抗いし者たちの系譜-虚構の物真似師- ◆iDqvc5TpTI



内的宇宙にて、ゴゴは一人、ぼうっと空を見上げていた。
今にも抜けそうな聖剣の柄を抑えること無く、その傍らで空ばかりを見ていた。
空。青い空。
それは、ゴゴ達が取り戻した空だ。
世界崩壊から救ったことで、本来の色を取り戻したはずの空だ。
セッツァーと駆けたはずの空だ。
そのはずなのに。
見上げた空は、ゴゴが愛した空ではなかった。
破滅の光が飛び交う、青碧光の空だった。
ゴゴは知っている、その光が何なのかを。
ハロゲンレーザー。
間接的にとはいえ、ゴゴにアシュレーの命を奪わせた光が、今度はゴゴから、空の思いでさえ奪おうとしていた。

「止めてくれ……。もう、止めてくれ、キャプテンッ!」

叫べども、叫べども、この声は、あの空には届かない。
破滅の光は一条、二条と空に網を張り、空から自由を奪っていく。
あのロボットを駆るセッツァー以外の何者をも、空に上がらせないと言わんばかりに。
鉄巨人は、ゴゴに拒絶を突きつけていく。

「ああ、あ”あ”、あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!」

止めてくれ、もう止めてくれ。
ゴゴにはそう願うしか無かった。
この世界はゴゴの心の世界で、ゴゴが望めばそれこそゴゴは何にでもなれるけれど。
たとえ鳥のものまねをしようとも、たとえ空のものまねをしようとも。
ハロゲンレーザーに蹂躙されるのが関の山だ。
救えない。
ゴゴは自由を奪われゆく空を救えない。
独りぼっちになろうとしている友を救うことができない。

「何が、“救われぬ”者を“救う”物真似をする、だ!
 救われてばかりで、俺は、俺は、俺はあああ!」

所詮これが物真似師の限界なのか。
セッツァーの言うように、物真似師は人様の生き方を盗む三下野郎でしか無いのか。
奪うばかりで、生み出すことも、与えることも、取り戻すこともできないのか。
“勇者”が“救い”を見出した、自身の内的宇宙――“救い”“救われる”世界の再現ですら、今は自身の罪の象徴に思えた。
ゴゴがこれまで奪ってきただけのコレクションにしか見えなくなっていた。
違う、違うんだ。
物真似師とは、自らが選んだ生き方とは、そんな下衆な蒐集家とは違うのだ。
もっと誇らしいもののはずなのだ。はずなのに!

「俺は、物真似師は、所詮その程度の存在なのか!?」

押し寄せる無力感の果てに、友の思考を借りず、自らの意思でなされようとしている自己否定。
それがなされてしまった時即ち、ゴゴの内的宇宙からアガートラームが抜ける時だ。
空っぽの憎悪が、再び虚しい産声を上げる時だ。
そうなってしまえば、もう二度と、ゴゴは救われることはないだろう。
アガートラームを突き立て、イミテーションオディオを封じてくれた勇者は、既にこの世にはおらず。
自身を再起へと導いてくれた友の物真似は、もはやゴゴに光をもたらしてくれはしまい。
だから、
だから。

「――違うな。単に貴様が、三流なだけだ」

辛い現実から逃げ、逃げ場のない心の迷宮で延々と嘆き続けるゴゴの負の連鎖を止めたのは、セッツァーであるはずがなかった。
そうであって欲しいと思いながらも振り向いた先にいたのは、セッツァーと共に、ゴゴをこの世界へと追い詰めた張本人だった。

「魔王……っ。ご苦労なことだな……。こんな果てまで追ってきて、俺にとどめを刺しに来たのか?」

追ってきてくれたのが、まだセッツァーだったのなら、救いはあったというものを。
半ば諦めにも似た気持ちで確認したゴゴに、しかし予想に反して魔王は首を振った。

「今の貴様には俺が殺す価値すらない。あの紅蓮とやらと同じくな」
「そうか……。なら、お前は何をしに来たんだ?」
「貴様の“目を覚まさせに来たのだ”」

露骨な嘲りを前にしても言い返すこと無く、受け入れたゴゴに、つまらなそうに魔王は返す。
絶望に打ちひしがれ気力を失っていたゴゴも、あまりの物言いに、僅かに怒りを取り戻す。

