『猿を探せ!』
朝の空気は夜よりも冷たく湿っていた。
高層ビルのガラス面が薄く光を反射している。
時計の針は律儀に動き、ゲーム開始からすでに数時間が経過していた。
夏油傑はその時間の重さを自分の靴底に感じながら歩いていた。
ソリテールと別れてから、どれほどの距離を歩いただろう。
渋谷の街を夏油は黙々と進んでいた。
手持ちの呪霊も使って探索範囲を広げている。
それでも誰も見つからない。
参加者は90名近くいる。すでに殺し合いをしている者もいれば、グループを組んだ者もいるはずだ。
なのに日が上り始めるこの時間まで夏油は誰一人として遭遇できていなかった。
「どこにいる、猿ども」
苛立ちを滲ませた声が空の街に吸い込まれていく。
夏油の足音だけがアスファルトを規則正しく叩いていた。
コンビニの自動ドアは反応せず、シャッターの下りた飲食店のガラス越しに無人のカウンターがぼんやりと見える。
ソリテールに首輪を回収してこいと指示しておきながら、自分は一個も持ち帰れないまま合流するわけにはいかない。
「どこだ、猿」
夏油は立ち止まりスマホを取り出した。
地図アプリを拡大して自分が歩いてきたルートを確認する。
時間は有限だ。48時間以内に優勝者が決定しなければ首輪が爆発する。
その制限時間の8分の1が既に経過しようとしている状況だ。
夏油はスマホをポケットにしまい再び歩き出した。
靴音が単調に響く。何もいない。誰の姿もない。
折角殺し合いをする気満々なのに肝心の相手がどこにも見当たらない。
まるで自分だけがこのゲームから取り残されているような錯覚すら覚える。
「出て来い、猿ども」
苛立ち混じりに呟くと夏油はビルの影に身を寄せた。
少しだけ息を整える。
その時だった。
ポケットの中でスマホが電子音を発した。
夏油は素早く端末を取り出し画面を見つめる。
運営からの通知だった。
それを開くと現時点でマップに表示されていない施設の名称と位置情報が記されていた。
A-5 ワイルドハント詰所
B-6 雄英高校
C-4 キュアット探偵事務所
D-7 大洗女子学園
E-3 ジェダイ・テンプル
F-6 東京都立呪術高等専門学校
G-5 八神探偵事務所
H-4 穂群原学園
『一部端末に施設の位置情報が誤って先行配信されました。』
『この情報は第一回放送後に全参加者のマップに追加されます。先行配信された方はそのまま破棄してください。』
夏油は画面を凝視したまま動かなかった。
これが本当に運営のミスなのか。それともゲームに乗っているにもかかわらず運悪く朝まで参加者と遭遇できなかった夏油へのお情けなのか判断はつかない。
だが結果として他の参加者に先んじて施設の情報が手に入った。
定時放送後、マップに新たな施設が追加されれば猿共の中にはそこへ向かう者が出てくるだろう。
先にそこに入り待ち伏せをする。あるいは施設そのものを占拠する。どちらにしても優位に立てる。
「……ようやく猿を見つけられる」
小さく呟くと夏油はスマホをしまい方向を変えた。
夜明けの空の下を夏油は歩き出す。
これまで数時間誰とも遭遇できなかった。
その不運は確かに腹立たしいが、自分のスマホには施設の情報が先行配信された。
運営が意図的に撒いた餌なのかもしれないが、出遅れを取り戻すためにも乗るしかない。
夏油の足音が再びアスファルトを刻み始めた。
【G-4 /早朝/1日目】
【夏油傑@呪術廻戦 懐玉・玉折】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~3
[思考]:優勝する。
1:先行配信された施設に向かい猿共を殺す。
2:ソリテールとは合流時間、場所を決めた上で別行動。
3:一先ず合流時間まで参加者を殺害する。
4:ソリテールの成果次第で今後の扱いを判断する。
5:比名子(あの少女)、呪霊の食いつきが良かったが……。
※両親殺害後、五条の元から立ち去って以降の参戦です。
※ 合流場所、時間は後続の書き手にお任せします。
最終更新:2026年10月03日 10:01