生まれて初めて編んだセーターを握りしめて部屋にたたずむ私は、
とても惨めな存在の気がした。
いつ渡そうか
喜んでくれるだろうか?
そんな想いと期待に満ち溢れたセーターを渡すこともできぬまま、12月23日の夜を迎えてしまった。
きっと、キョンは、明日、涼宮さんたちと楽しげにクリスマスを過ごすのだろう。
あのSOS団とかいう集まりでわいわい騒ぎながら・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・私は、今日も明日も独りぼっちだ。
冷たい部屋の壁にもたれていると自然と涙がこぼれてきた。
さみしい。そして、とても哀しい。
弱虫なこの心がとても哀しい・・・・・・・・・
♪だばだー、だー、だばだー、だばだー、ダーダーダーだーでゅでぃだー♪
私の携帯電話が鳴る。悪趣味な着信音は、九曜さんが選んだ。
彼女からの電話は、珍しい。そして、私は、冷たい部屋の中に響くこの着メロに思わず笑った。
「ありがとう」
思わず出た言葉は、「もしもし」ではなく、「ありがとう」だった。
九曜さんは、何も答えなかったけど、彼女が私にしてくれようとした気持は、十分に伝わった。
とりあえず、泣くのはよそう。
この肩を抱きしめてくれる恋人はいないけど、心配してくれる友人が私にもいるのだ。
クリスマスは、友人たちと過ごす。それがいいのかもしれないな。
「――――― あと、十秒 ―――――」
「え?」
電話がプツリと切れた。突然のことに私は、ぼんやりと携帯を眺めていた。すると
キョンから電話が来た!!!
「も、もしもし。」
私は、努めて冷静な声で対応した。
「佐々木か?どうした?ちょっと、声が変だな?」
「な、何でもないよ!そ、それより、どうしたんだい?こんな時間に女性に電話してくるなんて・・・」(ああっ!私のバカ!)
「明日、SOS団の鍋パーティがあるんだ。佐々木も来ないか?」
「・・・・・・・・・」
私は、何故かキョンのそばで楽しげに笑う涼宮さんの姿を思い浮かべ、悲しい気持ちになった。
こんなの行っても見せつけられるだけじゃない・・・・・・・・
「・・・・・佐々木?」
「・・・・・・・・いかない。友達たちと過ごすよ。」
「あの連中か?」
「そうだよ。」
「そうか、じゃ、またな。」
「うん。」
電話を切って、5秒もしないうちに、滝のように涙があふれてきた。
私の…馬鹿
思わず携帯を壁に投げつけようとした瞬間にまた、電話が鳴った。九曜さんだ。
「――――― バカ ―――――」
「・・・・・・・うん。ごめんね。でも、皆と一緒にいたいとも本気で思ったんだよ?」
「――――― でもあと、十秒 ―――――」
「え?」
そう言うと、また電話が切れた。どういうこと?
そして、すぐにまた、キョンから電話がきた
「あ、あのさ、佐々木。明後日は?明後日は、空いてないか?ダメならその次でもいいんだが」
「え?」
「そ、その。渡したいものがあるんだよ。プレゼントというか・・・その。それに、伝えたいこともあるんだ。」
「ダメかな?」
「・・・・・・・・・・・・ダメじゃない。キョン、僕も君に渡したいものがあるんだよ。」
「・・・・・・・・・・・・佐々木。」
「うん。」
「やっぱり、今から、会えないかな?」
「だめ、遅すぎるよ。明後日まで待って。」
「・・・・・・・・・・・・・・・わかった。待ってるよ」
「・・・・・・・僕も君を待ってる。いや、ずっと待ってたんだよ。君を。当然、迎えに来てくれるんだろ?」
「もちろん。リムジンバスとはいかないが、自転車で迎えに行くよ」
「中学の時みたいに?」
「ああ。」
電話を切って、窓の外を見た。
雪が降ってる。
しんしんとつもる雪。でも、それがとても暖かに見えた。
今、私の心も体もポカポカだったから・・・・・・・
最終更新:2008年12月29日 23:08