暴かれた世界(後編) ◆KGveiz2cqBEn



刃と刃。
力と力。
技と技。
夢と夢。
意地と意地。

互いのありとあらゆるものをぶつけ合いながら、ジャファルヘクトルは戦っていた。
共に、致命傷を受けることなく、決定的な一撃を叩き込むことなく。
リンが離れてからずっと、拮抗した戦いが続いていた。
二人とも平静を装ってはいるものの、戦いが始まる前に比べ疲労しているのは隠し切れない。
特にヘクトルはケフカとの戦いのダメージがまだ深く残っている。
フロリーナを殺されたことに対する怒りのみで地に立っているようなものだ。
ジャファルもシンシアに治療されたとはいえ、アズリアから受けたダメージは無視できるものではない。
彼もまた、ニノを思う気持ちで地に立っているようなものだ。
本来ならば、両者共にいつ倒れてもおかしくない状況である。

再びジャファルがヘクトルの首をめがけて駆け出す。
地を蹴り、その一瞬の加速で得た速度を殺すことなく、標的の首へと向かう。
そのまま手に持った短剣で首を切ろうと試みるが、上手くいかない。
一度で上手くいくなら初手ですべてが決まっているはずなのだ。
ヘクトルもジャファルの狙いは読めている。
体を鎧で覆っている以上、一撃で相手を沈めるには首を狙うしかない。
となれば、ジャファルの姿が消えてから斧を振るえばいい場所は一箇所だ。
自分の首の辺りへ斧をなぎ払えばいい。首を狙ってくるのだからそこへ攻撃を叩き込めば何かしらのリアクションが望めるはずだ。
ジャファルの動きを目で追う必要はない。ジャファルが来るであろう場所へ目にも留まらぬ速度で斧を振り切ればいいのだから。
しかし、ジャファルもそう簡単に斬られてくれるわけもなく。ヘクトルが斧を振ったと同時に自身の速度を殺し、当たるスレスレで避けているのだ。
その後の隙だらけの体に攻撃を叩き込めればいいのだが、ヘクトルはそういう連撃を得意としない。
一方ジャファルはそこでもう一度攻撃に転じることが出来るが、それは致命傷にはならない。
その上、攻撃の瞬間というのは自身が無防備になる。足の皮一枚削っただけで斧を叩き込まれては、どうしようもない。
だから、彼はその場からの逃走を計るのだ。
そうして瞬時にまた距離を広げられ、振出へと戻る。

分かっているのに、あと少しが届かない。
雨で弱まってきているとはいえ、炎に囲まれながら戦う両者の体力の消費は尋常ではない。
そして同じパターンの行動を繰り返すうちに、焦る気持ちが両者の中でどんどんと膨らんで行った。
焦る気持ちというのは些細な油断を招きかねない、判断力の低下にも繋がる。
そうなってくると、不利になるのは素早く動くことの出来ないヘクトルだ。
瞬時に判断する力、些細なことにも反応する力が無ければ、暗殺者の戦いにはついていくことはできない。
このままなら間違いなくやられる、とヘクトルは判断する。
まだそういう判断力が残っているうちに、決着をつけるしかない。

何度目か分からないが、再びジャファルが地面を蹴って加速する。
彼の狙いは一点集中。鎧に囲まれていない首元。狙う場所はそこしかありえない。
ならば、ジャファルの位置から自分の首元までの道のりを推測するのは容易い。
推測を立て、ただヘクトルはしのときが来るのを待つ。
ジャファルからすれば、動かなくなったヘクトルは「ついに観念した」とも取れるだろう。
ヘクトルの視界に自らを刈り取らんとする短剣が映りこんだとき。



