」
 摘まんだリンゴを口元に近づけるとのりはそれを一口かじった。
 それを咀嚼して飲み込むと、のりは笑顔でめぐの顔を見た。
「…美味しい」
「良かった。はい、もう一口あーん」
 満足そうな笑顔を浮かべ、リンゴをまた口元に持っていって食べさせた。
 もう一口同じように食べるのりを見ていると何だかおかしくなってきて、めぐは少し笑う。
「どうしたの?」
「いや、何だか餌付けしてるみたいって思って」
「餌付けって…私はペットじゃないわよ」
「いいじゃない、小動物みたいで可愛いわよ」
「もう…私のが年上なのに…」
 少し拗ねて見せるものの、のりはもう一口素直にリンゴをかじる。
 その様子がおかしくて可愛くて、めぐはニコニコと上機嫌だ。

 それから程無くしてリンゴを食べ終わり、のりは満足そうな笑顔でめぐの顔を見た。
「ごちそうさま。ありがとう、大分楽になった気がする」
「良かった、喜んでくれて」
 めぐも頷き返し、ハンカチで顔の汗を拭ぐってあげるとのりは嬉しそうに目を細めた。
「…ね、もうちょっとこっち来て」
「え?」
 のりに言われてイスごとベッドに近づくと、のりが体を起こして抱きついてきた。
 いきなりの事で少し戸惑ったが、めぐものりの背と後頭部に手を回してこちらからも抱きしめ返す。
「めぐちゃんあったかい…良い匂いがする…」
「良い匂いって、ちょっと恥ずかしいわよ」
「それに…めぐちゃんの心臓の音が聞こえる。すごく元気に…力強く動いてる…」
 めぐの胸に顔ごと耳を押し付け、愛しそうに目を細めるのり。
 その台詞を聞いて、めぐも嬉しそうに抱きしめる力を少し強めた。
 少し前までは欠陥だったこの体も、今では完全に異常が無い。
 それもこれも、のりに会えたから…そう思うと、感謝の念でいっぱいだ。
「…のり、歌、歌ってあげようか」
「歌?」
「うん。私が昔発作を起こしたときに、よくお婆ちゃんが歌ってくれた歌。それを聴くと、不思議と安心したものよ」
「…それじゃあ、お願いしようかな」
「分かった」

 めぐは頷き、のりを抱きしめたまま優しく囁くように歌い始めた。
 その姿はまるで母親が子供に子守唄を歌ってあげているようだ。

――からたちのとげはいたいよ 青い青い針のとげだよ――

「…良い歌ね。私も何だか安心してきちゃった…」
 めぐの歌声しか聞こえない、静かな部屋。
 それが一層静かさを強調させて、のりの心を落ち着かせていく。

――からたちの花が咲いたよ 白い白い花が咲いたよ――

 やがて歌い終わりのりを見てみると、めぐに抱き付いたまま寝息を立てていた。
 安らかなその寝顔を見て、めぐは体勢を直してよりしっかりと抱きしめて顔を覗き込む。
「寝ちゃった…可愛い顔しちゃって、これじゃ本当にどっちが年上か分からないわね」
 乱れて垂れている前髪を払ってあげると、くすぐったそうに、それでいて嬉しそうな表情を浮かべた。
 それから顔を近付けてキスをし、抱きしめたままさっきの歌をもう一度静かに歌い始めた。
 水族館はいけなかったけど、こんな日も良いかな、そんな事を思った。

―※―※―※―※―


「…良い雰囲気ですぅ…」
「二人ともラブラブなのー」
「紅茶を淹れて来てあげたけど…入らない方が良さそうね。私達はお邪魔だわ」
 扉の隙間から中を覗き見た翠星石達がそう漏らす。
 三人は顔を見合わせると頷いて、そこを後にした。
(末永くお幸せに…)
 そんな事を思って。

終わり

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