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東方拳闘士四話

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咲夜はパー。
そして賢はグーを出していた。

(くそッ!!まただ!今度はチョキ出そうと思ったのに…グーを出している!!)
「あらら?また私の勝ちね…。それよりも賢…とかだったわね?顔色悪いわよ…?最後の勝負をする前に…今度こそ休憩が必要なんじゃあないかしら?」
腕組みしたまま余裕綽々で見下ろす咲夜。
「…………ジャンケン…」
咲夜を下から睨め付ける様に喋りだす賢。
「…ジャンケンって言うのは…確率じゃあない!相手に勝ちたいという『心の力』だ…!!」
「……」
黙って賢を見つめる咲夜。
「相手に勝つと言うのは、相手の『心の力』を乗り越える事だ……!」
「じゃあ、私はあなたにとって『乗り越えることの出来ない壁』ね…」
「だけどぼくの尊敬する…漫画家が言っていた」
「漫画家ぁ~?」
何を言ってるのかしら?と言う顔をする。
「もっとも難しいことは何だと思う…?いいかい!もっとも難しいことは!!『自分を乗り越えること』だッ!!
ぼくはこのままジャンケンをすれば、あんたに勝てないだろう!だがその運命を乗り越えて見せるぞッ!」
フフンと笑う咲夜。
「あなたの御託、中々立派だわ。その漫画家の意見も正しいと思うわね。でもどうする事も出来ない運命ってあるのよ。あなたの敗北の様にね…」
「どうかな…。ぼくの出す『手』を操ったお前のイカサマは…『もう暴いた』…」
へー、と感嘆の声を漏らす咲夜。
話を続ける賢。
「二回目の勝負のとき、自分の『腕』を良く観察してたんだ。…手には異常は無かったからな。それで気が付いたんだ…ジャンケンで『手』を出す瞬間、手首と肘の間辺りに、突然数個の赤い点が現れた。
最初は虫刺されかと思ったが違う…血が出ていた…これは針を刺した痕だ!!……ぼくの筋肉に何かしたんだな…?」
パチパチパチ。咲夜が拍手する。
「仰るとおりよ。あなたが『手』を出す瞬間に時間を止めて『前腕屈筋群』にある『ツボ』に針を刺したのよ。人間の身体には400近くの『ツボ』がある。
そして『ツボ』の中には、刺激された部分の筋肉を収縮させたり、脱力させたりする物があるわ。そして私はメイド…針を使えるのはメイドに取って当然の嗜みよ」
賢の顔に一筋の冷や汗が流れる。
「…恐ろしい奴だ…。時間を操るだけでも圧倒的なのに…ぼくでは到底真似出来ない技術も持っている…恐れ入ったよ…」
「フフ。これが大人って奴よ…。パワーだけじゃあない…テクニックも持っている…。若いうちは皆、自分の力を過信して無茶をするものよ…。今のあなたみたいにね~。…そして滅びる」
「自分だって若いくせに………それにぼくは滅びたりはしないぞ…。何としても杜王町に帰るんだ…明日は『ピンクダークの少年』の21巻の発売日なんだ…。必ず帰ってやる!!…そしてあんたのイカサマはもうバレてるんだぜ…」
「フン。だからどうだというの?理解したからどうするというの?あなたが私にジャンケンで負ける運命には変わりないわ」
「さっきも言ったとおりだよ…。もっとも難しいことは『自分を乗り越えること』…。あんた『はマジに凄い技術』を持っているが…」
咲夜を指差し叫ぶ。
「ぼくは『力押しの根性』でそれを乗り越える!!」
叫ぶと同時に自分のヘッドバンドを取り外す。
「何をするつもり…?」
咲夜の言葉を無視して、賢はヘッドバンドを左右に引っ張る。フランから奪った能力のおかげで簡単に引き裂く事が出来た。
一本の帯になったヘッドバンドをグルグルと右前腕に巻いていく賢。ゴムが入っているヘッドバンドは巻かれれば巻かれるほど腕を締め付ける。
口と左手を使って思いっきり引っ張り、結び目を作ったあと、そこに木の棒を押し込んで、ボーイスカウトで習った止血方法で、さらにグイグイと締め上げていく。
「…まさか…!」
強く圧迫されたせいで血流が阻害され、右腕がドンドンと腫れて来る。
「痛い…痛いよ」
涙を流し始める賢。
「腕が痺れて来た…でもとても痛い!こんなに痛いのはデッドボールをクラって奥歯を折って以来だ!…だがここまでキツく縛り上げれば、鬱血したせいで『ツボ』は反応しなくなるはず!!これが『若者の無茶』って奴だ!!どうだッ!!」
「………中々の根性ね…。とても痛々しいわその腕。でも、一度くらい…こんな小僧を一度乗り越えるぐらい!!『ツボ』使わなくても出来るわッ!!」
二人の間の空気が、張り詰めた緊張で震える。
「……行くぞ咲夜ッ!
「来い!ジャンケン小僧!!」
二人が構える。どちらも、他人が見れば真剣で斬り合おうかという様な、凄まじい気迫だ。
「「ジャーンケン――」」
そして腕は振りおろされた。
「「ホイッ」」

