風雲フィガロ城 ◆iDqvc5TpTI


「ねえ、起きて、起きて!」

その声を聞いた時、思わずぼくは涙が出そうになった。
ロックアックス城での戦い以来、二度と聞くことのなかった筈の大切な人を思わせる声。
毎朝ぼくに一日の始まりを告げてくれてた鐘の音。
その元気いっぱいな明るい響きは、いつもぼくに力を与えてくれた。
どんな眠気も、重責も、悲壮感も吹き飛ばしてくれた。
でも、今回に限ってはこのまま目を開けたくない自分がいる。
眠気にしがみつき逃げ続けていたい弱さがある。

「ほら、起きて、起きてよ、リオウ」

これは幻想。
目を開けるだけで吹き飛んでしまうような儚い幻想。
シンデレラにかけられた魔法は、鐘の音と共に終わりを告げる。
けれども、嘆くことはない。
魔法が解けた後も残るものはある。
ぼくは瞼の裏に焼きついた義姉に笑いかける。
大丈夫、大丈夫。

「……んー。おはよう、ゴゴ……」

下ろしていた瞼を上げ、現実を直視する。
目の前にいるのはヘアバンドをつけた姉とは重なりようもない、エキセントリックな服装に全身を包んだ人とも判断し得ぬ人物。
いつの間にか呼び捨てにしてしまっていることに気付き、失礼だったかなと思うも、ゴゴは全く気にする素振りもなくぼくを覗き込んでくる。
随分遠くに感じられてしまう日々に、姉がそうしてくれたように。

「おはよう、リオウ! よく眠れた?」

不思議な話だった。
ゴゴの顔は身体同様奇抜なデザインの布に覆い隠されているというのに、確かに笑っていることと、こちらを心配していることが見て取れる。
だから安心させたいという想いと、本当によく眠れたことへの感謝を込めて力強く頷いた。

「うん」
「そっか。うん、うんうんうんうん!」

最後に。
どこか寂しそうな、ほっとしたような笑みを浮かべて。
ゴゴが纏っていたナナミの――お姉ちゃんの幻影は。
完全に霧散した。





頃合いだ。
どちらもかってな想像に過ぎないとはいえ、さっきは俺に涙さえ流させたナナミが、今は笑みを浮かべさせた。
もうこれ以上の変化は死者たる少女に求めることはできまい。
あるとすればジョウイという人物に会った時くらいか。
そうこうするうちに俺の中でナナミという一人の少女が時を止め、眠りにつく。
憑き物が落ちたかのように、俺に物真似をやめさせることを躊躇わせた何かも消えていく。
なら、ここいらで仕切りなおしだ。

ビッキーから聞いているとは思うが名乗っておこう。俺はゴゴ。物真似師だ」

誰の、何の物真似をするのか。
俺の生の核をなすそれらを選ぶときにのみ表出させる素の声、素の人格で名乗る。
モノマネに流されていた自らを一度白紙に戻し、新たな対象を己に重ねる為の儀式みたいなものだ。

「どうせだ。俺が誰の物真似もしていないうちに教えておこう。お前の持っているその石だが身につけておけ。
 きっとお前の力になってくれるだろう」

ナナミがリオウに渡したがっていたトンファーを返すついでに覗いたデイパックに入っていた魔石を指差し告げる。
もう物真似をすることのないある少女の父親が姿を変えたもの。
瓦礫の塔で砕け散ったはずのそれを。

「これ?」
「そうだ」

せめて世界を救った少女の縁の品を殺し合いを打倒しようとしているものに使って欲しい。
それが世界を救うというたいそれた物真似を楽しませてもらったせめてもの礼だ。
正直、一つ、ティナに関しては惜しかった点もあるのだが……。
気を取り直そう。
この数時間で実物のリオウに触れたことで、彼の癖も性格も完璧に把握した。
若干ナナミ視点に引き摺られているところもあるかもしれないが、彼女の物真似を止めた今の俺なら客観的に判断し微調整をかけることは容易い。

