<ハジマリ>のクロニクル ◆6XQgLQ9rNg



 たいせつなものがあって。
 だいすきなひとがいて。
 みんな、それを守りたいだけ。
 たった、それだけ。

 ◆◆ 

 荒野となり果てたその場所の真ん中に、大人よりも一回り小さい石が佇んでいる。
 落ちているのでも転がっているのでもなく、確かにそこに佇んでいる。
 それは、とある少年が生きていた証だった。
 彼は確かに生きていた。
 迷い傷つき苦しみ道を見失いながら。
 両の足でその身を支え大地を踏みしめ、懊悩と憎悪と辛苦を昇華し、ほんとうの自分を知った。
 彼の一生は、余りにも過酷で短すぎた。
 けれど、不幸だとか可哀想だとか、そんな言葉を投げかけて同情を抱く者などここにはいなかった。
 敬意と感謝と親愛を。
 その全てを以って、その石にはこう刻まれていた。
 “勇者ユーリルに安らかなる幸福を”と。

 ◆◆

「そして、俺は……アシュレー・ウィンチェスターをこの手で殺めた」
 勇者の墓標の前、拳を震わせながら物真似師が懺悔する。
 誰かの物真似ではなく、ゴゴ自身の声音による告解は、広々とした荒野に溶けていく。
 訥々と語られたのは、ゴゴが憎悪に捉われた理由と原因、そしてそれによる結果だった。
「許されるとは思っていないが言わせてほしい。本当に、すまない」
 深々と頭を垂れるゴゴ。
 その前に歩み寄ったのは、破損個所を無理やり取り繕った着ぐるみ――ARMSの仲間としてアシュレーと共に在った、マリアベルだった。
「つまり、お主はたいせつなものを守りたかった。そんなお主を、アシュレーは信じた。
 ならば、頭を下げる必要などなかろう」
「だが……ッ」
「ねえ、ゴゴおじさん」
 小さな手が真っ直ぐに、真っ直ぐに伸ばされる。逡巡の後、ゴゴはそっとその手を取った。
 するとちょこは、嬉しそうにはにかんで、ゴゴの手を握り返してくる。

「ちょこ、覚えてるよ。おじさんと、手を繋いで歩いたこと」

 穢れない瞳が、覆面の奥にあるゴゴの目を映す。
「おじさんの手、あったかいの。あのときと同じなのよ」

 無垢な声が、覆面に覆われたゴゴの鼓膜を震わせる。

「アシュレーおとーさんの“命”を運んでいたあのときと、同じなのよ」

 純真なてのひらが、手袋に包まれたゴゴの手を握りしめる。

「だから、だいじょうぶ。だいじょうぶなの」
「ちょこ……」

 物真似師が名を呼ぶと、少女は嬉しそうに、ほんとうに嬉しそうに目を細めて微笑んだ。
 ちょこの笑みの向こうで、ストレイボウが口を開く。 
「罪を背負っているのはお前だけじゃない。罪の重さだけで言うなら、俺の方が遥かに重い罪を背負っている」 
「じゃが、わらわたちは皆“救い”を受けた。ゆえにゴゴ、お主を責めはせぬ。
 そもそも、アシュレー自身が信じたお主を糾弾する道理などあるものか」

 マリアベルに口を挟む者も、反論する者もいない。
 ただ追従するように、ちょこが大きく頷いた。
「……感謝する。そして、よろしく、頼む」

「おかえりなさい、ゴゴおじさん!」

 覆面の奥で、かすかに目を細め、ゴゴはちょこの髪を撫でる。
 ただ、この少女が愛おしかった。

「ああ……ただいま」

 ◆◆

 手短な情報交換を経て判明した情報は様々で、現在の全ての生存者について、ある程度の情報が集まった。

「南の遺跡にカエルと魔王。
 座礁船より南――少なくともカエルたちよりも僕らの近くに、セッツァー、ピサロジャファルがいる。
 彼らは手を組んでいて、既に行動を開始している。
 そして、これ以上の増援は期待できそうもない。笑えない状況だね」