「俺の目を……? 自分から俺に気絶させるほどの傷を負わせておきながら、起こしに来るとは、物好きだな」

そもそも、ようやく会えたセッツァーとの会話を邪魔し、二人の間を引き裂いたのは魔王ではないか。
ほんの僅かな可能性とはいえ、あのままセッツァーと向き合うことができていれば、説得の緒が引き出せたかもしれなかったのに。
けれども魔王は、ゴゴにそんな都合のいいifを抱かせることを許さなかった。

「起こす? 違うな。貴様が起きようが起きまいが知ったことか。
 言ったはずだぞ、俺はただ、“貴様の目を覚ましに来たのだと”」

ゴゴは初めて気付いた。
魔王の言葉の端々には、嘲りや悪意だけでなく、明らかに、ゴゴへの怒りが含まれているということに。
ゴゴには訳がわからなかった。
セッツァーとの再会を邪魔された自分が魔王に怒るのならともかく、何故、魔王が自分に怒っていているのだろう。
生じた疑問をゴゴはそのまま口にする。

「どういう、ことだ?」
「ここまで言っても分からないのか、愚か者が。
 くくく、セッツァーと言ったか? あの鬱陶しい男の言っていたこと、分からなくもない。
 もう一度言おう。今の貴様は三流にも劣る」

取り戻した怒りが、更に大きくなっていくのをゴゴは感じていた。
魔王の口ぶりではまるで自分よりも、セッツァーのことや物真似道を理解しているようではないか。
自分がこれほどまでに悩んでいるというのに、何故よりにもよってこの男に知った口を聞かれなければならぬのだ。

「お前は俺の何を知っている! セッツァーの何を知っている! 物真似師の何を知っている!」
「喚くな、鬱陶しい。エイラでも、いや、猿でもわかるよう分かり易く言ってやろうか」



「――現実を見ろ、物真似師」



「見てる、見ているさ。そんなもの! だからこそ俺はこんなにも苦しんで、こんなにも悩んでいる!」
「ほう? そうかな。俺には貴様が現実から目を逸らしているようにしか思えないのだがな。
 くだらん、実にくだらんな。思い出の中の優しかった日々に逃げ、現実を見ようとしないなどと。
 反吐がでる。いいか、物真似師。……変わるのだ。人間は、変わってしまうのだ」
「ち、違う! あいつは、セッツァーは空を汚したりなんかしない! 
 人と人との絆を嘲笑ったり利用したりするものか!」

誰か変わってしまった親しい知り合いでもいるのだろうか。
魔王の苦虫を噛み潰したような顔に僅かに言い淀むも、それでもゴゴは噛み付いていく。
鬱陶しげに言葉を払い魔王は断じる。

「それは貴様の押し付けだ、物真似師。こうであったらいい。こうあって欲しい。
 そう思うお前の中のセッツァーを押し付けているに過ぎない。
 だからこそ、あの男は貴様のことを、盗人だと嘲笑ったのだろうな」
「それは……」

ゴゴは物真似師だ。
それも外見を模すのではない。
対象の心の内や思考、動作や技術、雰囲気、内面といった存在そのものをそっくり真似るのだ。
少なくとも、ゴゴはそう心がけて物真似を続けてきた。
そして、そう自分にだけでなく、彼の物真似を眼にする人達にも示してきた。
だが、もしも、実際は、ゴゴが、自分に都合のいいように対象を歪めて捉えていたのなら。
しかもその歪められた像を、これがお前なのだと、突きつけていたのなら。
セッツァーの、魔王の言うとおり、それはただの簒奪だ。
尊厳も、誇りも、矜持も、自由も、可能性も奪われて、ゴゴに都合のいいだけの姿を真とされる。
そんな仕打ちは自由を愛し、自らの夢に誇りを持つセッツァーにとっては、耐え難いものだっただろう。
ようやくゴゴは、自分が何故、セッツァーに恨まれていたのかを理解した。

