さて、今年のバレンタインも終わった
結論から言うと去年より多くの義理チョコをもらった 以上
なに? もっと詳しく教えろ? 分かったよ
くれたのはハルヒ、朝比奈さん、長門、鶴屋さん、朝倉、喜緑さん、森さん、橘、九曜、ミヨキチ
それぞれホワイトチョコで色んな事が書かれていた 順に
「超義理チョコ」「友愛」「贈呈」「本命?」「愛護」「萌え」「St.Valentine」「友チョコ」
「歳暮」「love」
朝比奈さんはまたハルヒに書かされたらしい 鶴屋さんや森さん、橘は彼女ららしい言葉だ
ミヨキチはちょっと背伸びして英語を使いたかったんだろうな
……長門以外の宇宙人は何か勘違いしてるっぽいな
皆義理なんだろうがでっかいハート型の手作りで味もなかなかのものだったな
「僕にハート型は一つもなかったですがね ミヨキチさんに貰ってないのは当然としても……
朝倉さん、喜緑さん、橘さん、九曜さんに至っては市販品でしたよ
貴方は一度男性諸君に袋叩きに遭った方がいいんじゃないでしょうか」
ん、何か言ったか古泉?
「いえ、何も そう言えば佐々木さんからは貰ってないのですか?」
あいつはそういう事あまり好きじゃないみたいだからな
「そうですか? 先日材料と道具を橘さんと一緒に買ったらしいですよ」
それは多分親御さんにだろ あいつが義理チョコ配る姿は想像できん
「分かりませんよ 彼女だって多感な女子高生です 誰か渡す相手ができたのかもしれませんよ」
ニヤケながら顔近づけるンじゃない! しかし佐々木がチョコを渡す男か……
それはそれで応援してやるべき……なんだろう……か?
「さて それは僕には何とも言えないですね では僕はここで」
皆と別れた後の帰り道、古泉に言われた事をずっと考えていた
ぼんやり考え事していたせいか、隣に橘がいつからいたのか全く分からなかった
「佐々木さんと何かあったんですか?」
は? いきなり何言ってんだ? 何かあるどころかここ数日連絡すらないぞ
「え、嘘 昨日何もなかったんですか?」
佐々木の行動は常に把握してるんじゃないのか? ……どうかしたのか?
「さすがに家の中での様子や電話内容までは調べたりしないのです そこまではしたくないですもん
ただ、昨日から佐々木さんの、というより佐々木さんの閉鎖空間の様子がおかしいのです
いつもより暗くて、いるだけで悲しくなりそうで てっきり貴方と何かあったのかと」
なんでそうなる? で、佐々木に連絡は?
「今日は学校がお休みで家にいるのは確かなのですが、電話に出なくて」
そっか じゃあちょっと行ってみるかな お前も来るだろ?
「ええ でも私は外で待ってます お二人で話してください お願いします」
? まあいいか そういやあいつの家に行くの初めてだな……
と言うわけでやってきた佐々木宅 早速呼び鈴を押す ……なんか緊張するな
「はい?」 よかった、佐々木だ ちょっと安心 よう、俺だ
「え? キョン? え? なんで? ……あ、ちょと待ってくれるかい」
おー、珍しく慌ててたな まあいきなりだったからな
「やあ、急にどうしたんだい? それよりよくここが分かったね ま、ここで話すのもなんだから上がるといい」
一気にまくし立てる佐々木 やはりなんか様子がおかしいな?
取り敢えずお言葉に甘えて上がらせてもらうか
通されたのは佐々木の部屋 何ともさっぱりとした部屋だな っていいのか?
