全く、朝も早くからお使いなんて、何考えてるんだオフクロは。 まぁ、破格の小遣い付だからいいか。
さて、頼まれ事も終わったし、何か軽く食べるかな。 ん? オープンカフェにいるあの二人は…
「ふう…」
どうした佐々木、そんなため息ついて。
「え?、ああ、キョン。 珍しいね、こんな所で出会うなんて。」
ああ、ちょっとな。 用事でこっちまで来て、そのついでに何か食べようと思ってたところだ。
「ふむ、察するに小遣いにつられてしぶしぶ御母堂の用事を引き受けたと言ったところかな?」
ぐ、何で分かる? もしやエスパーに目覚めたか!
「くっくっ、君の普段の行動は読みやすいからね。 どうだい? 僕も注文はまだだし、ここで一緒に食事とるかい?」
むう、何やら納得いかんが…まぁいい。 お前は何食べるんだ?
「僕はトーストセットがいいかな。 午前中からあまりたくさんは食べられないからね。」
「あ、じゃあわた」すみませーん、トーストセットをレモンティーで、モーニングセットをコーヒーで、以上です。
「ほう、僕が何飲むか分かってたのかい? 確かにレモンティーを頼むつもりだったが。」
お前の行動も読みやすいってこった。 でさっきの溜息はなんだ?
「お二人ともいつもいつも見事にあたしを無視してくれますね! もういいです! 勝手に注文してくるのです!」
おーおー、橘怒ってるな。 毎度変わらん奴だ。
「くっくっ、彼女はからかいやすいからね。 でも、溜息の原因も彼女なんだよ。」
なんだ? 相変わらず付きまとわれてるのか? お前も毎回付き合うことなかろうに。
「断るとこの世の終わりみたいな顔するからね。 承諾すると子供のように喜ぶし。 それでいつも、ね。」
朝からご苦労なこった。 それならお前ももう少しあいつをいじって楽しんでもいいんじゃないか?
「そういうのはどうも苦手でね。 キョンとの掛け合いを見てる方が面白いよ。」
そうは言ってもな、いつも俺がいる訳じゃないし…
「今日もエイプリルフールだから何か嘘でもと思ったんだが難しくて。 どうしようかと考えていたところさ。」
あ、そうか。 今日は4月1日か。 忘れてたな。 それじゃ、俺が手本見せてやろう。
「くっくっ、彼女あれで繊細だからね。 お手柔らかに頼むよ、キョン。」
ごちそうさま、っと。結構量あったな。 佐々木はそれで足りたのか?
「うん、僕は大体いつもこの位だからね。 …ちょっと失礼するよ。」
「あ、あたしも行きます。」
「橘さん、ここのお手洗いは一人分しかないから付いて来てもしょうがないわよ。」
「あ…ごめんなさい。 いってらっしゃい。」
「うん、ちょっと待っててね。」
さてと… お前、相変わらず佐々木にべったりなんだな。そんなにあいつを祀り上げたいのか?
「違います! 最初はそうだったんだけど、今となってはかけがえの無い大事な人なのです。」
そうか…それはそれでちょっと妬けるな。 佐々木が羨ましくて仕方ないぞ。
「ふえ? そ、それはどういう意味、え? え?」
分からないか? お前の事想ってる俺の気持ち。
「だ、だっていつもあたしのこと佐々木さんと一緒になってからかってばかりでそんなそぶりなんか一度も…」
俺はツンデレだからな。 他の奴がいる前ではそういう態度しか出せん。
それにお前って結構カワイイからな。 言い寄ってくる奴も多かろう。
そんなお前に俺みたいなのが言い寄ってもお前が困るだけだろうし。 でも俺、お前のことが…
「ダ、ダメなのです。 佐々木さんに悪いのです。 た、確かにあたしもあなたのこと嫌いじゃない…むしろ…」
(あ、あれ? なんか変な方向にいってるぞ。 まずい、適当な所で切り上げないと)あ、あのな橘…
「ああ。でも許されないのです! 愛し合った二人には困難が多すぎるのです! 悲劇なのです!」
マズイ! 完全に入り込みやがった。 佐々木! 助けてくれ!
「そうしたいのはやまやまなんだけどね、そうせずとも後ろの人がなんとかしてくれそうだよ。」
あれ? なんかお前怒ってない? え? 後ろって… ハ、ハルヒ! いつからそこに!
「そうね、『お前、相変わらず』あたりからかしら? それよりアンタがそんなに橘さんに入れ込んでたとは知らなかったわ。」
そこからかよ! それに違う! あと、なんでお前も怒ってるんだ?
「別に怒ってなんかいないわよ。 ええ、怒ってませんとも。 応援してあげようとしてるだけよ、ねえ佐々木さん。」
「ふむ、本当の愛情なら応援してあげなくも無いがね。」
「え? どういうこと? キョン! 分かりやすく説明しなさい!」
だ、だからな、今日はエイプリルフールでかくかくしかじかで…すまん橘。
「え? え~! ひっどーい! ひどい! それはいくらなんでもあんまりなのです!」
だからスマンって! な、ハルヒ、そういうわけで…あ、あれ? 二人とも殺気だしてないか…
「乙女の純情弄ぶなぁ!!! このアホンダラゲ!!!」
「やれやれ、僕も同意見だ。 君は少しやりすぎたんだよ、キョン。」
その後の事は覚えていない。 気が付いたら傷だらけで店の裏手に転がっていた。 後に橘はこう語る。
「ええ、佐々木さんと涼宮さん、息がぴったりでした。
お二人が彼の両側から平行移動ですーっと近づいたかと思ったらその後は一瞬。 彼はボロゾーキンのようになっていました。
あれが神の御業というものでしょうか? その後? お二人は意気投合してどこかへ行っちゃいましたよ。 」
FIN