「だが……」

理解して尚、自らの言葉が、ともすればセッツァーの人格を否定する行為だと知って尚、ゴゴの口を衝いて出る言葉があった。

「それでもっ!」

何を言おうとしているのか分かっていても、止めたくない言葉があった。

「俺はセッツァーを信じれるんだ! あんなのはセッツァーじゃねえ! 俺の知っているセッツァーじゃねえ!
 俺の知っているセッツァーは、空が好きで女が好きで賭け事が好きで自由が好きで、そして、そして、そしてっ!」

セッツァーの物真似ではなく、ゴゴ自身の意思で信じられる想いがあった。

「俺と俺の物真似も好きなんだ!」

ゴゴは、言い切った。
悩みがなくなったわけでも、苦しさが消えたわけでもないが、それでも、自分とセッツァーの絆を信じた。

「……くっく」

魔王は、笑っていた。

「くくく」

そう言い切れるゴゴのことを、嘲笑うでもなく、少しだけ羨ましそうに見つめて。

「あああああっはっははっはっっはっはっはっは! よくも恥ずかしげもなくそのようなことを言い切れるな、物真似師!
 そうか、そうか、お前の知るセッツァーはお前とお前の物真似が好きなのか!」

心の底から笑っていた。

「なるほど、なるほどな。ならば」

笑いながらも魔王は、ゴゴが考えもしていなかった可能性を口にする。
セッツァーが変わってしまったと思い込んでいたゴゴの大前提を覆す可能性を。




「あれはお前の知るセッツァーではないのかもしれないな」




ゴゴはあんぐりと口を開け、絶句するしか無かった。
否定するでも聞き返すでもなく、頭が真っ白になって、立ち尽くしていた。

「ほう、どうした? 何がおかしい。他ならぬお前が口にしたのではないか。
 あんなのは俺の知るセッツァーではないと。ああ、人が変わったという意味ではないぞ。
 セッツァーKH2、つまりは別人ということだ」

魔王もその反応は予期していたのだろう。
何事もなかったかのように話を進めていく。
慌てたのは数秒かけて我を取り戻したゴゴの方だった。

「別、人……? そ、そんなっ、馬鹿なっ。あれはセッツァーだ、紛れも無くセッツァーだ!
 別人なわけがない……。それこそ、それこそ現実を見ず、逃避しているだけに過ぎないじゃないか……」
「豹変してしまった誰かに、変わる前の思い出を元に縋るのは、言うまでもなく見るにも耐えない愚かな行為だ。
 だがな。よく似ているだけの全くの別人を、フィルターにかけて本人だと見るのもまた、同じくらいに愚かではないか?」
「そ、それは、そうだが……」

魔王の言葉を反芻しつつも、否定を重ねていくゴゴ。
しかしその都度言い負かされ、次第に語気が弱くなっていく。

(本当に、本当に、別人なのか……?)

荒唐無稽な話だが、魔王の言うとおりならつじつまが合うのは事実。
なまじユーリルの埋葬に際して、アキラからシンシアのことを聞いていただけに尚更だ。
ユーリルの家族だったという少女は、他人に化ける魔法を用いて、騙し討ちを繰り返していたという。
ゴゴがセッツァーだと思っている人間も、詰まる所その手の魔法で化けた偽物だというのだろうか。
いや、だがしかし。

「別人というにはあまりにも、あのセッツァーは本物に似すぎている……」

ゴゴが知るセッツァーとの間に幾許かの齟齬は生じてはいるが、それを抜きにすればセッツァーそのものなのだ。
だからこそ、物真似による先読みで、セッツァーの魔の手からヘクトル達を救えもした。
納得しきれないと首を傾げるゴゴ。
煮え切らぬ様に魔王は頑固頭めと一度大きくため息を吐き、核心へと斬り込んだ。

