『ボヘミアの醜聞』(原題:A Scandal in Bohemia)は、アーサー・コナン・ドイルの短編小説。発表年は1891年。初出は『ストランド・マガジン』1891年7月号。短編集『シャーロック・ホームズの冒険』に所収。シャーロック・ホームズシリーズ初の短編作品であり、アイリーン・アドラーを巡る事件を描く。
あらすじ(以降の章、すべてネタバレを含みます)
1888年、ジョン・H・ワトソンはベイカー街221Bに立ち寄り、シャーロック・ホームズと再会する。ホームズ曰く、まもなく依頼人が来るらしい。しばらく経ち、部屋にマスクを着けた男が現れる。男はフォン・クラム伯爵と名乗り、ボヘミア王家で発生した醜聞を解決してほしいと依頼する。ホームズは、即座に男がボヘミア国王本人であると見抜き、依頼の内容を尋ねる。
5年前、王太子時代の国王はアイリーン・アドラーというオペラ歌手と交際していた。しかし、国王とスカンディナヴィア王女との結婚が決まった途端、アイリーンは、交際時のふたりを撮った写真を王女に送りつけると脅迫してきた。国王は秘密裏にアイリーンの邸宅を捜索するものの写真は見つからず、頼みの綱としてホームズに依頼をすることになったのだという。
ホームズは変装し、アイリーンを追跡すると、ゴドフリー・ノートンという男と一緒に聖モニカ教会の中に入っていくのを見つける。ホームズが潜入すると、牧師の立会のもとふたりの結婚が執り行われており、ホームズは立会人となる。いきなりの出来事に驚きつつも、ホームズは依頼を遂行すべく一芝居打とうと考える。
その夜、ホームズはアイリーンの邸宅付近でわざと乱闘騒ぎを起こして負傷したふりをして、アイリーンの家へと運び込まれる。ワトソンは、ホームズが中に入ったのを確認してから発煙筒を投げ込んで、火事だと叫ぶ。アイリーンは咄嗟に件の写真を取り出そうとして、ホームズに隠し場所を知られる。
ホームズは、翌日ボヘミア国王同席のもとアイリーン邸を訪ねようと考え、ベイカー街に帰還する。ホームズたちが部屋に入ろうとしたとき、謎の男が通りがけに「おやすみなさい、シャーロック・ホームズさん」と声をかける。
翌日、ホームズはアイリーン邸を訪れるが、既にアイリーンは夫と大陸へと旅立ったという。隠し場所を探ると、アイリーンだけが写った写真と手紙が見つかった。手紙によると、アイリーンはホームズの芝居に気付いたらしく、男に変装してベイカー街まで尾行していたのだという。例の写真については悪用する気はないと書かれていた。
国王は、依頼の謝礼としてエメラルドの指輪を渡そうとするが、ホームズはより価値あるものを所望する。それは、アイリーンの写真だった。ホームズはこれ以降、女性を手放しに馬鹿にすることはなくなり、アイリーンのことを語るときはいつも「あの女性」と呼ぶのだった。
登場人物
各場面での推理
ホームズとアイリーンの関係性
シャーロック・ホームズとアイリーン・アドラーの関係性については、しばしば恋愛的な要素をまじえて説明することがあり、実際に数多のパロディ、パスティーシュ、二次創作においてその恋愛模様が描かれている。しかし、本文中にもあるように、ホームズは単純にアイリーンの知性に惹かれたのであって、女性として(また恋愛対象として)見ているわけではないらしい。
ホームズは無性愛者的な描写が多いが、女性の容姿や知性に関しては度々称賛するような発言をしており、完全に恋愛感情が欠如しているわけではなさそうである。とはいえ、「どんなに立派な女性だろうと、100%は信用できない」という彼の言葉の通り、パートナーとしての女性には興味を持てなかったのだろう。