ヘクトルは、短剣に向かって真っ直ぐに左手を伸ばしたのだ。



流石にジャファルも驚愕の色を隠せなかった。
ヘクトルの逞しい左腕に、ジャファルの短剣が奥深くまで刺さり込んで行く。
肉がちぎれ、血が噴出し、激痛がヘクトルを襲うがそれに構っている暇は無い。
ジャファルの姿が見えているうちに、ヘクトルは傷ついた左手でジャファルの右腕をしっかりと掴んだ。
恐ろしい腕力がジャファルの右手にかかり、簡単に手首の骨を砕いてしまう。
「捕まえたぜ、ジャファル」
そのままヘクトルは自分の右腕をジャファルの右腕に添え、ありったけの力を込めてジャファルを自らの後ろへ叩き付けた。
受身を取ることも叶わず、背中を大きく強打したジャファルが込み上げてくる血を吐き出す。
すかさずヘクトルはジャファルの右腕を大きく捻り、骨を叩き折る。
そして起き上がるよりも先にヘクトルの全体重の乗った右足が、彼の腹部を強く押さえつける。
駄目押しの一撃に、ジャファルはもう一度血の塊と胃液を吐く。
痛みによるショックで体が言うことを聞かない内に、ヘクトルは更にジャファルの足を左足で踏みつける。
骨の砕ける音と共に血が滲み出し、ジャファルの表情が曇る。
ジャファルは空いた左手で短剣を持ち、抵抗を試みたが今更短剣一本が刺さったところで動じるヘクトルではない。
腹部を押さえつけるのを左足に替え、右足でジャファルの左手を踏みつける。
再び鳴り響く骨の砕ける音。ジャファルの顔が苦悶に満ちる。
そしてヘクトルは、右手で一度落とした斧を拾い上げる。
「今感じたてめえの痛みは、フロリーナが感じた痛みの一部だ」
ヘクトルはジャファルの首筋へ斧を当てる。
後少しでも動けば、ジャファルの首筋を掻っ切ることができる位置だ。
ヘクトルはそのまま語り続ける。
「全部かみ締めさせてから地獄に突き落としてやりてえところだが、そうもいかねえ。
 ここでてめえを殺せば、俺はお前と同じになっちまう。
 ニノからお前を奪うわけには、いかねーんだ」
ふと、斧に込められた力が弱くなる。
そして、ゆっくりとジャファルの首筋から斧が遠ざけられる。
「だから……二度と人殺しができないようにさせてもらった。
 一度は敵だったお前を信じてくれた俺たちを裏切ったこと。
 そして何よりニノを裏切ったことを悔いながら生きろ」
ヘクトルはジャファルの上から退き、ゆっくりと歩き出す。
「俺は、お前を殺さない。だから、生きて償えよ。
 生きて償いながら、ニノの傍にいてやれ」
本当は殺してやりたいぐらい憎い。
フロリーナの仇をとってやりたい。
しかし、それをしたところで今度はニノが自分と同じ思いをすることになる。
愛しい人を奪われた憎しみを、彼女が抱く必要は無い。
憎しみに駆られて復讐したとしても、何も生まない。
それをヘクトルは、分かっているのだ。
「ちょっとそこで寝てろ」



そう言って、ヘクトルはそのままその場を立ち去ろうとした。
が、思うように体が動かない。
思わず膝を付く、疲労感から来る機能障害にしてはおかしい。
そしてヘクトルはそのまま倒れ込んでしまった。
起き上がろうにしても、起き上がれない。
小指一本すら自分の言うことを聞かないのだ。
かろうじて動く顔を動かし、ジャファルのほうを向く。
そこには何食わぬ顔をして立っているジャファルが居た。
「やはり甘いな、オスティア候」
ジャファルが立っていられる理由は、彼がずっと隠し持っていた支給品にあった。
彼が隠し持っていたのはアンブロシア。
ありとあらゆる状況から、身体を正常な状況へと戻す秘薬。
いずれシンシアを裏切り、最後の一人にならなくてはいけなかった。
一人で戦うことになった時、誰も回復してくれる者は居ない。
その時にたった一度だけ、縋る事のできる命綱をずっと彼は隠し持っていたのだ。
かろうじて動く左手で支給品袋を漁り、服用したのだ。
「とどめを刺せない傲慢さが、お前に死を招いた」
そして、動けない理由。
ヘクトルに刺さった短剣、影縫いは相手の影を縫う短剣である。
刺さった直後のヘクトルはその影を縫う力さえ振り切らんばかりの勢いで行動していた。
しかし彼を動けなくさせて安心したのか、ヘクトルはそれに対抗するだけの力を失ってしまった。
そのまま、ヘクトルの体の自由は奪われてしまったのだ。
ジャファルが確実に迫ってくる様子が見える。
死への階段を一段ずつ、確実に登るような感覚だ。
一段、一段、一段とヘクトルは死へと近づいていく。
そして、ジャファルがついに自分の目の前にまで迫ってくる。
「死ね」
非常にもナイフは彼の顔面へと振り下ろされる。
ヘクトルはその時、死の階段を登り切ったと思った。