「――ふん、では確認だ。
 一つ聞こう、さっき俺はそのセッツァーのことを、貴様の知るセッツァーではないと推測したが。
 セッツァーの方はどうだったのだ? 奴は貴様を知っていたのか?」
「――っ!」

ゴゴが目を見開く。

「その様子だと知らなかったようだな。確定だ。
 そいつは貴様の知るセッツァーでもなければ、貴様を知るセッツァーでもない。
 ほぼ確実に、貴様を知る前の、貴様と出会う前のセッツァーだ」
「俺を……知る前の……!? そんな、そんなことが!」

あり得るのではないか。
ゴゴとて時を止める魔法があることは知っている。
道中聞いた話だが、ちょこに至っては時を繰り返し閉じ込めるという過ちを犯したことがあるらしい。
魔王の娘にさえ、それだけのことが可能なのだ。
オディオが、魔王と呼ばれるほどの存在なら、別の時の人間を集めることも可能なのではないか。

「信じる信じないは勝手だが、この世には、タイムマシーンなどという魔法をも凌駕した発明をする女もいる。
 ……もっとも、あいつなら、こんな悪趣味な使い方はしなかったがな」

発明という言葉から、ゴゴの脳裏を、メガネをひっかけた少女の顔が過る。
少女と共にいられた時間は僅かで、タイムマシーンの話なんてできなかったけれど。
ゴゴの世界には時を止める魔法があった。
あの聡明な少女なら、その原理を研究して、タイムマシーンを作り上げ、時を超えて人助けをしていても不思議ではない。

「……当たり前だ。ルッカは優しかった」
「なんだ、貴様もあの女の知り合いだったか。
 ……ふん、そんなこと、貴様に言われずとも、貴様以上に知っているさ」

ゴゴは、初めて、魔王がどこか楽しそうな表情を浮かべるのを見た。
それは笑顔というには程遠い不恰好なものだったけれど。
何故だかゴゴは、魔王のその笑顔の物真似をしたくなった。

(ああ、そうか。俺は物真似師なんだ。
 だったら物真似をすればいいじゃないか)

ゴゴは目を閉じ、深く息を吸い、精神を集中させる。
確かに魔王の言ったとおりだ。
自分は、現実を見ていなかった。
それでは三流だと言われるのも当然のことだ。
実物の声や仕草、雰囲気、心情までをそっくりそのまま真似することこそ、物真似なのだ。
現実をありのままに見て捉えることは、その為に必要不可欠な第一歩ではないか!

ゴゴは物真似をする。
ここはゴゴの心象風景――ゴゴが為して来た全ての物真似が集う場所だ。
花が、蝶が、闇が、光が、空が、大地が、ここには全てがあった。
ゴゴという存在がその全てを賭けて物真似しつくしたありとあらゆる存在があった。
空を蹂躙する鉄巨人――マーダーセッツァーもその一つだ。
暴走した感情のままに無意識でなしたこの島でのセッツァーの物真似だ。
今からゴゴが意識してなす物真似は、共に空を飛んだセッツァーのものだ。
物真似をなした所で、もしそのセッツァーが本当に、マーダーセッツァーと同一人物なら。
キャプテン・セッツァーの直接の、延長上がマーダーセッツァーであるのなら。
キャプテン・セッツァーは自然とマーダーセッツァーへと変わりゆくだろう。
だがもしも、キャプテン・セッツァーの延長上にマーダーセッツァーがいなかったら。
魔王の言う通りだったのだとしたならば。