「ビッキーが喜んでた。ゴゴさんの物真似はほんとすごいって。ぼくも、そう思う」

僅かながらも憑き物が取れた笑みを浮かべるリオウ。
なるほど、それがお前の本来の笑顔か。
よく覚えた。

「そうか。なら遠慮なくお前の物真似をすることにし「おおっと! ここは理想の科学者像1位タイたる我輩をこそ物真似するべきではッ!?」む……」

と、ついに待ったリオウの物真似に取り掛かろうとした俺の声が乱入者によって遮られる。
部屋の扉を押し開きつつ、馴染み深いマシンに乗って突如現れたのは緑のトカゲ。
思わぬ乱入者にリオウが目を見張る。
忘れてた。どうもリオウの物真似へのリベンジにらしくもなく心が急いていたらしい。
そもそもリオウが起きるのを待つのではなく、自ら起こしたのはこいつの侵入に気付いたからだったものを。
まあ、気付いたというのには語弊があるか。
我が身を隠すこともなく、あんな巨大な機械で堂々と城門から乗り込んできた上に、歌まで歌って闊歩していたのだ。
気づけないほうがおかしい。

「我輩の名はトカ。この辺一帯は見ての通りの雪原地帯。
 無駄に降り積もっている雪を飲み水なんぞに平和利用すれば、我輩の生存率は鰻登りで木に登り、この長い優勝坂を上り始めたばかり。
 これぞ科学者の本懐ッ! 止められません、飲むまではッ! 止まりません、殺るまではッ!」

魔導アーマーの竜の頭を模したような先端部にトカゲがよじ登り、腰に手を当てポージング。
席を離れたのはそうしないとトカゲの低い身長上、あのままではこちらに全身どころか顔も晒す事ができなかったからか。
その好意(?)に甘え、今や瞳の中に納まっている奇怪な生物を改めて凝視する。
ほう、確かに面白そうな対象だ。
モーグリとも雪男とも違う。
世界を救う旅の最中でもこんな生物には出会ったことがない。
ふむ、念には念をいれるのもありか。
先ほどまでポリシーに反する死者の物真似を長時間続けていたばかりだ。
ここは調子を取り戻すためにも手慣らしをしておくのも悪くはない。

「とは言ったもののッ! 我輩の頭脳とッ! 魔導アーマーのパワーッ! さらに加えて、我輩のカッコ良さッ!
 どこをとっても一流の我輩たちを、二流の諸君らに真似しきれるとは思っていないぜ!」

いいだろう。
誰かに見てもらうために物真似をしているわけではないが、そこまで言うのなら目にも見よ。
俺の、物真似を。

では手始めに。
魔導アーマーに乗っているお前の物真似から始めるとしよう。
流石に俺の支給品にはそっくりそのまま魔導アーマーは入ってはいないが、何、この程度の問題、いくらでもクリアしようはある。

「我輩ダー、オーンッ!!」




「え、えーっと……」

ぼくは反応に困って肩車の要領で乗っかってきたゴゴを見上げる。
これでも変わった人を多く見てきた方だと思う。
人だけじゃない。変なコボルトにも、変なウイングボードにも出会ってきた。
でも、だからって、誰かの奇行に慣れているというわけじゃない。
これはいったいどういう状況なのだろうか?
肩の上にはゴゴ、目の前には緑のトカゲ。
あ、なんかマントしているし、ムクムク達を思い出すな。
なんて現実逃避をしてみたり。

「可憐炸裂ッ! 純真無限ッ! 行け行けボクらの魔導アーマートカ、なんトカ!
 なに? どこをどう見ても魔導アーマーではないと? 
 そこはほれ、溢れ出る我輩の科学のオーラとお客様のインスピレーションでなんとかするんじゃ、ボケー!」

