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『バトルマニア』






「……奥深いな。男と女というものは」

げっそりとした猫猫をよそに、エスデスは肌を艶々とさせながら満足そうに微笑んでいた。
ヒソカ=モロウが単独行動を始めてから数分後、手近な住宅に入り猫猫はエスデスに慈悲を乞うた時に持ち出した、女の園の秘術を伝えていた。

「拷問にも通じるな。ようは人体を効率的に痛めるか、愛撫するかの違いだ」

たっぷりと二時間ほど。
エスデスの呑み込みは早かった。早すぎるあまり、猫猫の体が”実験台”にされてしまったのは言うまでもなく。
マラソンを走り切ったランナーのように、髪を汗で濡らし顔を真っ赤にした猫猫はぜえぜえと息を吐いている。

(満足はしたようだが……)

想像を絶する責めに、猫猫は最早圧倒されるしかなかったが、体を張った甲斐はあり、エスデスの期待には沿えたよう────

「だが、性に合わん」

安堵しかけた猫猫の背筋に悪寒が走る。

「この私が、奉仕するというのは」

(……)

猫猫が伝えた秘術は、女が男に尽くすやり方だった。
だがエスデスは名の通り自他ともに認めるサディスト、責めるのは好みだが相手に尽くすのは好みではない。
今のエスデスと猫猫の関係は、エスデスが気まぐれを起こせばすぐさま破綻するものだ。
この秘術が役に立たないというだけで、あっけなくエスデスは猫猫を殺すだろう。
ヒソカが傍にいればまだしも肝心な時にいないのを恨めしく思いながら、エスデスの機嫌を損ねてしまったのか、脳内で無駄な検証を始め、そうでないのを祈るしか猫猫にはできない。

意中の男というから、相思相愛になりたいのかと思えば、エスデスの性根は何処までもサディスト。

「やはり、力で屈服させてこそだ」

凜としたセイバーの顔を辱め歪めて、そして手に入れる。

「フフ……セイバー……」

昂るエスデスの表情に、明確な殺意が宿り出す。

「さて薬屋」

猫猫へ。

掌が向けられた。

(……元より、ただの口約束……こっちが話すことを話せば、生かす価値はないが……)

エスデスに対して猫猫が抵抗する手段は皆無。
ヒソカさえいればと脳内で反芻するが、未だに帰ってくる素振りはない。
こんな事なら、あんな奴の慈悲を乞わなければ良かった。
好き勝手にやって、何処に居るんだか。
半ば呆れながら、心の中で毒づく。
猫猫は観念したように目を瞑り、やはり最期に思い浮かんだのは……毒のことだった。
やはり死ぬのなら、毒で死にたかった。


「邪魔だ」


服の襟を掴まれ、エスデスに引き寄せられるとそのまま後方へ投げられる。
空中で一回転してから、ゴロゴロと地面を転がっていく猫猫。
なんだ。普通に言えば退いたのに、心の中で文句をつけながら服に付いた土を払ってエスデスを見上げる猫猫。

「なに、を……」

音もなく、エスデスの前に一人の男が現れた。
エスデスに向こうとしていた視線は、そちらに引き寄せられる。
青いコートに白い柄の刀を握り、髪を逆立てた男。
剣呑な雰囲気を帯びた男が、流れるように歩んでくる。

「ッ……」

猫猫は戦士ではない。卓越した知識を持つとはいえ、所詮一介の薬屋。
人を見て、その強さを測れるような慧眼はない。
だが、一目見て格の違いを思い知らされた。
エスデスと同格かあるいはさらにそれ以上の実力者。
歩き方一つとっても隙がなく、猫猫では到底太刀打ちの出来ない強者。
全身が総毛立ち、警鐘を鳴らしていた。今すぐこの男から逃げろと、体の全てが叫んでいる。
だが、身動きが取れない。
一度動けば、あの手にある刀で真っ二つに引き裂かれる。そんなイメージが拭えず、ただじっとしながら額に脂汗を滲ませた。

ふ、と。
数秒間の緊張から解放され、猫猫はようやく体の自由を取り戻した。
男の意識が完全にエスデスの方へ向けられたからだった。
猫猫は、既に男の視野の外に排斥されている。

「丁度、昂っていたところだ。お前に相手をしてもらおうか」

ぎらついた殺気と歓喜。
エスデスの周りの空間が、陽炎のように揺らめいたと猫猫は錯覚する。

「あいにく、俺も燻っていたところだ。貴様を斬り先の鬱憤を晴らすとしよう」

恐らく、猫猫がまともに浴びれば身動き一つとれなくなっていたであろう殺気を浴びせられながら、男は涼しい顔で口を開いた。

「エスデスだ。名は?」
「バージル」

二つの殺気が奔流となって激突する。

────キン!

刹那、バージルが腰を落とした。左手で腰に添えた刀から甲高い音だけが響く。
猫猫の視線の先には何もない。そこに居たはずのエスデスは消え、後から猫猫の前髪が数本ヒラヒラと地面に落ちてゆく。

(斬……、た……のか……? あの場から動かずに)

理屈など知らない。いつ抜刀したのかも分からない。
だが、分かる。バージルは斬ったのだ。
猫猫の眼前スレスレを。
それがどのような技術で、どれほどの研鑽を積んだのか、想像もつかないが。
完全に別次元の戦いだった。猫猫が割って入る余裕はない。
いつでもブックと『本』を呼び出せるようにしていたのを見破られた。
猫猫にとってみれば、ヒソカが不在の今、エスデスが唯一の命綱だ。
この戦いで彼女が殺害され、または戦闘不能に陥ったとして、バージルが猫猫を袖にもかけず立ち去ろうが、次に会った殺戮者には呆気なく殺されてしまうだろう。
そうならないようにと、身構えていたのだが。