 現状を纏めつつ、イスラはそれとなく横目でジョウイを窺う。
 彼が受けた傷は、セッツァーらに捕まって尋問されたためらしい。
 なんとか逃げ出してきたとは言っていたが、イスラの疑わしさは晴れなかった。 
 ジョウイが裏切りを企てている可能性はある。それが最悪のタイミングで実行された場合痛手は免れない。
 そのリスクを理解していながら、イスラはあえて詰問するのは避けていた。
 まだ敵は多い。
 続く戦いの前に、皆に下手な疑念を持たせるべきではない。
 マリアベルには話してあるし、イスラ自身が注意していればいいだろう。
 少なくともイスラだけは、希望的観測を捨てるべきだと思う。
 なにせ、みんな人がいい。
 この中で最もひねくれ者である自分がその役目を引き受けるべきだ。

「この一帯が荒野になったんです。セッツァーたちがここにやって来る可能性は高い。
 このまま遺跡へ向かえば背後を取られるか、挟撃されるか、あるいは疲弊したところを襲撃されるか、でしょうね」

 そんな疑心に気付いているのかいないのか、素知らぬ顔のジョウイが意見を述べる。
 イスラは内心で息を吐き、気分を切り替えた。
 とりあえずは彼を仲間として扱うことにして、作戦会議に集中する。

「数では勝ってる分、足は遅いからな。ここで迎え撃つってのはどうだ?
 視界も開けてる。奇襲なんてできやしないだろう」

 広がる荒野には大小の岩石がいくつか転がっているにせよ、遮蔽物はほとんどない。
 ヘクトルの言う通り、奇襲には不向きで迎撃には適している。
 だが、だからこそ。
「相手もそれは分かってるだろ」
 アキラが地図の一点、南の遺跡を指で叩く。
「俺らをスルーして先に遺跡へ行かれて、手を組まれたらさすがにキツイんじゃねーか?」 
 セッツァーたちとカエルたちが手を組んだとしても、頭数だけで考えるならこちらは倍だ。
 それでも、相手が精鋭揃いで容赦がないのは、これまでの戦闘で身に沁みている。
 合流は、させたくなかった。

「可能性の話をするなら、もう一つ問題が発生するかもしれないな」
 眩そうに天空を見上げるのはストレイボウだ。
 蒼穹は何処までも高く、遥か彼方まで広がっているように雄大だった。 
「そろそろ放送の時間だ。アイツが――オルステッドがここを禁止エリアに指定した場合、動かざるを得なくなる」
 オディオに命を握られていないのはゴゴのみである。
 枷の解体がまだである以上、禁止エリアによる行動制限からは逃れられない。
 極端な話、禁止エリアによって、北か南のどちらかにしか進めなくなるかもしれないのだ。

「だったら……こっちから行こうよ」
 ニノの呟きに、視線が集中する。
 彼女は臆さず、皆の視線を受け止めて拳を握りしめた。
「こっちから、行こうよ。ジャファルたちのところへ。それで――」
 小さな体から力が溢れ出ていた。
 大きな瞳には決意が輝いていた。
 そして。
「今度こそ、あたし、ジャファルを止める。絶対に、止めてみせる」
 言葉には、信念が満ち満ちていた。
 ニノはジャファルのことが大好きだ。 
 誰よりも何よりも大好きだ。
 だからこそ、命を踏み躙っているジャファルを認められない。
 いや、本当に許せない理由はそれではない。
 本当に許せないのは、ニノの気持ちを完全に無視していることだ。
 ニノはジャファルと一緒にいたい。
 大好きで大切なジャファルと、ずっとずっと一緒に生きていきたい。
 なのに彼は、ニノを置き去りにして、たった一人で闇を抱えて遠くへ逝くつもりなのだ。
 そんなの許せない。認めたくない。
 だからこの手で止めてやる。
 強くなって、泣かないで、ぜったいに止めてやる。
 負けたくはなかった。
 他の誰でもない、ジャファルに負けたくなかった。

