東方拳闘士 第三話
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森の中に、腰に左手を当て、右頬に右手を当てた、深く思考し黒く妖しく光るオーバーオールに身を包んだ身体を妙にくねらせたポーズで賢は立っていた。
さっきの奴(フラン)が飛んでいった方向に進めば、湖かなんかに着くはずなんだが…
「おっかしいな。ずっと同じ場所をグルグル回ってる気がするが…気のせいかな?」
「気のせいじゃないわよ」
突然、背後から女の声が聞こえた。腰を落とし素早く後ろを向く。
が、そこには誰も居ない。
「…ま、まさか。孤独は人間の気を狂わせると言うが、この短時間でぼくの頭は狂ったのか…?
それとも今度も気のせいなのか?」
「だから気のせいじゃないってば」
今度は直ぐ後から声が聞こえた。だが後ろを向けなかった。
首筋に、冷たい何かが押し当てられている。子供だって首に押し当てられる物はわかる。ご存知ナイフだ!
「とっくにどこかに行ってるかと思ったら、妹様が言われた場所の側をウロウロしてるなんて。あなた相当な方向音痴ね」
「……妹様って、さっきの『フランス人形』みたいな名前の奴の事だな…?」
ムッとする咲夜
「『フランスドール』じゃなくて『フランドール』お嬢様よ。失礼しちゃうわ。…そして私は十六夜・咲夜。あなたが妹様から奪った能力を取り返しに来たのよ。
で?返す?返すのなら、このナイフは『首に押し当てた時と逆の方向』に動くわ。でも返さないなら、『首に押し当てた時と45度違う角度』に動かすわよ…」
つまり、首を掻き切ろうという訳だ。
「フン。ぼくはナイフなんかには屈しないぞ。それに、自分の意思で能力を出し入れする事は出来ないんだよ…。ジャンケンで能力を賭けないとな」
「あらやだ。パチュリー様言うとおりだったわね。…楽できるかと思ったのに。所で…あなたと私が勝負しても、妹様に能力が戻るのかしら?」
と、賢の右動脈に押し当てたナイフに少し力をこめる。
「……多分そうなるよ。今までやった事が無いけど…自分の能力だから判る…。ぼくが負ければ『賭けた能力は本体の所に帰る』…」
『多分』…。命が惜しくて嘘をついているなら『多分』とか、『今までやった事が無い』とかは言わないだろう。咲夜はそう判断した。
「それは良かったわ。お互いのためにもね…で、私と勝負する?『ジャンケン』で…」
「グッド…!新しい能力を手に入れれば、ぼくはさらに強くなれる!……それにサンダルの靴擦れも直る…かも」
なるほど、能力を取り替えるのではなく、さらに追加するタイプだったようね。
ナイフを引っ込め、距離を取る咲夜。腕を組んでジト目で賢の方を見る。
流石にナイフを当てられていたせいか、冷や汗をかいている。
「フフフ。緊張しているの?ボウヤ。少し休憩するかしら?」
相手を挑発する様に聞く。。
「いいや…休憩は必要ないよ。…緊張は相手に対する慎重さと抜け目の無さを生む…。そして、全く気配を出さずに、二度もぼくの背後を取ったお姉さんの能力も、もう判った」
「ええそう、私の能力はまさに『世界を支配する程度の能力』!!」
「え…時を止める能力じゃあ……?」
「………そうとも言うわ…。まあ『時間を操る程度の能力』だけど、空間も操れるし…」
「空間を削る?」
「そんなアホな能力じゃあないわ…」
この時、遥か遠くの杜王町で一人の高校生がくしゃみをしたと言う。
ともかく、と続ける咲夜。
「もしあなたが、妹様から奪った――」
「わかってるよ。この『何でもぶっ壊す力』を使おうとした瞬間、そのナイフでぼくを殺そうってんだろ」
「Exactly(そのとおりでございます)」
「…勿論、『ぼくもそのとおり』だよ……」