これは警告だ。

横槍を入れれば、真っ先に猫猫を殺すというバージルからの。

「言ったはずだ薬屋、邪魔だとな」

猫猫の背後から、エスデスから冷ややかに声が浴びせられた。
バチバチに殺意をぶつけ合っておきながら、この瞬間だけは意見が合致したようだ。
二つの視線が猫猫に収束する。

「分かりました。……どうぞ、お二人でご自由に」

半ば投げやりに答えながら、戦いに巻き込まれないよう猫猫は走って二人から遠ざかる。
ああ、もう好きにやってくれ、そう心の中で猫猫は吐き捨てた。


「これで思う存分楽しめるな、バージル」


悠然と歩を進めるエスデスに対し、バージルは弧を描くように間合いをずらしていく。
互いに視線は外さない。
一歩ずつ、ただ歩むだけの行為が繰り返される。
二人は相手の呼吸すら読み取ろうとするかのように、静かに出方を窺っていた。
既に、駆け引きは始まっている。

先に動いたのは、エスデス。

一瞬にして大気中の水分を凍結させ、彼女の後方を覆うように氷の槍が無数に作り出される。
投槍兵のいない無人の槍が、意思を持たされたかのように投げ放たれる。
対するバージルは佇む。一歩もその場を動こうとはせず、殺到してくる槍を見据えた。
静かに身を揺らし、紙一重で槍を避けていく。そうして、ようやく歩を進めた。
コツンと靴音を鳴らしながら、意に介する事もなく槍をいなして、エスデスへと肉薄し、バージルが掻き消えた。

(速い)

エスデスの腕が持ち上がる。
頬とバージルの閻魔刀の間に、エスデスの氷のサーベルが滑り込んだ。
瞬きする暇すらない。帝国最強と謳われた将軍エスデスですら、先の一斬に目が追いつかなかった。
防御が間に合ったのは、豊富な戦闘経験から動きを先読みしたからに過ぎない。
読みが外れていれば、首と胴体が別れを告げていたことだろう。

「面白い!」

緊迫する戦況、決して余裕があるとは言えない状況を鑑みても、エスデスは心から無邪気な笑みを溢した。
意中の相手──セイバーを前にして、これ以上の戦場に巡り合うのは難しいと半ばあきらめていた矢先に、セイバーに勝るとも劣らない強者に出会えたのだ。
正面からの突きをサーベルの腹で流し、エスデスはもう片方の手に握った二本目のサーベルを振るう。
バージルが、腰から斜めに突き上げるように肩まで引き裂かれる。しかし、血は一向に出ない。
すると、エスデスの目に写ったバージルの姿が淡く蒼い光となって消え失せた。
エスデスが斬ったのは、高速で動くバージルの残影。
次の瞬間、蒼き剣閃がエスデスを四方から包囲する。
逃げ場を塞ぐように、無数の幻影剣が一斉に牙を向いた。
エスデスはその場で屈み、手を地に付ける。
氷の柱が生成され、凄まじい速度でエスデスを上空へと押しやった。
幻影剣は根元に突き刺さり、すぐさま支えを失った柱は傾いていく。
柱から飛び退こうとし、エスデスは振り返った。
バージルが跳躍し、刀を振るう。閻魔刀が眼前を過り、エスデスは激しく身を躍らせた。
そのまま空中を滑り、エスデスは指を鳴らす。
氷の柱に亀裂が走り一瞬にして爆散する。飛び散る破片は散弾となって、バージルを襲う。


────キン!


閻魔刀から鳴り響く、柄と鞘がかち合う音。
比喩抜きに、バージルの周囲の空間が歪む。
大気が悲鳴をあげたかのような異音を木霊させ、球体状となった斬撃の集合体が広がった。
煌めく剣閃は氷の散弾を全て細切れに弾いた。

「こんなものか? 少しは、俺も楽しませろ」

着地したエスデスの正面から、バージルの声が低く響いた。

バージルから蒼い魔力が迸る。
雷光めいたスパークがその身を包み込み、その姿は人のそれから魔人へと変貌する。
魔の鎧に覆われたバージルが風を裂く。凄まじい速度で螺旋を描きながら、蒼の残光を残し、エスデスへと突撃した。
エスデスの前面には氷の防御壁が張られている。
幾重にも重なり凝縮された氷結は鋼鉄すら凌ぐ強度と尋常ならざる密度を誇り、それはまさしく何物をも通さぬ氷の城壁。
氷結城の最深部に君臨する女王を守るべく、極寒の冷気を纏いながらバージルの前に立ちふさがる。


「ッッ……!!!」


轟音が炸裂した。

(即席の氷(けん)では、受け切れん!)

氷の城壁を穿ち、一直線にバージルはその最深部へと到達する。
煌めく二閃の斬撃。
エスデスは氷のサーベルを手放し、自身のデイパックから一振りの得物を取り出した。
大業物21工の一振りに数えられる名刀『秋水』。
恐竜に踏まれようとも一ミリも曲がらないという硬度を誇る黒刀。
一目見て、その優れた性質を見抜いたエスデスではあったが、慣れぬ異国の剣であるが故に使う気にはなれずにいた。
だが、最早悠長な事を言っている場合ではない。
バージルの剣戟を受けるには、この名刀の強度に頼らざるを得なかった。
螺旋するバージルの勢いを殺しきれぬまま、秋水の峰に手をやりエスデスは力のあらん限りを込める。
飛散する火花、強固な金属同士が激突し、刀の腹が摩擦熱で赤く染まる。

「ぐ、……ッ!!?」

エスデスは大地と別れを告げ、その身を虚空へ放り出される。ビルの壁面へと激突し、大きなクレーターが刻み込まれた。
コンクリートの破片が雨となり降り注ぎ、鉄骨が剥き出しになり、中にあった様々な設備が砲弾となったエスデスと激突し吹き乱れる。
エスデスは秋水を地面に突き立て、自身の体に掛かった慣性を強引に殺す。
蒼の残影が煌めいた。
閻魔刀の切先が、秋水の刀身に突き刺さる。
エスデスが斬り返す前に、バージルが一歩下がり、下からの切り上げを神速で繰り出した。
刀の柄で防ぎ、エスデスは氷山を目の前に呼び出し、バージルから距離を取る。