「そうだ、ゴゴ! 俺の物真似をしろ!」

果たしてその声は、物真似によるものだったのか、幻聴だったのか。
それはゴゴにも分からない。

分からなくとも、信じることはできる。
不甲斐ない副船長を、船長が叱咤してくれたのだと。

その証拠にどうだ。
轟音が鳴り響き、空を我が物顔で占領していた鉄の巨人が爆発したではないか。

「――は」

ゴゴの口から空気が漏れる。
何が起こったのか分からない、そういう顔ではない。

「はは、」

何が起こったか分かったからこそ、ゴゴは、笑うのだ。

「ははははは!」

見上げる空に、それはいた。

「はははははははははははははは!」

破滅の蒼光を難なく追い抜いて、巨大ロボットを爆撃した世界最速の飛行船がそこにいた。

「ああ、そうだ、そうだよな! 全く、お前の言うとおりだ、魔王!
 俺はどうにかしていた! 確かにこれじゃ三流も甚だしい!
 最初から、こうしておけばよかったんだ。
 俺は物真似師なんだ。迷うことがあれば、物真似に聞けばよかったんだ!」
「物分りの悪い奴め。手間をかけさせてくれる……」
「悪かった、本当に悪かった。礼を言わせてくれ、魔王。
 お前は本当に、“俺の目を覚まさせてくれた”。
 あのセッツァーと、鉄の巨人と対峙して以来曇りっぱなしだった俺の目をだ!」

何が物真似師の限界だ、何が所詮は盗人だ!
限界だったのは、物真似師という在り方ではなく、さっきまでの自分自身ではないか。
物真似師を盗人にまで貶めてしまっていたのは、ゴゴ自身じゃないか。
違った、違ったのだ。
物真似は、尊厳も誇りも矜持もない空っぽな虚像を写し取ることなどではない。
真の物真似とは、相手のすべてを認めること。
尊厳には尊重を、誇りには敬意を、矜持には遵守を。

(俺が誰を真似するのかは俺自身が決める……ならば!)

一度物真似をすることを選んだのなら、相手の全てを見つめ、読み解き、認め、受け入れろ。
その覚悟も心構えもなくば、物真似をしようとするな。
それこそが物真似師に求められる、ただ一つの一線。
ゴゴが求めてきた物真似の始原にして境地!

「今こそ、今こそもう一度俺は名乗ろう。俺は、ゴゴ。物真似師だっ!!」

宣言と共にアガートラームを掴む。
勇者でも英雄でもない物真似師なれど。
ユーリルの物真似をするでもなく、アシュレーの物真似をすることもなく、ゴゴは聖剣の柄を押し込んだ。
今の彼には想いがあった。
目を覚まし、今度こそ、真にあの“セッツァー”と、現実と向き合うのだという決意があった。
物真似でなしてしまった非礼は、物真似で詫びる。
物真似で奪い去った物真似は、物真似で返す。
ゴゴは二人の“セッツァー”を混濁することで多くのものに泥を塗ってしまった。
あの空を共に駆け、ゴゴを友と呼んでくれた“セッツァー”。
この地で悩んで、考えて、傷ついて、選んだ“セッツァー”。
そして、何よりも自らの生き様である物真似を穢してしまった。
終われるものか。
このまま終わってなるものか。
終わっていいはずがない!

「行くぞ、魔王! セッツァーに会いに!」

抜けかかっていた聖剣を押し込んだ以上、もうこの世界で出来ることは何もない。

「……その前に、アク……ちょこ達を救ってやれ。お前が呑気に寝ている間に厄介なことになった。
「“救われぬ”ものを“救う”という物真似をするのだろ?」
「ああ、なしてみせるさ、一度選んだ物真似だ! 真に真似尽くして見せる!」

ちょこ達がピンチだというのなら、尚更早く目覚めないわけにはいかない。
幸い、身体の方もちょこの看病で幾許かの力は取り戻していたようだ。
覚醒しようとする宿主の意思に答えて、ゴゴの意識が外界より刺し込む光に導かれ浮上していく。
けど、浮かび上がっていくのはゴゴ一人だった。
魔王は浮上すること無く、どころか、光となり消え始めていた。

「ま、魔王……その身体はいったい!? いや、それよりも、この手に掴まれ!」
「不要だ。俺の身体はお前の内的宇宙に潜る間際に、既に死に絶えていた。
 俺の魂を降魔儀式で直接お前にダウンロードしたおかげでここまでなんとか保っていたのだがな。
 ふん、貴様が不抜けたままなら、そのまま身体も乗っ取れたものを。……まあいい」