「ん? 別に見られて困るものはないから構わないよ
ああ、タンスの中は下着が入ってるからそこだけは勘弁して欲しいがね くっくっ」
……了解した 気にはなるがそこは紳士な俺だ 我慢しようじゃないか
「ほう、それでも気にはなるようだね いや、年頃の男性らしくていいんじゃないか くっくっ
ところでさっきも聞いたが急にどうしたんだい?」
ああ、橘から様子がおかしいと聞いてな 家の場所もあいつに聞いて来た
「ん~、そういうのが全部筒抜けになるのは分かってはいたが、やっぱり恥かしいもんだな
で、その橘さんは?」
ああ、やっぱりそういうのを見てしまうのが気まずいんだろう 外で待ってるとさ
「ふむ、彼女らしいな まあ、隠しても仕方ない 原因はこれだろう」
出してきたのは赤のリボンが付いた白い箱 やっぱりアレだよな ただ少し潰れてる
「鞄に入れてたんだけど満員電車の中で押されてね こうなってしまったわけだ
予想以上にこれがショックでね……ん? どうしたんだい そんな顔して?」
い、いや、悪いがお前にそういう相手ができたのが意外でな そっか……
で、でもな、相手の男だって訳を言えば喜んで受け取ってくれるんじゃないのか?
そう言うと佐々木はきょとんとしてそれからニヤリと笑った
「そうか、キョンがそう言うなら今から確かめてみるかな」
今から? あ、あ、行ってきたらいい じゃあおれはこれで……
俺が立ち上がろうとすると佐々木が突然吹き出した。 なんだよ、一体?
「すまない、どうにも我慢できなかった。 いや、それでこそキョンだ。 まあ待ちたまえ。」
唖然としている俺に対して佐々木はにっこり微笑んで
「ハッピーバレンタイン、キョン。」
その白い箱を差し出した。 って、お、俺に!?
「うん、先ほどといい、なかなかいいリアクションだ。 うん、いいね。」
え、あ、さ、佐々木……
「ちょっと落ち着きたまえキョン。 僕が友チョコを贈る事がそんなにおかしいことかい?」
あ? え? 友……チョコ? ああ、友チョコね。 そうか、そうだよな。 うん、そうだよなぁ。
「ふむ、察するにキョンはそれが所謂本命チョコだと思った訳かな? ん?」
くっ、その古泉みたいなニヤケ顔やめろ……やめてください。
「くっくっ、そこまで動揺するとはね。 やった甲斐があったというもんだ。
それにしても今年や去年もそれなりにもらったんだろう? いまさらそんなにあわてる事かい?」
いや、相手がお前だからなぁ、そりゃ驚くだろ。 閉鎖空間の事もあったからな。
「いくら親友とは言え、初めて男性相手に作った手作りチョコが割れてしまったんだ、僕だって多少は凹むさ。
まあ、我ながららしくないとは思うがね。」
やれやれ、なんか疲れちまったな。 佐々木よ、そろそろそのニヤケ顔やめないか。
「いや、本命と言って渡したらもっと面白い反応が見られたのかなって思ってさ。 くっくっ。」
お前な……もう帰るぞ、邪魔したな。
「おっと、怒ったかい? まあ待ちたまえ。 え、きゃあ!」
さて、読んでる方には何が起こったか分からないだろうから説明しておく。
二人とも立ち上がり俺が前に進もうとした時だ、何故か足をテーブルに引っ掛けて転んだわけだ。
で、その先には佐々木がいた。 つまり押し倒すような感じになったわけだ。
そして倒れこんだ先は佐々木のベット……すげぇベタなシチュエーションだろ? だが、それだけじゃなかった。
倒れた勢いで佐々木の口からほんの数ミリ横の頬に……キスしちまった。 はい、説明終了。
目を見開いて唖然とする佐々木。 ス、スマン、わざとじゃないんだ。
「え、ああ、別にキョンならいいよ。 え、や、そ、そういう訳じゃなくて……。」
今度は俺が唖然とする。 顔を赤くしながら恥らう佐々木。 正直言おう、すげぇ可愛い。
しかも体勢は顔が離れただけで倒れた時のまま。 クラッときた俺は佐々木の唇に吸い込まれていく。
「え?、キョン? あ……」
瞬時に悟ったのか佐々木は目を閉じる。 隊長、もう止まれません。 キョン、行きまーす!