「賛成だ。俺も、話をしたい相手がいる」
 ストレートなニノの意志表明に賛同したのは、物真似師ゴゴだった。
 セッツァー・ギャッビアーニ
 共に空を駆け回ったゴゴの仲間も北にいる。
 ちょこの話によると、あの巨人――ブリキ大王というらしい――に乗っていたのはセッツァー本人だったようだ。
 正直なところ、アシュレーを殺すべく放たれた空からの一撃が、セッツァーによるものだとは考えられなかった。
 否、考えたくなかった。
 ゴゴたちに牙を剥き空を汚したのが他でもない、セッツァー自身であるなどと、決して信じたくはなかった。
 だが、すべての生存者の情報が集まった以上、確かな事実として向き合わなければならない。
 そのためにも、ゴゴは話がしたかった。セッツァーの真意が知りたかった。 
 けれど、先ほどの容赦のない攻撃を思い出すに、交戦は避けられそうもない。
 胸が痛まないと言えば嘘になる。肩を並べて戦えればどんなに幸せだろうか。 
 そんな懐古めいた感傷は、胸の中で確かにたゆたっている。
 だとしても。
 セッツァーと刃を交えることになれば、受けて立つ覚悟はできている。
 ゴゴは知っている。
 勝負を通して見えるものがあり伝わるものがあることを。
 それもまた、物真似を通じて学んだ真理だ。
 信じているのだ。
 ぶつかり合ったその果てから、もう一度、共に空を飛ぶことだってできると。

「よし、その方針で詰めるか。できるんなら、こっちから先に接触したいが――」
 そうして作戦会議は続く。
 マリアベル、アナスタシア、ちょこの三人を除いて、作戦会議は続いていく。

 ◆◆

 川が奏でる優しげな水音が鼓膜を震わせる。
 会議中のメンバーがいる場所から南にある川辺に、ちょこ、マリアベル、アナスタシアの姿があった。
 彼女らが会議に参加していないのは、未だ残っているわだかまりを緩和するためだ。
 アナスタシア・ルン・ヴァレリア
 多かれ少なかれ、彼女への不信感は募っている。
「やっと落ち着いて話せるのう。時間が少ないのが本当に惜しい」
「おねーさん、また会えてうれしいの!」

 アナスタシアはちょこの髪を撫でてマリアベルに微笑みかける。
 上手に笑えているだろうかと思いながらも、それくらいしか、できることが思い浮かばなかった。
「……わたしも嬉しいわ。できるなら、ずっとずっとおしゃべりしていたいわね」
「そうじゃの。満月の下、美味い茶でもあれば更によいのじゃが」
 川べりに腰掛け、マリアベルが手招きをする。
 その隣に腰を下ろすと、間に割り込むようにちょこが飛び込んできた。
「ここ、ちょこの席ー」
 マリアベルが、くすりと笑った。
「ちょこ、じゃったな? アナスタシアを守っていてくれたこと、礼を言うぞ。ありがとうの」
「大丈夫よ。おねーさんのこと大好きだもん。ぬいぐるみさんは、おねーさんのお友達?」
「マリアベルじゃ。マリアベル・アーミティッジ。そう、わらわはアナスタシアの一番の親友じゃッ!」
「じゃあちょこともお友達ねー!」

 親友。
 マリアベルはそう言ってくれた。
 大好き。
 ちょこはそう言ってくれた。

 けれど、手放しに喜ぶ気にはなれなかった。
 疑ってしまうのだ。
 今の自分は、親友と呼ばれるに相応しいだろうか、と。
 今のわたしは、大好きと評されるに値するだろうか、と。
「わたしに……そんな価値なんてあるのかな」
 せせらぐ川面を眺めながら、アナスタシアは思わず零していた。 