つまりぼくは魔導アーマーとやらの代わり、ってことなのかな?
あくまでもゴゴが真似する対象は、アーマーを操縦しているトカゲのヒトの方だけみたいだし。
ちょっと前にカレンの真似をして踊ったことはあるといえ、流石にあれの真似はちょっと。
もしもからくり丸のように変形されたりしたらお手上げもいいところだ。
そんなぼくの困惑をゴゴもトカも一向に汲み取ってくれずにヒートアップするばかり。

「わ~~おッ! いきなり友情クロスとはやってくれるじゃねえかーッ! だがしかし、偽者は本物に敗れて果てるがお約束。
 なぬ? 最近では偽者が主役側で本物に勝っちゃう展開も多いとな?
 知ったことかーッ! こちとら世紀末の魔王が恐れられていた時代に生を受けたのですぞーッ!」

メグちゃんがやってたように、ぽちっとボタンが一押しされて、胸部の球体状の部品に赤い光が集いだす。
火炎槍の起動初めはあんな感じの光を放ったっけ。
だっとしたらまずい。
即座に左手を宿した紋章ごと突き出す。

「うっひょ~ッ!! 可憐爆発ッ! 大胆素て……なんですとーッ!?」

からくりから発射された怪光線を吹き荒れる風の力で巻き取り、運動ベクトルを変換。
そっくりそのまま打ち返された熱線がトカゲを襲う。
嵐の予感。
明らかに紋章とは違うぼくの常識をはるかに超える科学力相手に不安ではあったけど、上手くきまってくれたみたいだ。

「甘い、甘いですぞ! セオリーに乗っ取って巨大メカにはバリアがつき物! 
 そんな攻撃なんざへのへの河童の川流れーッ!」
「えっ~っと……。ゴゴ、ぼくが塞げなかったらどうしてたの?」
「古今例の無い緊急事態にただうろたえるばかりは青二才ゆえトカ」

物真似対象であるトカゲの人は充分に慌ててるんだけど。
再度ぼくの心の声は聞き取ってもらえず、ノリノリの二人はどんぱちを続けていく。

「「レッツゴー、ブシドーッ!」」

光線が効かないと判断したトカは魔導アーマーの巨体で突撃。
鉤爪の付いた爪を上段から叩きつけてくる。
ぼくもペダル操作を真似て肩を足で踏み込んでくるゴゴに付き合って前進。
閃光の戦槍で右の爪を受け止めると同時に回転。
爪を巻き込み地に叩き落す。

「まさに撃墜王の名はほしいがままに。フフフ……」
「まだまだあッ! 我輩には幻の左が残っているのですぞッ!
 ここに来るまでに何度か左の爪でも殴った気もしますが、それはそれ。
 撃墜王の経歴には委細関係無いことゆえに。チョヤーッ!」
「……はっ!」

続く左腕部による貫き手も回転の勢いを落とすことなく躍らせた槍で脇にそらす。

「無駄無駄無駄無駄ーッ!
 リオウくんがキミの攻撃を防ぐ手立ては科学的裏付けがとれているだけでも両手に余るほどだトカ。
 つまり腕が二本しかないキミではどこまでいっても我輩達に一撃を入れることは不可能。
 ほら、もっと力を見せるのだ、リオウくんッ!」
「はうッ! 科学ッ!? それでは勝ち目がないーッ!?
 いや、我輩たちには尻尾があるではないですか。
 しなやかにして、たおやかなこのシッポ。
 狭いところにあったスイッチも押した実績のあるこれはまさに第三の手。
 どうです? 羨ましいですか? 受け止めがたいまでの熱視線で見つめられてもあげませんぞ。
 所詮、カラダは一つ。一つだからこそ素晴らしいトカそうでないトカ」

あのー、何で攻撃はきちんと回避したのに、こんなにぼくの心は疲れだしてるんだろ?