「良い剣だが、使い手には恵まれてはいないな」

閻魔刀が煌めく。
氷山が縦に真っ二つに切り裂かれた。
再び鞘に収まる閻魔刀、次の瞬間抜刀され、間合いを縮めるバージル。
その動きを先読みし、滑り込ませた秋水からエスデスへ衝撃が伝う。

(防ぎきれなかったか……)

エスデスの肩の皮膚が裂け、血が噴き出した。

(やはり重いな、この剣)

秋水は高い強度と引き換えに、重量というデメリットが存在する。
もっとも、エスデスの人間離れした膂力をもってすれば、決して扱えない刀ではないはずだった。
相手がバージルでさえなければ。
スピードでは完全にエスデスが劣っているバージルを前に、その僅かな重さから生じるタイムラグが命取りになる。
重量というデメリットを帳消しにする剣の技量を、エスデスは持ち合わせていなかった。

「全く、楽しませてくれる奴だな。バージル!!」

セイバーに匹敵、それに勝るとも劣らぬ剣豪。少なくとも速度だけならば確実に上。
エスデスは歓喜に満ち、やはり笑った。
窮地に陥っているのを自覚しながら。
即席の氷では、恐らくバージルは容赦なく切り裂く。
では、硬度を高めた氷は? バージルを退けるほどの濃密度な氷を作るには相応の時間が掛かる。
奴にとっては、欠伸をする暇すらあろう程の時間が。
ならば、氷の槍や氷弾の弾幕で、遠距離からの攻撃は?
これもやはり否だった。
まるで飛び道具を使う相手を想定しているかのように、バージルは精密かつ超速度の動きでもって全てを避け、氷の柱を爆散させて作りだした散弾も刀一本で弾いてみせた。
距離を稼ごうものならば神速の居合で詰め、飛び道具は効かない。
確実に、近距離戦闘を強いり、白兵戦で敵の息の根を止める事を徹底した戦術。

「厄介極まりないな、お前は」

敵に対しての、最大の賛辞を送りながら、エスデスは血の流れる肩を凍結し止血した。
さあ、どうやってあの強敵を屠ろうか、こんな風に戦い方を考えるのはいつ以来か。
蹂躙は楽しいが、たまには窮地に陥るというのも悪くはない。


「先に礼を言っておこう。その剣技を捻じ伏せれば、セイバーを私の物にするヒントが掴めるかもしれん」


魔人から人の姿へと戻ったバージルを見定める。
セイバーに匹敵しうる剣士、本命を狩る前の予行演習には丁度いい。


「奴の剣と比較しても、お前の剣は遜色ない……」


愉快そうなエスデスに対して、バージルは眉を顰めていた。

「……愚かだな。その浮ついた剣では俺には永遠に届かん」

その表情には、興を削がれた苛立ちがありありと浮かんでいる。

「全てを捨てて、そして力を求めろ。強さとはそういうものだ」

まるで、恋する乙女が憧れの人を思い浮かべ、友人に惚気話をするかのようなエスデスに、半ば呆れ気味にバージルは言う。

「妙な事を言うな。
 何故、強者が捨てる必要がある」

つまらん男だな、エスデスはそう吐き捨てていた。

「勝てば全てを手にし、負ければ全てを失う。それが戦いだ。
 戦いの規模が上がれば上がるだけ、戦火が広がれば広がるほど、己の命も、尊厳も、部下、国……あらゆる物が背に圧し掛かるものだろうに。
 勝利を重ねれば重ねるほどに、嫌でもな……。それを貴様のような強者が、全てを捨てろと言う」

バージルへ強さに対する敬意を送りながらも、理解できんとでも言いたげな顔で。

「捨てなければならんのは、いつだって淘汰される弱者だ。──お前……目の前で誰かを、死なせたクチか?」

その言葉に、バージルの眦が鋭く吊りあがる。
エスデスの長年にわたり養われた観察眼が活きた。特に、軍人にはありがちな話だ、目の前で戦友を亡くしトラウマとなるのは。
共感はできないが、そういった精神的な疾患があるのは理解している。
故に、バージルの僅かな反応から、エスデスは確信を得た。



「つまらん事に拘るな。そいつが弱かっただけの話だ。この世は弱肉強食、弱者であることは罪と言ってもいい」


「ッッ!!!」



閻魔刀の鞘を握る、バージルの左手がみしりと音を立てて軋む。



────But still, the fragile seeds wait long for the sun to shine……



バージルの脳裏に、遥か昔に置き去りにしたはずの過去の思い出が過る。
まだ人としての道を歩んでいた頃、弟と共に聞かされた子守唄が。
悪魔に、殺される前の母親の姿が。



「そんなもの、忘れてしまえ」



自らが力を欲し、悪魔の道を進むこととなった、その惨劇(はじまり)が。



「………………………………よく回る舌だ」



エスデスにとって煽りではなく、これほどまでに技を磨き上げた武人への敬意と好意から、助言を送っているにすぎないが。
しかしバージルにとって、最早エスデスは耳障りなノイズを喚き散らす、壊れたラジオでしかなかった。



「負け犬ほど吠える」



戯言を、そうバージルは低い声で吐き捨て、腰を落とした。
膝をわずかに曲げ、中腰の姿勢を取り、重心を低く沈める。
そして腰に添えた閻魔刀の柄へ、そっと右手を添えた。
高まる殺意は、エスデスの放つ冷気すら凍てつかせるやもと思わせる。
バージルの手が柄に触れた瞬間、全てが終わるのだろう。
目にも止まらぬ高速の居合が煌めき、エスデスを両断する。
数秒先にまで迫った死地に対し、エスデスの内心は穏やかだった。