しかし、彼はまだ終わっていなかった。
彼にはまだ踏んでいない「十三段目」があったのだから。

舌打ちと共に、ジャファルはヘクトルから飛び退く。
ヘクトルを凶刃から救い、ジャファルの新たなる壁となる乱入者へ対応するために。
「ヘクトル! 大丈夫?!」
「馬鹿野郎! 何で戻ってきた!」
駆け寄ってきたリンに、ヘクトルは思わず罵倒の言葉をかけてしまう。
「じっとしてられないの、私も戦うわ」
「だけど、今のお前じゃ無理だ! 傷だらけのお前じゃあいつには勝てない!」
「……セッツァーさんに傷を少し癒してもらったわ。
 今の私の方が戦えるわよ? 少なくとも動けない貴方よりかは、ね」
ヘクトルはまだ何かを言おうとしていたが、今回はリンの方が正しい。
小指一本すら動かすことが出来ない今の状況ではリンの方が戦えるのだから。
今は見守ることしか出来ない。そんな状況にヘクトルは歯がゆさを感じずには居られなかった。
「ジャファル、私は貴方を絶対に許さない」
素早く振向き、ジャファル目掛けて剣を突きつける。
ジャファルはこちらを睨んだまま、動こうとはしなかった。
「絶対に!」
リンのその叫び声と共に、両者の姿は掻き消えた。
目で追うことすら許されない速度の剣戟。
音が立て続けに鳴り響き、風だけが流れている。
リンが剣を振るえばジャファルが受け止め。
ジャファルが短剣を振り下ろせば、リンが払う。
それを見ているヘクトルの感覚に入り込んでくるのは、刃と刃のぶつかる音だけだった。
視覚は、どちらか一人のの姿を捉えることすら叶わない。
無力感を噛み締めながら、ヘクトルはただ、ただ見つめていた。

突如、ヘクトルの視界に鮮血が舞う。

それと同時にリンが地面を転がる姿を見た。
背中にあった傷口が開いたらしく、再び背中から大量の血を流していた。
そこでヘクトルは思い出す。リンがセッツァーに治療してもらったと言っていたことを。
セッツァーは他人の傷が消えるまで完璧に癒すことは出来ない。
ブラッドを助けた時だって、火傷を少しマシにしただけだったのだ。
リンもそのことを知っていた。が、危惧していたことが起こってしまった。
背中の傷口が開き、痛みにより思わず姿勢を崩してしまう。
ほんの一瞬、リンに隙が生まれる。
しかし、暗殺者であるジャファルにとっては十分すぎる隙だった。
無防備に曝け出された腹部にジャファルの足が叩き込まれる。
「がっ……は!」
立て続けにリンの足へと短剣を突き刺して大きく動かす。
標的を一撃で殺すことが出来ない場合、まずは標的の動きを止める。
その上彼女の武器は俊敏性だ、要となる足を止めれば格段に戦闘力は落ちる。
足を狙うだけで、今回はジャファルに二重の得がある。
足の肉が引き裂かれていくのを感じ取り、そこから走る激痛に思わずリンは声を上げる。
「うっ、ぐ、ああああ!!」
ジャファルの手は止まらない。
リンの力が一瞬だけ弱まったのを見逃さずに、剣を蹴り上げる。
素早く足から短剣を引き抜き、肩の近くへと短剣を突き刺す。
足を踏みつけ、一気に腕を切裂く。
そして、事のついでといわんばかりに喉を引き裂く。
これ以上目立つ音を立てないためだ。第三者の乱入は戦局をややこしくする。
最後に駄目押しに彼女の体を一蹴する。
思わず見とれてしまうほどの美しい一連の動作。
これが、暗殺者の行う「仕事」なのだ。