咲夜はまたもパー。
賢は……。


「うわあああああああああああああああああああ!!」
ブシューと音を立てて、賢の右手から血が噴出す。
「子供に!ぼくは子供なのにッ!!ううううううううう!!子供に何てことするんだぁぁぁッ!!」
右手のいたる所から血が噴出し、賢の服にも飛び散っている。
それを見て薄ら笑いを浮かべる咲夜。
「フフ、メイドが針を持っていたのよ?『糸も持っていて当然』だわ…」
賢の右手は、グーの形になる様に『縫われていた』。
指の間接ごとに掌底まで縦糸が通してあり、『手』が開かないようになっている。
しかも全て『往復』して縫われており、玉止めもシッカリ施されている!
当然、右手は穴だらけの無残な姿になっていた。
「ク、クソ!何て奴だ!…こんな事をするなんてぇぇ!」
滝の様に涙を流し始める賢。
「…さっき言ったばかりじゃないの…。『ツボを使わなくても乗り越えられる』って…。それに、血が噴出してるのは鬱血した圧力のせいで、実際大した怪我じゃないわよ…フフフ」
痛みに耐え切れず、右手を押さえ、抱え込むように身体を曲げ、膝を突く賢。
顔色が真っ青で、全身から脂汗を出している。
「ちくしょう……このアマが……!!」
「フフン!勝てばよいのよ。過程や方法などどうでもいいわ…!」
腕を組み、仁王立ちの咲夜。
「さあ、これであなたからフランドールお嬢様に能力が返って行くのね…?」
「ちくしょう…ちくしょう…こんな…事しやがって………」
賢が呟く。痛みが段々酷くなっているのか、とても痛々しい声だ。
「あなた、自分が殺される事を恐れているみたいだけど…私だって鬼じゃあないわ。こんな子供、殺しはしないわよ」
やさしく微笑む咲夜。
「でも…あなたをつれて帰って妹様の遊び相手をさせてあげる…。一生とはいわないわ、一日でいいわよ~」
笑顔で賢に近づいていく咲夜。
「……フフ、フフフ…フフフフフ…」
「…何を笑ってるの?痛みで気でも違ったのかしら?」
「フフフフ……違うんだよ…それが…」
そう言うと、咲夜を見つめながら立ち上がる賢。
その瞳には痛みによる狂気も恐怖も無い。不適に強く輝いて、勝負師の目をしていた。
「フフフ…ぼくのこの笑いは…フッフッフッ…痛いから狂ったんじゃあない…『勝ったから』うれしいんだ!」
「……何を…あなた何を言っているの…?私はパーであなたはグー…勝ったのは私の――」
方でしょ、と咲夜が言いかけた瞬間。ドンッという衝撃。
そして、自分の中から何かが抜けていく感覚。

「な!何よ!!まさか!!」
抜けていく何かは、賢の左頬の穴に吸い込まれていく。
「きゃあああああああああああああああッ」
能力を吸われ、膝を突く咲夜。
「…フ~~。さっきの奴より綺麗な力だぞ!右手の傷も半分は治ったぞ!…ん?でも糸を抜かないといけないぞ!クソッ!」
「この…!こいつ!」
フラフラと頭を片手で押えながら立ち上がり、反対の手で賢を指差して怒鳴る。
「ルールを捻じ曲げたのね!!負けたら能力を奪うッ!そういう風に変えたのね!!!」
「やれやれ…何か勘違いしてますね?ぼくは勝ったんだよ。確かにね…」
「何ですって…!?」
怒りと殺気と疑念が入り混じった顔で睨む。
「あんたにそれが判るように…さっきからずっと手を『その形』にしてるじゃあないか…」
「何を言って……ハッ!まさか…!!」
咲夜は賢の右手を見た。そして、さっきからその右手を抑えている左手も…。
左手は、不自然に人差し指と中指だけ伸ばして右手を押さえている。

これはつまり……チョキ?