「気に入らんのならば、黙らせてみせろ」

秋水を肩に担ぎ、エスデスは不敵に微笑む。


「ッ……!」


バージルのコートの裾が、裂けていた。


「お前の速さにも目が慣れてきたところだ。次は、当てる」

「次などない」


肩の秋水を上下に軽く振りながら、挑発的な笑みを浮かべるエスデスに、バージルは最高潮の殺意で応じる。


「死ね」


次の瞬間、蒼のスパークが明滅した。

バージルが再び魔人の鎧を纏い、悪魔の力を宿した一閃を放つ。
あまりの速さに音すら遅れて追随し、放たれた斬撃すらバージルに追いつけない。





────美しい。





掛け値なしに、エスデスはその剣技に見惚れていた。
力強さ、速度、精密性。
何もかもが極上の逸品だ。
一級の使い手と至高の名刀こそが成しえる、剣の極致。
一度ならず二度までも、これほどの剣技に巡り合えるとは、幸運と言う他ない。

「お前は素晴らしい剣士だ」

この刹那を永劫に愛でていたい。そう思わせるような、剣技。



「そうだな……」


静かに、エスデスが呟く。



「────『摩訶鉢特摩(マカハドマ)』とでも名付けようか」



セイバーとの戦いの後から、着想はあった。
何物をも逃がさず、何物をも捕らえ、全てを我が物にするエゴの極みを。
あの剣戟を、そしてエスデスに死をも予感させた絶技をも超える奥の手を。

エスデスの願いが形に成したかのように、バージルの剣がコンマ数秒のみ、”停止”した。


「……何をした?」


手応えがない。
確実にエスデスを切り裂いたと確信したその瞬間に、エスデスの姿が忽然と消え失せた。
バージルですら追いつけない高速で。
さらに、手元から刀が弾かれている。



時間の凍結。



セイバーの美しい剣を、あの絶技を、永劫に保管しておきたい。
そんな倒錯した思いから、エスデスが編み出したこの世の理を捻じ曲げた外法。
時間という概念そのものを凍結させ、停止させる。
されど、バージルの完全な停止には至らず。
時間の停止中に弾かれた閻魔刀が宙を舞う。
その隙を逃さず、秋水がバージルの首元へ突きつけられるが、その刃が届くより早く、一振りの大剣が滑り込んだ。

「貴様……」

魔剣リベリオン。
魔剣士スパーダが所有していた三振りの魔剣の一つ。
息子であるダンテに託されたそれが、森口の手によってバージルに支給されていたのだった。


「愛の力……かな」


誇らしげに言うエスデスの右の脇腹が、閻魔刀によって切り裂かれ、僅かに血が滲んでいた。

(止められるのは一秒以下、しかも完全な時間停止には至らない。やはり練習が必要か)

しかも、消耗が激しい。恐らく一日一度の使用が限度。

(だが、支給品の力を借りれば、あと三度は使える)

もっともその欠点は、森口から下賜された道具で補える。
『ファウードの栄養液』と命名された、得体のしれない残り三本のドリンクの力を借りれば。

「次などない、だったか? フフ……来い、バージル。”次”だ」

残り二回で、摩訶鉢特摩を完成させ、最後の一回をセイバーに使う。
剣技だけであればセイバーにも勝るやもしれない最高峰の剣士だ。
摩訶鉢特摩の調整に、これ以上の相手はいない。



「……まさか」



凍える大気から冷気を肌で感じ、空から降ってくる閻魔刀を鞘に納めながら、バージルは理解する。
この女はただの人間ではない。
弱肉強食を説くだけあり、紛れもない捕食者であり強者だ。
己が望むままに欲し、奪い、蹂躙する。
まさしく、氷の女王。

信じがたいが、エスデスの冷気を操る能力を拡大解釈するのならば、自ずと答えは見えてくる。

「時を、凍らせたのか」

時間すら、この女の前では平伏す。


「……良いだろう。貴様の小細工ごと、全て斬る」


ならば、止まった世界ごと斬り伏せるまでのこと。


比喩抜きに、バージルは本気で停止した世界を含めて、エスデスを切断しようと身構えた。
己が絶対の信頼を置く、居合の構え。
不可能とは微塵も考えない。
できて当然であるかのように、バージルの心は凪いでいた。



「力を見せてやる。全てを支配する力をな」



三度目の魔人化。
連続しての消耗は、森口の制限下に置かれた状態では、決して無視できるものではない。
だが、バージルという男の執念と力への執着が、魔力となり、その身を悪魔の鎧甲で覆っていく。

エスデスに味方する時すらも、力でねじ伏せ、勝利をもぎ取ってみせよう。



「良いぞ。死力を尽くした戦い、こうでなければ面白くない」




帝国最強の女将軍と、魔剣士の末裔が激突する。





────僕は決着がつくまで、待ってても良いと思うけどなあ♠

────え? これ以上は見てられない? ま、君が止めたいというのなら、僕も手伝うよ❤





────伸縮自在の愛(バンジーガム)────





「俺の邪魔をするのが趣味なのか、奇術師?」


「……あの時、薬屋の慈悲など聞かずに止めを刺しておくべきだったか、ヒソカ?」


「クク……まあ、そういわずに。僕の顔に免じて、ここは収めて欲しいな♣」



飛んで火にいる夏の虫。
まさに、バージルとエスデスが交錯するその最中に割り込んだヒソカは、火の明かりに誘われ、自ら炙られ死ぬだけの虫と言っても過言ではなかった。
彼の全身から発せられたオーラがゴムのように伸縮し、そしてガムのように粘ついて、バージルとエスデスを拘束しなければ。
今頃、肉片の一辺も残らずに、ヒソカは消し飛んでいただろうから。