振り返ってみると、先ほどヘクトルがやっていたのと、似通った手段だ。
ヘクトルは、そうやってリンが傷つけられていくのをただ見守ることしか出来なかった。
「もういい、やめろ! やめてくれ!!」
ヘクトルは叫ぶ。ありったけの声で叫ぶ。
すると、ジャファルはヘクトルの方を向いたのだ。
彼の足元に倒れているリンのことなど、どうでもいいかのように。
「オスティア候、俺はお前とは違う。
 お前は、さっきここで……ここで俺を見逃した」
今のリンの状況は先ほどまでのジャファルの状況。
そこで、ヘクトルはジャファルにとどめを刺さずに立ち去ろうとした。
その結果、ヘクトルは何も出来ずに見ていることしか出来ずにいる。
では、ジャファルならこれからどうするか? 考えなくても、ヘクトルには分かる。
リンがどうなるか? 考えなくても、ヘクトルには分かる。

ヘクトルは声を振り絞ろうとする。
ジャファルがうつ伏せに倒れているリンの背中の傷口を踏みつける。
リンは悲鳴を上げようとするが、血がゴボゴボと音を立てるだけに終わる。
ヘクトルは「やめろ」と声を出そうとする。
ジャファルの短剣がリンの首元を目掛けて振り下ろされていく。
リンは逃げようとするが、手にも足にも力が入らない。
ヘクトルの声は叫びへと変わろうとしている。
ジャファルの短剣が首元へと突き刺さる。
リンがヘクトルの方へと向き、口だけを動かす。
ヘクトルはその言葉を読み取った。
――ごめん。
その口の動きを認識し終えたとき。
リンの首は、宙へと舞っていた。

【リン(リンディス)@ファイアーエムブレム 烈火の剣 死亡確認】
【残り24人】


「……これが、生き残るべき者の取る手段だ」
ジャファルは、ヘクトルに向けて呟いた。
再びヘクトルの元へと向かうジャファル。今度は邪魔するものは居ない。
素早くヘクトルの元へと飛び移り、その命を狙おうとする。
ヘクトルはまだ動けない。どれだけ力を込めても体が動かなかった。
そしてもう一度、先ほどまで視界にあった階段がもう一度眼に映る。

ジャファルが一歩進むごとに、ヘクトルもその階段を一段ずつ登る。
目前にジャファルが迫ったとき、ゆっくりとヘクトルは目を閉じる。
リンが一足先に踏むことになってしまった「十三段目」は。
またしても、踏めなかった。
ゆっくりと目を開くと、横に大きく吹き飛んでいるジャファルの姿が映る。

そして、予想だにしない第三者の声を聞く。
「おい、ヘクトル。大丈夫か?」
本来、ここで聞くことなどありえない声の方へゆっくりと振向く。
そこに映ったのは、セッツァーとニノ。
「何でここに、って顔をしてるな。
 ……あのニノって子に連れてこられたんだよ、ヘクトルとリンの居る場所を教えてくれってな」
セッツァーはヘクトルの方へと駆け寄り、ニノは遠くへ吹き飛んだジャファルの方へと走る。
「で、いつまで寝てるつもりだ?」
「起き上がれるならとっくに起きてる」
セッツァーの問いへ対し、ヘクトルは思わず怒りが混じった声で答えてしまう。
「成る程な、じゃあ今から起きてみろよ」
そう言われ、ムキになって力を込めてみる。
すると、先ほどまでの硬直が嘘のようにすんなりと起き上がることが出来た。
「ストップの魔法がお前に掛かってた。ジャファルってやつがどうしてそれを使えたのかは分からないが、ともかくもう大丈夫だぜ」
ヘクトルの身に起きていたのは魔法の力によるものだった。
そして、それはセッツァーの良く知る魔法「ストップ」であった。
幸運にもセッツァーにはそれを解除する「デスペル」を習得していたのだ。
ともかく、動けるようになったところでヘクトルは次の疑問をセッツァーへと投げかける。
「っつーことは、さっきの魔法は……お前のか? セッツァー」
「まさか」
セッツァーは肩をすくめながら答える。
「あんな威力の魔法は俺には打てない。
 さっきの魔法はあの子、ニノって子がやったんだよ」
ニノが魔法をジャファルに向けて撃った。
俄かには信じがたい話だ。しかもさっきの魔法はヘクトルの知っている魔法の類ではなかった。
「そうだ、「私がジャファルを止める。絶対に止めてみせる。だからもしもの時のためにセッツァーさんはいつでも戦える準備をしておいて」……だそうだ」
立て続けにセッツァーが口を開く。
本当にニノがそんなことを言ったのか?
という疑問が浮かぶが、魔法を撃った事、一足先にジャファルの元へ大急ぎで駆けつけたことから本人が言ったのだろうと推測する。
「嫌な予感がする、最悪の上に最悪の塗りたくったようなことが起きそうな、そんな気がする」
いろいろ頭の中で思考を張り巡らせたが、そもそも深く考えるのは彼の柄ではない。
とにかく、ジャファルはニノ一人で相手できるような奴ではない。
もしもの時でなくても戦える準備をしておかなくてはいけないのだ。
「加勢するぞ、セッツァー」
「……わかったぜ」
セッツァーはヘクトルの後をついていく。
勿論、彼がヘクトルについていくのは考えがあってのことだ。
わざわざ戦闘をしにいくのも、それを超えるメリットがあるからこそ。
心の中で、セッツァーは笑う。