お前のナイフがぼくに刺さった瞬間、ぶっ殺してやる!と、暗にそう言った。
数秒、見詰め合う二人。
「…さあ、勝負を始めましょうか」
ニヤリと笑う咲夜。その顔には絶対の自信と、負ける筈が無いという余裕が感じられる。
「…始める前に説明するよ。勝負は――」
「判ってるわよ。五回勝負。…要は『三回勝てば良い』って事でしょ。妹様から聞いてるわ」
「…じゃあ…これも聞いてるよな…?」
今度は賢がニヤリと笑う。
「『後出しは負け』…」
その言葉の裏に、奇妙な気迫を感じる。
「だ、だから?何が言いたいのよ」
「判りませんか…?ジャンケンする瞬間に時を止めて、ぼくの出す手を見たとしたら…その時点で『後出し』なんだよ!!」
「はッ!」
驚く咲夜。
「そうだよ!時を止められたとしても、ぼくとのジャンケンには勝てないんだよぉー!!マヌケ!!」
「そ、そんな…」
「行くぞ!!ジャーンケン…」
「ちょ、ちょっと待って!!」
慌てて相手を制止しようとする咲夜。
「もう遅い!!」
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森の中に、腰に左手を当て、右頬に右手を当てた、深く思考し黒く妖しく光るオーバーオールに身を包んだ身体を妙にくねらせたポーズで賢は立っていた。
さっきの奴(フラン)が飛んでいった方向に進めば、湖かなんかに着くはずなんだが…
「おっかしいな。ずっと同じ場所をグルグル回ってる気がするが…気のせいかな?」
「気のせいじゃないわよ」
突然、背後から女の声が聞こえた。腰を落とし素早く後ろを向く。
が、そこには誰も居ない。
「…ま、まさか。孤独は人間の気を狂わせると言うが、この短時間でぼくの頭は狂ったのか…?
それとも今度も気のせいなのか?」
「だから気のせいじゃないってば」
今度は直ぐ後から声が聞こえた。だが後ろを向けなかった。
首筋に、冷たい何かが押し当てられている。子供だって首に押し当てられる物はわかる。ご存知ナイフだ!
「とっくにどこかに行ってるかと思ったら、妹様が言われた場所の側をウロウロしてるなんて。あなた相当な方向音痴ね」
「……妹様って、さっきの『フランス人形』みたいな名前の奴の事だな…?」
ムッとする咲夜
「『フランスドール』じゃなくて『フランドール』お嬢様よ。失礼しちゃうわ。…そして私は十六夜・咲夜。あなたが妹様から奪った能力を取り返しに来たのよ。
で?返す?返すのなら、このナイフは『首に押し当てた時と逆の方向』に動くわ。でも返さないなら、『首に押し当てた時と45度違う角度』に動かすわよ…」
つまり、首を掻き切ろうという訳だ。
「フン。ぼくはナイフなんかには屈しないぞ。それに、自分の意思で能力を出し入れする事は出来ないんだよ…。ジャンケンで能力を賭けないとな」
「あらやだ。パチュリー様言うとおりだったわね。…楽できるかと思ったのに。所で…あなたと私が勝負しても、妹様に能力が戻るのかしら?」
と、賢の右動脈に押し当てたナイフに少し力をこめる。
「……多分そうなるよ。今までやった事が無いけど…自分の能力だから判る…。ぼくが負ければ『賭けた能力は本体の所に帰る』…」
『多分』…。命が惜しくて嘘をついているなら『多分』とか、『今までやった事が無い』とかは言わないだろう。咲夜はそう判断した。
「それは良かったわ。お互いのためにもね…で、私と勝負する?『ジャンケン』で…」
「グッド…!新しい能力を手に入れれば、ぼくはさらに強くなれる!……それにサンダルの靴擦れも直る…かも」
なるほど、能力を取り替えるのではなく、さらに追加するタイプだったようね。
ナイフを引っ込め、距離を取る咲夜。腕を組んでジト目で賢の方を見る。