「ヒソカさん! 急に飛び出していかないでよ!!」


なるほど、バージルは得心が言ったとばかりに嘆息した。
ピンクの杖を握った見覚えのある少女が、ヒソカの後を追って飛び出してきたからだ

イリヤスフィール・フォン・アインツベルン。

数時間前に交戦し、そして──


「よく俺の前に顔を出せたものだ。奇術師、次会えば斬ると伝えておけと言ったはずだが?」

殺すことを宣言した少女だ。

「!!?」

ヒソカの眦が吊り上がる。伸縮自在の愛から、バージルの重量が忽然と消失したのだ。
ゴムとガムの性質を併せ持つオーラ。
良く伸び、良くくっつく。
一度当ててしまえば、その対象は雁字搦めとなり、蜘蛛の巣に掛かった狩られるのを待つだけの蝶も同然だ。
明確な弱点はない、かのように思われたが。
伸縮と粘着性に優れていようと、オーラそのものを切断してしまえば、その性質は効果を十全に発揮しない。
バージルは幻影剣を自らの周囲に展開し、ヒソカのオーラを切り裂き、そして居合の構えのまま疾走する。
念を込め、刃と化したトランプを握るヒソカの横を、蒼の残影が過る。
あのエスデスですら、目を慣らすのに時間を掛け劣勢を強いられた神速の居合が一閃した。


ヒソカの後方にいる、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンへと。


「前みたいには、いかない!」


ギリギリと刀と杖がせめぎ合う。
閻魔刀の刃を、杖となったルビーの支柱で受け止めて、イリヤは力強く答えた。

ダリウス・エインズワースの空間置換による転移を、セイバーのクラスカード使用時とはいえ、即座に見切ったイリヤの天性のセンスがバージルの居合を防いだのだった。

「ほう」

間違いない。強くなっている。
先の戦いを経て、たった一度とはいえクラスカードの恩恵もなしに、バージルの斬撃を防いだのがその証だ。


「ここで、あなたを止める!!」

「死ぬ覚悟ができたか」


ならば、先刻の宣言通り。
イリヤをこの場で斬り殺し、自らの強さをここで証明するまでだ。


「盛り上がっているところ悪いが、私も混ぜてもらおうか!!」


バージルのように、鋭利に尖らせた氷の刃でオーラを切断し、自由を取り戻したエスデスがはしゃいだ子供のような声で叫ぶ。
戦いを中断され、少々苛立っていたが、あんなイキの良い子供であれば途中参加は大歓迎だ。



(んー……ダメダメ……我慢、我慢……鎮めなきゃ❤)


百戦錬磨のヒソカですら、今の居合は完全に虚を突かれていた。
もしも、狙いがヒソカであれば無傷で済んだかどうか。


(僕の知らない内に、どんどん君は美味しく実っていくねえ……♦)


だが、イリヤは防いでみせた。一度は、成すすべなく斬られた数時間前とは、レベルが違う。
やはり、ずば抜けた成長性は見込み違いではなかった



(あんな、熱い視線を送られる君が羨ましい。今だけは君になりたいよ、バージル♠)



ズキュ~~~~~~~~~~ン



(そんな顔をしないでくれよ、イリヤ……興奮しちゃうじゃないか❤)



バージルへ向けられた強い信念を宿した瞳へ、ヒソカは吸い寄せられるように釘付けにされた。





(げっ…………………………………………変なものを、見てしまった)





少し離れた場所で戦いを見ていた猫猫は変なものを、具体的にはヒソカの昂ったところを目撃してしまった。



(しかしまあ、……元気な男だ)



世継ぎには困らなそうだ。
そんなことを、猫猫はどこか他人事のように思うのだった




(ここで踊るのもやぶさかではないけど、本意ではないんだよねえ♣)



さあ、どうしようか。ヒソカは思案する。
集団戦闘(パーティプレイ)は趣味じゃないが、これほどまでに昂った戦いに水を差すのも違うだろう。
とはいえ、イリヤをこのまま戦わせれば死んでしまうかもしれず、それはそれで美味しくない。

(バージルと戦わせるには、まだ早い……♠)

せめて傷を全快させてからが好ましく、できれば血を流さずこの場を収めたいものだが。


『あの、エスデスさんと言いましたっけ? 
 さっきバージルさんと戦っているのを、覗き見している時に、あっ、ヒソカさんが見物しようって言ったので、私達は何も悪くないですから。
 セイバーって言ってましたよね? 多分ですけど、そのセイバーさんの本当の名前、知らなければ教えて差し上げられますが、いかがです?』


「なんだと?」


エスデスの目が、イリヤの手の中で、独りでにしゃべるステッキへと向けられた。


『知りたくありません? きっと交戦してますよね、その時のことを詳しく伺えれば、誰か分かると思うんですがね』


興味がないと言えば嘘になる。

セイバーという名は恐らくコードネームの類であるのは察していた。
だから後で屈服させてから聞き出せば良いと思っていたのだが。
初めての、恋心はエスデスを急かす。


「その代わりに矛を収めろと?」
『ま、そういうことですねえ』


愛しい男の名を、一刻も早く知りたかった。
再会した時に、その名を呼びたかった。


「話を聞く価値はあるようだな」


秋水を鞘に納刀して、エスデスは構えを解く。

『(あとはお任せしますよー)』

「(OK。次は僕の番か♣)」

ルビーが目配せをして、ヒソカは口元に小さく笑みを浮かべた。
かたや、幼気な少女を騙して、魔法少女へ仕立て上げては、危険な戦場送りにする特級呪物(リリカルナイトメアステッキ)。
かたや、趣味は殺しと戦闘のクレイジーピエロ。

(彼女、変化系だな♠)