そして、ヘクトルはリンの遺体の方へ少しだけ振向く。
「悪いな、リン。後で弔ってやるからちょっと待っててくれ」
もう一度前を向き、セッツァーと共に足を前へと進める。
彼らを見送るのは、降り注ぐ雨と、弱まった炎。

「じゃあな」
もう振り返らない、その決意の印を言葉に込めて。

【C-7西側の橋より少し西 一日目 夜】
【ヘクトル@ファイアーエムブレム 烈火の剣
[状態]:全身打撲(小程度)、疲労(極大)、アルテマ、ミッシングによるダメージ、左腕に深い刺し傷
[装備]:ゼブラアックス@アークザラッドⅡ
[道具]:聖なるナイフ@ドラゴンクエストIV、ビー玉@サモンナイト3
     基本支給品一式×2(リーザ、ヘクトル)
[思考]
基本:オディオを絶対ぶっ倒す!
1:ニノの元へ向かい、ジャファルを倒す。
2:リン達やブラッドの仲間、セッツァーの仲間をはじめとして、仲間を集める。
3:つるっぱげを倒す。ケフカに再度遭遇したら話を聞きたい。
4:セッツァーを信用したいが……。
5:アナスタシアとちょこ(名前は知らない)、シャドウ、マッシュ、セッツァーを警戒。
[備考]:
※フロリーナとは恋仲です。

【セッツァー=ギャッビアーニ@ファイナルファンタジー6】
[状態]:絶好調、魔力消費(中)
[装備]:デスイリュージョン@アークザラッドⅡ、つらぬきのやり@FE 烈火の剣、シロウのチンチロリンセット@幻想水滸伝2
[道具]:基本支給品一式×2(セッツァー、トルネコ)、
     シルバーカード@FE 烈火の剣、メンバーカード@FE 烈火の剣
[思考]
基本:夢を取り戻す為にゲームに乗る
1:ヘクトルと行動。
2:手段を問わず、参加者を減らしたい
※参戦時期は魔大陸崩壊後~セリス達と合流する前です
※ヘクトル、トッシュ、アシュレーと情報交換をしました。

※リンの遺体のすぐ傍にリンの支給品が放置されています。
 ヘクトルたちがニノの元へ向かった際に回収したかどうかは後続の書き手にお任せします。
リンの遺体の傍にあるアイテム:マーニ・カティ@ファイアーエムブレム 烈火の剣、バイオレットレーサー@アーク・ザ・ラッドⅡ、拡声器(現実)
リンのデイパックにあるアイテム:毒蛾のナイフ@ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち、フレイムトライデント@アーク・ザ・ラッドⅡ、天使ロティエル@サモンナイト3
※小規模の火事が起きていますが、そのうち鎮火します。