本気だとも冗談だとも取れないことを口にしつつも、魔王は首から下げていたペンダントを外す。
消え逝く中、僅かな間大切そうに握りしめたそれを、魔王はゴゴの方へと放り投げた。

「癪だがお前に懸けるぞ、物真似師。お前の中で生きる物真似として生き続ける“俺”に懸ける。
 “俺”に、“魔王”に、この“ジャキ”に! 見事姉を救わせてみせろ、ゴゴ!
 それが俺にとってのせめてもの“救い”にもなるのだからな……」

慌てて、ジャキへと差し伸ばしていた手でペンダントを受け取るゴゴ。

「ジャ、ジャキィィィ!」

叫びと共にゴゴが目を覚ました時、ゴゴに覆いかぶさり、左手でペンダントを握りしめたまま魔王は息を引き取っていた。



【魔王@クロノトリガー 死亡】
【残り12人】


【C-7とD-7の境界(C-7側)二日目 午前】

【ゴゴ@ファイナルファンタジー6】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、首輪解除、アガートラーム 右腕損傷(大)
    真・物真似師
[装備]:ブライオン@ LIVE A LIVE 、ジャンプシューズ@WA2
[道具]:基本支給品一式×2(ランタンはひとつ)
[思考]
基本:物真似師として、ただ物真似師として
1:見せてやる、そして魅せてやる、真の物真似を !
2:“救われぬ”者を“救う”物真似、やり通す”

[参戦時期]:本編クリア後
[備考]
※本編クリア後からしばらく、ファルコン号の副船長をしていました。
※基本的には、『その場にいない人物』の真似はしません。
※セッツァーが自分と別の時間軸から来た可能性を知りました。
※内的宇宙に突き刺さったアガートラームで物真似によるオディオの憎悪を抑えています
 尚、ゴゴ単体でアガートラームが抜けるかは不明ですが、アガートラームに触れても、想いは喰われつくされないようです
※魔王の死体及び、魔鍵ランドルフ(機能停止中)@WILD ARMS 2nd IGNITION 、サラのお守り@クロノ・トリガーが周囲にあります。


(【C-7とD-7の境界(C-7側)二日目 朝】)
【ちょこ@アークザラッドⅡ
[状態]:ダメージ(中)、疲労(大)、覚醒
[装備]:なし
[道具]:海水浴セット、基本支給品一式×2、ランダム支給品1~2個(確認済み)、焼け焦げたリルカの首輪
[思考]
基本:みんなみんなおうちに帰れるのが一番なの
1:アナスタシアさんを、みんなを死んでも護り抜く
[備考]
※参戦時期は本編終了後
※殺し合いのルールを理解しました。トカから名簿、死者、禁止エリアを把握しました。
※アナスタシアに道具を入れ替えられました。生き残るのに適したもの以外です。
 ただ、あくまでも、『一般に役立つもの』を取られたわけでは無いので、一概にハズレばかり掴まされたとは限りません。

アナスタシア・ルン・ヴァレリア@WILD ARMS 2nd IGNITION】
[状態]:ダメージ(大)、疲労(大)、胸部に重度刺傷(傷口は塞がっている)、中度失血
[装備]:聖剣ルシエド
[道具]:ゲートホルダー@クロノトリガー、いかりのリング@FFⅥ、、感応石×3@WA2
    基本支給品一式×2、にじ@クロノトリガー、
[思考]
基本:“自分らしく”生き抜き、“剣の聖女”を超えていく。
1:問答無用のハッピーエンド、どーんっと行こう!
2:ゴゴを護り、ゴゴを助ける。
[参戦時期]:ED後
[備考]:
※ルッカのカバンには工具以外にもルッカの技用の道具がいくらか入っています
※アナスタシアの身にルシエドが宿り、聖剣ルシエドを習得しました。数も増やせます。
 アガートラームがないため、『アークインパルス』『ブレードグレイス』『サルベイション』は使用不可です。
 他、ルシエドがどのように顕現し力となるかは、後続の書き手氏にお任せします。
※昭和ヒヨコッコ砲@LIVE A LIVE、マタンゴ@LIVE A LIVE、ルッカのカバン@クロノトリガー
 44マグナム&弾薬(残段数不明)@LIVE A LIVE、アリシアのナイフ@LIVE A LIVE、ソウルセイバー@FFIVは周囲に散乱しています。