「そうですよ…ぼくは『左手でジャンケンをした』んだ…!そして勝った!」
「それでも…卑怯よ!両手でジャンケンして勝った方の手を優先させるなんて!!」
「それも違うんだなあ~。」
と、右手の糸を抜きながら余裕綽々という感じで説明する賢。。
糸を抜いたときに再び開いた傷から、血が飛び散っている。
「さっき言ったとおり『後出しも負け』だ。両手で『手』を出して、勝ったほうを選べばそれは『後だしになり負け』だ。
だからぼくは最初から左手でやると誓ったんだ…」
「後からなら何とでも言えるわ……!」
声色から焦りが感じられる。
「そう言うと思ったぜッ!だから証拠を用意しておいた…これが証拠だ!」
そう言って右腕に巻いているヘッドバンドを咲夜に見せ付けるように前にかざす。
「ま…まさか…こんな…」
そこには血文字で小さく一言こう書いてあった。
【こっちの手はつかわない】


咲夜の顔から血の気が引いていく。ま、まさかこんな単純な………。
「今書いたわけじゃあないってのは、血文字の色を見れば分かりますよね…?今書いたなら綺麗な赤のはずだけど、これは汚く黒ずんでいる…つまりさっき書いた証拠」
「…どうして……」
「ん?」
「…何故…判ったのよ…。私が『指を縫い付ける』と…」
「…うちの母さんはいつもハンドバックに小さな裁縫箱を入れているんです。そして針は普通直接ポケットに直接入れたりはしない。それでピンと着ましてね…『他にも裁縫道具を持っているんじゃあないか』と。
…実際の所さっきはあんなに非難したが、あんたはぼく予想したより『やさしい方法』を使ったんですよ」
「……『やさしい…方法』?……」
「てっきり、『針を直接指の骨ごとに掌まで何本も刺して固定する』かと思ったんですがね…」
「あなた…そんな…。腕をキツク縛るだけでも痛いのに…。そんな拷問の様な事をされると予想したのに…。それだけの痛みを覚悟してやった…というの…?」
それを聞いて不思議そうな目で咲夜を見つめる。
「さっき自分でも言ってただろ…『過程や方法なんか関係ない』…『勝てばいい』って」
こ、こいつ…。私とは全く『逆の意味』で手段を選ばなかった…!『相手に非道な事をする』のではなく…『自分の体を犠牲にしても』いいと。
力が抜けダラリと垂れる咲夜の両腕。
「本当はこんな事書かなくてもいいと思うんですけどね~…」
外したヘッドバンドを胸の前に持って、再利用するために結び始める。
「初めてだから念のためってのもあるが…いや、あんたの能力と技術にはマジに恐れ入ったよ…。そしてあんたも自分の能力に誇りと自信を持っていたはずだ……。
だからこそ、ぼくの指を縫い付けている間に、ちょこっとでも警戒してぼくの体を見ておけばよかったのに…自信と誇りが逆に油断を生んだ。
そう!高度な技術と圧倒的な能力のあんたは…これっぽっちの…ガキ同士で命かけるって言って『命』って漢字を書くような…下らない『子供だまし』に引っかかったんだッ!!」
ヘッドバンドを付け直してから、指を立ててニヤリと笑う。
「もういっぺんいいますよ……。圧倒的な技術と能力のあんたは…下らない『子供だまし』に引っかかったんだッ!!……これであんたの心は完全に『挫けた』。時を止める小細工も出来ない…。
ぼくは『自分の運命を乗り越えた』果たしてあんたは…『挫けた自分』を乗り越えられるかな…?」
咲夜は思った。
自分で自分を大人だと言ったが…。そうだ…大人はいつだって子供を見くびっている。自分がやったトリックより遥かに単純なトリック…いや、トリックとさえ言えない物を見逃した。
もう賢が何を言っているのか、良く分からなかった。自分にわかる事はたった一つ。もはや何をどう足掻いてもジャンケンでは勝てない。と言う感覚だけ…。
こいつは3分の1能力を奪えば、こちらの能力を無効化できる。つまり、逃げる事は出来ない…。
ならば!!今殺るしかないッ!!

バシュッ!

賢の心臓目掛け、咲夜の手元から高速のナイフが飛び出す。
次の瞬間ニヤリと笑う賢が顔の横で拳を握ると、ナイフは空中でバラバラになった。
「酷い人ですね…。子供の腕に針刺したり、指を縫い付けたり、心臓にナイフを投げたり」
速いッ!何で私の全力投球を見切れるのよッ!!こいつ…本当に人間……?
絶望が広がる。
「さあ、ジャンケンを続けましょうか...」
咲夜が全ての能力を奪われるのに1分も掛からなかった。





TO BE CONTINUED……

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