流石にナイフを当てられていたせいか、冷や汗をかいている。
「フフフ。緊張しているの?ボウヤ。少し休憩するかしら?」
相手を挑発する様に聞く。。
「いいや…休憩は必要ないよ。…緊張は相手に対する慎重さと抜け目の無さを生む…。そして、全く気配を出さずに、二度もぼくの背後を取ったお姉さんの能力も、もう判った」
「ええそう、私の能力はまさに『世界を支配する程度の能力』!!」
「え…時を止める能力じゃあ……?」
「………そうとも言うわ…。まあ『時間を操る程度の能力』だけど、空間も操れるし…」
「空間を削る?」
「そんなアホな能力じゃあないわ…」
この時、遥か遠くの杜王町で一人の高校生がくしゃみをしたと言う。
ともかく、と続ける咲夜。
「もしあなたが、妹様から奪った――」
「わかってるよ。この『何でもぶっ壊す力』を使おうとした瞬間、そのナイフでぼくを殺そうってんだろ」
「Exactly(そのとおりでございます)」
「…勿論、『ぼくもそのとおり』だよ……」
お前のナイフがぼくに刺さった瞬間、ぶっ殺してやる!と、暗にそう言った。
数秒、見詰め合う二人。
「…さあ、勝負を始めましょうか」
ニヤリと笑う咲夜。その顔には絶対の自信と、負ける筈が無いという余裕が感じられる。
「…始める前に説明するよ。勝負は――」
「判ってるわよ。五回勝負。…要は『三回勝てば良い』って事でしょ。妹様から聞いてるわ」
「…じゃあ…これも聞いてるよな…?」
今度は賢がニヤリと笑う。
「『後出しは負け』…」
その言葉の裏に、奇妙な気迫を感じる。
「だ、だから?何が言いたいのよ」
「判りませんか…?ジャンケンする瞬間に時を止めて、ぼくの出す手を見たとしたら…その時点で『後出し』なんだよ!!」
「はッ!」
驚く咲夜。
「そうだよ!時を止められたとしても、ぼくとのジャンケンには勝てないんだよぉー!!マヌケ!!」
「そ、そんな…」
「行くぞ!!ジャーンケン…」
「ちょ、ちょっと待って!!」
慌てて相手を制止しようとする咲夜。
「もう遅い!!」
「「ホイッ!!!」」
咲夜はチョキだった。
(勝った!ここの連中はマヌケばかりだぜ!ナイフを使ったから刃物で来ると思ったらその通りだとはッ!マヌケ過ぎるぞ!!ぼくのグーがチョキを打ち砕くッ!)
……
………
シーン…。
「ねぇ…」
と咲夜。
「何も起きないけど…本当に……『妹様に能力が返った』のかしら…?」
「なんだってぇぇぇぇ!!!」
あ…ありのまま、今起こった事を反復するぜ!
『ぼくはやつの前で グー を出していたと思ったら、いつのまにか パー を出していた』
どういう事だ?!時間を止められて拳を開かれたのか…?いや、硬く握り締めいた拳を無理やり開かれたのなら、ぼくの指が痛くなっているはず…!!指に異常はないッ!!
「おまえー!!何をしたあああ!!」
今にも襲い掛からんばかりの賢を前に、涼しげな顔の咲夜。
「だから…『妹様に能力は返った』のかしら…?もしあなたが嘘を付いていて、能力が返って無いって言うなら、わたしは帰っちゃうわよ。…あなたを『どうにか』してね」
「ク…。ぼくから能力が戻るのは『三回勝った後』なんだ…」
「何よそれ。ずるいじゃないの」
「それよりもお前ぼくに何をしたんだぁぁー!!」
「あーら、フッフッフ。何をしたって?あなたとジャンケンをして、『私が勝った』…ただそれだけじゃない。
…あなたさっき緊張して抜け目なくなったと言ったけど、全然抜けてるじゃないの…フフフ」
ちくしょう!と咲夜を睨む賢。焦ったフリをしたのはぼくを油断させるためか?からかっているのか…?とにかくこいつが時を止めて何かをしたのは確実だ!だが、何をやったんだ?!