「ねえ、ゴゴ? 思うんだけどこのままあの人の物真似をしぱなしじゃ延々と事態に収拾がつかないんじゃないかな?」

幸い戦い自体は優位に進めれているけれど。
敵も味方もこの調子じゃ、5分ですむ戦闘が10分にも30分にも膨れ上がっていく気がする。
ぼくを元気付けてくれた恩人の生き甲斐を気の済むまでやらせてあげたいとだけど、状況が状況だ。
それに気になることもある。
いつまで経っても帰ってこないルッカとビッキーだ。
起きた当初は気を遣って席をはずしたままでいてくれたんだ程度にしか考えなかったけど、いくらなんでも遅すぎる。
これだけ派手に城内で戦っているのに何の反応もないのもおかしい。

「だからぼくの物真似で一気にかたをつけよう」
「バカか? おめぇッ!? ンなコトやるわけないだろうがッ!
 我輩らのあすなろ伝説は今、始まったばかりだトカ。
 殺しちまったらこれ以上物真似できねえーッ!!
 こちとら愛を知り人になったティナの物真似をし足らずに無念無想の境地なのですぞ。
 すごすぎる物真似ののノウハウを独占したいからって見損なったぜ。
 バカにかかっちゃ我輩もだいなしだトカ」

怒涛の気魄で言い返される。
ティナ。
覚えのある名前だ。
確かオディオの放送でナナミよりも前に名前を呼ばれていた人物。
口調こそはふざけているし、言ってることも結局は自分よがりの内容のはずだけど、どこか心の底からゴゴが仲間の死を悲しんでるように思えた。
そうだね、ゴゴ。
ぼくだってむやみやたらに人も、モンスターも殺したくない。
ううん、本当はどんな理由であれ殺したくなんてなかった。
既に血にまみれたぼくにこんなことを言う資格はないけれど、でも、それは殺さないように頑張ったら駄目だってわけじゃないから。

「大丈夫。魔導アーマーの方を鎮圧したら、トカの方は風の紋章の力で眠らせるだけだから。
 これなら最善手だよね? ……その、科学的に」
「はうッ! 科学ッ!? 科学とくればいたし方ありませぬな、科学者のはしくれとして。
 よござんしょ。チェエエエエンッジ、トッカー2!」

最後の一言が効いたみたいで、あっさりとゴゴは納得してくれた。
今のゴゴはトカなのだ。
トカゲの人に効果が抜群そうなセリフで説得に当たれば上手くいくと思ってのことだったけど、大当たりだ。
ぼくの肩から降りたゴゴの手にはこれ見よがしに点名牙双。
彼の支給品のひとつだったそうだ。

そこから先はあっという間の出来事だった。
ホイのようなかっこだけの真似事なんかじゃない。
ゴゴはぼくの一挙一動を遅れることなくトレースしきったのだ。

「「はああああああああああああっ!!」」

ナナミが残してくれた天命牙双が唸りを上げる。
片方しかない愛用の武器が番いを求める紋章の宿った右腕の中で回転。
ゴゴが突き出した左の点名牙双と共に勢いを味方につけたそれが、鈍色の装甲を貫く。

「きゅ、急に奴の動きがよくなった! ハッ、我輩としたことがこのセリフは死亡フラグーッ!?」

にせもの攻撃には違いがないのに、相方の模倣の腕によってこうも差が出るのか。
ナナミの物真似を止めたゴゴがサボるはずもなく、着々と魔導アーマーを追い詰めていく。
いつ以来だろう。
ゲンカクおじいちゃんから習った流派を使う人が隣に並ぶのは。
そうだ、あの日だ。
ナナミがぼくの前からいなくなった日。
ジョウイ、きみと最後に会った日。
あの時きみは本気でナナミの為に怒ってくれた。
ぼく達がそうであったように、きみもぼく達の事をずっとずっと思ってくれていた。
ねえ、ジョウイ。
今、やっぱり悲しんでるだろうきみの隣には誰かいてくれてるかな?
悲しみを共有してくれる誰かが。
慰めてくれる誰かが。
叱咤してくれる誰かが。
沈んだ空気を吹き飛ばそうと笑ってくれる誰かが。
いてくれたらいいと思う。
いなかったなら待っていて欲しい。
迎えに行くから。
そしたら。