ある意味、好き勝手に生きている似た者同士というべきか、一本と一人はお互いに考えている事が通じ合う。

「見逃してくれるなら、僕達は情報を与えられる。バージル……、特に君はあまり誰かと交流するってタイプじゃなさそうだしね♦
 話くらいは聞いても損じゃないと思うけど?」
「俺は三人がかりでも構わんぞ」
「そうかい? 僕は二つの”最強”を知っている。特に、片方の最強とは楽しくデートをしたばかりさ、君も興味あるだろ❤」


バージルの眦が、ぴくりと上がる。


「最強、か……」


エスデスの視線もヒソカへと突き刺さった。


(彼らは雑食だから、釣りやすいねえ♠)


くつくつと笑いながら、ヒソカは口を開く。


「どうせなら、イリヤが回復しきってからの方が君らも楽しいだろ?
 ここは少し話をするくらい、いいんじゃないかな♣」




〇


『多分、そのセイバーの正体は、名簿にもある日本武尊(ヤマトタケル)が怪しいですねえ。
 水を操ると言えば、鉾で岩を穿って水を湧かせたなんて伝説もあるみたいですし、それが甘草水(かんぞうみず)という湧水地にもなったとか。
 あとは走水の海で、奥さん喪った話とか有名ですよねー』

結論から言えば、エスデスから詳細な話を聞かずとも、ルビーはセイバーの正体をある程度まで絞り込めていた。
単純な話だ。
名簿に記された名前の中で、英霊らしき名はヤマトタケルと、強いて挙げるならイタリアの詩人のダンテ・アリギエーリを連想させるダンテの名前くらいしかいなかった。
そのうえ、クラスがセイバーとなれば、どう考えても該当するのはヤマトタケルしかいない。
そこで、セイバーの名前を知りたくはないかとエスデスに持ちかけた。
案の定、サーヴァントに関する知識がなく、ルビーの世界の英霊にも疎い。
その事に気づいたルビーは、エスデスが美遊・エーデルフェルトのように別世界の住人であるかもしれないと考えた。

ならば、それを交渉材料にできる。

こちらの世界の英霊に疎いのなら、死因に関する逸話さえ話さなければ、そう迷惑を掛ける事もないだろうと、会った事もないサーヴァントへの配慮もばっちりだ。

「何、妻がいたのか」

結果としては、うまくいったようだった。

「まあいい。ヤマトタケル、か……そうかタケルと言うのだな。
 タケル、他の女などすぐに忘れさせてやるぞ」

エスデスは口元に薄い笑みを浮かべていた。


(サーヴァントか、……英霊(しにん)には、興味ないな♦)


人知れず、ヒソカは萎えている。




────百獣のカイドウ、範馬勇次郎、黄金郷のマハト、イリヤを襲った雷を操る老剣士。



バージルもまた、ヒソカから齎された情報を頭の中で反芻する。
確かに、ここ数時間の情報において、バージルは不足していたらしいと認識を改める。


(危うく見落とすところだったな)


これ程の猛者共と矛を交えないという選択肢はない。
できることならば、全員と遭遇したいものだ。

(もう、ここに留まる理由はない)

エスデスとの決着は流れ、イリヤとの再戦も彼女の怪我が癒えてからの方が興が乗る。
何より、まだ見ぬ多くの猛者共との戦いを逃すのは惜しい。
こうしている今も、何処かで強者たちが食い合っているのだろう。
この蟲毒の中に、新たな力を得る鍵が眠っているかもしれない。
貪欲に強さを求める剣鬼は、静かに踵を返した。


「待って、バージルさん」


それを呼び止めたのは、他ならぬイリヤスフィール・フォン・アインツベルンだった。

「ここで、決着をつける気になったのか」
「ううん……強い人と戦いたいのなら、わたしたちと一緒にいない?」

その提案は、予想外にも同行を促すものであった。

「ヒソカさんみたいに、殺し合いに乗らなくても強い人とは戦えるでしょ」

ヒソカの語る勇次郎、カイドウ、マハト、そして、イリヤが襲われたダース・シディアスの話を、バージルは興味深そうに聞いていた。
ヒソカや勇次郎が楽しげに戦っていたように、戦闘そのものに喜びを見出す人種がいることは、イリヤにも理解できる。
向こうにいるエスデスも、きっとそちら側なのだろう。
スポーツ感覚で殺し合いに興じる連中が、この場には大勢いる。
しかし、だからといって、わざわざ自分から殺し合いに乗る必要はない。
勇次郎のように、闘争を求めながらも殺し合いに乗る人物を狙うという方針であれば、その欲も満たせる。
人助けをしろとは言わないが、そんな連中に襲われている人の元に駆けつければ、嫌でも戦うことになるはずだ。

そう考えたイリヤは、バージルを説得しようとしていた。

戦うのだけが目的であれば、完全な同調はできずとも、ヒソカのように足並みは揃えられるはずだと

「愚かだな」

バージルは背を向けたまま、ぽつりと声を零した。

「悪魔は人間と群れん」

たった一言、理屈などそれだけで十分と言わんばかりに。



「あなたは、悪魔なんかじゃないよ」


だけど、イリヤは。


────つまらん事に拘るな。そいつが弱かっただけの話だ。この世は弱肉強食、弱者であることは罪と言ってもいい。

────ッッ!!!


