僕という人間を自己評価すると変人という言葉がしっくり来る。
幼い頃より知識欲だけは旺盛で、子供らしい遊びよりも図鑑や辞書を乱読するほうが好きだった。
そんな変わり者は当然同年代の子供たちの輪に入ることはできなかった。そして僕自身も周囲に合わせる必要性を感じてはいなかった。僕は常に一人きりだったんだ。
しかしそんな状況が許されるのは幼少期のみ。日本の児童は学校というコミュニティーに放り込まれて社会性を身につけることを強要されるからね。
そんな中で僕自身も社会に適合するべく努力を強いられた。表面上だけではあるがそれらしいものも身につけられたと自負しているがね。
ただどうしても馴染めないものがあったんだ。それは男子だよ。
幼い頃は僕にまるで見向きもしなかったのに、青臭い色恋について知る年頃になると急に僕に馴れ馴れしくし始めたんだよ。自慢じゃないが客観的に見て僕の容姿はそれなりに整ったものらしいからね。
ああ、なんて素晴らしい生き物なんだ、男とは。外見要因だけで恋なんていう不確かなものができるなんて。
僕は男子を軽蔑した。そして彼らを軽んずるようにしたのだ。これで事態は好転するだろうと踏んでいた。しかし僕の予想より社会というものはもっと厄介だったんだ。
周囲の女子が僕に対して嫉妬の念を向けて来るようになったんだよ。彼女らの考えを推察するならば、男子にモテるのにつっけんどんな態度を取ってさらに気を引こうとしているというものだろう。
男子からは気持ちの悪い感情を向けられ女子からはやっかまれ、僕はこの問題の答えを書物に見出そうとした。
答えは意外なところに転がっていたよ。
ある日気まぐれに呼んだ古い漫画に「ボク」という一人称を使う少女がいた。それはまるで天啓のように僕を一つの解決法へと導いてくれたんだ。
そして僕は男子に対してのみ「僕」という一人称を使い始めたんだ。予想通り彼らは奇異なものを見るようにして自発的に僕を避け始めてくれたんだよ。
まあ、これが僕が「僕」という一人称を使い始めた理由だよ、キョン。以来癖でね。まあやめるつもりもないんだが。
え? これから男にも「私」を使うことはあるかって?
ふむ、君が望むなら君だけには特別に使ってあげてもいいんだがどうだろう?
え? 別にどうでもいい? ああ、そうかい。
それは実に残念だね。くっくっ。
はぁ……
〆
最終更新:2008年01月28日 22:36