「まずい、まずいですぞーッ! これは緊急脱出装置の出番? 助けてぼくらのパラシュートッ!
 え、そんなのないですとッ!? わ~~おッ! この艦と運命を共にッ!!」

もう一度、もう一……あ。
しまった、やりすぎた。
考え事にふけっていたぼくは眠らせることも忘れ魔導アーマーごと叩きのめしてしまっていた。
ぼくの真似をしていたゴゴもまたしかり。
反省したときには既に遅し。
がちょんがちょんと跳ね飛んで、火を噴きながら広い城の廊下を転がっていく魔導アーマー。
だ、大丈夫、だよね?
うん、前向きに考えよう。
アダリーさんみたいに科学者だと自称していたトカも今のショックで首輪を外す方法が浮かんだりしたかもしれない。
ちょっと調子が良すぎるかもしれないけれど、そこまでいかなくてもあれ程のからくりを手足のように扱えるのだ。
首輪の仕組みや解除方を調べるにおいてぼく達の力になってくれるはずだ。
そう……ぼくはトカを仲間に引き入れようと思っている。
トカからは殺気みたいなものは殆ど感じられなかった。
ルカ・ブライトのような悪人には見えなかったのだ。
きっとあのトカゲにとっては殺すことは二の次で、何か叶えたい目的や、元の世界に帰りたいが為に殺し合いにのったのだろう。
だったら交渉の余地はある。
そういうのは自慢じゃないけど得意なほうだ。
大丈夫、大丈夫、大丈夫!
姉の口癖を心の中で何度も唱え、ぼくはゴゴとトカの転がっていった方へと駆け出した。




なぜに我輩が負けっぱなしなのですかな? それも死を宣告せんとするイキオイでッ!
金髪キザ野郎にリベンジを誓い、近場の屋根のある建物に飛び込んでみればこれですぞ。
はひー、はひー……。
いまわの際に『死んでも死にきれぬわ』と自己暗示をかけておらねばやばいところだったぜいッ!
ちみもそう思うだろ、魔導アーマーくん。
はて、バチバチ?
何を火花を散らせたりしてくれちゃっているのかね。
ボロボロパーツも落としてますし。
動きもカクカクで、踊念仏のよう……あれ、これってみんなが愛してくれた魔導アーマーとも涙のお別れ間近ということでは?
まずい、まずいですぞーッ!

「こ、この中にお医者様はいないトカ~~ッ!」

死んじゃう、魔導アーマーが死んじゃう!
せめて、せめて新たな科学の子のお産に立ち会うまではもってぼくらの魔導アーマーッ!
そうですとも。
ここいらで我輩パーティの戦力アップというのをこなしてみようと思うのです。
この城からは間違いなく科学の匂いがするのですな。
そして機械仕掛けの城といえば思い出すのはならず者戦闘部隊ことARMSが使っていた空にそびえるクロガネの城!
あれ、ARMSってどういう意味だったトカ?
アームズ……腕がいっぱい?
ひいいいっ! それならあの強さも納得だトカ! 
さっきの物真似野郎達のガードだって余裕でかいくぐれるじゃねえか。くわばらくわばらーッ!
腕が十一本、腕が十二本、腕が十三本、腕が十四本……二本足りないいいいいいッ!
ひぃぃぃイイイイイッ!
と、失敬。
我輩の巧みすぎる想像力が風雲急を告げているうちになんともそれっぽい部屋に到着!
操縦盤やらは城が動くと思ってもいないもの達には分かりづらい場所に設置されてたであるが、我輩の目を見抜けねえと思ってかーッ!
ご親切にもマニュアルなんざも置いておりましたが、そこはそれ、我輩の科学的インスピレーションの前にはかようなもの粗大ゴミー!
って、しまったー!
500円とられるーッ!
我輩、つい最近お財布落としたばかり。
そんな大金払えるはずも無く、またもや黒服ないかつい兄ちゃんに追われる生活?
いえいえこんな時こそ持つべきものは友ッ!
ゲーくん、きみにつけておく我輩を探さないでください、マル。