ジャファルは驚きを隠せなかった。

魔法を食らったことより、襲撃者の正体に驚きを隠すことが出来なかった。

「ねえ、ジャファル。教えてよ」
襲撃者、ニノはジャファルへと問う。
「さっきヘクトルを殺そうとしてたよね」
ジャファルは答えない。口を開こうとすらしない。
「じゃあさ、奥のほうで倒れてたリンも。ジャファルがやったの?」
ニノは立て続けに質問を投げかける。
「答えてよ」
ニノは、答えを求めた。
分かっている、セッツァーに全て聞いたのだから。
それでも、それでも彼女はジャファルの口からどうしても聞きたかった。
「答えてよって言ってるの!!」
だんまりを決め込むジャファルを前に、ニノは思わず声を荒げてしまう。
彼女の問いに答えを出す代わりに、ジャファルは飛び出した。
一瞬でニノに肉薄し、先ほどと同じように気絶させるための一撃を腹部に叩き込む。
気絶させるだけの攻撃だ、元々魔術師である彼女にそこまで力を入れて攻撃をする必要は無い。
それに、必要以上の力を込めて攻撃する必要も無いのだ。

だからだろうか? ニノは気絶することは無かった。
「メラ」
ジャファルに拳を打ち込まれ、苦悶の表情を少しだけ浮かべながらもニノは覚えたての魔法を唱える。
それと同時にジャファルから距離をとる。
普段のニノからは考えられない動きの俊敏さ、そしてタフさであった。
「そうやって、あたしをまた気絶させて。あたしが寝てる間に全部終わらせようと思ってるんでしょ?」
ジャファルは明らかに今のニノは身体能力がおかしいと違和感を感じていた。
まるで、何かの加護を受けたかのように。
「ねえ、なんで? 答えてよ」
そんなジャファルにニノは、休む間を与えずに疑問を投げかける。
「なんで殺さなきゃいけないの?! もう人は殺さないってあたしに約束してくれたよね?!
 あれは嘘だったの?! あたしを裏切るの?!」
あふれ出す感情は、言葉としてニノから飛び出る。
「人殺しの機械としてはもう生きることをやめたって、言ってくれたのに。
 あれも嘘だったんだね。信じたあたしがバカだった」
ニノの両目からは涙が、止まらない。
ぼろぼろと、ぼろぼろと、目から頬を伝って流れていく。
「……ニノ、聞いてくれ。俺は」
「「お前に生き残ってほしかった」……でしょ?」
ジャファルの言葉を先読みし、その言葉をそのまま返す。
言い当てられてしまったジャファルは再び黙り込んでしまう。
「あたしのために皆を殺して、あたしを生かせて帰したかった。そう言いたいんでしょ?」
その指摘は的確すぎて何も反論は出来ない。
反論できたとしても、ジャファルは反論しない。