佐々木の唇まで残り5センチ、3センチ、1センチ。 狙いはバッチリ、俺も目を閉じる。
多分残り数ミリだっただろう、急に電話が鳴りだして驚いた俺は一気に起き上がる。
誰からの着信かの確認もできないまま慌てて電話に出た俺に届いた声は
「よう、キョン、今暇か? だったら駅前まで来いよ。 いい感じの女の子が二人いるんだ。
あれはきっとナンパ待ちだ。 誘ったらきっと来るぞ。 どうする?」
……谷口よ、明日遺書用意しておけ。
「え? なんだ? すっげぇ声が低いぞ。 一体何があ」ピ。
少し冷静になった俺は一気に恥かしさがこみ上げる。 俺は一体何をしようとしてた?
ゆっくりと佐々木のほうへ目を向ける。 うわぁ、これ以上ないってくらいに真っ赤だ。
さ、佐々木よ、き、今日は帰るわ。
「え、あ、うん。 その方がいいわね。」
まだ動揺してるんだろう、女口調になってる事に気付かないでまだ顔を赤くしてる佐々木。 たまりません。
玄関を出た先まで見送ってくれる佐々木。 おい、まだ顔赤いぞ。
「そういうキョンこそ……じゃあまた今度ね。」
おう、またこん『『パシャ』』……ぱしゃ?
音のしたほうを見ると小悪魔が二人携帯をこっちに向けていた。
「えっと、写真添付、ハルニャン送信、と。 さて……」「こっちは長門さんに送信、と。 さて……」
「「真っ赤な顔して何してたのよ、ひどいよキョン君、あたしの気持ち知ってるくせに。」」
明らかに嘘泣きしながらハモッてる二人。 何してるんですか鶴屋さん。 朝倉もだ。
で、どさくさに紛れて何しやがりましたか? ってかそれ、らー○んさんのネタのパクリじゃねーか!
「さあ、ここはもうすぐ大変な事になるっさ、朝倉っち。 早く避難するにょろ!」
「ええ、早く逃げないとね、鶴屋さん。」
そう言いながら凄まじいスピードで逃げ出す二人。 うぉい! ちょっと待てぇい!
「じゃあ、キョンまた今度会おう……無事だったらね。」バタン、カチャ。
な! 佐々木、お前もか! あ、鍵かけやがった。 テメェ!
慌てる俺の背後から声が聞こえる
「さて、キョン。 ちょっといいかしら? ここじゃ何だからあっちで。」
「私にも説明を……」
あら、随分とお早いお着きで。 えーっと、あちらというと、あのマンションの建築現場の裏手の事かな?
「そうよ、あそこなら多少大きな声出しても迷惑にはならないから。」
「視覚・聴覚情報は遮断する。」
そうか、声と言うより悲鳴だろうな。 あと長門さん、俺にだけ聞こえる声で随分物騒な事言ってません?
「グズグズ言わずに早く来る!」
ハルヒと長門に襟を掴まれ、引きずられていく俺。 ああ、明日の太陽見れるかなぁ。
古泉「はぁ、逝ってきます。」
森「さて、私も暴れますかね。」
朝比奈「今日は知りません!」
鶴屋「おや? みくるもご機嫌斜め? ま、あたしも良くはないけどね。」
朝倉「情報爆発が欲しいってのもあるけど、なんかそれだけじゃないのよね。 なんだろ?」
九曜「私も――同様――何?」
喜緑「私もお二方と一緒ですね。 これが長門さんの感じたエラー?」
ミヨキチ「お兄さん大丈夫でしょうか?」
橘「優しいんですね。 でもたまにはこうでもされないとあたしもスッキリしないのです。」
妹「キョン君モテモテだね、シャミ。」
シャミ「うにゃあ」