「さあ、気を取り直してスイッチオーン! 別れろ切れろは離陸の時に言う言葉ッ!
 蝶のように舞い、蜂のように地に這いずる愚民を刺す為、我輩の夢を乗せてはっしーんッ!
 御覧になってますかーッ!? 現代科学の到達点は、見る者にあまねく夢と希望を与えてますかーッ!?」

が、いつまで待っても心地よい飛翔感は我輩には降りかからず。
むしろこれは、この懐かしい感じは……。
落ちてる!?
我輩地上で墜落!?
た、助けてーッ! 頼れるマニュアルさーんッ!
おや、ページを開いて早々大文字で説明文が。
なになに、
『フィガロ城は蒸気機関を始動させることで地下施設間を城ごと潜行させ自動で高速地中移動できます。
 尚、一度この機能を使えば、次の放送後まで使用不可なのでご注意を』
…。
……。
………。
地下? 地価でもなく千佳でもなく治下でもなく地下とな?
つまり我輩、星の海からまたもや遠ざかりコースの急転直下?

「な、なんですとーッ!?」


【B-4 南東地下 フィガロ城(蒸気機関制御室) 一日目 午前】
【トカ@WILD ARMS 2nd IGNITION
[状態]:疲労(大)、尻尾にダメージ小。
[装備]:エアガン@クロノトリガー 、魔導アーマー(大破。一応少しずつ回復中?)@ファイナルファンタジーⅥ
[道具]:クレストカプセル×5@WILD ARMS 2nd IGNITION(4つ空)、基本支給品一式
[思考]
基本:リザード星へ帰るため、優勝を狙う。
1:地面の下なんざ冗談じゃねーッ! 星の海カムバ~ック
2:あの金髪キザ野朗~~~!(エドガーのことです)
[備考]:
※名簿を確認済み。
※参戦時期はヘイムダル・ガッツォークリア後から、科学大迫力研究所クリア前です。
※クレストカプセルに入っている魔法については、後の書き手さんにお任せします。
※魔導アーマーのバイオブラスター、コンフューザー、デジュネーター、魔導ミサイルは使用するのに高い魔力が必要です。

【ゴゴ@ファイナルファンタジー6】
[状態]:リオウの物真似中、健康
[装備]:花の首飾り、点名牙双
[道具]:不明支給品0~2個(確認済み。回復アイテムは無し)、基本支給品一式
    ナナミのデイパック(スケベぼんデラックス@WILD ARMS 2nd IGNITION、基本支給品一式)
[思考]
基本:数々の出会いと別れの中で、物真似をし尽くす。
1:リオウの物真似を続行する。
2:ビッキーたちは何故帰ってこないんだ?
3:トカの物まねもし足りない
4:人や物を探索したい。
[備考]
※参戦時期はパーティメンバー加入後です。詳細はお任せします。
※基本的には、『その場にいない人物』の真似はしません。


【リオウ(2主人公)@幻想水滸伝Ⅱ】
[状態]:健康
[装備]:天命牙双(右)、魔石『マディン』@ファイナルファンタジーⅥ
[道具]:閃光の戦槍@サモンナイト3、基本支給品一式
[思考]
基本:バトルロワイアルに乗らず、オディオ打倒。
1:信頼できる仲間を集める。ジョウイ、ビクトールを優先。まずはトカを追って引き入れたい
2:ルカ・ブライトを倒す。
3:首輪をなんとかしたい。
4:エイラが残した『黒』という言葉が気になる
[備考]:
※名簿を確認済み。
※参戦時期は獣の紋章戦後、始まりの場所へジョウイに会いに行く前です。
※ビッキーからナナミの死の状況を聞きました。