バージルの人としての表情を見ていた。


「────だって、誰かのために怒れる人だから」


だからこそ、イリヤは訴える。

本当は、人を慈しむ心がある筈だと。
誰かを想い、誰かのために怒ることのできる心が、まだ、残っているはずだと。


キィィンと剣閃が空を裂く音がして、イリヤの眼前に閻魔刀の切先が向けられていた。



「ッ……バージル、さん……」

ルビーは、イリヤとヒソカが、バージルとエスデスの戦いを見物していたと言っていた。
その時に余計な会話を聞かれたのだと悟る。


「やはり愚かだよ。貴様は」


刀を納刀したバージルは、それ以上を語ろうとはしなかった。
背に担いだリベリオンが重く圧し掛かる。
エスデスの一撃を防ぐのに一役買ったこの剣が。
弟の象徴ともいえる、この剣が。
まるで、バージルを救ったのは家族の絆のようで。
それはとうの昔に捨て去った筈の繋がり。


「……やはり、不要なものは断つべきか」


悪魔として、より高みへと昇り、より力を手にするために。

まずはイリヤだ。傷が癒え次に相まみえた時こそは必ず。

そしてもう一人。

イリヤたちのスマホに配布された名簿にあった名前をバージルは呼び起こす。



「もし、ダンテという男に会ったのなら、リベリオンは俺が預かっていると伝えろ」



ダンテという最後の肉親を、己を縛るしがらみを、ここで葬り去る。


「ま、っ……」

「やめたほうがいい♣」


遠ざかるバージルの背中を追いかけようとするイリヤを、ヒソカが肩を掴んで制止した。
これ以上深入りすれば、せっかく避けられた戦闘が勃発しかねない。
消化した導火線に再び火を点けることほど、愚かなことはない。



───待っていろ、ダンテ。



血の繋がった、最後の肉親を殺す。

その決意を胸に、バージルはこの場を去っていった。




【F-8/早朝/1日目】

【バージル@Devil May Cry3】
[状態]:ダメージ(小)
[装備]:閻魔刀@Devil May Cry3、魔剣リベリオン@Devil May Cryシリーズ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0
[思考・状況]:I need more power!
1:殺し合いに乗る。強者狙い。
2:イリヤとエスデスは次会った時に決着をつける。
3:勇次郎、カイドウ、マハト、ダース・シディアス(イリヤを襲った老剣士)を探し戦いを挑む。
4:ダンテを殺す。
※参戦時期はダンテ戦一回目の直後です。
※ヒソカたちと情報交換しました。勇次郎、カイドウ、マハト、ダース・シディアスのことが伝わっているのは確定です。



【魔剣リベリオン@Devil May Cryシリーズ】
魔剣士スパーダが所有していた三振りの剣のうちの一つ、ダンテに継承された大剣。
シリーズでは1を除き皆勤賞。



────薬屋、お前はあのイリヤという娘の怪我を見てやれ、ヒソカよりはお前の方が治療は的確だろう。

────エスデス様は?

────私はしばらく単独で行動する。安心しろ、お前の友人は見つければ守ってやるさ。


────そうだ。君に聞きたいことがあったんだ、エスデス♠



「イェーガーズにワイルドハント、か……」



数分前に聞いた名前を呟き、エスデスは自分の記憶を巡らせていた。




────おや、両方聞き覚えがないのかい?


────ああ、シュラなら知っているがな。大臣の馬鹿息子だろう? だが、世界を放浪していると聞いている。


聞けば、エスデスが率いるイェーガーズという組織と、シュラが率いるワイルドハントという組織が対立しているという。
だが、エスデスには聞き覚えがない。まだ、この時間軸のエスデスにとっては、未来の出来事だからだ。


────同じ世界でも、わざと時間をずらして参加者を呼んでいるのかもしれませんねー。

────未来の私の関係者か。

────ふーん……、一応聞いておくけど、君の上司の息子を僕が殺るのはありかい?


記憶に残るヒソカの顔は、とても意地悪そうに笑みを作っていた。
だから、エスデスもこう返した。


────構わん。あの馬鹿息子が死んだところで、あの大臣のことだ。飯を食ったら忘れているだろうさ。お前が思うような、面白いことにはならん。
    なんなら、私も興味がある。早いもの勝ちと行こうか?

────あっそ……♦


しかし、世界中を巡ったシュラが帝都に戻ってきたという事は、それなりに強さも仕上げてきているはずだろうとエスデスは考えている。
少しは楽しめるかもしれない。


「ヒソカが話していた者達とも是非戦ってみたいものだ」


バージルと同じく、エスデスもまだ見ぬ強者たちに胸を馳せる
猫猫をヒソカへと押し付けたのは、戦いの邪魔だったからだ。
それに、これからやることは人目に付かないほうがいい。

「摩訶鉢特摩の練習がてら、せめて、一人か二人は間引いておきたいところだしな」

森口の機嫌を損ねないように、エスデスはしばらくは殺し合いを円滑に進ませる予定だった。
つまり殺し合いに乗る。
故に、一人でいる方が都合がいい。

(わざと、イリヤという娘の前で殺しをして、怒りを買うのも面白そうだったが……。
 まあ、ヒソカがあれをもっと食いでのある獲物にまで育てるのを待ってから、横取りするのも悪くない)

ヒソカが唾をつけていたイリヤという少女。
バージルの剣戟を受け止めてみせたあの実力に関心はあれど、優先順位はまだ低い。
ヒソカの語る、勇次郎を始めとした強者たちと戦ってからでも遅くはない。


(練習台も、できれば、バージルクラスの剣士を相手にしたい。……奴の関係者らしい、ダンテとやらから探してみるとするか)