「ねぇ、マリアベル。
 さっき、言ってくれたよね。わたしの代わりに命を捧げられたら、って。
 もしわたしがそう望んだら、死んでくれる?」

 思いがけず、答えは間髪いれずに返ってきた。

「喜んで捧げよう。笑顔で散り逝こう。わらわの命はお主のためにある」
 びくりと、心臓が跳ねた。
 余りにもすらすらと立て並べられた回答に、息が詰まってしまう。
 目を見開いてマリアベルへと顔を向けると、彼女は悪戯っぽく首を傾けていた。
「そう言えば、満足かの?」
「そんなわけないッ!」
 反射的に叫んでしまったせいで乱れた息を深呼吸で整え、繰り返す。
「そんなわけ、ないじゃない」
 そうだ。
 そんなわけがない。
 大切な人の屍の上で築いた生に、何の意味がある?
 ひとりぼっちで生きる命に、何の価値がある?
 そんなこと、分かり切っていたはずなのに。
 さっき、マリアベルが死にそうになるまで、思い出すことができずにいた。
「おねーさん。ちょこね、いろんな人に会ったよ。やさしい人たちに、会ったのよ」
 ちいさな手が、アナスタシアの手に重ねられる。
 かつてちょこを殺そうとした手の上に、重ねられる。
「でもね、遠くに行っちゃった人もいっぱいいるの。
 せっかく仲良くなれたのに、会えなくなっちゃった」
 大きな瞳が潤み幼い声が湿る。
 アナスタシアの手が、ぎゅっと握られた。 
「もう、お別れするのはイヤ。寂しいのは、イヤなの。ねぇ、おねーさんもそうでしょ?」
 ちょこの手が、小刻みに震えていた。
 いくら魔法が使えても、戦うことができても。
 この小さな胸の奥が、傷つかないはずがない。
 分かっていたのに、見ないフリをして。
 真実を隠し、都合のいい情報を吹き込み、自分だけが生き延びるために、こんな小さな女の子を利用した。
 それなのに、ちょこは言ってくれたのだ。

 大好き、と。

 気付けば、ちょこを抱き締めていた。
 アナスタシアを守ってくれた体は想像以上に華奢で、とても温かかった。
 その温もりはまさに命そのもので。
 それを感じられることが、たまらなく幸せで。

「わたしも……寂しいのは、イヤ……。
 生きたいよ。
 みんなと一緒に、生きたい……!」

 与えられた生に舞い上がり、本当の望みが見えなくなってしまっていた。
 こんなことなら、きちんと名簿を確認しておけばよかった。
 そうすれば、踏みとどまれたかもしれない。
 そうすれば、もっと素直に。
“勇者”に“救い”を求められたかもしれなかったのに。

「でも……ユーリルくんを殺したのは、わたしだわ」
“生贄”の共感と“英雄”の答えを“勇者”に求めた結果、彼は拠り所を失った。
 無自覚に無遠慮に心に入り込んで、アナスタシアはユーリルのたいせつなものを踏み潰した。
「そんなわたしも、生きていていいのかな? “救われ”ていいのかな?」
「お主がユーリルに何をしたのかは知らぬ。たとえ知っていたとしても、その問いに答えはやれん。
 お主の中に息づくユーリルの想いを、お主自身が汲み取るしかないからの」

 ボロボロになっても、ユーリルはその手で答えを掴み取った。
 たいせつなものを失くして、真っ暗闇に放り出されても、確かなものを手にした。
 あの力強い雷は、確かなヒカリは、その証。
救われぬ者に救いの手を”。
 それこそが“勇者”ユーリルの生き様でありイノリであり祝福である。
 なればこそ、アナスタシアもまた、“救われない”はずがないのだ。
「わたし、話すわ。みんなに、今までのこと」
「うむ、そうか」 
 顔は見えないけど、頷くマリアベルがどんな表情をしているのかありありと想像できる。
「おねーさん。けじめを、つけるのね」
 見上げてくるちょこの目が少し赤い。
 そっと拭って手を離すと、ちょこは嬉しそうに微笑んで、アナスタシアの横に立つ。
「ええ。そうしたらちょこちゃんと――みんなと、もっと仲良くなれると思うから」
「うんっ! がんばって、おねーさん!」
 善は急げと言わんばかりに、ちょこが座ったままのアナスタシアを引っ張って駆け出そうとする。
「元気じゃの、ちょこは」
「うん、ちょこ元気!」
 その元気さが移ったかのように、マリアベルが飛び上がるようにして立ち上がる。
 つられてアナスタシアも立ち上がった、そのとき。