カエル(紅蓮)@クロノ・トリガー】
[状態]:『書き込まれた』炎の災厄 『覚悟の証』である刺傷。 ダメージ(中)疲労(中)胸に小穴 自動回復中
[装備]:紅の暴君@サモンナイト3 フォルブレイズ@FE烈火の剣
[道具]:基本支給品一式
[思考]
基本:国の消滅を回避するため、全てを燃やし尽くす
1:無駄だ、何度でも呼び出すまでッ!
2:俺は、俺は……
[参戦時期]:クロノ復活直後(グランドリオン未解放)
[備考]
※イミテーションオディオの膨大な憎悪が感応石を経由して『送信』された影響で、キルスレスの能力が更に解放されました。
 剣の攻撃力と、真紅の鼓動、暴走召喚に加え、感応石との共界線の力で、自動MP回復と首輪探知能力が付与されました。
 感応石の効果範囲が広がり、感応石の周囲でなくとも限定覚醒状態を維持できます。(少なくともC7までの範囲拡大を確認)
※死亡覚醒による強制抜剣によって紅の暴君に残留していた焔の災厄の残滓が活性化し、その記憶がカエルに混入しました。
 ロードブレイザーが復活したわけではありませんが、侵食が進めば更なる悪化の可能性があります。
※カエルフレアは、暴走召喚の効果により、魔力が供給される限り倒されるまで現界します。魔力があるかぎり再召喚も可能です


【ジョウイ・ブライト@幻想水滸伝Ⅱ】
[状態]:気絶のフリ ダメージ(大)、疲労(中)、全身に打撲
[装備]:キラーピアス@DQ4、絶望の鎌@クロノ・トリガー 天命牙双(左)
[道具]:賢者の石@DQ4、確認済み支給品×0~1、基本支給品
[思考]
基本:垣間見たオディオの力を得て理想の国を作るため、他者を利用し同士討ちをさせ優勝を狙う。(突出した強者の打倒優先)
1:さよならだ、魔王。……僕はどうする?
2:生き残るために利用できそうな者を見定めつつ立ち回る。
3:セッツァーたちの様子を窺いつつ立ち位置を決める。ピサロは潰しておきたいがどうするか。
4:利用できそうな者がいれば共に行動。どんな相手からでも情報は得たい。
5:とりあえず首輪解除の鍵となる人物は倒れたが、首輪解除を確実に阻止したい。
[参戦時期]:獣の紋章戦後、始まりの場所で2主人公を待っているとき
[備考]:ルッカ、リルカと参加している同作品メンバーの情報を得ました。WA2側のことは詳しく聞きました。








ゴゴの内的宇宙にて、物質世界より解き放たれたジャキの魂は、共界線を辿り、原初の土を超えて、星の根へと辿り着きました。
もはや死した身です。
魂も共界に溶け始め、ジャキとしての意識も碌に保てていない有様でした。
ですが、その存在のことだけは、忘れるはずがありませんでした。
宿敵であるカエルから、既にその存在を仄めかされてもいましたし、ジャキは特に驚きはしませんでした。
むしろ、これまでがそうだったのだから、最後の時もそうなのだろうと、どこかで予感していたのかもしれません。





「……そうか。やはり貴様か、ラヴォス」




こうしてジャキは、これまでの敗者たち同様、その死をラヴォスに喰らわれました。
最後の最後、自らの死まで、ジャキはラヴォスに奪われたのです。


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140-2:抗いし者たちの系譜-逆襲の魔王- アナスタシア 142-1:為すべきを成すべき時 -Friend's Fist with Brave-(前編)
ジョウイ
ちょこ
ゴゴ
カエル
魔王 GAME OVER



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最終更新:2012年04月10日 13:16