遅かったか。
聞き慣れた駆動音と、床の振動に身を委ね、俺は城の内部を見渡す。
一面に広がるのは闇。
壁のくぼみに設置された松明により無明というわけではないが、元よりここは日の恩恵無き地下の世界。
それっぽっちでは焼け石に水だ。
ただ、俺にとってはこの程度の闇、なんら問題ない。
むしろ好都合だ。
シャドウと名乗る前、列車強盗を相棒と生業にしていた頃から、闇は常に俺の味方だったのだから。
城主のエドガーに連れられ何度も入った場所だ。地の利もある。
地中に潜られ篭城されては面倒だと踏み、全力で向かった甲斐があった。
目視できた位置から若干距離があったため、潜行を防ぐには間に合わなかったが、逆に誰にも邪魔されず、この城を地に沈めた者達を殺せるというものだ。
狩の場としてはこの上ないと言っていい。
こんなことを面と向かって言えばあの王様にまた殴られるだろうな。
全く、つくづく貴様とは縁がある。

そしてあの娘、ティナとは縁が無かった。

それだけだ。
例え貴様が、貴様を母と慕う子ども達を置いていったことに、僅かながら思うことがあったとしても。
俺にはその感情に身を任せる資格は無いのだから。

「……ッ!?」

らしくもなく物思いにふけっていた俺の目を覚まさせるように城が一際強く揺れる。
この衝撃にも覚えがある。
フィガロ城には地下の断層に引っかかり動きを止めた前科が一度あるのだ。
どうやら少しばかりややこしい事態になってしまったようだ。
俺は一度覆面の下で溜息をつく。
まあいい。
やることに変わりは無い。
休息と効き目は薄かったとはいえ回復魔法で体力は回復させた。
殺した女から奪った支給品も確認済みだ。
準備は万全。
後は戦友と己への誓いの一環として、この城に巣くう者を殺しつくすまで。


【B-4 南東地下 フィガロ城 一日目 午前】
【シャドウ@ファイナルファンタジーVI
[状態]:疲労(小)、左肩にかすり傷、腹部にダメージ(小)
[装備]:アサッシンズ@サモンナイト3、竜騎士の靴@FINAL FANTASY6
[道具]:エイラのランダム支給品1~3個(確認済み)、基本支給品一式*2
[思考]
基本:戦友(エドガー)に誓ったように、殺し合いに乗って優勝する。
1:有利な現状を存分に活かしフィガロ城内の人間を殺す。
2:参加者を見つけ次第殺す。ただし深追いはしない。
3:知り合いに対して……?
[備考]:
※名簿確認済み。




「分かれ道でミスったか?」

セッツァーと分かれてどれ位経っただろうか。
俺は未だに地下の世界で迷子になっていた。
失敗だった。
効率よく地上へ帰るために頭のよいパートナーを探していたっつうのに。
せっかく出会えたセッツァーと早々に別れてしまった。
休むにしろせめて地上にまで連れて行ってもらうべきだったのだ。
そんな簡単なことでさえ思いつかねえ程リーザとナナミのことは響いていたらしい。
馬鹿か、俺は。
今でも地上じゃリーザやナナミを殺した奴、ルカにくされトカゲはのうのうと人を殺し続けているかも知れねえってのに。
エルクやちょこは言うに及ばず、冷静なようでいて人一倍仲間想いなシュウも悲しみを押し留めて抗っているだろうに。
なに一人こんな人っこ一人いねえような場所を彷徨ってんだよ!
一向に光射さない世界も相まって、苛立ちは募るばかり。
いい加減、生き埋め覚悟で天井に真空斬でも連発して穴を開けてやろうかと思い出したときに、それは起こった。

