「身体測定を信じるのであれば、肉体的数値はそこそこ変化しているはずなんだが」
そう言って微笑む佐々木のその笑顔には、どことなくウラがありそうな感じだった。
ほんとはもう少し直接的な言葉を使って表現したいものを、
なんとなくそれは気が進まない、言わずとも察してくれよ、とでもいうような。
「・・・…あー……」
すこし間が空いてしまうのはこのさい仕方ないよな。
こちとら超能力者でもなきゃ名探偵でもないんだ。
考える。身体測定。明言したくはない。見た目からは分かりにくい?
……そして、こいつもいちおう女。つまり……
「……まあ、お互い育ち盛りだしな」
潜水艦の探信音のように慎重にうちだしたひとことに、
ピクン、と佐々木の肩がゆれた。どうやらビンゴっぽい。
やれやれ。ほんとにこんなこと、俺が口に出さなきゃならんのか。
佐々木の『そこ』になにげなく目を走らせながら、ついに俺は言った。
「しかたねえよ。俺だってこないだの測定じゃ二キロも増え」
「ちょっと待って欲しい。この状況でその受け答えは明らかにおかしくはないだろうか?
というかどこを見てるんだどこを!!キミほんとに健全な男子高校生なの!!!???」
なにがそんなに気に入らなかったのか、突然激昂しだす佐々木。
やべえなんか読み違えたか!?…・・・とは思ってももう遅いなこれは……。
貝のように押し黙り、暴風雨のごとく乱打する言葉の鞭から必死で身を守る俺。
女言葉になってんのにも気づかず執拗に俺を糾弾し続ける佐々木のその声は、
もうほとんど悲鳴の域にまで達していた。
最終更新:2008年01月28日 22:33