その謎を突き止めないとぼくは破滅だ!そして能力を取り戻したら、あのクリスマスツリーみたいな羽の奴はどうするか?当然仕返しに来るに違いない!!あいつは空が飛べる!ぼくに逃げるすべは無い!!
能力を奪ったからこそ完全に理解できるッ!ぼくは全く抵抗できずに、この世から消滅させられるだろう…!!
いや、あいつが来る前に、咲夜の奴に全身を切り刻まれるかもしれないッ!!
なんてこった…。この勝負…ぼくが賭けたのはぼく自身の命だったんだ!!!
だが、賢は諦めない。静かに、ねめつける様に咲夜を見つめる。
「……次の勝負で…」
「あら、なあに?」
「次の勝負で……あんたのやった『イカサマ』を暴いてやるよ…!」
「良い目をしてるわね。でも暴いた所であなたに勝ち目は無い……じゃあ、行くわよ…」
「来い!勝負だ!!」
(勝った!ここの連中はマヌケばかりだぜ!ナイフを使ったから刃物で来ると思ったらその通りだとはッ!マヌケ過ぎるぞ!!ぼくのグーがチョキを打ち砕くッ!)
……
………
シーン…。
「ねぇ…」
と咲夜。
「何も起きないけど…本当に……『妹様に能力が返った』のかしら…?」
「なんだってぇぇぇぇ!!!」
あ…ありのまま、今起こった事を反復するぜ!
『ぼくはやつの前で グー を出していたと思ったら、いつのまにか パー を出していた』
どういう事だ?!時間を止められて拳を開かれたのか…?いや、硬く握り締めいた拳を無理やり開かれたのなら、ぼくの指が痛くなっているはず…!!指に異常はないッ!!
「おまえー!!何をしたあああ!!」
今にも襲い掛からんばかりの賢を前に、涼しげな顔の咲夜。
「だから…『妹様に能力は返った』のかしら…?もしあなたが嘘を付いていて、能力が返って無いって言うなら、わたしは帰っちゃうわよ。…あなたを『どうにか』してね」
「ク…。ぼくから能力が戻るのは『三回勝った後』なんだ…」
「何よそれ。ずるいじゃないの」
「それよりもお前ぼくに何をしたんだぁぁー!!」
「あーら、フッフッフ。何をしたって?あなたとジャンケンをして、『私が勝った』…ただそれだけじゃない。
…あなたさっき緊張して抜け目なくなったと言ったけど、全然抜けてるじゃないの…フフフ」
ちくしょう!と咲夜を睨む賢。焦ったフリをしたのはぼくを油断させるためか?からかっているのか…?とにかくこいつが時を止めて何かをしたのは確実だ!だが、何をやったんだ?!
その謎を突き止めないとぼくは破滅だ!そして能力を取り戻したら、あのクリスマスツリーみたいな羽の奴はどうするか?当然仕返しに来るに違いない!!あいつは空が飛べる!ぼくに逃げるすべは無い!!
能力を奪ったからこそ完全に理解できるッ!ぼくは全く抵抗できずに、この世から消滅させられるだろう…!!
いや、あいつが来る前に、咲夜の奴に全身を切り刻まれるかもしれないッ!!
なんてこった…。この勝負…ぼくが賭けたのはぼく自身の命だったんだ!!!
だが、賢は諦めない。静かに、ねめつける様に咲夜を見つめる。
「……次の勝負で…」
「あら、なあに?」
「次の勝負で……あんたのやった『イカサマ』を暴いてやるよ…!」
「良い目をしてるわね。でも暴いた所であなたに勝ち目は無い……じゃあ、行くわよ…」
「来い!勝負だ!!」
「「ジャーンケン…」」
力を込め、大きく右手を振り下ろす賢。
リラックスした表情で、軽く手を出す咲夜。
「「ホイッ!!!」」
力を込め、大きく右手を振り下ろす賢。
リラックスした表情で、軽く手を出す咲夜。
「「ホイッ!!!」」
咲夜はパー、そして……。
TO BE CONTINUED……