「本当にそれがあたしのためだと思う?」



彼女にとって最大の疑問を、ニノはジャファルへと投げかける。
その言葉を聞いた瞬間、ジャファルの目が大きく見開かれる。
「皆を殺してあたしだけを元の世界に戻して、ジャファルも居ない皆もいない。
 傍に誰もいない世界に私を帰してあたしが本当に幸せだと思う?!」
再び、ニノは止まることなく言葉を吐き出す。
たまりにたまった感情の捌け口を見つけたかのように。
言葉に感情を込め、ジャファルへとぶつける。
「魔王は、願いを叶えてくれるって言ったよ。
 でもさ、生き返らせてくれたとしても。それがモルフだったらどうするの?
 何も喋らない! 感情も無い! ただの人形じゃ意味が無いよ!
 それに……もう、もう誰かがモルフになるのを見たくない!
 それがあたしの知ってる人ならもっと見たくない!!」
止まらない、止まらない、止まらない。
過去の経験が、再び繰り返されるような気がして。
それを防ぐために、ニノは止まらない。
「そんな世界をジャファルはあたしにくれるの? いらないよ、そんな世界。
 ……そもそも、あの魔王が願いを叶えてくれるっていう確証すらない!
 生き返らせてくれるなんて、これっぽっちも守るつもりが無いかもしれない!」
そこで、ニノは一度呼吸を落ち着ける。
涙混じりの声はだんだんとしゃがれていき、グズる赤子のような声へと変わっていた。
「あたしはさ……綺麗事かもしれないけど。もう人が死ぬところを見たくないよ。
 戦いは終わったんだよ? どうして殺しあう必要があるの?」
先ほどとは打って変わり、ニノはゆっくりと口を開く。
「命を懸けて守るって、ジャファルはあたしに言った。
 でも、こんなの望んでない。ジャファルがまたただの人殺しに戻っちゃうなんて。あたしはイヤだ!!」
かつて、ジャファルは「人殺しの暗殺者として生きたことを悔いる事」を条件にヘクトル達の仲間となった。
だが、ここに来てジャファルは再び人殺しへと舞い戻ってしまった。
ニノは、それだけはどうしてもイヤだった。
「戦わなきゃ生き残れないとしても、あたしはもうイヤだ。
 誰かが死ぬのも、殺されるのも、殺すのももう見たくない」
泣きながら、泣きながら彼女は言う。
ジャファルは動かない。いや、動けない。
ニノの吐き出す感情付きの言葉の一語一語に、突き刺さる何かを感じるから。
「でも、ジャファルは人殺しをやめないんだろうね。あたしが死んだら元も子もないし。あたしを生かすためにやってきたんでしょ?」
涙をムリヤリ拭き、ニノはもう一度ジャファルの方へと向き直る。
「セッツァーさんに聞いたよ、フロリーナも殺したんだって?」
当然、ジャファルは答えない。無言のままニノを見つめている。
「……あたしは許さない。人殺しとして生きるなら、あたしはジャファルを許さない」
ニノの目つきが鋭くなり、ジャファルを睨むように見る。
「だから、あたしがジャファルを止める」
そして、決意の現われの変わりにジャファルへと指を突きつける。
「ニノ、待ってく」
ようやく弁明をする気になったジャファルが口を開いたとたんに、彼の真横を衝撃波が通り過ぎる。
先ほどジャファルが食らったのと同じ魔法だ。
「あたしは本気だよ」
ニノの両目は揺るがない。
ただ、真っ直ぐにジャファルを見つめていた。
「あたしは……ジャファルが好きだよ。この世で一番ジャファルが好き。
 だから、あたしは好きな人にそんなことはしてほしくないから。だから……」
もう一度、決意の為にニノは言う。



「ここでジャファルを止める」



【ニノ@ファイアーエムブレム 烈火の剣】
[状態]:怒り、なんらかの補助魔法。
[装備]:クレストグラフ(ロザリーと合わせて5枚)@WA2、導きの指輪@FE烈火の剣
[道具]:フォルブレイズ@FE烈火、基本支給品一式
[思考]
基本:全員で生き残る。
1:どんな手段を使ってでもジャファルを止める。
2:サンダウン、ロザリー、シュウ、マリアベルの仲間を捜す。
3:マリアベルたちのところに戻りたい。
4:フォルブレイズの理を読み進めたい。
[備考]:
※支援レベル フロリーナC、ジャファルA 、エルクC
※終章後より参戦
※メラを習得しています。
※クレストグラフの魔法はヴォルテック、クイック、ゼーバーは確定しています。他は不明ですが、ヒール、ハイヒールはありません。
 現在所持しているのはゼーバーが確定しています。
※何らかの補助魔法が掛かっています。セッツァーの手によるものですが、なにがかけられているかは後続にお任せします。

【ジャファル@ファイアーエムブレム 烈火の剣】
[状態]:ダメージ(小)、疲労(小)、傷跡の痛み。
[装備]:影縫い@FFVI、アサシンダガー@FFVI、黒装束@アークザラッドⅡ
[道具]:アルマーズ@FE烈火の剣 基本支給品一式*2
[思考]
基本:殺し合いに乗り、ニノを優勝させる。
1:ニノを……?
2:ヘクトルと銀髪はとりあえず後回し。
3:参加者を見つけ次第殺す。深追いをするつもりはない。
4:知り合いに対して躊躇しない。
[備考]
※ニノ支援A時点から参戦

※かくれみの@LIVE A LIVEは燃え尽きました。


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108-1:暴かれた世界 リン GAME OVER
ジャファル 112:光の『英雄』、闇の『勇者』
ヘクトル
ニノ
セッツァー


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最終更新:2010年07月15日 14:19