強者との戦いを思い浮かべるだけで、胸が高鳴る。


「次に会う相手も、摩訶鉢特摩を出すに値する相手であってくれよ」


そう呟き、エスデスは不敵に笑った。
その先に待つ、さらなる高みを求めるように。

エスデスは一人、戦場へと歩を進めていった。



【F-8/早朝/1日目】


【エスデス@アカメが斬る!】
[状態]:ダメージ(中)、精神高揚(特大)、ヤマトタケルに対する執着(特大)
[装備]:秋水@ONE PIECE
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×0~1、ファウードの栄養液@金色のガッシュ!!×3
[思考]:タケルを手に入れる。
1:残り三回中二回で摩訶鉢特摩を完成させ、三度目の摩訶鉢特摩でタケルを手に入れる。
2:他の参加者を蹂躙し、殺し合いを楽しむ。
3:猫猫とヒソカを部下に勧誘してみたかったが…。
4:ヒソカがもしタケルを殺したら……その時は私が奴を狩る。
5:摩訶鉢特摩の練習台として、強者を探す。優先はダンテ、勇次郎、カイドウ、マハト、ダース・シディアス(イリヤを襲った老剣士)、シュラ。
6:バージルともいずれ決着を。イリヤという娘も成長してから横取りするのもありか。
7:一人か二人は確実に間引いておく。しばらくは殺し合いに乗る。
8:イェーガーズとワイルドハントとやらにも接触してみるか。
※第三巻から参戦です。
※摩訶鉢特摩を習得しましたが、使用回数は一日一度、現状では停止時間コンマ数秒一秒未満、さらに完全な時間停止には至っていません。(時間の流れがゆっくりになっているイメージ)
※ヒソカたちと情報交換しました。勇次郎、カイドウ、マハト、ダース・シディアスのことが伝わっているのは確定です。


【秋水@ONE PIECE】
拵は「黒刀・乱刃・大逆丁字」。大業物21工の一振りに数えられる名刀であり、刀身は黒刀に属する。
その硬度は極めて高く、恐竜に踏みつけられても一ミリたりとも曲がらないほどの強靭さを誇る。
また威力があり硬い分、かなり重い。

【ファウードの栄養液@金色のガッシュ!!】
エスデスに支給。三本。
体力、負傷、心の力を回復する栄養液。
エスデスが使用した場合、摩訶鉢特摩の一日一度という使用制限を回復させ、再使用を可能とする。







「ヒソカさん、バージルさんに勇次郎さんのこと伝えて良かったの?」
「問題ない♣ むしろ喜んでると思うよ♦」


────できればさ、勇次郎にももっと美味しくなって欲しいんだよねえ……❤


友好的な関係であった勇次郎の情報を、危険なバージルやエスデスに流したのは、イリヤのようにまた勇次郎の成長を促すためだ。
戦ったヒソカだからこそわかるが、あれはあの強さでまだ、完成には至っていない。
未だ範馬勇次郎という男は成長を続けているのだ。


(ククク……君のような男が、まだ青い果実だなんて、悪い冗談だよ♠ 我慢しなくちゃ……❤)


「凄い顔してますよ。あなた」


まだまだ、我慢をしなくちゃと鎮めているヒソカに、猫猫は冷静に突っ込みを入れた。
なんだかもうこんな奴ばかりだなと、猫猫は嘆息してしまう。



「ところで猫猫、君、声が低くない? まるで……」


「……聞かないでくれませんか」


「❤」




【No.033 ホルモンクッキー】
このクッキーを食べると24時間の制限付きで性別が変わる。1箱20枚入り。10箱セット。(日本テレビのサイトより引用)

G.I.における指定ポケットの一種。猫猫の本の中に収録されていた。
このロワでは、効果時間が数時間へと短縮されている。
これを食べさせられた猫猫はエスデスの実験台にされた。


【F-8/早朝/1日目】

【猫猫@薬屋のひとりごと】
[状態]:疲労(大)、ホルモンクッキー接種(残り効果時間は二時間ほど)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、トンパの下剤入りジュース×2@HUNTER×HUNTER、
本(ブック)@HUNTER×HUNTER、不明G.Iカード×3、No.033 ホルモンクッキー@HUNTER×HUNTER、蔵馬の魔界薬草@幽☆遊☆白書、ランダム支給品×0~1
[思考]:脱出の手段か、未知の毒が欲しい。
0:イリヤ、ヒソカと行動。エスデスよりはマシか。
1:壬氏様はいないみたいですね。
2:小蘭を探す。
3:さっき会った医官(神谷)の毒に殺されるのは願い下げ。
4:疲れた……。


【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:疲労(小)、胸に刀傷(ほぼ完治)
[装備]:マジカルルビー@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3、クラスカード『アーチャー』@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[思考]:自分と同じように、怯える人達を助けたい。
0:ヒソカさんと猫猫さんと行動する。
1:ユウジやダークマイトさんを探したい。
2:猫猫さんか……ヒソカさんと二人きりにならなくてよかった。
3:バージルさんを説得したいけど……。

[備考]
※参戦時期はドライ12巻59話終了後です。


【ヒソカ=モロウ@HUNTER×HUNTER】
[状態]:疲労(小)、右頬に打撲、腹部に裂傷(バンジーガムにより接合済み)
[装備]:トランプ(残り僅か)@現実、天逆鉾@呪術廻戦、帝具「快投乱麻ダイリーガー」@アカメが斬る!
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0~2、蔵馬の魔界薬草@幽☆遊☆白書(少量)、音貝(トーンダイアル)@ONEPIECE、チャンプの首輪
[思考]:脱出の手段を探す。集団戦闘では興奮できないからね…♥
0:これからどうしようかな♣
1:脱出に役立ちそうな人材か、玩具を探す♦
2:脱出の手段がなければ仕方ないが…僕も振りかかる火の粉は払わざるを得ない…♠
3:マハトとバージルは人間ならきっといいデートができただろう…惜しいね…♥
4:この娘(イリヤ)は美味しく実りそうだ…♥
5:ワイルドハントか…敵討ち(リベンジ)に来てくれるなら、それはそれで楽しいかな♣
6:小蘭は真面目に探して保護する。猫猫には借りができたからね♦
7:カイドウ……イリヤの成長の為に戦うのもアリだな♥
8:エスデスの横取りには警戒しないとね♣
9:死人(セイバー)には興味なし♠





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048『超新星』 050『ファントム・メナス』
014『Opposing Souls』 バージル
014『Opposing Souls』 エスデス
014『Opposing Souls』 猫猫
036『遊喜宴楽』 ヒソカ♧
036『遊喜宴楽』 イリヤ

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最終更新:2026年10月05日 20:59