「うおおっ!?」

何かがぶつかったような衝突音、遅れて振動。
洞窟は相当頑丈に作られていたのか、幸い落盤なんざはちっとも無かったが、相当な衝撃だった。
不意打ちとはいえ崩しかけちまったバランスを立て直し、即座に音のしたほうへと走る。
どう考えてもただ事じゃねえだろ、こりゃ!
まさか俺やセッツァー以外にもあの津波に巻き込まれて地下に流された奴らがいて、そいつらがおっぱじめやがったつうわけか!?
もしそこにエルクが首を突っ込んでたら。もしシュウの奴が関わってるとしたら。もしちょこの奴が馬鹿みてえに暴れているなら。
居ても立ってもいられず走り出す。

「こりゃあ……」

城だった。
どっからどう見ても目の前にあるのは城にしか見えなかった。
俺は迷いに迷った末に振り出しに戻ってきちまったのか?
いや、そうじゃねえ。
俺がさっきまでいた城と違い、この第二の地下の城は死んじゃいねえ。
傷が全くねえわけじゃねえが、きちんと手入れもされている。

「……オディオの中じゃ地下に城を建てるのがブームなのか?」

陰険根暗なあの野郎にゃあお似合いなこった。
正直未だにオディオのことはナナミから聞いた以上には思い出せねえが、殺し合いなんて馬鹿なことを考える奴だ。
そうに決まってらあ。

「さてと、正面の城門はしまってるみてえだが……」

あの轟音がこっちの方からしたのは確かだ。
多分中で誰かが闘ってるんだろ。
ならやることは一つだ。
城門を押し破るなり飛び越えるなりしてでも中に押し入るのみ!


【C-5北西 古代城への洞窟、移動してきたフィガロ城前 一日目 午前】
トッシュアークザラッドⅡ
[状態]:疲労(小)
[装備]:ひのきの棒@ドラゴンクエストⅣ
[道具]:不明支給品0~1個(確認済)、基本支給品一式 、ティナの魔石 、果てしなき蒼@サモンナイト3
[思考]
基本:殺し合いを止め、オディオを倒す。
1:地下の城その2に乗り込む。地上への出口は一時後回し
2:果てしなき蒼は使わない。
3:必ずしも一緒に行動する必要はないが仲間とは一度会いたい(特にシュウ)。
4:ルカを倒す。
5:第三回放送の頃に、A-07座礁船まで戻る。
6:基本的に女子供とは戦わない。
7:あのトカゲ、覚えてろ……。
[備考]:
※参戦時期はパレンシアタワー最上階でのモンジとの一騎打ちの最中。
※紋次斬りは未修得です。
※ナナミとシュウが知り合いだと思ってます。
※果てしなき蒼@サモンナイト3はトッシュやセッツァーを適格者とは認めません。
※セッツァーと情報交換をしました。ヘクトルと同様に、一部嘘が混じっています。
 エドガー、シャドウを危険人物だと、マッシュ、ケフカを対主催側の人物だと思い込んでいます。



※フィガロ城は蒸気機関を始動させることで地下施設間を城ごと潜行させ高速で自動地中移動できます。途中停止不可。
 遺跡ダンジョン、背塔螺旋だけではなく、古代城への洞窟など地図に載っていない地下施設にもいけます。
 一度この機能を使えば、次の放送後まで使用不可。
※D-7南部からは入れる地下水路は途中で古代城への洞窟とフィガロ城到着ポイント方面に分岐しています。


時系列順で読む


投下順で読む


051-2:エドガー、『夜明け』を待つ(後編) トカ 077-1:機械仕掛けの城での舞踏
シャドウ
062:セッツァー、『山頂』で溺れる トッシュ
063-2:ビッキー、『過ち』を繰り返す(後編) ゴゴ
リオウ


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最終更新:2010年07月01日 00:37