「え……ッ?」

 川に、異変が訪れた。
 突如、穏やかなせせらぎが水量と勢いを増加させていく。
 気温が急激に低下する。
 既に激流となった川に、無数の氷塊が浮かび上がってくる。 
 そして、異変は脅威と転じた。
 溢れだした水――否、氷河は意志があるかのように、溢れ出す。
 掻き分けるとか逆らうとか踏ん張るとか、そんな人の身でできる行為など、激流は許さずに。
 アナスタシアたちを、一瞬にして丸呑みにした。
 圧倒的な質量の凍てつく水がアナスタシアに叩きつけられる。
 等しく全身が殴打されるような激痛に体が反応し、唇が微かに開いてしまう。
 そこへ、凍てつく水が容赦なく侵入してくる。
 気道が塞がれ肺腑が支配され、空気が一気に追い出される。
 吐き気に似た不快な苦しみがアナスタシアを襲うが、苦悶の声を上げることすらできない。
 肌に触れる水は、極寒の地を否応なく連想させるほどに冷たく、一気に全身から熱を奪っていく。
 前触れもなく現れた死が、意識を奪い去ろうとする。

 ――イヤよ。

 だから。
 意識に、楔を打ち込む。

 ――死んでたまるもんですか。

 激流の中、指を動かす。 

 ――こんなところで死んでたまるもんですか。

 流れに負けじと、手を伸ばす。 

 ――これからなの。わたしは、これから始めるの。 

 伸ばした指先が、何かに触れる。

 ――わたしは、生きるのッ!

 それは、無慈悲な水流でも、冷徹な氷塊でもない。
 だから、握り締める。
 強く強く、あらん限りの力を込めて握り締める。
 それに応じるように。
 その手が、握りしめられた。
 直後、靴裏に力が触れる。
 それはアナスタシアを乗せたまま水を掻き分け、一気に浮上する。
 振り落とされる心配などしなかった。
 何故なら、アナスタシアの『手』はしっかりと繋がれている。
 そのまま水面を突破する。
 ひとしきり咽て水を吐き出して、新鮮な酸素をいっぱいに吸い込んだ。
「おねーさん、だいじょうぶッ!?」
 繋いだ『手』の先にいるちょこが尋ねてくる。 
「ええ、わたしは、大丈夫、だけど……」
 何度も何度も深呼吸を繰り返し、絶え絶えになりながら、あたりを見回す。
「マリア、ベルは……?」
 せり上がってきた岩の足場からは、ごうごうと音を立てる水流と氷の群れだけが見える。
 それほど深くはないが流れが速い。
 南から北へと流れる氷河を目の当たりにして、冷えた体に、更なる寒気が走った。
 あの着ぐるみは、間違いなく水を大量に吸収する。
 だとすれば、マリアベルは、まだ――。

「大丈夫なの! だって、この足場はぬいぐるみさんが魔法で作ってくれたのよ!」
 ハッとして、アナスタシアは足元に目を向ける。
 激流の中にあっても、氷がぶつかっても、その足場は崩れることなく確かにそこにある。
 マリアベルが構成したというこの足場が保たれている以上、彼女はまだ生きているということだ。
 けれど、それが完全な安心材料になるわけではない。
 何処かに親友の姿がないか、必死で目を走らせる。
 その目が、動く者を捉えた。

 流れゆく氷の塊の上を跳び移ってこちらへやってくるそれは、

 魔剣を携え、
 人外の姿をした、
 騎士、姿だった。



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131-1:救われぬ者 ゴゴ 133-2なまえをよんで
ちょこ
ジョウイ
イスラ
アキラ
マリアベル
ニノ
ヘクトル
ストレイボウ
アナスタシア
王国暦1998年の紅蛙 カエル
魔王


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最終更新:2011年08月12日 20:22